アルバイト・パートでも退職金をもらえることも。確認する方法を徹底解説

「アルバイト・パートだと退職金はもらえない」というのは、一般的なイメージとして広く浸透していることだと思います。しかし、実際はごくわずかながら「アルバイト・パートでも(実態は慰労金に近い場合もありますが)退職金を支給します!」とうたって募集をしている求人もあるのです。

その上、法律上、一定の条件を満たす場合は、たとえアルバイト・パートであったとしても、会社は退職金を支払わなくてはいけません。そこで

  • なぜ、アルバイト・パートでも退職金がもらえることがあるのか
  • アルバイト・パートでも退職金をもらえるか確認する方法

の2点について、解説します。

アルバイト・パートでも退職金がもらえることがあるのはなぜ?

パートタイム・有期雇用労働法とは

2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行されました(中小企業への適用は2021年4月から)。簡単に言うと

正社員であっても、アルバイト・パートなどの非正規労働者であっても、全く同じ仕事をしているのなら、同じ賃金を支払うべきであるし、待遇に差を設けてはいけない

ことを明確に規定した法律です。

参照:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために

基準は「正社員と同じくらい働いているかどうか」

一口にアルバイト・パートといっても

  • 「1日6時間勤務を週2日」など、毎月の労働時間が極めて短く、税務上・社会保険上も扶養から外れない範囲のもの
  • 「1日8時間を週5日、繁忙期は残業あり」など、働き方も仕事内容もほとんど正社員と変わらないもの

など、働き方は様々です。どちらかといえば、前者に近い働き方をしている場合は、退職金がもらえる可能性は低いと言って良いでしょう。一方、後者に近い働き方をしているにも関わらず「あなたはアルバイト(パート)だから」という理由で、ずっと昇給もなかったり、退職金ももらえなかったりした場合は、会社と交渉する余地はあるはずです。

パートタイム・有期雇用労働法の施行に合わせて発表された「同一労働同一賃金ガイドライン」では「能力、会社への貢献度が同じであれば、どのような雇用形態であっても、同じだけ給料を払わないといけない」など、平等な取り扱いを求めることが明確に示されています。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン

もし、自分の働き方が「アルバイト・パートであるにも関わらず、実態はほぼ正社員」であるなら、行動を起こしましょう。

アルバイト・パートでも退職金をもらえるか確認する方法

就業規則を確認させてもらう

そもそも、自分が勤めている会社が「退職金のもらえる会社なのか」をまずは調べる必要があります。給料(賃金)とは違い、退職金は労働の対価として支給する義務があるわけではないという見地から、たとえ会社が支給しなくても法令違反にはならないためです。

スタッフが10人以上いるなら作成義務あり

退職金のもらえる会社なのかどうかを調べる簡単な方法は、就業規則を確認させてもらうことです。

就業規則とは

労働者の給与規定や労働時間といった労働条件、労働者が遵守すべき職場内の規律やルールなどをまとめた規則

のことです。従業員が常時10人以上いる場合は、就業規則を作成した上で、管轄する労働基準監督署に提出しなくてはいけません。

なお「従業員が常時10人以上いる場合」における従業員とは、正社員はもちろん、常勤のパート・アルバイトも含みます。

ただし

  • 業務委託の社員(雇用関係にないため)
  • 派遣労働者(派遣元の社員として扱われるため)
  • 繁忙期のみ勤務する臨時職員(常時雇用、とは言えないため)

は含まれません。

例えば、常勤しているスタッフが8人で、繁忙期だけスポットのパート・アルバイトとして2名雇っているなど「常時10人以上いる」とは言い難い場合は、作成義務はないことになります。

見せてもらえない場合は労働基準監督署に連絡を

なお、就業規則を作成した場合、労働基準監督署に届け出なくてはいけないのはもちろん

  • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示・備え付ける
  • 書面を交付する
  • ネットワーク上の特定の場所にPDFファイルとして保存する

などの方法により、いつでも従業員が見られる状態にしておかないといけません。

労働基準法 第106条
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第5項及び第6項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び第5項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

逆に、会社の担当者に頼んでも「あなたはアルバイト(パート)だから見せらせません」と言われた場合、それは立派な法律違反になります。会社側が30万円以下の罰金を払うことになるほど、重大な違反とみなされているのです。

労働基準法第120条
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
第14条、第15条第1項若しくは第3項、第18条第7項、第22条第1項から第3項まで、第23条から第27条まで、第32条の2第2項(第32条の4第4項及び第32条の5第3項において準用する場合を含む。)、第32条の5第2項、第33条第1項ただし書、第38条の2第3項(第38条の3第2項において準用する場合を含む。)、第57条から第59条まで、第64条、第68条、第89条、第90条第1項、第91条、第95条第1項若しくは第2項、第96条の2第1項、第105条(第100条第3項において準用する場合を含む。)又は第106条から第109条までの規定に違反した者

万が一、会社に就業規則を作成し、アルバイト・パートを含めた従業員に周知させる(自由に見られるようにする)義務があるにも関わらず、何だかんだと理由をつけて見せてもらえない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。

就業規則は本来、会社で閲覧できるはずのものです。しかし、会社で閲覧できない旨を伝えた場合、まずは経緯について聞き取り調査が行われます。その上で

  • 日を改めて労働基準監督署で就業規則を閲覧できるようにしてくれる
  • 会社に対して閲覧させるよう指導を行う

などの対応をしてくれます。

ただし、会社とは全く関係がない人に就業規則を閲覧させるのは問題があるのも事実です。そのため、労働基準監督署で就業規則を閲覧させてもらう場合は

  • 自分で直接出向く必要がある
  • その会社の従業員(元従業員も含む)かどうか確認するため、身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証など)を用意する必要がある

ことに注意しましょう。

直接責任者に聞いてみる

一方、常時雇用する従業員が10人未満の場合、就業規則の作成は義務付けられていません。会社側が管理のために作成していることもありますが、そうでない場合は直接聞くしかないでしょう。

会社側の責任者に「どうして、私は正社員の人と同じように仕事をしているのに、退職金が受け取れないのですか?」と単刀直入に聞いて構いません。

はぐらかされたら都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ相談しよう

もちろん、相手側が順序だてて話をし、その内容に納得がいったのなら何ら問題はありません。

しかし「そんなこと知らなくて良い」「パートやアルバイトだから仕方がない」など、適当に話をはぐらかしてきたり、いわゆる「逆ギレ」をされたりした場合は、各都道府県に設置されている労働局に相談してください。

各地の労働局には「雇用環境・均等部(室)」といって、正社員とパート・アルバイトとの待遇の格差に対応する部署が設けられています。

出典:厚生労働省「リーフレット パートタイム・有期雇用労働法が施行されました」

まずは相談した上で、会社との話し合いをどのように進めるか考えましょう。なお、自分だけで会社との話し合いをまとめられそうにない場合は、行政ADRを使うのも1つの手段です。都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きが利用できます。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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