ネットワークビジネスの誘いには要注意。リスクと勧誘された場合の対処法

2020年の春頃から新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことで、経済的に困難を抱える学生、非正規労働者が増えています。また、正社員であったとしても、飲食・観光・小売業に分類される職場に勤務していた場合は、給料の大幅カットを余儀なくされるのも珍しくありません。

このように、経済的に不安を抱えている人が増えるに伴い「必ずもうかるから」と言葉巧みに問題のある副業に誘われるというトラブルも散見されます。ネットワークビジネスへの勧誘もその1つです。

今回は

  • ネットワークビジネスが抱えるリスク
  • 勧誘された場合の対応

について、考えてみましょう。

ネットワークビジネスとは

特定商取引法上の定義

ネットワークビジネス(マルチ商法)とは、口コミによって商品を広げていく仕組み(マルチ・レベル・マーケティング)という仕組みを用いた販売方法の1つです。

日本語での正式名称は「連鎖販売取引」と言い、特定商取引法においては、以下の4つを満たすものとして規定されています。

  • 物品の販売(または役務の提供など)の事業であって
  • 再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
  • 特定利益が得られると誘引し
  • 特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

出典:連鎖販売取引|特定商取引法ガイド

よりかみ砕いて説明すると

  • 会員になれば、〇〇の商品を2割引で購入し、他人に転売できる
  • 自分が勧誘した人が会員になれば、1人につき1万円の紹介料を受け取れる

などの勧誘をし、なおかつ、ビジネスを行うために費用(特定負担)が発生するものを指します。

違法ではないもの注意が必要

ネットワークビジネスと混同されがちなものに、ネズミ講があります。

これは、一般的に製品・商品のやり取りを行わず、金銭の配当のみを目的とした組織のことで、勧誘できる人がいなくなればいつかは終わるのが大きな特徴です。

なお、法律(無限連鎖講の防止に関する法律)で違法と決められています。

参照:連鎖販売取引|特定商取引法ガイド

一方、ネットワークビジネス自体は、違法ではありませんので、自分で内容を判断し、ビジネスとして取り組む分には問題ありません。

しかし、詳しくは後述しますが

  • 勧誘の仕方など、法律による厳しい規制が設けられており、理解しないで取り組むと法を犯すことになる
  • ネットワークビジネス自体のイメージがあまりよくないため、人間関係のトラブルのきっかけになりやすい

など、何かと問題が多いのも事実です。

ネットワークビジネスへの誘いを見極めるポイント

なお、ネットワークビジネスの勧誘をしてくる人に比較的多くみられる行動の特徴があります。

以下のいずれかに当てはまるようなら「もしかして、ネットワークビジネス?」と警戒した方がいいでしょう。

SNSの投稿をチェックする

友人・知人がTwitter、Instagram、FacebookなどのSNSのアカウントを持っており、投稿をしているなら、過去の投稿と現在の投稿を見比べてみましょう。

それまでは「〇〇に行った」「■■を食べた」などの、日常の何気ない出来事を投稿していただけだったのに、急に

  • 頻繁にセミナーに行った旨の投稿をしている
  • 「感謝」「最高の仲間」などの言葉を多用した、やたらとポジティブな内容の投稿をする

など、明らかな変化があったら注意が必要です。

ネットワークビジネスの会社は、洗脳をするための手段としてセミナー・集会を重要視しているので、このような場に頻繁に足を運んでいることが考えられるためです。

熱心にセミナーの誘いをしてくる

本来、ネットワークビジネスの勧誘をする際は「これからネットワークビジネスの勧誘をする」ということを明らかにしなくてはいけません。

しかし、実際はネットワークビジネスであることを隠した勧誘が横行しています。その隠れ蓑として使われているのも、やはりセミナーです。

  • 人生の成功者になる方法
  • 子育て中のママ・パパのためのセミナー
  • 経済的不安を1年で解決する秘訣
  • 夢をかなえる方法

など、様々な名称がついていますが、短期間に頻繁に誘われるようであれば、ネットワークビジネスが背景にあるセミナーの可能性が高いので、注意しましょう。

疎遠だったにも関わらずいきなり連絡してくる

近年はSNSが発展しているため、直接連絡先を交換しなくても、昔の知り合いと連絡を撮ることができてしまいます。もちろん、その大半は「懐かしいな、連絡してみるか」といった、まったく悪意のないものでしょう。

しかし、中にはネットワークビジネスへの勧誘目的で近づいてくることもあるので、注意が必要です。

特に、中学・高校の同級生で、顔見知り程度の中だったのにいきなり連絡してきた場合は、警戒しましょう。
マッチングアプリにも要注意

また、近年流行しているマッチングアプリ(結婚相手・恋人候補となる異性・同性を見つけるためのサービスを提供するアプリ)も、ネットワークビジネスへの勧誘に使われているのが実情です。

マッチングし、いざ実際に会った時に、ネットワークビジネスの勧誘を始めるというのは、珍しくありません。

「付き合いたい、楽しく過ごしたい」という純粋な気持ちではなかったとしたら、寂しく感じてしまいますが「こういう人のなのか」と割り切るしかありません。

現状を聞いた後「一緒に成功しよう」と言い出す

ネットワークビジネスへの勧誘の手法として広く用いられているのが「現状の不満についてヒアリングした後に、その不満を打開する策としてネットワークビジネスへの勧誘を行う」方法です。

友人・知人と会ったときに「最近、不満なことはない?」と話題を振られ、その後「最近、すごく良いセミナーに行ったの」という話をしてきたのであれば、かなりの確率でネットワークビジネスにのめり込んでいます。

うっかり乗ってしまうと、そのままセミナーに連れていかれてしまうので、気を付けてください。

ネットワークビジネスのリスク

対外的な印象はよくない

ネットワークビジネスに勧誘されたら警戒すべきなのは、そもそもネットワークビジネス自体がリスクの大きいビジネスであるためです。

リスクの内容にも色々ありますが、1つ指摘できるのは「対外的な印象はよくない」ことでしょう。

ネットワークビジネスへの勧誘、実際にビジネスとして取り組んだ時の体験談は、SNSやインターネット上に多く掲載されていますが、ポジティブなものはごく少数です。

ほとんどがネガティブなもので絞められていることからもわかるように、決して対外的な印象はよくありません。

ある程度の初期投資が必要となる

そもそも、なぜここまで対外的な印象が悪いのかを考えてみましょう。

ネットワークビジネスは「自社商品を割引価格で買い入れ、それを人に売る」ことをベースにしています。そのため、売るための商品を仕入れるだけの初期投資をしなくてはいけません。

ある程度まとまったお金が必要になりますが、そのお金を工面するために、消費者金融のカードローンを使う人までいます。それでも、商品を売って回収できればまだ良いものの、思うように売ることができず、大量の在庫を抱えて立ち行かなくなる人は、決して少なくありません。

経済的に豊かになるために始めたはずのネットワークビジネスで、かえって経済的に困窮してしまう事態に陥るのです。

モラル、法律を守らない勧誘が横行している

ネットワークビジネスの勧誘においては、特定商取引法により厳しい規制が設けられています。

例えば

  • 第一声で氏名、ネットワークビジネスの勧誘をする旨、商品・サービスの種類を適切に明治する
  • 実際よりも優良であると思わせる広告をしてはいけない
  • 勧誘時に事実と異なる内容を伝えてはいけない
  • 勧誘時には不都合な事実も伝えなくてはいけない
  • 勧誘の場から去りたいと言った場合は帰らせなくてはいけない
  • 一度断った人の再勧誘は禁止
  • 所定の事項が盛り込まれた契約書面を交付しなくてはいけない

などの点を守らなくてはいけません。しかし実際は

  • ネットワークビジネスの勧誘であることを隠している(ブラインド勧誘)
  • 「誰でも成功できる」「失敗はしない」とポジティブな側面ばかり強調する
  • 「どんな病気にでも効く」などありもしないことを言う
  • 本人が嫌がってもセミナー会場やカフェなど、勧誘が行われた場から帰そうとせず、何時間も引き留める
  • 一度断ったのにしつこく勧誘をしてくる
  • 契約したものの、ちゃんと契約書の取り交わしをしない

など、明らかにモラル・法律の面から見て問題がある勧誘が横行しているのも事実です。この事実も、ネットワークビジネスのイメージを悪化させる一因であるのは間違いありません。

人間関係が崩壊する恐れがある

ネットワークビジネスの特徴の1つに「人を紹介し会員になると、人数に応じた紹介料が入る」ことが挙げられます。

そのため、会員数を増やすべく、勧誘に力を入れる人もいますが、相手によっては「これまでの人間関係をお金に換えられているみたいで腹立たしい」と思うこともあるのです。相手から反感を持たれてしまった場合、その相手と円満な関係を続けていくのは難しいでしょう。

さらに、勧誘を受けた相手が、共通の知り合いに対して「あの人と関わるとネットワークビジネスに誘われるからやめたほうがいい」と知らせた場合、その知り合いとの関係も難しくなります。

こういうことが積み重なり、気がついたら周囲には誰もいなくなっていた、ということはあり得ない話ではありません。

ネットワークビジネスに勧誘された場合の対処法

友人には理解を示しつつ「興味がない」と断る

では、ネットワークビジネスに勧誘された場合、どう対処するのが良いのかを考えてみましょう。

大事なのは、ネットワークビジネスにはまっている本人を真っ向から否定しないことです。

そういう意味では「へえ、そういうビジネスがあるんだね。でも、私は興味がない」と、相手を非難するのではなく、あくまで「自分は興味がない」一点のみを伝えるといいでしょう。

「一度使ったけど合わなかった」と断る

ネットワークビジネスの具体的な会社名・商品名が会話に出てきた場合は、商品が自分に合わなかったことを理由に断るのも効果的なテクニックの1つです。

ネットワークビジネスで多く扱われる商材として、化粧品やサプリメントがありますが、これらは人によって合う・合わないがはっきりと分かれます。

「一度使ったけど私には合わなかった」など、商品が自分に合わないことを理由に断れば、相手の非難には当たりません。

「知り合いや友達とビジネスの関係にはなりたくない」と断る

自分の価値観と合わないことを断る理由の1つにしてもいいでしょう。わかりやすい例が「知り合いや友達とビジネスの関係にはなりたくない」という言葉です。

利害関係抜きでの付き合いを大事にしている、という意図を伝えましょう。

「家族や親族がネットワークビジネスで大変な目に遭った」と断る

家族や親族など、自分の周囲の人が大変な思いをしたから苦手、というのも、断る上では十分立派な理由になります。

相手の非難には当たらない上に、辛い記憶を呼び起こしたくないから、という自分の考えは伝えられるはずです。

「副業が禁止されている」と断る

近年は副業を解禁する会社も増えてきましたが、総数から見ればまだまだ少数派です。中には、副業をしていることが発覚したら、退職に追い込まれることだってあるでしょう。その事実を伝えれば(良心のある人なら)それ以上は無理に勧誘してこないはずです。

SNS、メール、電話をブロックする

しかし、実際はここまで紹介してきたやり方で断ってきたとしても、論点をすり替えつつ、言葉巧みに勧誘を続けようとするのは、十分に考えられます。ネットワークビジネスの販売員(ディストリビューター)は、断られることを織り込んだ上で、トークスクリプトを作っているためです。

相手との関係性にもよりますが、一度断ったにも関わらず、執拗に勧誘が続く場合は、SNS、メール、電話をブロックし、連絡を取れないようにしてしまうのも1つの選択肢です。

1人で抱え込まず相談する

相手からの執拗な勧誘が止まらなかったり、つい根負けしてしまって契約してしまったりした場合、悩んでいるなら一人で抱え込まず、周囲に相談しましょう。話を聞いたうえで、対処法を一緒に考えてくれるはずです。

また、専門機関や業界団体、ネットワークビジネスの会社にも相談しましょう。

各都道県には、消費生活センターが設けられ、ネットワークビジネスを含めた消費者トラブルの相談を受け付けています。消費者ホットライン(188)に連絡し、経緯を話しましょう。

出典:全国の消費生活センター等_国民生活センター

また、ネットワークビジネスを含むダイレクト・セリング(対面説明販売)業界の自主規制団体の1つである一般社団法人全国直販流通協会でも、メールでの相談窓口を設けています。

出典:消費者窓口をご活用ください | 一般社団法人 全国直販流通協会

さらに、ネットワークビジネスを展開している会社も、問題のあるディストリビューターに関する苦情を受け付けています。勧誘の経緯をメモにして、電話かメールで連絡してみましょう。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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