2021/06/25

父の相続の件で身内でもめないで済む方法

女性50代 みなちゃんさん 50代/女性 解決済み

私には80歳を過ぎた父親がおり、母の死後に再婚しています。父は、再婚した相手に子供達と同じ金額ずつで分けてくれと話しておいたから大丈夫だと言っています。実際、私は父の再婚相手に面識がありますが、人間性がどうかもわからないし、お金が絡んだ場合に人間がどう変わるかも想像がつきません。そのため、父にきちんと遺言書を書いてほしいと思っていますが、父は激昂しやすいタイプのため、なかなか切り出せずにいます。実際に兄弟が父に遺言の話を切り出した時にものすごく激昂したらしいので、相当慎重にそういう話をすべきだと思っています。公正証書のような形でしっかりとした内容の遺言書を作成してもらいたいと伝えるべきなのかと最近思っています。人間だれしも自分の死後の事について準備してくれと言われたくはないと思うので、どうやって父の気分を害さないように伝えればいいのでしょうか?皆さん、同じような悩みを抱えていらっしゃると思うので、良い方法がわかりましたら是非教えていただきたいと思います。

1 名の専門家が回答しています

小島 孝治 コジマ コウジ
分野 相続・介護
50代前半    男性

全国

2021/06/27

確かにみなちゃんのような不安を抱えられている方は多くいらっしゃいます。実際にサポートして一緒に考えて行くことがありますが、父親の性格にも関係するためどの策が最適かはこの文面からですとわかりにくいのが実際のところです。

誰しも自身のことで精一杯になると周りのことが考えられず、性格によっては激昂されるのも仕方ないことなのだと思います。本人も後世のために考えたいと思いつつも、もしかしたら認知機能の低下により認知症の一歩手前(MCI)かも知れず、少し引いて暖かく見守る前提で話をすることで対話が成り立つ場合もあります。責められているように感じると防御本能から攻撃してしまうような感じです。
また、考え方の原則として「遺産=本人の財産」であって相続人(遺族)のものではない、という点は再認識しておくことも重要で、これができるかできないかも争族(遺産争い)の分かれ目と思います。一番揉めるのが「もらえると思っていたものがもらえない、もしくは少ない」という不満からですから、生前にしっかりと認識を共有しておくことも重要です。

一般的に後妻がいる場合は何らかの形で揉めがちですが、すべて原則は法定相続分があり、後妻が半分、子は残りを人数分で按分となります。遺言書がなければこれがベースになり、比率を変えるためには「遺産分割協議」が必要になり、全員の実印(印鑑不要の時代でもここは必要)と印鑑証明書が必要になります。遺言書があれば原則それに従いますが、本来の法定相続分の半分は遺留分として権利が認められています(遺留分減殺請求というのが必要になります)。
ですので、もし後妻やごきょうだい全員を同額にしたい場合はその旨遺言書に記載すれば法的な効力を持つようになります。逆にいうと遺言書がなければ先に書いた比率になります。

遺言書に関しては、自筆でも公正証書でも効力は同じですし、公正証書に記載した後自筆で追記することも可能です。一般的には公正証書の方が確実と主張される方も多いのですが、結構おおごと(巻き込む人も費用も結構かかります)なため取り回しがしづらいデメリットもあります。刻々と状況が変わる昨今では、その度に修正というのもなかなか難しいものです。その点自筆証書遺言の場合は少々大変ではありますが実態に即した対応が可能です。さらに民放改正で昨年始まった新制度では法務局で自筆証書遺言を預かってくれる仕組みが始まりました。私も早速登録してきましたがシンプルでした(多分港区では最初だと思います)。遺言書自体の要件などをご自身で(または専門家のアドバイスで)満たせるようでしたら検討されてみてはいかがですか?費用をかけた公正証書遺言でできなかった新たな機能もあり、個人的にはお勧めです。

ご質問の本題に戻りますが、どのように伝えるか、は様々な方法があります。相手が人間なのでどう反応するかは分からないのですが、ご家族でしたら過去の経験上どのようなことが喜ばれたか、気分を害したかなどをもとにある程度は判断がつくのではと思います。ただ相手の反応をよくするための「傾聴スキル」というのがあり、ある程度テクニックで引き出せるメソッドもあります。質問の仕方を「はい・いいえ」で答えられるように工夫したり、質問の順序を工夫したり、参考にできるものもあるかも知れません。

私の経験上では、「こんなメリットがあります(揉めずにスムーズにすすみますよ)」というのや「こんなデメリットがあります(何もしないと一家離散の揉め事がおきます)」の大きく2パターンあるように思います。たいていは前者なのですが、後者のように危機感から行動につながる場合もあります。今回はもしかしたら後者の方かも知れないなと思いつつ、より詳しく把握できれば具体的なアドバイスも可能かと思います。
たとえば何もしない(遺言書をかかない)場合は「具体的にはこういう分配になります」というのを伝えるとか、「今のままだと確実に揉めそうだけど良いの?」ということを伝えるなどです。本人が問題意識を持たない限り先には進めませんから、その問題意識を持ってもらうために「間接的な」施策が有効になる場合もあります。相続で揉めるドラマ(今後増えると思いますが・笑)を一緒に見る、とか近しい人で揉めた事例を伝えるとかこちらも様々です。

また一般的に後妻=悪みたいな印象を持ってしまう方も少なからずいらっしゃるのも事実ですが、話してみたら意気投合した、誤解していた、想像以上にいい人だった、みたいな場合もありえます。個人的にも法をかざして理論武装するよりは、前向きな対話を心がけて徐々に進める方が結果最良な場合が多いと思います。「北風と太陽」の話を都度思い出します。
争いになると弁護士費用もかかりますし、長期に及べば分割もできず精神的にも参る日々が続きます。何よりも大切な人間関係を失う場合もありますので、そのあたりも共通認識として持っていれば、仮に仲が最悪でも「同意」に至ることは十分あり得ます。根気よく進められるか、早めに専門家のサポートを受けられることも有効かと思います。

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