筆者は2014年にファイナンシャル・プランナーの資格(ファイナンシャル・プランニング技能検定2級、日本FP協会認定AFP)を取得しました。資格取得から7年経ち、今ではその資格を存分に活かした仕事ができているのはありがたい限りです。
しかし、こんな質問にも悩まされるようになりました。「ねえ、ファイナンシャル・プランナー(以下FP)って、やっぱり保険とか売るの?」と―少なくとも筆者は、人生において一度も保険を売った(お客様に保険商品のご提案をした)ことはありません。
周囲を見回しても、たぶん「保険を売ったことがないFP」もかなりいるのでは?と思います。そこで今回は「保険を売るだけがFPの仕事じゃない」ということで、ゲームを通じてお金や人生について学べる研修を行っているプロFP講師集団「FPal」の皆様にインタビューしてみました!
目次
保険を売るだけがFPの仕事じゃない件
そもそも、世間の人たちは本当に「FP = 保険を売る人」と思っているのかどうか、まずは調べてみるため、筆者はアンケートを取ってみることにしました。その結果
- 名前は知っているけど何をしているかわからない
- 保険会社にいそう
の2つがFPのイメージとして浮かび上がってきたのです。
ちなみに、アンケートの詳しい内容はこちらからご覧いただけます。
FPのイメージ1「名前は知っているけど何をしているかわからない」
まずは、こちらのグラフをご覧ください。
これは
という質問に対する回答の分布を表した円グラフです。最も多かった選択肢が「名前程度は知っている(手掛ける業務などの細かいことまでは分からない)」で、全体の84.9%にものぼりました。
FPのイメージ2「保険会社にいそう」
続いて
という質問もしてみました。回答の分布を表した棒グラフがこちらです。
保険会社を選択する人が、他の選択肢よりはるかに群を抜いているのがわかるでしょう。
実際は多岐に渡るジャンルで活躍している
少なくとも、筆者が行ったアンケートでは「FP = 名前は知っているけど何をしているかわからなくて、でも、保険会社にいそう」というイメージを持つ人が多いことはわかりました。
ここで、そもそもFPはどんな仕事を手掛けるのか、大きく3つに分けましょう。
相談 | キャッシュフロー表などを用いたライフプランニングやリタイアメントプランニング、資産運用、相続、保険、不動産運用などFPの6分野に関連する内容の相談に乗る。保険会社、銀行、証券会社などに在籍している場合は、自社の商品の提案も併せて行うこともある。 |
執筆 | 「保険の選び方」「教育費の準備方法」など、お金に関連するテーマをもとに、雑誌やインターネット記事などの文章を書く。自分でリサーチして書く場合もあれば、企業担当者への取材を行うこともある。 |
講師 | 講義・講演・セミナーにおいて、講師を務める。セミナーの種類は、FP資格取得講座、企業・学校向けの研修、一般消費者向けの啓蒙・啓発を目的としたものなど、比較的対象が広いのが特徴。 |
既に触れた「保険会社に在籍していて、保険を売る(お客様に保険商品のご提案をする)」のは、相談の範疇に入ります。また、筆者が普段行っている「MoneQ Guide」の記事の執筆は「お金に関するインターネット記事の執筆」ということで、業務上も執筆に分類されるのです。
講師をメインの業務にするFPもいる
もちろん、筆者の周囲には講師をメインの業務として手掛けるFPもいます。あくまで筆者の私見ですが、雰囲気が良くて話の上手な人が多い印象です。もしあなたが、「FP資格を持っている(これから取ろうとしている)から、それを活かした仕事をしたい」と思っていて、人前で話すのが苦手でないなら、講師をメインの業務として手掛けてみるのも1つの選択肢でしょう。
研修のスタイルも様々
また、講師によっても、研修のスタイルはさまざまです。会場に集まってもらい、レジュメを元に話をするオーソドックスなタイプの講義をする講師もいれば、ワークやディスカッションを取り入れた、全員参加型の講義が得意な講師もいます。実際のところ、主催者や講義を受ける人の属性(職業・年齢)によって、適切なやり方があるはずなので、どの方法が良い・悪いという話ではありません。
ゲームで研修!?プロFP講師集団「FPal」にインタビューしてみた
そこで筆者は、実際に研修講師として活動しているFPにインタビューをしてみることにしました。今回ご協力いただいたのはプロFP講師集団「FPal」の皆様です。
FPalとは?
FPalを一言でまとめると
です。
メンバー紹介
今回、取材にご協力してくださったのは
- 坂田卓也様
- 黒須かおり様
- 国枝ゆたか様
です。
出典:企業情報 | エフパル
出典:企業情報 | エフパル
出典:企業情報 | エフパル
詳しくは後述しますが、この3人に
- 「G-トレ」を始めようと思った理由
- 「G-トレ」で印象的だった出来事
- 「G-トレ」のこれからのビジョン
について伺いました。
「G-トレ」とは?
インタビューの紹介に入る前に、そもそも「G-トレ」は何か、簡単に解説しておきましょう。公式ホームページによれば
です。「G-トレ」の「G」とは「Game(ゲーム)」を表しています。
筆者も学校に通っていたときに痛感したのですが、ただ座って先生(講師)の授業を聞いているだけでは、眠くなる上に話も頭に入りません。そのことに気づいた高校生時代の筆者は、何とかして必死にノートを取り、自分なりに考えて動いていました。
おかげで大学に現役で合格したのですが、今から思えば、あれは「主体的に動くことで、成果が出る」という教えだったのかもしれません。
筆者の昔話はさておき、何かを学ぶ際には「自ら考え、主体的に動く」ことほど大事なことはありません。「G-トレ」では、ゲームを用いることで
- 刻々と変化する状況に対応できるようになる
- コミュニケーション力を鍛えられる
- 主体性が育まれる
という効果がもたらされます。
4種類のゲームで学べるもの
なお、2021年5月現在、FPalでは、次の4種類の「G-トレ」用ゲームをすでに一般向けに公開しています。
THEオーナー | ビジネスに必要なスキルを楽しみながら身に付けることのできる『経営者の思考と交渉の本質がわかるゲーム研修』 |
Time&Money | 限られた時間の中で、お金をどれだけ増やせるかを競う『成功者の時間とお金の使い方が学べるゲーム研修』 |
Life Plan | 自分の将来のマネープランを疑似体験の中で「見える化」し、問題点の改善方法を学ぶ『将来シミュレーションゲーム研修』 |
ROLL OVER | 誰もが将来のために資産形成をする時代。大切な資産を減らさないために、『資産の特徴と資産が持つリスクとリターンが学べるゲーム研修』 |
ゲームの詳しい内容は、概要資料をダウンロードしてご確認ください。さらに「Money Poker」という理想の支出バランスが楽しみながら学べる新ゲームも開発したとのこと。気になる方は問い合わせてみてください。
知人にもインタビューしてみました
実は、上に挙げた4つのゲームのうち「Time&Money」「ROLL OVER」を筆者は知人と体験したことがあります。実は、今回の記事を書くにあたり、せっかくなのでその知人(ここでは仮にAさん)にインタビューしてみることにしました。
自己紹介をお願いします。
Aと申します。40代男性です。IT企業でシステムエンジニアをしております。
どういった点に興味を持って、ゲーム研修にご参加なさいましたか?
「お金の勉強をゲームを通じて楽しく行う」という点に魅力を感じました。実は、普段からゲームが大好きで、色々と試しているんです。
そうなんですね。ゲームをしていると、かなり手や頭を使うと思いますが、Aさんはこのあたり、どうお感じになりましたか?
仕事でも、様々なセミナーや講習会には参加しますが、ほとんどが座学です。なので、どうしても一方的に講師の話を聞くことが多いんですね。ただ、ゲーム研修は自分で考えて答えを出すというプロセスがあるので、その分気づきも多いと感じています。
仮にAさんが会社内で研修コンテンツとしてゲーム研修を取り入れるなら、どういった年齢層の方に試してみてもらいたいと思いますか?
まずは、20代のそれこそ、入社3年目くらいの人に試してみてもらいたいですね。考えて動くという経験を若いうちから積むのは大事ですから。それと、私はあえて上司にあたる年齢層の人(40代後半から50代)にも試してもらいたいと思います。
ゲームを通じて新たな気付きを得られるのはもちろん、「この人、実はこういう性格なのかな?」と意外な一面を見られたりするので、凝り固まった考えもほぐれる気がします。
また機会があったら、ゲーム研修に参加してみたいと思いますか?
もちろんです!
G-トレを始めようと思った理由
ようやく、本題であるインタビューに入ります。まずは、代表の坂田さんに「G-トレを始めようと思った理由」について聞いてみました。
私はもともと、ライフプランに関するワークショップ型の研修を独自に始める予定でした。一方的に講師が喋る、知識の詰め込み型の講義ってつまらないですよね?アンケートでも反応は今ひとつだし、その後行動に移してくれる人が少ないことに課題を感じていたんです。それを改善する1つの方法がワークショップ型の研修だと思い、作ってみたんです。最初に、その後FPalメンバーになる国枝さんに体験してもらったのですが、「ゲームの要素を取り入れるとより楽しく、またやりたいと思ってもらえるコンテンツになるのでは?」「ライフプランだけでなく、お金や生活の悩みを解消できるようなラインナップがあると面白いんじゃないかな?」という意見をいただいたのです。
そこで、試しに私と国枝さんとでこのライフプランワークショップをゲーム化しつつ、新たなゲームも1つ作り、FPの友人達に体験してもらったんです。嬉しいことに皆楽しんでもらえて評価も上々だったのですが、色々と課題も見えてきました。一言で言えば、ゲーム型研修としては完成度が低かったのです。ゲーム化に取り組んできた我々でしたが、そもそも世の中にどんなゲームが出回っているか、どのようなゲームが評価されているか、全く理解していないことにようやく気づいたのです。
そこで、講師経験だけでなくゲーム経験も豊富な黒須さんにも仲間に加わってもらい、リサーチも兼ねて世の中に出回っている様々なゲームを入手し、親しい方にお声かけしてゲーム会を開催し、ゲームの分析を始めました。一方で、研修効果の向上のため、アクティブラーニングやゲーミフィケーションの要素も意識するようになり、ゲーム研修の完成度が一気に高まっていきました。
気づけば、ベテランFPやベテラン研修講師からも高評価をいただけるゲーム研修が4つまで増えており、これを一人でも多くの人に体験してもらい、なかなか教わることのない「仕事」「家計」「将来」に関する悩みを解消する力を身につけて欲しいと思い、本腰を入れて取り組むために会社にしました。
2020年8月頃からは「GAME(ゲーム)を使った研修(トレーニング)」「G-トレ」と名付け、本格的に広めるべく活動を開始しました。
私たちは講師経験が豊富なので「話し方を工夫することで、受講生からいいフィードバックをもらえる確率は上がる」ことを経験則として知っています。しかし「本当にその人の学びになるか」まではわかりませんでした。だからこそ、ワークやディスカッションを取り入れるなど工夫してきましたが、その延長線上にゲームがあると思っています。
疑似体験をした後、意見の共有を行い、レクチャーによる学びを深められるのは「G-トレ」ならではの強みですね。研修パートもかなり作り込んでいるので、クオリティには自信があります。現在6つ目のゲーム研修も作っていますが、これも面白いですよ。
G-トレで印象的だった出来事
続いて黒須さん、国枝さんも交え、「G-トレで印象的だった出来事」についても聞いてみました。
とある高校で、授業の一環として「G-トレ」を行ったことがありました。研修の最初は、やはりざわざわしていたんですね。ただ、実際にゲームをやったあとのレクチャーでは、学生さんたちが集中して聴いてくれて。その時の目が忘れられないです。
長年講師をやっていますが、あれほど真剣に聴いてくれる人も珍しいと思うくらいでした。
学生さんが楽しそうにゲームをやっていたのも嬉しかったですけど、レクチャーで真剣に聴いてくれたり、メモをものすごい勢いで取ってくれていたのがもっと嬉しかったです。正直、そこまで真剣に聴いてくれることに感動しました。「自分たちのコンテンツで気づきを得てもらう」瞬間に立ち会えたことが嬉しいですし、「もしかしたら、自分のやりたいことはこういうことだったのでは?」と、自身の仕事に対する思いを振り返るきっかけにもなりました。
「G-トレ」に関しては、3人が知恵を絞り試行錯誤を繰り返し作り上げたので、私どもの思い入れも深いです。完成度を高めるのはもちろん「参加者に、”腹に落ちる”という感覚を持ってもらえるか」についても、細心の注意を払っています。
高校生は大人より正直な反応を示してくれます。一般的なセミナーで社会人の方々を相手に講師をするときより、はるかに緊張しますが、だからこそ良いリアクションが得られると、本当にうれしいですね!
G-トレのこれからのビジョン
最後に、G-トレのこれからのビジョンについても聞いてみました。
理想としては「G-トレを、日本全国の学校で行うのが当たり前になる」ということですね。いわば「北海道から沖縄まで、日本制覇」が目標です!
今は特に高等学校をメインとしてご提案していますが、大学生向けのパッケージも用意しています。黒須さんがおっしゃるように、47都道府県のすべての学校を制覇、が目標ですね。
また、詳しくはお話しできないですが、おかげ様で企業様とのつながりもできているので、こちらも徐々に広げていきたいです。
高校生などの比較的若年層の人たちに、楽しみながらお金を勉強してもらう「G-トレ」が当たり前になるほど広まってほしいです。「今日の3・4時間目、G-トレだってよ」みたいな会話をしてくれるといいですね。
坂田さん、黒須さん、国枝さん、本当にありがとうございました!「うちの学校でもG-トレ、やってみようかな?」「そもそもG-トレって何をするんだ?」と思った人は、さっそく公式ホームページをチェックしてみてください!
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