マイホームを検討中の人なら、住宅ローンについても情報収集を始めているでしょう。その中で、必ずといっていいほど出てくる言葉が「団体信用生命保険」です。
普段の生活ではあまり聞かない言葉かもしれませんが、住宅ローンを組む際には非常に重要になるキーワードの1つでもあるので、メリット・デメリットも含めて理解しましょう。
目次
団体信用生命保険とは
万が一のことがあった場合、住宅ローンの返済が免除される
団体信用生命保険とは
のことです。略称である「団信」という言葉もよく使われるので、覚えておきましょう。
住宅ローンの契約時に加入が必須になることも
つまり、それ以降の住宅ローンの返済は一切行う必要がありません。これにより、遺された家族は住宅ローンの返済を行うことなく、住宅ローンの対象となっていた物件(自宅の一戸建てやマンション)に住み続けられます。
また、金融機関にとっても、債務者の死亡により返済が滞るリスクを負わずに済むため、住宅ローンの融資実行の際には、団体信用生命保険への加入を義務付けていることが多いです。
団体信用生命保険のメリット
万が一のことがあっても、家族の生活が保障される
住宅ローンの債務者となるのは、大半の場合、その家での稼ぎ頭になっている人です。仮に、その人に万が一のことがあった場合、遺された家族の生活費をどうやって捻出するかが非常に重要な問題になります。
例えば「夫が債務者、妻は専業主婦、幼稚園・小学生の子どもが2人」など、生活費を債務者だけの収入に頼っていた場合、債務者に万が一のことがあったら、一気に生活が苦しくなってしまうでしょう。団体信用生命保険がなければ、最終的には家を手放す決断をしないといけないかもしれません。
一方「夫が債務者、妻は正社員、子どもは大学4年生と社会人」など、すでに教育費がかかる時期を終えていて、生活費を稼得する手段が債務者だけの収入でなかった場合は、先ほどのケースに比べると、多少は楽かもしれません。それでも、住宅ローンの返済が免除されるのであれば、手元に残るお金は増えるはずです。
団体信用生命保険のデメリット
一方、団体信用生命保険のデメリットとして
- 通常の生命保険とは違い、所得控除は受けられない
- 保障内容は薄い
- 健康状態次第では加入できないことも
の3つが挙げられます。
通常の生命保険とは違い、所得控除は受けられない
通常の生命保険の場合、支払った保険料に応じて生命保険料控除が受けられます。これは所得控除の一種です。つまり、一定額を所得税の計算にあたって差し引けるので、結果として所得税が安くなります。
団体信用生命保険の場合、生命保険控除は受けられません。
住宅ローン控除は受けられる
なお、団体信用生命保険の保険料は、住宅ローン金利への上乗せという形で支払います。住宅ローンの支払いに関しても、住宅ローン減税により一定額が所得税額から控除できるので、結果的に税金が安くなるのです。
参照:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
利用する控除は違いますが、結果として税金を安くする効果はあることに変わりありません。しかし、生命保険料控除は保険料を払っている限りは毎年利用できるのに対し、住宅ローン減税は一定期間(10年~15年)しか利用できません。
保障内容は薄い
通常の団体信用生命保険の場合、死亡または高度障害状態に陥った場合のみ、それ以降の住宅ローンの返済が免除されます。なお、高度障害状態とは、住宅ローンを提供している金融機関によって扱いに多少の差はありますが、一言でまとめると「再び仕事をできるようになる見込みが薄い、ほぼない」状態です。
住宅金融支援機構の場合は、高度障害状態を以下のいずれかに当てはまる状態になった時としています。
- 両眼の視力を全く永久に失ったもの
- 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの(注1)
- 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
- 胸腹部臓器に著しい傷害を残し、終身常に介護を要するもの(注2)
- 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
- 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
(注1) 「そしゃくの機能を全く永久に失ったもの」とは、流動食以外のものは摂取できない状態で、その回復の見込みのない場合をいいます。
(注2) 「常に介護を要するもの」とは、食物の摂取、排便・排尿・その後始末、及び衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態をいいます。
出典:債務弁済される場合、債務弁済されない場合:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
保障範囲を広げることもできる
実際は、高度障害状態に至るほどでなくても、長期間の治療が必要で、住宅ローンを組んだ当初のように働くことができなくなる病気やケガをする恐れは、誰にだってあるはずです。そうなったときに、住宅ローンの返済で困ることのないよう、金融機関によっては、より保障対象を広げた団体信用生命保険を提供しています。いくつか例をみてみましょう。
11疾病団信
提供している主な金融機関 | 千葉銀行、北洋銀行、中国銀行、auじぶん銀行、西日本シティ銀行 |
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対象となる疾病 | 糖尿病、高血圧性疾患、腎疾患(慢性腎不全など)、肝疾患(ウイルス肝炎含む)、慢性膵炎、脳血管疾患(脳梗塞、くも膜下出血など)、大動脈瘤および解離、上皮内新生物、悪性黒色腫以外の皮膚がん |
通常の団信のように、死亡・高度障害状態になった場合に加え
- 余命6カ月以内と判断された場合
- がんと診断された場合
- 脳血管疾患など10種類の病気で180日以上継続して入院した場合
は、住宅ローン残高がゼロ円になります。
全疾病保障
提供している主な金融機関 | 住信SBIネット銀行 |
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対象となる疾病 | すべての病気、ケガなど |
病気やケガで働けなくなった場合は、一定期間は月々のローン返済が免除されます。また、働けない状態が一定期間続いたら、それ以降のローン返済が免除になるという、他ではあまり見ないタイプの団体信用生命保険です。
なお、病気やケガの種類によって、どれだけ働けない期間が続いたら住宅ローンの残高がゼロになるのかは、扱いに差があるので注意しましょう。
特定疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞) | 12カ月 |
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糖尿病、肝硬変、高血圧症、慢性腎不全、慢性膵炎 | 12カ月 |
その他の病気、ケガ | 24カ月 |
参照:フラット35 – 全疾病保障|NEOBANK 住信SBIネット銀行
保険料負担は大きい
民間銀行が独自に販売している住宅ローンの場合、融資実行の条件として「団体信用生命保険への加入」が必須となっていることがほとんどです。
表向きは「保証料ゼロ円」となっていますが、実際は団体信用生命保険料に充当する金額も踏まえて金利が設定されています。
一方、住宅金融支援機構が民間銀行と提携して運営している住宅ローン・フラット35の場合は、健康上の理由で団体信用生命保険への加入ができない場合でも利用できます。
その場合は、通常適用される金利より0.2%低い金利で貸付が行われる仕組みです。
総返済額はどれぐらい違う?
以下の条件でフラット35を利用する場合、団体信用生命保険に入るのと入らないのとで、総返済額はどれだけ違うのか調べました。
- 借入金額:3,000万円
- 返済期間:30年
- ボーナス払い:無
- 返済方法:元利均等返済
- 融資金利:年1.290%(2021年1月)※団体信用生命保険に加入しない場合は年1.090%
- 金利引下げ:無
計算結果は以下の通りです。
金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
1.29 % | 10.1 万円 | 3,620 万円 |
1.09 % | 9.8 万円 | 3,519 万円 |
総返済額で考えると、30年間で101万円の差が生じます。実際は諸経費も含まれるので、100%保険料として充当されるとは限りませんが、それでも、かなりまとまった金額を保険料として払わなくてはいけないのは事実です。
健康状態次第では加入できないことも
団体信用生命保険も、生命保険の1つである以上、加入にあたっては保険会社による審査が行われます。そのため、健康状態次第では加入できないこともあるので注意しましょう。仮に、団体信用生命保険に加入できなかった場合は
- 加入条件が緩和された団体信用生命保険(ワイド団信に加入する)
- フラット35を団体信用生命保険がない状態で利用する
などの方法が考えられます。このあたりは、別の記事でまとめたので併せてお読みください。
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