お互い好きになって付き合い始めたとしても、付き合ううちに相手の欠点が見えてきたり、思っていた理想と現実が食い違っていたりすることに気づき、別れを選択するのは珍しいことではありません。
しかし、別れる際にどちらか一方が「今までのデート代、全部返してくれる?」「あげたプレゼント返して!無理なら同じくらいのお金で」と、交際が終了することを理由にデート代、プレゼント代を返還するよう求めてくることもあります。
もし、あなたがそんなことを言われたら、どうするべきかについて解説しましょう。
目次
別れた恋人とのデート代を返さなくていい理由は?
結論から言うと、たとえ別れ際に「デート代返せ」とごねられたとしても、一切応じる必要はありません。
民法上は贈与に当たるため
一般的に、交際中のデート代やプレゼント代は「後で返すこと」を前提に出費するものではなく、「無償で与える」ことから、贈与に当たると考えられます。
また、贈与は一度履行されたら、取り消すことはできません。
仮に、交際終了後も元パートナーがデート代やプレゼント代を返却するよう、しつこく文句を言ってくるなら
- 贈与契約にあたるため、返却する義務はないこと
- 嫌がらせが続くようなら弁護士と協議し、法的手段に訴えること
の2点をきっぱり伝えましょう。
恋人と金銭の貸し借りをしていた場合は要注意
デート代やプレゼント代など、通常、貸し借りをしない出費なら、贈与にあたるため、返却をする必要はありません。しかし「お金を借りる依頼をして、あとで返済すると約束していた」場合は話がまったく別です。
金銭消費貸借契約とは
たとえ恋人同士であったとして、一方の「今度返すから、お金を貸してくれる?」という依頼に対し、実際にお金を貸した場合は、金銭消費貸借契約に当たるため、デート代やプレゼント代のような贈与契約とは違い、返還する義務が生じるのです。
なお、これは交際を終了した=別れたとしても変わりません。
恋人にお金を貸して踏み倒された場合の対応
仮に、付き合っていた恋人にお金を貸していたにも関わらず、交際が終了しても返してもらえない場合は、泣き寝入りはしないようにしましょう。
内容証明郵便を送る
法的効力はありませんが、相手に対しプレッシャーを与えられることから、未払賃金の督促や契約の解除通知など、お金や契約を巡るトラブルの交渉においてよく使われる方法です。
なお、内容証明郵便には、独自の書き方、出し方があります。条件を1つでも満たさないと、内容証明郵便を出すことすらできないので、一度郵便局で確認し、作成を進めましょう。
参照:内容証明 – 日本郵便
訴訟を起こす
内容証明郵便を送っても、相手が何の反応も示さない場合は、訴訟を起こしましょう。相手に貸していたお金が60万円以下であれば、自分で少額訴訟を起こすことも可能です。
参照:少額訴訟 | 裁判所
また、申立てをする際も、訴状と申立手数料、添付書類等(必要に応じて用意)を相手方の住所地を管轄する裁判所に提出(持参もしくは郵送)すればいいだけなので、特別な知識がなくても利用可能です。申立手数料は訴えを起こすことにより取り戻したい金額によって異なるので、事前に簡易裁判所で確認しましょう。
ただし、1日ですべてを終えることを前提にしているため、借用書を持っていたり、共通の友人・知人に証言してもらえたりなど、証拠書類や証人をすぐに用意できることが必須条件になります。
逆に、証拠書類や証人の当てがなかったり、貸したお金が60万円を超えるようなら、弁護士に依頼した上で、通常の訴訟手続きを通じて相手からの弁済を求めていくのが現実的でしょう。
恋人との金銭の貸し借りはアリ?ナシ?
恋人との金銭の貸し借りはアリ?ナシ?
そもそも、恋人同士で金銭を貸し借りすることは、問題がないのかについても考えておきましょう。
緊急時にはアリだけど注意が必要
例えば、2人で旅行に出かけた時にどちらか一方が病気やケガで医療機関を受診することになり、もう一方が自己負担分を医療機関の窓口で立て替えるというのも、広い意味では「お金の貸し借り」に含まれます。
また、借りる側の支払能力にまったく問題がない場合であっても、銀行などの金融機関が大規模なシステム障害を起こした場合、ATMや店頭での引き出しができなくなる可能性も出てきます。そのような場合、どうしても現金が必要になったら、借りざるを得ないことだってあるのです。
トラブルにならないためにも
- お互いに「あげる」のか「立替ておいて後で返してもらう」のかの認識をすり合わせておくこと
- 「いつ」「どうやって」「いくら」返すのかを明文化しておくこと
- 予定通り返済できない事情が生じたら相談すること
の3点は、事前に必ずすり合わせておきましょう。
借用書は必須
また、お金の貸し借りで起こりがちなトラブルの1つが「借用書がないため、言った・言わないでもめる」です。
トラブルを回避するためにも、やり取りで決めた条件を文書に残す、つまり借用書を作るのが必須になります。
なお、借用書には法律上決められた書式は存在しません。しかし「いつ」「誰が」「誰に」「何を」「どのくらいの期間」「どんな条件で」借りるのかをはっきりさせることが必要になります。以下の12の項目はかならず盛り込みましょう。
- 証書名(タイトル)
- 宛先(貸主)
- 金額
- 借用、受領の事実
- 利息
- 返済方法と返済金額
- 返済期限
- 支払遅延に関する条件
- 連帯保証(不要な場合は記載しない)
- 証書記載日
- 借主住所、氏名、捺印
- 連帯保証人住所、氏名、捺印
以上の12の項目を盛り込んだ文例の1つを紹介しておきます。
金銭借用証書
貸主 マネク 太郎
金 五万円 也
上記金額を次の約定により借用し、受領いたしました。
1. 利息
利息は年15%とし、毎年3月末日および9月末日に発生した分を支払います。
2. 返済
令和〇〇年〇月〇日までに、貸主○○様の住所地、または貸主が指定する場所へ持参します。
3. 遅延損害金
本契約による債務の履行を遅延した場合、遅延損害金として年20%を完済までに支払います。
4. 返済期限の消失
次の場合には機嫌を消失し、ただちに残債を請求されても異議ありません。
・利息の支払い遅延が2回以上発生したとき
・貴殿に連絡することなく住所・居住地を変更したとき
令和○○年〇月〇日
東京都△△△区□□□1-2-3
借主 マネク 花子
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