お金にまつわることわざの1つに「愛想尽かしは金から起きる」があります。簡単に言うと、どんなに仲がよいカップルだったしても、2人の間で金銭トラブルが発生したら、一気に破局に向かう恐れがあるという意味です。
たとえば、どちらか一方にギャンブルや浪費でこしらえた借金があって、結婚する直前、もしくは結婚した後もその事実をひた隠しにしていたとしたら、これはもう関係そのものを見直した方が良いでしょう。隠された側からすれば「なんでそんな重要なことを隠しているの!?」という落胆しかないからです。
しかし、借金をしていたのが付き合っている本人ではなく、その家族だった場合は、事情がやや異なります。詳しく解説しましょう。
目次
恋人に借金持ちの家族がいても結婚自体はNGではない理由
お金を借りているのはその家族だから
結論から言うと、たとえ結婚を考えている恋人に、借金持ちの家族がいたとしても、それだけで結婚を破談にする必要はありません。
後述する一部の例外を除き、家族に返済義務が生じることはありません。
家族への取り立てもNG
また、本人が返済せず逃げ回っていたとしても、家族に対して取り立てを行うことは、法律上禁止されています。さらに、家族の居場所を知らせるように言われたとしても、拒否することが可能です。
貸金業法 第二十一条
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(中略)
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
ただし「保証人」「連帯保証人」だった場合は要注意
ただし、恋人が家族の借金(債務)の保証人・連帯保証人になっていた場合は要注意です。
家族が逃げた場合、恋人に返済義務が生じる
簡単に言うと、家族が「借金を返済できないから」という理由で行方をくらました場合、連帯保証人になっている恋人が、その借金の肩代わりをしなくてはいけないからです。
保証人でも油断は禁物
なお、よく似た言葉として保証人があります。これも「お金を借りている本人(主債務者)が支払えなくなった場合、代わりに支払う義務が生じる立場の人」であることに代わりはありませんが
- 保証人はまず「本人に請求してください」と債権者に言ったり(催告の抗弁)、債務者に支払能力があると証明できる(検索の抗弁)ので、最終的に債務者が支払えないと判明した場合にのみ支払う義務を負う
- 連帯保証人は債務者本人と同じ立場で債権者に対して支払いを負う義務を負う(催告の抗弁も検索の抗弁もできない)
という違いがあります。わかりづらいので、図にしてみました。
家族に万が一のことがあった場合は相続放棄も視野に
借金持ちの家族が、借金を残したまま亡くなってしまった場合は、相続放棄をすることで返済義務を免れることができます。相続放棄とは、簡単にいうと「財産も負債も含めて一切引き継がない」ということです。
本来であれば、相続の発生 = 万が一のことがあったのを知った時から3カ月以内に家庭裁判所で手続きをしなくてはいけません。ただし、長いこと音信不通になっていたなど、相応の事情がある場合は、3カ月を過ぎていても受け付けてくれることがあるので、まずは相談してみましょう。
結局、借金持ちの家族がいる彼氏・彼女との結婚はアリ?ナシ?
「連帯保証人」になっていなければアリ
結局のところ、付き合っている彼氏・彼女との結婚がアリなのかナシなのかは
がといったところでしょう。
個人信用情報機関への照会を
自分が保証人や連帯保証人になっているかどうかを確認するには、個人信用情報機関への照会を行うのが手軽かつ確実な手段です。なお、個人信用情報とは
です。
個人信用情報機関と呼ばれる団体・企業がデータベースとしてとりまとめています。そして、住宅ローンやクレジットカード、カードローンなど「お金の貸し借りを伴う取引(信用取引)」の申し込みがあった場合に、審査担当者がデータベースにアクセスし、審査における重要な参考情報として使う流れです。
なお、保証人や連帯保証人となった場合は、個人信用情報にもその事実が登録されます。
参照:知人がクレジット契約をする際に保証人になりましたが、CICに情報は登録されますか?|信用情報の登録|よくあるご質問|指定信用情報機関のCIC
そのため「自分が勝手に保証人や連帯保証人にされていないか」は、自分の個人信用情報を見ればわかるはずです。照会自体は1,000円程度の手数料でできるので、不安な人は一度確認しておくと良いでしょう。
参照:信用情報の確認 |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
参照:本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会
「連帯保証人」になっていた場合は?
仮に、彼氏や彼女が、家族から事前に話を聞いていないまま連帯保証人にされていた場合、事情は全く異なってきます。
勝手にされていた場合は弁護士に相談を
現在は、どんな金融機関であったとしても、債務者および保証人・連帯保証人に対する本人確認を厳しく行うため、可能性としては低いですが、一応触れておきましょう。
「連帯保証人になってくれる人がいないから」という理由で、勝手に印鑑を持ちだしたり、本来は連帯保証人になるはずの人が自分で署名しなくてはいけないところに勝手に名前を書いたりなどして、無理やり連帯保証人にしてしまうことだって考えられるでしょう。
なお、実際は裁判で争うことになりますが
- 実印を家族に預けっぱなしでいつでも勝手に使えるような状況だった
- 債権者側が連帯保証人自身への意思確認をしたが「ああ、良いよ」と口頭で応じてしまった
などが争点となるので注意してください。
センシティブな話題なので扱いは慎重に
ここまで触れた通り、付き合っている恋人の家族に借金があったとしても、そのことだけを理由にして破談にするのは早計かもしれません。一口に借金と言っても
- もともとは事業を営んでいたが、うまくいかなかった
- 新型コロナウイルス感染症の影響で失業し、生活費が必要だった
- 学生時代に奨学金を借りて、返済が滞っていた
- 浪費やギャンブルにお金をつぎ込んだ
など、借金をするに至った理由や背景は様々であり、一口に「本人の生活態度や性格に問題がある」とは言い切れないためです。ましてや、家族にその責任をかぶせるのはお門違いでしょう。
しかし、世の中には「借金がある」というだけで、快く思わない人がいるのも事実です。仮に自分の家族にそのようなタイプの人がいる場合は
- その事実を墓場まで持って行くつもりで隠し通す
- 恋人と一緒に債務整理や借金問題に強い専門家(弁護士・司法書士など)に相談し、債務整理やお互いの家族も含めた話し合いの対応をお願いする
などの対応が考えられます。ただし、前者の対応で進めるのは生半可な覚悟ではできないので、後者の対応を選んだ方が精神的にも楽になるでしょう。
コメント