たとえ家族であっても、他の人の名前が券面に記載されているクレジットカードを使ってはいけません。しかし、家計を一元管理する意味では、ある程度支出は1つのカードにまとめられたほうが便利なのも事実です。そこで今回の記事では
- 家族名義のクレジットカードを使うのは厳禁である理由
- 家族名義のクレジットカードを使わない代替案
について解説しましょう。
目次
家族名義のクレジットカードを使うのは厳禁である理由
事実上の「成りすまし」であり、詐欺罪が成立するから
理由を一言でまとめると
ということです。
クレジットカードの不正利用の1つに「成りすまし」があります。
たとえ、買い物をした人が誰であろうと、最終的に支払う責任をクレジットカード会社に対して負うのは会員本人です。
クレジットカード会社の側からすれば
ことになります。クレジットカード会社は、このような場合であってもいったんは加盟店に買い物の代金を立替払いしないといけません。
つまり「身分を偽ってクレジットカードを使われ、代金をだまし取られた」状態にあたるため、詐欺罪が成立します。
代理人として使うのは無罪であるものの
しかし、実際のところは
など、本人と実際に使った人が近い立場にあり、しかも本人の許諾を得ているというケースは考えられるはずです。
実は、法律に基づいて考えれば、これは必ずしも違法とは言えません。民法でいうところの代理行為に当たる可能性が高いためです。
民法 第99条
1.代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2.前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
クレジットカードの券面に記名されている人以外の人がクレジットカードを使った場合、詐欺罪に当たるかどうかは、2004(平成16)年2月9日に最高裁判所第二小法廷で判決が下されました。
参照:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
しかし、この判決は
- Aが友達のBからB名義のクレジットカードを借りた(利用分はBに返していた)
- Aはバカラ賭博の店に通い詰めていて、そこで知り合った暴力団関係者のCにB名義のクレジットカードを貸した
- Cはそのクレジットカードを持ち、ガソリンスタンドに行って給油をしようとしたが、様子がおかしいことに気づいた従業員が通報した
という経緯で下されたものです。
クレジットカードの券面に記名された本人と実際に使った人の関係が、同じ家族だった場合、詐欺罪が成立するのかはケースバイケースでしょう。
例えば
など、明らかに同意がない場合は、詐欺罪が成立するかもしれません。しかし「普段の生活費の支払いのために使ってもらうため、夫から妻に渡していた」など、同意がある場合にまで当てはめるのはやや無理がありそうです。
クレジットカードの利用規約に抵触するから
クレジットカード会社の側としても、詐欺に巻き込まれるリスクは限りなく低くする必要があるはずです。そのため、各クレジットカード会社は、利用規約で「クレジットカードの券面に記名された名前の本人以外の人によるクレジットカードの利用」を禁止しています。たとえ、詐欺罪が成立しうる事情がなかった場合であっても変わりません。
何らかのきっかけでクレジットカード会社側に「クレジットカードの券面に記名された名前の本人以外の人が、実際にはそのクレジットカードを使って買い物をしていた」ことが発覚した場合、強制解約などの厳しい処分が下されることに注意しましょう。
家族名義のクレジットカードを使わない代替案は?
家族カードを使う
このような背景を考えると、たとえ家族同士であっても、クレジットカードの貸し借りはしてはならないことがわかるでしょう。しかし、実際は家計の一元管理をしたいなどの理由により、支払いを1つのカードにまとめたほうがいい場合だってあるはずです。
そこで活用してほしいのが、家族カードです。
家族カードのメリット・デメリット
家族カードのメリットとデメリットについて解説しましょう。
メリット
メリットとしては
- 情報を一元管理できる
- 家族もクレジットカードの付帯サービスを受けられる
- クレジットカード本人の利用状況に問題がなければ発行してもらえる可能性が高い
が挙げられます。
情報を一元管理できる
家族カードを追加発行してもらっている場合、利用明細の送付と請求は、クレジットカード会員本人に対してまとめて行われます。誰が、いつ、どこで、いくら使ったのかを、レシートや利用明細と突き合わせて取りまとめる必要もないので、情報を一元管理できるのは大きなメリットです。
家族もクレジットカードの付帯サービスを受けられる
ゴールド、プラチナなど上位ステータス(会員ランク)のクレジットカードには、海外旅行傷害保険やショッピングセンターでの優待、コンシェルジュサービスなど、様々なサービスが付帯しています。家族カードを追加発行してもらえば、家族もそのサービスを同様にうけることが可能である場合がほとんどです。
クレジットカード会員本人の利用状況に問題がなければ発行してもらえる可能性が高い
家族カードでの利用分は、クレジットカード会員本人に対してまとめて請求が行われます。クレジットカード会社にとっては、請求額を回収できないリスクは低いです。そのため、クレジットカード会員本人の利用状況に特に問題がなければ、家族カードも割とすんなりと発行してもらえる可能性が高いでしょう。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 家族間で何を買ったか情報が筒抜けになる
- 追加にあたっては条件がある
- クレジットヒストリーは積み上げられない
が挙げられます。
家族間で何を買ったか情報が筒抜けになる
家族カードでの利用分は、クレジットカード会員本人に対してまとめて請求が行われます。つまり、利用明細を見れば、誰が、いつ、どこで、何を買ったかが筒抜けになってしまうのです。人に知られたくない買い物をする場合は、家族カードを使うのはやめたほうが無難でしょう。
追加にあたっては条件がある
- 家族カードの追加自体ができるか
- 追加できるとしたら枚数の上限はいくらか
- 追加にあたり、発行手数料・年会費は必要か
- 家族カードを支払元にしたETCカードは追加発行できるか
など、家族カードの追加発行にあたっての条件は、クレジットカード会社や、クレジットカードの種類によって異なります。
例えば、楽天カードの場合、家族カードの追加発行自体は可能ですが、家族カードを支払元にしたETCカードの追加発行には対応していません。個々の家庭の状況により、選ぶべきクレジットカードは異なることに、注意が必要です。
クレジットヒストリーは積み上げられない
クレジットカードの利用履歴のことを「クレジットヒストリー(クレヒス)」といいます。クレジットカード会社はクレヒスをもとに、利用限度額の引き上げ・引き下げを行ったり、上位ステータスのカードの案内を行ったりするのです。
しかし、これはあくまで「クレジットカード本会員本人が、本人名義のカードで利用した分」を前提にしています。家族カードをどれだけ使ったとしても、その支払いをするのはクレジットカード本会員である以上、実際に使った人のクレヒスとは言えません。自分の手柄ではない、というとより分かりやすいでしょう。
家族カードを作る流れ
家族カードを作る流れですが、基本的には
- Web上で手続きする
- コールセンターに連絡し、書類を送ってもらう
などのパターンが考えられます。なお、細かい扱いはクレジットカード会社やクレジットカードの種類によって異なるので、事前に確認しましょう。
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