老後破産という言葉には、明確な定義が存在するわけではありません。しかし、実際のところは「会社を定年退職した後に、自己破産したり、自己破産まではいかないものの、経済的に困窮してしまうこと」を指しているようです。そして、筆者は老後破産する人には、ある程度特徴があると思っています。その特徴と、今からできる対策をまとめました。
目次
老後破産する人の7つの特徴
貯金、貯蓄がない
1つ目の特徴は「貯金、貯蓄がない」です。将来、年金がもらえると言っても、国や勤務先の会社が加盟していた年金から受け取れる年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)だけでは、余裕がある暮らしは送れません。
例えば、定年退職後に夫婦2人で余裕がある暮らしを送りたい場合、必要になる生活費は毎月約36万円です。
出典:老後の生活費はいくらくらい必要と考える?|公益財団法人 生命保険文化センター
しかし、令和2(2020)年度の場合において、夫婦2人が老齢厚生年金として受け取れる老齢厚生年金の月額は約22万円です。
つまり、年金だけでは毎月ギリギリの生活しかできないので、足りない分をどう補うかが問題になります。貯金や貯蓄があるなら問題はありませんが、ない場合は借金をしてしまい、結果として老後破産に追い込まれる可能性も出てくるのです。
持病がある、家系的に病気しやすい
日本の場合、国民皆保険といって、一部の例外を除いて全員が何らかの公的医療保険に加入しなくてはいけません。この仕組みのおかげで、病気やケガをしたとしても、公的医療保険が利用できる治療であれば、毎月負担すべき医療費は一定額以下に抑えられます。
しかし、病気で療養している間の生活費までは保障してくれるわけではないことに注意が必要です。療養が長期に渡れば渡るほど、どうやって費用を工面していくかが、大きな課題になるでしょう。
生活レベルが基本的に高い
老後破産をしてしまうのは、何も現役時代の収入があまり多くなかった人だけではありません。むしろ、現役時代の収入が多かった人の方が、ある意味危険でしょう。
例えば
- 車は国産高級車、外車に乗っている
- 毎月の収入から見て分不相応な家賃の家に住んでいる
- 服、バッグ、化粧品などはブランド物が基本
- 料理を作るときに、値段を見ないで食材を買う
- 外食が多い
という人は、注意が必要です。
住宅ローンが払い終わるのが65歳以上
住宅ローンの返済をしている人の中には、返済完了年齢が65歳以上になっているケースも少なくありません。しかし、65歳以上にもなれば、働いていない限りは年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)しか収入がない上に、病気やケガのリスクも高くなるため、当初予定していたスケジュールで住宅ローンが返済していけない可能性が出てきます。
住宅ローンの返済ができなくなってしまったら、最終的には家を手放さなくてはいけません。その後住む家を探したり、引っ越したりするためには、やはりある程度まとまったお金が必要なので、一気に生活が苦しくなるリスクが高まることに注意が必要です。
子どもの教育にお金をかけすぎる傾向がある
先ほど触れた生活レベルの話とも共通しますが、子どもの教育にお金をかけすぎる傾向がる人も、老後破産をする可能性が高いです。もちろん、子どもの特性に合った教育を受けさせることは、子どもの健全な成長のためにも役立つので、まったく無駄な支出だとは思いません。
しかし、大人でもこなせないほどの過密スケジュールで習い事をさせるのは、子どもへの負担が非常に大きくなります。子どもが精神的に疲れてしまい、途中でやめる可能性も高いので、結果として無駄な支出になるのです。無駄な支出になることをわからないで出してしまう金銭感覚のなさも、老後破産の引き金になるので、注意しましょう。
晩婚で子どもを授かった
結婚はいくつになっても、自分が納得したタイミングですればいいというのが筆者の考えです。早婚、晩婚のそれぞれにメリット・デメリットがあります。
しかし、晩婚(目安としては30代後半以降)で子どもを授かった場合、子どもの教育費がかかるタイミングと、老後に向けた準備を始めるタイミングが重なってしまいます。子どもがかわいいという気持ちと、しっかり子育てをしなくてはという使命感から、ついつい自分たちのことを後回しにしてしまうと、老後の準備が全くできずに定年を迎えてしまうこともあり得るのです。
熟年離婚をしてしまった
ある意味、最も深刻なのがいわゆる熟年離婚をしてしまったパターンです。離婚をすることで、1人1人が受け取れる年金が一気に減ってしまう可能性があります。
なお、厚生年金には「年金分割制度」があります。
厳密にいうと、以下の2つに分かれます。
合意分割制度 | 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間の合意(または裁判)による分割する制度 |
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3号分割制度 | 国民年金の第3号被保険者であった人(主婦など)からの請求によって、その期間については相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割(2分の1ずつ)することができる制度 |
実際に、どちらの制度を使って年金を分割するのかは、それぞれの夫婦によって異なりますが、1つだけ確かなことがあります。2人で暮らした場合の1人あたりの生活コストは、1人で生活する場合の生活コストより安い場合がほとんどです。
つまり、仮に年金分割を行い、夫婦でいたときの年金の一部がもらえたとしても、1人暮らしが始まった後の生活をまかなえるとは限らないのです。特に、結婚を機に専業主婦になった人の場合、実家が裕福であったり、運よく再就職できたりした人を除いて、一機に生活が苦しくなってしまうでしょう。
老後破産を防ぐために今からできる対策7つ
貯金、貯蓄を増やす
老後破産の原因をいろいろと考えてみると、結局のところは「出ていくお金が多い割に、入ってくるお金が少ない」ことが挙げられます。それを解消するための方法を考えてみましょう。
まず、真っ先に手を付けるべきなのは、貯金・貯蓄を増やすことでしょう。
「面倒くさくて続かない」という人でも、方法を工夫すれば貯金はできるようになります。
老後に受け取れる年金額を増やす
会社員や公務員など、組織に所属して働いている人の場合、老齢厚生年金が受け取れるため、老齢基礎年金の場合のみに比べると、まだ金銭的に余裕はあります。
また、自営業の人は、老齢基礎年金しか受け取れないため、会社員や公務員に比べると、一層の努力が必要になります。
生活レベルをむやみにあげない
自分たちの無理のない範囲で、好きなことにお金を使うのを、筆者は全て否定するつもりはありません。たまにはおいしいものを食べたり、本当に気に入ったものを買ったりするのも、生きていく上では大きなモチベーションになります。
しかし、生活のすべてにおいて、高級志向が身についてしまうと「これが当たり前」と思ってしまいがちです。
住宅ローンの繰り上げ返済も検討する
住宅ローンの完済は、早ければ早いほどいいのは言うまでもありません。返済完了年齢が65歳以降の予定で住宅ローンを組んでしまった場合は、住宅ローンの繰り上げ返済も検討しましょう。
教育、習い事は子どもの意思を最優先にする
子どもの側からしても、やりたくもない習い事を無理やりさせられるのは、ストレスでしかありません。
また、続けていくにつれ、子どもの側にも心境の変化が出てくるかもしれません。子どもの様子が変わったら、意思を確認するようにしましょう。「継続は力なり」と言いますが、それは、本人が続けたいという意思を持っていることが前提です。
「やりたくなければやらない」という確固とした価値観を持ち、本当に必要なものとそうでないものを分けていく潔さも、老後破産を防ぐためには欠かせません。
健康に気を付ける
いくら公的医療保険が整備されているからと言って、病気になると収入が途絶える上に、出ていく費用は多くなります。100%病気にならないというのはまず不可能ですが、自分でできることを普段から実践するだけでも、病気を原因にした老後破産は防げるはずです。
まずは
- タバコはやめる
- 酒は適量にし、休肝日を作る
- 偏食をしない
- 睡眠をしっかりとる
- 運動する習慣をつける
- 定期的に健康診断を受ける
など、自分にできることから始めてみましょう。
困った時は友人・知人・専門家に相談する
老後破産をしてしまう人が抱えているもう1つの問題点として「自分の悩みを人に話せない」ことが挙げられます。お金やこれからの生活のことで悩みを抱えていたとしても、人に話すことで気分が楽になったり、新たな解決策を見つけられたりするはずです。
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