日本で初めてクレジットカードが発行されたのは、1960年代のことです。当時は会社経営者、医師・弁護士などの高度専門職、大手企業の社員など、経済的に余裕のあるごく一部の人だけに発行されるものであり、学生が持つことは到底想定されていませんでした。
今ではだいぶ事情が異なり、大学生であってもクレジットカードを持っているのは決してめずらしくありません。本人もしくは親権者である家族に大きな問題がなければ、まず問題なく持てるでしょう。
クレジットカードを使うこと自体は、防犯面・衛生面から優れている、ポイントやマイルでの還元が受けられるなど、様々なメリットがあります。
しかし、クレジットカードはあくまで「一度、クレジットカード会社に立て替えてもらい、あとで代金を払う」という性質を有している以上、現金を使うのとは全く事情が違います。
そこで今回の記事では、これからクレジットカードを使うことになる大学・短期大学・専門学校の新入生に向けて、クレジットカードのメリットと使う上での注意点を解説しましょう。
クレジットカードを持っている大学生はどのくらい?
5割超程度
そもそも、大学生のうち、クレジットカードを持っている人はどのくらいいるのでしょうか。クレジットカード会社で校正する業界団体の1つ、日本クレジット協会が行った「大学生に対するクレジットカードに関するアンケート(平成29年度)」の結果を用いて検証してみましょう。
出典:一般社団法人日本クレジット協会「大学生に対するクレジットカードに関するアンケート(平成29年度)」結果報告書
同調査によれば、大学生のクレジットカード所持率は53.6%とのことでした。
なお、学年別の所持率ですが、1年生の時点では43.3%であるのに対し、4年生になると61.9%にも跳ね上がります。就職活動や卒業旅行でまとまった出費が必要になるなど、上位学年ならではの事情が背景にあるのでしょう。
また、大学3年生以上にもなると基本的には20歳を超えているので、保護者の承諾がなくてもクレジットカードに申し込むことが可能となることも、理由の1つとして考えられます。
「クレジットカードを持つ」派の理由
なお、同調査ではクレジットカードを持つことにした理由・持たない理由についても調査をしています。まずは「クレジットカードを持つ」派の理由のうち、選択者数が多かったもの(上位5つ)を紹介しましょう。なお、()内は回答数です。
- ネットショップでの決済が簡単(91)
- 現金がなくても買い物できる(76)
- 海外旅行の際に必要(55)
- ポイント・割引制度がお得(40)
- その他(20)
「クレジットカードを持たない」派の理由
一方「クレジットカードを持たない」派の理由についても、選択者数が多かったもの(上位5つ)を紹介しましょう。
- 現金や他の電子マネーで支払う(79)
- 必要以上に使いそう(46)
- 後払いは借金だから(45)
- デビットカードで支払う(43)
- 持つ機会がなかった(33)
大学生がクレジットカードを使うメリット
ネットショップでの買い物がしやすい
大学生がクレジットカードを持つこと自体は、まったくもって珍しくないというのが現状です。そこで、大学生がクレジットカードを持つメリットについて考えてみましょう。
まず考えられるのが「ネットショップでの買い物がしやすい」ことです。Amazon.co.jpや楽天市場など、大手ネットショップでは、幅広い選択肢から商品が選べ、店頭で買うよりも安い場合が多いため、何かと重宝するでしょう。
もちろん、コンビニで払い込んだり、指定された銀行口座に振り込んだりなど、クレジットカードを用いなくても買い物ができることがほとんどですが
- 先方が入金確認をしないと商品が発送されない
- 決済手数料がかかる
など、決して使い勝手がいいとは言えないのも事実です。
ポイント、マイルの還元が受けられる
現在、クレジットカードは利用額に応じてポイントやマイルの還元が受けられるものが主流になっています。
例えば、10,000円の買い物をする場合を考えてみましょう。これを現金で支払った場合、ポイントやマイルは基本的には貯まりません。ただし、共通ポイントの加盟店であれば、店舗の利用によるポイントが付与されます。
一方、これをポイント還元率1%のクレジットカードで支払った場合、100円( = 10,000円 × 1% )分のポイントが受け取れます。これを割引ととらえると、10,000円分の買い物が9,900円でできるという意味になるのです。
もちろん、ポイントやマイルが貯まるからと言って、度が過ぎた無駄遣いをするのは考え物です。
商業施設での割引、優待が受けられる
クレジットカードを「どんな会社が発行しているか」で大きく分けると、以下の2つに分かれます。
- プロパーカード :クレジットカードの国際ブランド(決済システム)を運営する会社、もしくはその国における重要な戦略パートナーとして位置づけられているクレジットカード会社が発行するクレジットカード。
- 提携カード :クレジットカード会社が外部の企業(小売、航空、鉄道などが中心)と提携して発行するクレジットカード。様々な優待策を設けることで、外部の企業が提供するサービスの利用を促進することを主な目的として発行される。
そして、提携カードによっては、様々な商業施設での優待を受けられることがあります。
例えば、JR東日本系列のクレジットカード会社・ビューカードが発行するルミネカードであれば、同じくJR東日本系列の商業施設・ルミネでの買い物が常に5%オフになります。年に数回、会員に向け「10%オフ(ルミネでの買い物が10%オフになる)」のキャンペーンも行っているので、タイミングを合わせればかなりお得に買い物ができるはずです。
家計が一元管理できる
クレジットカードで買い物をすると、そのデータは全て利用明細として記録されます。「自分が一体いくらお金を使っているのか」を知りたければ、利用明細をチェックすれば一目瞭然です。現金で支払いをし、形式がバラバラのレシートを整理して記録するよりはよほど簡単でしょう。
防犯上、衛生上優れている
現金の場合、落としたり、盗難にあったりした場合は、まず戻ってこないと考えた方がいいでしょう。
そのような意味で、防犯上は現金よりクレジットカードの方が優れているでしょう。
また、近年クローズアップされているのが、衛生面でも現金よりクレジットカードの方が優れているという点です。現金はたくさんの人の手を経て自分のところに来るという性質上、どうしても雑菌やウイルスが付着するリスクは高くなります。
2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が流行したことに伴い、厚生労働省は感染拡大防止を目的とした「新しい生活様式」を打ち出しました。その中でも、接触機会を減らすための1つの方策として、クレジットカードを中心としたキャッシュレス決済の利用が提唱されています。
海外旅行保険が付帯している
日本人が海外に旅行・留学などの理由で渡航した場合、一部の例外を除いては、現地の公的医療保険には入れません。そのため、仮にケガや病気をした場合は、医療費は全額自己負担となります。渡航先の国によっては、日本では考えられないほど医療費が高いことに注意が必要です。
もちろん、事前にWebや保険代理店で契約したり、出発当日、空港のカウンターで契約したりすることもできますが、海外旅行保険が付帯しているクレジットカードを利用すれば、そのような手間が省けるので便利です。
例えば、日本全国でファッションビルを運営する丸井のハウスカードであるエポスカードの場合、以下の内容の海外旅行保険が自動付帯しています。
保険の種類 | 保険金額 |
---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 最高500万円 |
傷害治療費用 | 200万円(1事故の限度額) |
疾病治療費用 | 270万円(1疾病の限度額) |
賠償責任(免責なし) | 2000万円(1事故の限度額) |
救援者費用 | 100万円(1旅行・保険期間中の限度額) |
携行品損害(免責3,000円) | 20万円(1旅行・保険期間中の限度額) |
参照:クレジットカードは入会金・年会費永年無料のエポスカード
ETCカードを持てる
今、住んでいたり、これから進学したりする地域によっては、電車やバスの便が悪く、車での移動が前提になることも十分に考えられます。高速道路などの有料道路を通行する場合に備え、車にもETC車載器を搭載した方がいいでしょう。もちろん、ETCゲートを通過して料金を支払うためには、あらかじめETC車載器にETCカードを入れておかないといけません。
つまり、ETCカードを手に入れるためには、まずはクレジットカードを作るところから始めないといけないことに注意が必要です。
将来に向けてクレヒスを積み上げられる
クレジットカードを使っていくと、クレヒスが積みあがっていきます。クレヒスとは「クレジットヒストリー」の略で、以下の情報を総称する言葉として用いられています。
- クレジットカードやローンなどの契約を行った際の個人情報
- クレジットカードやローンの契約の事実、支払いの状況(延滞等を含む)
- 携帯電話端末を分割で購入した際の支払い状況
クレジットカードをはじめとした「お金の貸し借りを前提とする取引」において、コンスタントに利用し、期限通りに返済することを繰り返していると、良いクレヒスが積みあがっていきます。
学生時代からクレジットカードを使い、期限通りに返済していけば、着実にクレヒスは積みあがっていきます。将来はマイホームが欲しいと思っていたり、ゴールドやプラチナなど、上位ステータス(会員ランク)のクレジットカードを手に入れたいと思っていたりするなら、そこは意識したいところです。
大学生がクレジットカードを使う際の注意点
あくまで借金であることをわきまえる
大学生がクレジットカードを使うこと自体は、何ら問題はありません。しかし、クレジットカードは
- 会員が加盟店で買い物した分を一度クレジットカード会社が立て替えて支払う
- 一定期間における利用額を集計し、それに基づき後日、クレジットカード会社から会員に対し請求が行われる
- 定められた引落日になると、支払元として指定された銀行口座から請求額が引き落とされる
という流れで支払いが進んでいく「後払い」を前提として決済手段です。
延滞・滞納は厳禁
仮に、所定の引落日にクレジットカードの支払ができなかったら、それは延滞したことになります。1日の遅れであっても、クレジットカード会社の社内では記録されているため、度重なると更新ができなくなる恐れがあることに注意は必要です。
また、長期(目安は61日)以上の滞納をしてしまうと、個人信用情報に異動の登録がなされます。
キャッシングは海外に行く時を除き使わない
クレジットカードを利用してATMでお金を借り入れることをキャッシングと言います。
例外として、海外で現地通貨の現金が必要になったとき、ATMでキャッシングをすることで現金を手に入れるのは、決して悪いことではありません。しかし、日本に帰国後すぐに返済しないと、利息が膨れ上がってしまうので注意しましょう。
他人には絶対に貸さない
クレジットカードは「クレジットカード会社が申し込んできた人の支払能力を審査し、基準を満たしていると判断した人に対し貸与するもの」です。つまり、本来は「クレジットカードの券面に記載された名前の本人」が使うことを前提としており、本人以外の人が利用するのはれっきとした利用規約違反になります。
また、他人に貸して使い込まれたとしても、そのことによって被った損害について、補償を受けることは一切できません。
常に利用状況をチェックする癖をつける
クレジットカードを使いたくない、苦手という人が挙げる理由の1つの「お金を使っているという実感がわきにくく、浪費につながる」ことがあります。確かに、その場で現金のやり取りをするわけでなく、また、代金は後日請求であるため、意識していないと使いすぎてしまうきらいがあるのは事実です。
また、この癖をつけておくと、普段とは違う動きがあった場合にいち早く気づき、不正利用を疑って迅速な対応ができるようになります。仮にクレジットカードが不正利用された場合は補償が受けられますが、補償を受けるためには、一定期間内(60日か90日の場合が多い)に届け出ることが必要になります。しかし、一定期間内に届け出るためには、情報をこまめにチェックしていないと難しいのも事実だからです。
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