ペットが病気・ケガをしたときに治療費の一部(全部の場合もある)を補償してくれるペット保険は、大変便利な保険商品です。しかし、日本においてはまだ歴史が浅いのも事実であるため、契約者の理解不足、担当者の説明不足によるトラブルが頻発しています。
今回は、ペット保険をめぐる主要なトラブルについて、原因と回避策を探ってみましょう。
目次
ペット保険の5大トラブル
治療費の一部しか補償されない
ペット保険を簡単に説明すると
です。しかし、治療費のうち、どこまでが保障されるかについては、保険商品や個々の契約形態によって異なります。
また、動物病院で受けられる治療であったとしても、予防注射やサプリメントの投与など、ペット保険による給付の対象外となる治療もあるため「動物病院で受けた治療の費用が全額補償される」ということは基本的にありえないと考えたほうがいいでしょう。
待機期間中に治療を受け、保険金が受け取れない
待機期間が設けられているペット保険も多く存在します。簡単にいうと
です。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 2021年3月19日にペット保険の申し込みをする
- 2021年4月1日にペット保険の保険開始日が到来する
この前提の上で、待機期間が30日だった場合は、2021年4月1日から2021年4月30日に病気・ケガをして治療を受けたとしても、保険金の給付は受けられません。
補償対象外の治療を受け、保険金が受け取れない
動物病院で受けられる治療の中には、ペット保険による補償が受けられないものも存在します。具体的な扱いについては、ペット保険の商品説明書や保険会社による約款などを確認しておきましょう。
例えば、au損保のペット保険の場合、以下の治療については、保険金給付の対象外と定められています。
既往症、先天性異常等 | ・初年度契約の保険開始日より前に被っていた病気またはケガ ・初年度契約の保険開始日より前に獣医師により発見されていた先天性異常 ・初年度契約の保険開始日から30日以内に被った病気など |
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ワクチン等により予防できる病気 | ・狂犬病等のワクチン等により予防ができる病気 (その病気の発病がその予防措置の期間内であった場合を除く) |
特定の病気 | ・猫伝染性腹膜炎、猫後天性免疫不全症候群(FIV) |
予防に関する費用 | ・ワクチン接種費用 ・疾病予防のための検査または投薬、予防接種費用および定期健診、予防的検査費用 ・ノミおよびマダニの除去費用 など |
治療費以外の費用 | ・シャンプー、薬用シャンプー、医薬品シャンプーおよびイヤークリーナー ・往診費用、対診費用および夜間休日診療費用 ・ペットの移送費 ・マイクロチップの挿入費用 ・安楽死のための費用 ・葬儀費および埋葬費等ペットの死後に要した費用 ・相談料および指導料ならびにカウンセリングおよびセカンドオピニオンのための費用 ・動物病院へ行かずに薬剤のみ配達される場合の配達料およびこれらと同種の費用 ・各種証明書類の作成費用および郵送費 など |
健康食品・医薬部外品等 | ・入院中の食餌に該当しない食物および療法食 ・獣医師が処方する医薬品以外のもの ・漢方、温泉療法、酸素療法、免疫療法等 など |
・獣医師が処方する医薬品以外のもの | |
・漢方、温泉療法、酸素療法、免疫療法等 など | |
飼い主の行為 | ・故意または重大な過失 ・給餌または給水等基本的な管理を怠ったこと ・精神障害、心神喪失または酒に酔った状態により正常な判断ができないおそれのある状態における行為 など |
自然災害 | ・地震もしくは噴火またはこれらによる津波 |
その他 | ・妊娠、出産、帝王切開、人工流産等の繁殖に関する費用 ・不妊、避妊に関する費用 ・乳歯遺残、停留睾(こう)丸、臍(さい)ヘルニア、鼠(そ)径ヘルニアおよび睫(しょう)毛乱生の処置費用 ・爪の切除、爪切、肛(こう)門腺除去および肛(こう)門腺搾りに関する費用 ・断耳、断尾、声帯除去および美容整形等に関する費用 ・歯科治療および歯石除去に関する費用 など |
出典:保険金をお支払いできない主な場合 | ペット保険ならau損保
年齢制限のせいで加入・更新ができない
ペット保険には、加入・更新に関して年齢制限が設けられていることがほとんどです。例えば、アニコム損保の「どうぶつ健保ふぁみりぃ」の場合は、新規加入は7歳11カ月までとなっています。なお、更新は終身可能ですが、健康状態によって断られることもある点には注意しましょう。
参照:ペット保険「どうぶつ健保ふぁみりぃ」│ペット保険のご契約は【アニコム損保】
告知義務違反と判断され保険金が受け取れない
トラブルの原因は、何もペット保険自体の性質によるものだけではありません。ペット保険も人間の保険と同じように、契約する際にペットの健康状態について告知する義務があります。
仮に、病気・ケガをしていたにも関わらず、それを保険会社に知らせないでペット保険を契約したとしましょう。
また、あまりに悪質と判断された場合は、告知義務違反を理由に強制解約処分が下されることも十分に考えられます。
ペット保険のトラブルの原因
「何をどれだけ補償してくれるか」を分かっていない
結局のところ、告知義務違反など一部の例外を除いては、ペット保険にまつわるトラブルの大半の原因は
ことに尽きるでしょう。これは、契約者にも、保険会社の担当者にも責任があることです。トラブル回避のためには、この現象を改善しなくてはいけません。
また、ペット保険を選ぶときも、ただ何となく「ペットショップで進められたから」「友達が入っているから」など、ぼんやりとした理由で決めないようにしましょう。
ペット保険を選ぶときのチェックポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
ペット保険のトラブル回避策
ペット保険の約款を読み込む
契約者がまずすべきこととしては、契約前にペット保険の約款を読み込むことでしょう。「何が起きると、いくら保険金が受け取れるのか」を理解した上で、自分のペットが十分な補償を受けられるか、という視点で読み込むのをおすすめします。
不明点は担当者に確認すること
多くの人にとって、約款は日常生活で使わない言葉が多いことから、理解ができずに苦しんだり、途中で投げ出してしまったりしがちです。しかし、これではトラブルは避けられません。不明点は担当者に確認し、完全に解決しておきましょう。
自分のペットがかかりやすい病気・ケガを把握する
ペットの種類によっても、かかりやすい病気・ケガは異なります。その病気・ケガが通院治療主体で治るものなのか、入院・手術が必須なものなのかによって、必要な補償の在り方が見えてくるはずです。
獣医師からのアドバイスも有効
自分のペットがかかりやすい病気・ケガがわからない場合は、かかりつけの獣医師に質問してみましょう。高度な専門的知識と技術を有しているので、的確なアドバイスをくれるはずです。
加入制限年齢、更新可能年齢を確認する
ペット保険を比較検討する際は、加入制限年齢、更新可能年齢を欠かさず確認しましょう。一緒に暮らしだすタイミングで入るならまだしも、今、一緒に暮らしているペットのために契約する場合は特に重要です。
途中で更新できないリスクがある
更新可能年齢に上限が設けられているペット商品の場合、その年齢を超えて長生きしてしまった場合は、途中で更新ができず、亡くなるまで無保険で過ごす期間が生じてしまいます。
保険金の支払い方法を確認する
ペット保険の保険金の支払い方法は、大きく分けると窓口精算と後日請求の2つがあります。
また、窓口精算方式に対応している保険会社であっても、提携していない動物病院で治療を受けた場合は、後日請求が基本になります。
後日請求の場合は急な現金の出費も
窓口精算であっても、後日請求であっても、保険金給付の対象となる治療を受けた場合は、最終的には保険金相当額が戻ってきます。ただし、後日請求の場合は、一度動物病院に立て替えて支払わないといけません。そのため、急な現金の出費が生じる可能性もあることに、注意しましょう。
自分一人で解決できない場合は弁護士に相談する
ペット保険によるトラブルを避けるためには、契約者側も勉強すること、わからないことは積極的に質問することが不可欠だと筆者は思います。
それでも、一部の心無い保険会社の担当者が、契約者の気持ちを無視してペット保険を販売し、後々のフォローも行わないがゆえに、トラブルが起きているのも事実です。
消費者問題に強い弁護士を選ぶ
この際、相談する弁護士は、消費者問題に強い弁護士を選ぶといいでしょう。ペット保険に限らず、保険などの高額商品の契約におけるトラブルや解決法に習熟しているため、相手方となる保険会社ともスムーズに交渉が進められるはずです。
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