妊娠中の住宅ローンは難易度アップ。申し込む際の3つの注意点

一昔前であれば、結婚している夫婦が住宅ローンを組む場合、夫が契約者になることが圧倒的に多かったでしょう。これは、夫の年収が高い場合が多く、子どもができても働きに出やすい環境にあることも関係しているはずです。

しかし、現在は家族の在り方も多様化しています。夫婦のうち、妻の年収の方が高かったり、夫が独立起業したばかりだったりした場合は、妻の単独名義で住宅ローンを組んだり、夫婦の収入を合算し、共同名義で住宅ローンを組むことだってあり得るのです。

それ自体に全く問題はないので、お互いが納得する形をとるのが一番ですが、妻が住宅ローンの契約者となる場合、一点注意すべきことがあります。それは「妊娠中、育休・産休中はは住宅ローンを組むのが難しい」ということです。

可能な限りは、子どもができる前に住宅ローンを契約し、融資実行までこぎつけておくのがベターですが、そうもいかない場合の注意点について解説しましょう。

妊娠中に住宅ローンの審査に通るのが厳しい理由は?

育休後に復帰できるかはわからない

本題に入る前に、そもそもなぜ妊娠中に住宅ローンの審査を受けても通過しにくいのか、理由を考えてみましょう。まず挙げられるのは「育休後に復帰できるかはわからない」ということです。

本来あってはならないことですが、育休を取得した社員が育休復帰後に減給・降格されるなどのマタハラ(マタニティハラスメント)に遭い、やむなく会社を辞めざるを得ないことだってあり得ます。

また、マタハラと言われる扱いはされていないものの、子育てと仕事の両立が精神的・肉体的に困難になり、やむなく会社を辞めてしまうことだってあり得るのです。

つまり、育休を取得している人が期間終了後に職場に100%復帰できるとは限りません。

金融機関は、住宅ローンの審査においては「返済を続けていけるかどうか」を重視しています。原因が何であろうが、子育てと仕事の両立ができずに仕事をあきらめてしまった場合、その時点で収入は絶たれてしまう以上、金融機関の側としてもシビアにならざるを得ないの実情です。

医学上リスクは高い

日本の医療水準は、世界的に見てもかなり高水準です。それでも、出産が原因で亡くなってしまう人は確かに存在します。日本産婦人科医会の報告によれば、2010年から2016年までの年齢別の妊産婦死亡数(対10万人) は以下の通りでした。

19歳以下 0.8人
20歳 ~ 24歳 2.5人
25歳 ~ 29歳 2.8人
30歳 ~ 34歳 4.3人
35歳 ~ 39歳 7.0人
40歳 ~ 11.8人

出典:妊産婦死亡報告事業 – 日本産婦人科医会

つまり、ごくわずかではあるものの、妊娠中・出産時に亡くなってしまう妊婦は存在するのです。また、亡くなってしまうまではいかないものの、妊娠・出産がきっかけで病気になり、長期的に仕事もままならないほどになってしまう人も存在するでしょう。

妊娠・出産自体が医学的にリスクの高いことである以上、住宅ローンの契約においてはほぼ必須となる団体信用生命保険に加入できないことも十分に考えられます。

注意点1.「産休・育休中でも申し込める」金融機関を選ぶ

金融機関によって扱いが様々

妊娠中、産休・育休中の人の住宅ローンの申し込みに関しては、金融機関によっても対応が割れています。考えられるパターンとしては

  • フラット35(及びその関連商品)であれば申し込み可能としている
  • 収入合算、ペアローンの場合であれば申し込み可能としている
  • 源泉徴収票などの証明書を出すことで申し込み可能としている
  • 「将来にわたり、安定継続した収入がある」と見込まれるなら申し込み可能としている

などがあります。たとえば、auじぶん銀行は

「将来にわたり、安定継続した収入がある」と見込まれるなら申し込み可能としている

というパターンのようです。

出典:【住宅ローン】育児休暇中です。住宅ローンは利用できますか。

実際のところは、産休・育休前の本人や配偶者の収入や年齢、金融機関の担当者の判断に左右されますが「全く方法がないわけではない」というのが結論です。

不動産会社の担当者にも相談し、いくつか申し込めそうな金融機関をピックアップしてもらうといいでしょう。

注意点2.勤務先から育児休業証明書を入手しておく

育児休業証明書とは

育児休業証明書とは、自身の育児休業の期間を証明するための書類です。実際は、自分の居住する地方自治体が定める様式に沿って、事業主(会社)に必要事項を記入してもらう形で作成します。

妊娠中の人や、産休・育休中の人が住宅ローンの契約をする場合はもちろん、保育所への入園を希望する際にも必要になる書類なので、早い段階で入手しておくといいでしょう。

当初の予定より育児休業が延びたら?

妊娠中、産休・育休中に住宅ローンを組む場合、他にも注意すべきことがあります。仮に、産休・育休が当初会社とすり合わせをしていた期間よりも延びてしまう事情があった場合、住宅ローンの審査に通り、融資が実行されたとしても、返済が一気に苦しくなる可能性があります。

特に

  • 年子に当たる子どもを授かった
  • 保育園に入ることができず、やむなく育休を延長する羽目になった

などの予期しない出来事があった場合、注意が必要です。金融機関の担当者にすぐに相談し、対応を仰ぎましょう。なお、育休の期間が延びた以外の原因で、住宅ローンの支払ができそうにない場合も、ひとまず金融機関の担当者に相談するのを忘れないようにしてください。

住宅ローンが払えないと何が起こる?解決策も併せて解説

注意点3.団体信用生命保険に加入できない場合も見据える

団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険とは、保険商品の一種です。あらかじめ団体信用生命保険に加入しておくことで、住宅ローンの契約者が返済中に死亡したり、高度障害状態に陥ったりした場合は、それ以降の返済が免除されます。

契約者にとっては、万が一のことがあったとしても家族が住む家を失わなくてすむ上に、金融機関にとっても、確実に住宅ローンの融資額を回収できるため、双方にとってメリットのある保険です。

民間の金融機関が単独で提供している住宅ローンの場合、団体信用生命保険への加入が融資実行の条件になっていることがほとんどです。そして、団体信用生命保険は保険商品の1つである以上、健康状態に問題がないと入れないことがあり得ます。

妊娠・出産は病気ではないものの、医学上のリスクは高いことに変わりません。そのため、団体信用生命保険に加入できないことも考えられるため、住宅ローンを契約するハードルもさらに上がってしまうのです。

フラット35と死亡保険の組み合わせも選択肢に

一方、住宅金融支援機構が民間の金融機関に委託して提供する住宅ローンの「フラット35」の場合、団体信用生命保険への加入は必須ではありません。

自社運営の住宅ローンについては、妊娠中、育休・産休中の契約は不可としている金融機関であっても、フラット35であれば可能としているケースも多くあります。

ただし、団体信用生命保険に加入せずに住宅ローンを契約するとなると、万が一のことがあった場合、遺族(主に配偶者)が住宅ローンの返済をする必要が出てくるので、注意が必要です。

妊娠中、育休・産休中でも加入できる生命保険を選び、万が一のことがあった場合は、住宅ローンでの借入額をまかなえるほどの死亡保険金が受け取れるようにしておくと、遺族の負担が抑えられるでしょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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