身内のものを引き継ぐのになぜお金がかかってしまうのか、確かに釈然としませんよね。このもっともなご質問に対し、ひとまず根拠をお示しするとしたら、「身内とはいえ他人の財産を自分のものにできるのは、相続という国の制度があるおかげ。だから国に対して一部を還元してくださいね」という理屈があるようです。でもこれではちょっと納得できないかもしれませんね。
とはいえ、今の世の中において、とても大きな意味があるのも事実。それは、相続税によって、富の再分配が行われ、格差を少しでも和らげてくれる可能性があるからです。
一部の富裕層と多数の貧困世帯に二極化する世界の多くの国々と比べれば、日本の格差はまだマシだといえるのかもしれませんが、それでも格差の拡大は起こりつつあり、決して無視できる問題ではありません。資本主義自由経済社会である以上、ほっておけば格差が拡大していくことは、宿命なのです。
過去数百年以上をさかのぼって調査したフランスの経済学者・ピケティによれば、資産から生み出される収益は、時代によって多少の変化はあるものの、過去数百年以上にわたって年平均4~5%で推移しており、将来もこの傾向は続くだろうと述べています。
例えば、資産ゼロのAさんと、年5%の収益を生み出す1億円の資産を保有しているBさんがいるとします。Aさんは仕事をしており年収は500万円で、Bさんは仕事をしていません。年間の生活費の支出はともに500万円だとします。Aさんは、稼いだ分だけすべて使ってしまうので、資産は1年後もゼロのままです。一方でBさんは、資産から年間500万円(1億円×5%)が生み出されるので、遊んでいても生活に困りませんし、何か仕事をすればその分だけますます増えていきますよね。資産があるだけで、富の格差はどんどん拡大していくのです。
もちろん努力を重ねて一代で資産を築き上げた人もいますが、資産家の多くは世襲によるというのも事実です。相続によって手に入る資産は、働かずとも得られる「不労所得」。これに一定の相続税をかけなければ、お金持ちの家庭で育った人ばかりがお金持ちになる社会になってしまいます。相続税によって特定の人物に資産が集中するのを防ぎ、格差の小さい社会に近づけていこうという狙いがあるのです。
しかも、今後はますます相続財産に対する課税が強化されていくかもしれません。なぜなら、日本では高齢化と現役世代の減少に歯止めがかからず、税収をはるかに上回る支出が常態化しており、すでに1,000兆円を超えている借金も増える一方です。それに対して消費増税は政治的に難しく、所得税や社会保険料の負担増も限界にきており、あとは資産に対する課税を強化するくらいしか税金をとれるところがなくなってきているからです。
本当は、たくさん稼いでいる人、資産をたくさん持っている人が、できる範囲で寄付などを通じて世の中のお金を必要とされているところにお金をまわしていくという行動が当たり前になっていけば、もっと世の中が安定し、豊かになっていくと思うのですが。強制的にとられる相続税としてではなく、自らの意志を込めたお金として。FPこそが、このような流れを作っていかなければと思っています。
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