中学は公立・私立のどちらにすべき?メリット・デメリットを徹底比較

地域によってもかなりの温度差はありますが、私立中学に子どもを進学させる家庭は一定数あります。メリットも大きい反面、デメリットも存在するので注意が必要です。今回は、公立中学のメリット・デメリットと対比しながら考えてみましょう。

私立中学に進学する割合はどのくらい?

私立中学への進学率が高い都道府県ベスト10

そもそも、どれぐらいの人が私立中学に進学するのか、大まかな比率をみてみましょう。

公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、2019年度において、私立中学校に通う人の割合が多い都道府県のベスト10は以下のようになりました。

都道府県 全体(人) 私立(人) 私立に通う割合(%)
全国 3,218,137 239,106 7.4
東京 300,377 75,003 25.0
高知 17,232 3,118 18.1
京都 65,551 8,783 13.4
奈良 36,288 4,569 12.6
神奈川 223,830 24,889 11.1
広島 74,394 7,372 9.9
大阪 221,426 21,146 9.5
和歌山 23,809 2,220 9.3
兵庫 143,222 12,197 8.5
宮崎 29,905 1,897 6.3

出典:私立中学校に通う割合はどの程度?|公益財団法人 生命保険文化センター

最も多いのが、東京都で25.0%にも達しています。次点は高知県の18.1%ですが、土佐高等学校など全国的にも有名な私立の進学校が存在するためかもしれません。

しかし、ベスト10にかろうじて入っている宮崎でも、私立に通う割合は6.3%にとどまることからもわかるように「一部の都道府県が、平均値を押し上げている」というのが、実態に近いでしょう。

公立中学に進学するメリット・デメリット

メリット

公立中学に進学するメリットとして

  • 金銭面での負担が少ない
  • 小学校からの友だちと一緒にいられる
  • 中学卒業後の選択肢が多い
  • 多様性を受け入れる経験が積める

の4点が挙げられます。

金銭面での負担が少ない

文部科学省がまとめた「平成30年度 子どもの学習費調査」によれば、公立中学校の1年あたりの学習費(保護者が子どもの学校教育および学校外活動のために支出した経費の総額)は、488,397円でした。

出典:結果の概要-平成30年度子供の学習費調査:文部科学省

詳しくは後述しますが、これは私立中学校の場合の3分の1程度にあたります。家庭における金銭面の負担は、私立に比べると相当低いのが、公立中学校に進学するメリットの1つでしょう。

小学校からの友だちと一緒にいられる

公立小学校を卒業すると、進学先となる公立中学校は住所を基準に1 ~ 3校程度に設定されています。

地域によっては、学校選択制と言って本来の通学区域(基本学区)以外の学校に進学できる仕組みを取り入れていることもありますが、本人が希望しなければ、小学校の同級生と同じ中学校に進学することになるケースがほとんどです。

「小学校からの友だちと一緒にいたい、離れたくない」と思う子どもにとっては、この点が公立中学に進学するメリットになるでしょう。

中学卒業後の選択肢が多い

今では中学卒業後、高校に進学する子どもがほとんどですが、公立中学に行った場合の方が、私立中学にいく場合よりも、選択肢は広いでしょう。附属の高校に上がることを前提にしているわけではないので、自分で学校見学に行き「ここでなら楽しく、意義がある学校生活が送れそう」と思った学校を選ぶことができます。

自主的に考え、動くことができる子どもなら、自由に学校を選べるのはこの上ない魅力です。

多様性を受け入れる経験が積める

公立中学には、私立中学のように入試があったり、高い授業料を払ったりしないといけないわけではないので、様々な家庭環境の子どもが入学してきます。

自分とは全く環境で育ってきた子どもとも仲良くすることで、多様性を受け入れる経験が積めるでしょう。

デメリット

一方、デメリットとして

  • 高校受験が必須
  • 荒れている可能性もある
  • 成績の良い子には物足りない
  • いじめ対策が行き届いていないこともある

が考えられます。

受験が必須

公立中学に進学した場合、卒業後に就職・留学するなど、特別な事情がない限りは、高校受験をすることになります。もともと学力の高い子どもなら特に問題はありませんが、勉強が苦手だったり、体や心の不調で出席日数が足りなくなったりしそうな場合は、高校受験で希望の学校に入れなくなる可能性も高いでしょう。

ある程度は3年後の高校受験を見据えて動かないといけないため、100%のびのびと学校生活を送れるとは限りません。

荒れている可能性もある

公立中学は、私立中学のように学費がかかるわけでも、入試が行われるわけでもありません。そのため、様々な家庭環境の子どもがやってきます。中には、家庭環境に深刻な問題を抱えていて、学校での集団生活になじめず、トラブルを起こす子どももいるのです。

教職員やスクールカウンセラーなどによるフォローが行き届いていない場合、いわゆる「荒れた状態」になってしまうでしょう。公立中学を選ぶ場合は、進学先の学校が荒れているかどうかも、事前にチェックするのが大事です。

成績の良い子には物足りない

公立中学の授業は、基本的にやや勉強が苦手な子に合わせて行われます。そのため、勉強が得意な子、成績の良い子にとっては、授業でやっていることが物足りなく感じてしまうこともあり得るでしょう。

自分1人で先に学習を進めるのは構いませんが、周囲に対して「こんな問題もわからないの?」と尊大な態度をとると、いじめの標的になることもあるので、注意が必要です。

いじめ対策が行き届いていないこともある

公立中学にもスクールカウンセラーを配置する都道府県が増えていますが、その多くは週1~ 2日程度で出勤する非常勤職員です。常に学校にいるわけではないため、すぐに相談できるわけはありません。

また

  • 全ての生徒に平等に接しなくてはいけないこと
  • 自分が担当するクラスで問題が起きると人事考課に響くこと

などから、いじめなどの問題が起きても、被害者の心情を無視した対応に終始してしまう
こともあります。

子どもが自殺するという最悪の事態が起きたとしても、学校が隠蔽し、問
題が全く解決しないことが、可能性としてはかなり低いですが、あり得る点には注意してください。

私立中学に進学するメリット・デメリット

メリット

私立中学に進学するメリットとして

  • 高いレベルの授業を受けられる
  • 子どもの特質に合った学校を選べる
  • 高校受験、大学受験が免除されることもある
  • いじめ対策に力を入れている学校も多い

が挙げられます。

高いレベルの授業を受けられる

私立中学は、入試を行い、一定の学力水準を満たしていると判断された子どものみ入学を許可されます。

基本的に、子どもの学力レベルが高いため、中学入学後の授業もレベルが高く、進度も速いのが特徴です。

いわゆる中高一貫校の場合、高校3年生までの内容を高校1年、2年の時点で終わらせてしまい、高校3年の時点では大学受験対策に特化した授業を行うのも珍しくありません。

子どもの特質に合った学校を選べる

私立中学はそれぞれの学校ごとに、独自の教育方針を打ち出しています。学習に力を入れている学校もあれば、情操教育に力を入れている学校もあったり、キリスト教・仏教などの宗教的な価値観に基づいた教育をしていたりと、実に様々です。

公立中学のように、画一的な教育方針が存在するわけではないので、子どもの特質に合った学校を選べるでしょう。

高校受験、大学受験が免除されることもある

私立中学の場合、高校が併設されていることがほとんどです。高校への進学に当たっては、内部で試験が行われたり、あまりに成績が不振な場合は外部高校への進学を求められたりすることもありますが、公立中学に進学した場合のように、シビアな高校受験を経験しなくてはいけないことはあまりありません。

また、大学までの附属校に通った場合は、大学への内部推薦を受けられることがあるので、大学受験もしなくて済みます。

「受験勉強にとらわれず、自分のしたい勉強ややりたいことを追求してほしい」という考えを持っているなら、子どもを私立中学に行かせることは悪い選択ではないでしょう。

いじめ対策に力を入れている学校も多い

私立中学の場合、公立中学に比べると、生徒から学費を徴収する以上、学校運営に使える予算も多いです。そのため、学校内にスクールカウンセラーを週5 ~ 6日、ほぼ常勤の形で配置するなど、いじめ対策に力を入れている学校も増えています。

もちろん、学内でいじめが起きた場合、加害者を強制退学にし、公立中学への転校を促すなど、かなり強硬な手段を取る学校もあるくらいです。

デメリット

一方、デメリットとしては

  • 金銭面の負担は大きい
  • 地元を離れなくてはいけない
  • 中学卒業後の選択肢は狭い
  • 多様性という意味では物足りない

が考えられます。

金銭面の負担は大きい

私立中学に進学する場合、学費は公立中学に比べるとかなりかかります。先ほど紹介した文部科学省の「平成30年度 子どもの学習費調査」によれば、私立中学の1年間における学習費の総額は1,406,433円とのことでした。

出典:結果の概要-平成30年度子供の学習費調査:文部科学省

また、この数値には表れていませんが、私立中学に進学する場合は、準備のために学習塾に通ったり、家庭教師をつけたりなど、中学に入学するまでの費用がかなりかかります。

早い場合は小学校2年ころから学習塾に入って準備を始めるので、まとまった出費に耐えられるだけの財力がないと、私立中学に通わせることはほぼ不可能でしょう。

地元を離れなくてはいけない

私立中学に通う場合、地元の公立中学へ進学する権利を放棄することになります。生活の拠点が地元から離れてしまうことになるため、小学校の時の友だちと疎遠になってしまうのが実情です。

小学校の時の友だちと同じ中学に行きたい、と願う子どもにとっては、この点がネックになりそうです。

中学卒業後の選択肢は狭い

私立中学に進学した場合、卒業後は併設された高校に進学するのを基本にし、教職員も指導を行います。通ってみたものの、どうしても方針が合わなかったり、他にやりたいことができたりした場合は、他の高校に進学することもできますが、その場合、公立中学に進学した場合と同じように、高校受験をしないといけない点に注意が必要です。

多様性という意味では物足りない

私立中学の特徴として「比較的似た家庭環境の子どもが集まる」ことが挙げられます。公立中学のように、様々な家庭環境の子どもが集まるわけではありません。「世の中いろいろな人がいる」という多様性に触れることはできにくいので、価値観が偏ってしまいがちなのも事実です。

将来、どこかのタイミングで「あなた、世間知らずだよね」といわれてしまう言動をしてしまわないよう、気を付けたほうがいいでしょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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