性格の不一致を理由に離婚できるとは限らない。慰謝料もゼロになりがちなので要注意!

結婚とは「生活を共にすること」です。そのため、恋人同士として付き合っていたときには何ら問題なかったとしても、いざ一緒に暮らしだすと、相手の嫌な部分が見えてきてげんなりすることは往々にしてあります。

相手の嫌な部分が見えてきたら、まずはお互いが話し合い、どうすれば良いのかを考えるのが基本的な対応でしょう。しかし、話し合いをしてもどうにもならない場合だって考えられます。このような状態が積み重なると、離婚を考える羽目に陥るかもしれません。

そこで今回の記事では「なんか、この人と性格が合わない気がしてきた」という理由で離婚を考えている人のために、性格の不一致を理由に離婚を考える場合の注意点について解説しましょう。

性格の不一致とは

「価値観・方向性の違い」と考えるとわかりやすい

性格の不一致、という言葉自体は比較的有名です。しかし「具体的に何を指すのか」がわかりにくい部分もあります。

どちらかといえば「価値観・方向性の違い」と考えたほうが、まだわかりやすいでしょう。具体的な例を挙げてみます。

  • 食事やあいさつなど、マナーについての考え方
  • ファッションに対する考え方
  • 居住場所、環境に関する考え方
  • 時間にルーズか、きまじめか
  • 子どもの教育方針
  • 政治思想
  • 宗教観
  • アウトドア派かインドア派かなど、趣味の違い
  • 仕事に対する取り組み・姿勢の違い
  • どちらか一方の収入が極端に多い(少ない)ためストレスが溜まる
  • 自分は「整形は嫌い」と公言していたのに、相手が実は整形していたのを隠していた
  • 相手の家族との付き合いのスタンス
  • 「相手の大好物が、実は自分の大嫌いな食べ物」など食生活の嗜好の違い
ここで挙げたのはごく一部ですが、基本的には「何か違う」と思ったら、それも性格の不一致に含まれると考えてかまいません。

実は離婚原因のワースト1

一口に離婚と言っても、そこに至るまでのプロセスはさまざまです。しかし「世の中、案外“性格の不一致”が原因で離婚する人はいる」という事実を、データから読み解いてみましょう。

裁判所は毎年「司法統計」といって、国内で行われた裁判に関するデータを公開しています。もちろん、離婚についても「どういう理由で裁判に持ち込まれたか」のデータが公開されているのです。

参照:裁判所「司法統計 家事 令和元年度 32 婚姻関係事件数《渉外》 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」

男女別に「離婚を考えた理由(申立ての動機)」の表とグラフを作成してみました。

男性は6割、女性は4割が性格の不一致が原因で離婚を考える

まず、男性の場合は以下の表・グラフにもあるように、約6割が性格の不一致を理由にして離婚を考えています。

項目 人数(人) 比率(パーセント)
性格が合わない 394 61.3%
異性関係 81 12.6%
暴力を振るう 78 12.1%
酒を飲み過ぎる 14 2.2%
性的不調和 59 9.2%
浪費する 68 10.6%
病気 10 1.6%
精神的に虐待する 86 13.4%
家庭を捨てて省みない 44 6.8%
家族親族と折り合いが悪い 41 6.4%
同居に応じない 58 9.0%
生活費を渡さない 29 4.5%
その他 125 19.4%
不詳 29 4.5%
合計 643 100.0%

出典:裁判所「司法統計 家事 令和元年度 32 婚姻関係事件数《渉外》 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」より筆者作成

一方、女性の場合はこのようになっています。

項目 人数(人) 比率(パーセント)
性格が合わない 579 42.2%
異性関係 225 16.4%
暴力を振るう 373 27.2%
酒を飲み過ぎる 103 7.5%
性的不調和 80 5.8%
浪費する 81 5.9%
病気 9 0.7%
精神的に虐待する 310 22.6%
家庭を捨てて省みない 76 5.5%
家族親族と折り合いが悪い 54 3.9%
同居に応じない 34 2.5%
生活費を渡さない 346 25.2%
その他 124 9.0%
不詳 77 5.6%
合計 1371 100.0%

出典:裁判所「司法統計 家事 令和元年度 32 婚姻関係事件数《渉外》 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」より筆者作成

性格の不一致を理由に離婚できるとは限らない理由は?

法律で認められた離婚理由ではないから

データからもわかるように、性格の不一致を理由にして離婚に踏み切る人は案外多いようです。

しかし、裁判まで起こしたとしても、離婚できるとは限らない点に注意しましょう。

理由を簡単に言うと「法律で認められた離婚理由ではない」ためです。

民法770条では「法定離婚事由」といって、どちらか一方が合意せず、裁判にまでもつれ込んだ場合に離婚が認められる理由を定めています。

民法 第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

これらの内容については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

離婚はお互いの同意が前提。それでも一方的に離婚できる5つのケース

いずれかに当てはまれば離婚が認められる

民法770条の条文から見てもわかるように、性格の不一致は法定離婚事由には含まれていません。そのため「ただ、なんとなく性格が合わない」などのぼんやりとした理由だけでは離婚できない可能性が出てきます。

ただし、以下のいずれに当てはまるなら、離婚が認められる可能性が高いです。

1.お互いの合意がある

夫婦のどちらか一方が「この人とは何となく性格が合わない」と思っていた場合、相手が「自分もそう思う」と思っていることは往々にしてあります。

このケースの場合、話し合いをすれば「それなら、離婚しようか」という結論に至ることも少なくありません。

つまり、お互いの合意の下で離婚に向けて手続きを進めることになるため、法的にも認められます。

2.婚姻関係が破綻している

逆に、どちらか一方は「もう無理離婚したい」と思っていたとしても、相手はそう思っていない場合、性格の不一致を理由にした離婚は難しいのも実情です。

しかし「婚姻関係が破綻している」と認められる相当な理由がある場合は、離婚が成立する可能性も出てきます。

一体何を以て「婚姻関係が破綻している」と認められるかはケースバイケースですが、代表例をいくつか列挙しておきましょう。

  • 長期間別居している
  • 一方が相手にDV、モラルハラスメントをしている
  • 体調が悪いわけでもないのに働かない
  • 家に生活費を入れない
  • 飲酒、浪費が原因でトラブルを起こす
  • 複数回にわたり犯罪を冒していたり、服役したりしている
  • 仕事や宗教活動、ネットワークビジネスにのめりこんでいて家庭を放置している
  • 義母・義父や義理の兄弟姉妹との折り合いが悪い

性格の不一致で離婚すると慰謝料がゼロになりがちなのはなぜ?

慰謝料は「迷惑をかけたお詫び」だから

ここまで触れた通り、たとえ、離婚に踏み切る理由が性格の不一致であったとしても

  • お互いの同意がある
  • 婚姻関係が破綻していると認められる事実がある

場合は離婚できます。

しかし、お互いの同意に基づき性格の不一致を理由に離婚したとしても、100%相手から慰謝料を受取れるとは限りません。

慰謝料は「相手が被った精神的損害に対しての損害賠償として支払われるもの」です。

性格の不一致だけが理由だった場合、精神的損害はない(迷惑をかけられたわけではない)と判断されることが多いことから、慰謝料を支払う理由も存在しないと考えましょう。

もちろん、きっかけは性格の不一致だったとしても「婚姻関係が破綻している」と認められる事実があった場合は、この限りではありません。

財産、親権についての扱いも知っておこう

また、性格の不一致が理由で離婚した場合、財産や親権についてはどう扱うのかについても、確認しておきましょう。

夫婦で分けるのが基本

まず、財産についてですが、他の理由により離婚した場合と同じく、財産分与を行います。財産分与とは

夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に伴って分与すること

です。

なお、財産分与は夫婦それぞれが財産の形成に寄与した割合に応じて分与されます。

通常、夫婦の寄与割合は2分の1ずつと考えられているため、婚姻して共同生活をしていた期間に形成された夫婦の共有財産のうち、半分は受け取れるよう請求できるということです。

また、財産分与の対象となる財産として、以下のものが考えられます。

  • 現金、預貯金、車両、有価証券など
  • 退職金
  • 生命保険や学資保険(解約返戻金)
  • 不動産
  • 年金

ただし

  • 婚姻前から有していた財産(例:独身時代からの貯金)
  • 婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産(例:実家の相続で受け取った財産)

は、特有財産と呼ばれ、財産分与の対象とはなりません(民法762条1項)。

親権は話し合いで

また、性格の不一致が原因で離婚するにしても、未成年の子どもがいた場合は「どちらが子どもの親権を持つのか」を決めなくてはいけません。

以下の状況を整理しながら、話し合いで決めましょう。

  • 双方の親権についての希望
  • いままでの子どもの監護状況
  • 経済力・親族の協力の有無
  • 子どもの環境の変化
  • 子どもの希望(小中学生などある程度の年齢の場合)

なお、仮に親権を持たないことになっても、法律上は子どもと親子の縁が切れるわけではありません。

つまり、子どもに対する法律上の扶養義務(民法887条)を負うことには変わりないため、養育費を支払う必要があるのです。

なお、裁判所のWebページで「養育費・婚姻費用算定表」が公開されています。これを見れば

  • 親権を持たない親の年収
  • 子どもの年齢・人数

に応じた養育費の相場がわかるので、参考にしてください。

参照:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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