お金の基本

給料と物価

給料が上がったのに、生活が楽にならない。その理由は、賃金を3つの段に分けて見ると見えてきます。額面・手取り・実質賃金の違いを整理します。

このページの要点

額面は会社が払う金額、手取りは口座に入る金額、実質賃金は物価で割って買える量に直した値。生活の向きを決めるのは実質。賃上げ率は名目なので、同じ期間の物価上昇率と並べ、率にそろえて差を出す。

最終更新 2026年8月31日 / 全 15 問 ・知る 4 ・わかる 3 ・見抜く 4 ・ケースで考える 2 ・判断する 2

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目次 全 15 問

知る 4 問

  1. 名目賃金
  2. 実質賃金
  3. 手取り
  4. 手取りと実質は別

わかる 3 問

  1. 実質賃金の出し方
  2. 賃上げの読み方
  3. 上がっても減る

見抜く 4 問

  1. 賃金の3つの段
  2. 賃上げでも苦しい
  3. 実質に直す
  4. 月ごとの振れ

ケースで考える 2 問

  1. 昇給と物価
  2. 賃上げの受け取り方

判断する 2 問

  1. まず差を出す
  2. 給料と物価

知る

このテーマを理解するために必要な基本を押さえます。

「名目賃金」とは、何を指しますか。

  • A 受け取った金額を、そのまま見た賃金 正解

    金額をそのまま見た賃金のことです。

  • B 税や社会保険料を引いたあとの、手取りの金額

    手取りは、税や社会保険料を引いたあとの金額です。

  • C 物価で割って、買える量に直した賃金

    買える量に直したものは、実質賃金といいます。

  • D 会社が定めた、基本給だけの金額

    基本給だけを指す言葉ではありません。

受け取った金額を、そのまま見た賃金です。

知るお金の基本★★

名目賃金

  • 受け取った金額そのまま
  • 給与明細に並ぶ数字
  • 買える量は分からない

実質賃金

  • 物価で割った値
  • 買える量に直したもの
  • 生活の向きが分かる

「名目」という言葉は、前に「金額そのまま」という意味で出てきました。賃金でも同じです。給与明細に並ぶ数字は名目です。そこには、その金額で何が買えるかという情報は入っていません。手取りかどうかとも別の話で、税を引く前でも後でも、金額のまま見ていればそれは名目です。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

「実質賃金」は、どのようにして求めたものですか。

  • A 名目賃金を物価の水準で割って、買える量に直したもの 正解

    物価で割って、買える量に直したものです。

  • B 名目賃金から、税や社会保険料を引いたもの

    税や社会保険料を引いたものは、手取りです。

  • C 名目賃金に、ボーナスを足したもの

    ボーナスを足しても、金額のままでは名目です。

  • D 名目賃金を、勤務時間で割ったもの

    勤務時間で割ったものは、時間あたりの賃金です。

名目賃金を物価で割り、買える量に直したものです。

知るお金の基本★★★
名目賃金÷物価の水準実質賃金

割る、という一手間が入るだけです。名目賃金が3パーセント増え、物価が1パーセント上がったなら、実質賃金は約2パーセント増。名目が2パーセント増でも物価が3パーセント上がっていれば、実質は約1パーセント減です。生活が楽になったかどうかは、この実質のほうで決まります。ニュースで両方が並べて報じられるのは、そのためです。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

額面から税や社会保険料を引いた、実際に受け取る金額を__といいます。

  • A 手取り 正解

    実際に受け取る金額のことです。

  • B 額面

    額面は、引かれる前の金額のことです。

  • C 実質賃金

    実質賃金は、物価で割って買える量に直したものです。

  • D 賞与

    賞与は、いわゆるボーナスのことです。

税や社会保険料を引いたあとの金額が、手取りです。

知るお金の基本★★
  1. 額面(引かれる前)
  2. 税・社会保険料を引く
  3. 手取り(口座に入る額)

額面が30万円でも、税と社会保険料が引かれて口座に入るのは24万円ということがあります。この24万円が手取りです。手取りは生活に直結しますが、これも金額そのままなので名目の一種です。物価で割っていない以上、買える量までは分かりません。額面・手取り・実質は、それぞれ別の段の話です。

出典 国税庁「タックスアンサー」 / 2026年8月時点の情報

次の説明は、賃金の見方として正しいですか。

  • A 手取りが増えても、物価がそれ以上に上がっていれば、実質賃金は減っている 正解

    金額が増えても、買える量は減ることがあります。

  • B 手取りが増えれば、実質賃金も必ず増えている

    物価の上がり方しだいで、実質は減ることがあります。

  • C 手取りと実質賃金は、同じものを別の言い方で呼んでいる

    手取りは金額、実質は買える量です。別のものです。

  • D 実質賃金とは、手取りからさらに税を引いたものである

    実質賃金は、税ではなく物価で割って求めます。

手取りは金額、実質は買える量。別の段の話です。

知るお金の基本★★★
何を引く・割る分かること
額面何も引かない会社が払う金額
手取り税と社会保険料を引く口座に入る金額
実質賃金物価で割る買える量

手取りが増えたかどうかは「引かれたあとの金額」の話で、実質賃金が増えたかどうかは「その金額で何が買えるか」の話です。段が違うので、片方が増えてもう片方が減ることは普通に起こります。給与明細を見て安心する前に、同じ期間の物価を並べる。前の回から続いている、同じ一手です。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

わかる

仕組みや計算のしかたを確かめます。

実質賃金が増えたかどうかを確かめる手順を、正しい順に並べてください。

答え 名目賃金の増え方を確かめる → 同じ期間の物価の上がり方を確かめる → 差し引いて向きを見る

名目を確かめ、物価を確かめ、差し引いて向きを見ます。

わかるお金の基本★★★
  1. 名目賃金の増え方
  2. 同じ期間の物価の上がり方
  3. 差し引いて向きを見る

「同じ期間の」というところが要です。今年の賃上げ率と3年前の物価上昇率を比べても、意味のある差は出ません。期間をそろえて初めて、差し引きが成り立ちます。ここまでの回でくり返してきた「金額と値段を並べる」を、賃金という場面に当てはめたものです。手順が同じなら、別の場面でも使えます。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

それぞれの説明が、賃上げのニュースの読み方として正しいかどうかを判定してください。

  • A 賃上げ率が物価上昇率を下回っていれば、実質賃金は減っている 正解

    差がマイナスなら、実質賃金は減っています。

  • B 賃上げがあれば、生活は必ず楽になる

    物価の上がり方しだいで、楽にならないことがあります。

  • C 賃上げ率は、物価と比べなくても意味が分かる

    物価と比べて初めて、その数字の意味が決まります。

  • D 賃上げ率が高いほど、必ず実質賃金も増える

    率が高くても、物価がそれ以上なら実質は減ります。

物価上昇率を下回っていれば、実質は減っています。

わかるお金の基本★★★
物価との関係実質賃金
賃上げ > 物価上回った分だけ増える
賃上げ < 物価下回った分だけ減る
賃上げ = 物価差がない変わらない

賃上げ率は名目の数字です。5パーセントの賃上げでも、物価が6パーセント上がっていれば実質は減。1パーセントの賃上げでも、物価が動いていなければ実質は増です。数字の大小ではなく、物価との差で決まります。「大幅賃上げ」という見出しを見たら、同じ期間の物価上昇率を隣に置く。それだけで読み方が変わります。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

名目賃金が上がっているのに、実質賃金が下がることはありますか。

  • A ある。物価の上がり方が、賃金の上がり方を超えているとき 正解

    物価の上がり方が超えていれば、実質は下がります。

  • B ない。名目が上がれば、実質も必ず上がる

    名目が上がっても、実質は下がることがあります。

  • C ある。ただし、手取りが減ったときだけ

    手取りが増えていても、実質は下がりえます。

  • D ない。実質賃金は、物価とは関係がない

    実質賃金は、物価で割って求めるものです。

あります。物価の上がり方が超えているときです。

わかるお金の基本★★★
  • 名目賃金+2%
  • 物価+3%

差の約1%ぶん、実質賃金は減る

「賃金は増えているのに実質賃金は下がっている」というニュースは、この状態を指しています。矛盾ではなく、2つの数字が違うものを測っているだけです。名目は金額、実質は買える量。金額が増えても、値段がそれ以上に上がれば買える量は減る。何度も出てきた同じ形が、賃金の話でもそのまま当てはまります。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

見抜く

誤解しやすい点や、見落としがちなリスクを見抜きます。

賃金についての言葉と、その意味を対応させてください。

答え 額面 … 税や社会保険料を引く前の金額/手取り … 実際に口座へ入ってくる金額/実質賃金 … 物価で割って、買える量に直した値

額面・手取り・実質は、それぞれ別の段の話です。

見抜くお金の基本★★★★

賃金の3つの段

  • 額面(引かれる前の金額)
  • 手取り(引かれたあとの金額)
  • 実質賃金(買える量に直した値)

3つは順番に並んでいます。額面から税と社会保険料を引くと手取り、その金額を物価で割ると実質。前の2つは金額の話で、最後だけが買える量の話です。ニュースや会話でこの3つが混ざると、話が食い違います。どの段の話をしているのかを見分けられれば、賃金の議論はぐっと読みやすくなります。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

賃上げがあったのに生活が苦しくなったと感じるとき、何が起きている可能性が高いですか。

  • A 賃上げ率が、同じ期間の物価上昇率を下回っている 正解

    差がマイナスなら、買える量は減っています。

  • B 会社が、賃上げを実際には実施していなかった

    賃上げがあったことを前提にした問いです。

  • C 賃上げは、翌年からしか効かない仕組みになっている

    賃上げは、実施された月から効きます。

  • D 物価が上がると、賃金は自動的に下がる仕組みがある

    物価に連動して賃金が下がる仕組みはありません。

賃上げ率が、物価上昇率を下回っている可能性が高いです。

見抜くお金の基本★★★★

賃上げ率と、同じ期間の物価上昇率を並べる

給与明細が増えたから、生活も楽になったと考える

苦しさの正体は、たいていこの差です。賃上げ率3パーセント、物価上昇率4パーセントなら、実質は約1パーセント減。給与明細は増えているので「気のせいだろうか」と思ってしまいますが、感じ方のほうが正確です。差を確かめれば、実感に裏づけがつきます。裏づけがつくと、次に何をすべきかも考えやすくなります。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

名目の月給が30万円のとき、物価の水準が1年前の1.2倍になりました。この30万円は、1年前の何万円分にあたりますか。

答え 25万円

30 ÷ 1.2 = 25万円分です。

見抜くお金の基本★★★★
  • 30万円名目の月給
  • 1.2倍物価
  • 25万円分実質

給与明細の30万円は動いていません。それでも、1年前の感覚でいえば25万円分の買い物しかできません。差の5万円分が、物価に持っていかれた購買力です。名目のままでは、この5万円は見えません。物価で割る一手間を入れると、金額の裏側で何が起きているかが数字になって現れます。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

次の説明は、賃金の統計の見方として正しいですか。

  • A ボーナスや残業代の増減で、月ごとの賃金は大きく振れることがある 正解

    賞与や残業代によって、月ごとに大きく動きます。

  • B 賃金は毎月ほぼ一定なので、1か月分を見れば十分である

    1か月分では、振れと傾向を見分けられません。

  • C ボーナスは、賃金の統計には含まれていない

    賞与も、賃金の統計に含まれています。

  • D 残業代が減っても、賃金の合計は変わらない

    残業代が減れば、合計も減ります。

ボーナスや残業代で、月ごとに大きく振れます。

見抜くお金の基本★★★★
月ごとの賃金
  • 決まって支給される給与
  • 賞与などの特別な給与
  • 残業などの超過分

賞与が出る月は賃金が跳ね上がり、残業が減った月は下がります。1か月分だけを取り出して「賃金が増えた・減った」と判断すると、振れを傾向と取り違えます。物価のところで、生鮮食品を除いた指数を見たのと考え方は同じです。振れの大きい要素があるときは、期間を長めに取るか、要素を分けて見ます。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

ケースで考える

具体的な条件のもとで考えます。

Iさんの月給は、額面30万円から31万円に上がりました。同じ1年で、物価は4パーセント上がっています。

Iさんの実質的な賃金は、どうなりましたか。

  • A 名目は約3.3パーセント増だが、物価が4パーセント上がっているので、実質は減った 正解

    率にそろえると、物価の上がり方のほうが大きくなっています。

  • B 1万円増えたのだから、実質も増えた

    金額では増えていますが、率では物価に届いていません。

  • C 額面が増えているので、実質は変わらない

    物価が動いているので、実質は変わります。

  • D 物価が上がったぶん、来年の給料も自動的に4パーセント上がる

    物価に合わせて給料が上がる仕組みはありません。

約3.3パーセント増より4パーセント高が大きく、実質は減りました。

ケースお金の基本★★★★
  • 名目の増え方約+3.3%
  • 物価の上がり方+4%

率にそろえてから比べる

1万円という金額だけを見ると増えています。しかし率に直すと約3.3パーセントで、物価の4パーセントには届いていません。差し引き約0.7パーセント、買える量は減っています。金額ではなく率にそろえてから比べる。これをしないと、大きな金額の増加に安心して、差に気づけません。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

Jさんの勤め先で賃上げが発表されました。Jさんは、それが自分の生活にとってどういう意味を持つのかを確かめたいと考えています。

このときに確かめるべきことを、すべて選んでください。

答え 賃上げを、金額ではなく率で確かめる/同じ期間の物価上昇率を調べる/自分がよく買うものが、どれだけ上がったかを見る

率にそろえ、物価と比べ、自分のかごでも見ます。

ケースお金の基本★★★★

賃上げを受け取る3つ

  • 金額ではなく率で見る
  • 同じ期間の物価と比べる
  • 自分のかごでも見直す

3つとも、これまでの回でやってきたことです。金額を率に直し、同じ期間の物価と比べ、さらに自分のかごの中身で見直す。統計の物価で見て増えていても、自分がよく買うものが大きく上がっていれば、自分にとっては減っていることがあります。他人の賃上げ額は、自分の買える量を決めません。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

判断する

実際の場面で、何を確認すべきかを判断します。

「今年は3パーセントの賃上げです」と伝えられたとき、まず何をするのが適切ですか。

  • A 同じ期間の物価上昇率を調べて、差を出す 正解

    差を出して初めて、生活の向きが決まります。

  • B 3パーセントを月給の金額に直して、増えた額を確かめる

    金額に直しても、買える量までは分かりません。

  • C ほかの会社の賃上げ率と比べる

    他社との比較は、自分の買える量を決めません。

  • D 来年の賃上げ率がどうなるかを予想する

    予想の前に、いま起きていることを確かめます。

同じ期間の物価上昇率と並べて、差を出します。

判断お金の基本★★★★
賃上げ率と並べる同じ期間の物価上昇率が分かる実質賃金の向き

差を出すまでは、向きが決まらない

3パーセントという数字だけでは、生活がどちらへ動いたのかは分かりません。物価が2パーセントなら実質は約1パーセント増、4パーセントなら約1パーセント減です。差を出すまでは、喜ぶことも落ち込むこともできません。他社との比較や来年の予想は、そのあとの話になります。まず差を出す。この順番を固定します。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

この回で身につけた見方を、ひとことでいうと何になりますか。

  • A 賃金は額面・手取り・実質の3段で見て、生活の向きは実質で判断する 正解

    3段を区別し、生活の向きは実質で判断します。

  • B 賃金は、額面が増えていればそれでよい

    額面が増えても、買える量は減ることがあります。

  • C 賃金と物価は、それぞれ別に考えればよい

    賃金の意味は、物価と並べて初めて決まります。

  • D 実質賃金は難しいので、手取りだけを見ればよい

    手取りだけでは、買える量までは分かりません。

3段で見て、生活の向きは実質で判断します。

判断お金の基本★★★★★

賃上げ率と物価上昇率を並べて、差で判断する

額面や手取りの金額だけを見て判断する

額面は会社が払う金額、手取りは口座に入る金額、実質は買える量。話がかみ合わないときは、たいてい違う段の話をしています。生活が楽になったかどうかを決めるのは、いちばん奥にある実質です。そして実質を出すには、同じ期間の物価が要ります。次回は、ここまでの5回をまとめて、購買力を守るために何ができるのかを見ていきます。

出典 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 / 2026年8月時点の情報

読んだら、解いて確かめる

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