まずは、年金について考えてみましょう。
「国の年金はあてにならない」とか「公的年金はいずれ破綻する」などといわれているのを見聞きすることがあるかもしれませんが、これらに根拠はありません。
日本の公的年金は、現役世代の払っている年金保険料を、現在の高齢者が年金として受け取る仕組みです。「賦課方式」といって、現役世代が高齢世代に先送りする形式なのです。 若い人たちは「どうせ自分たちは払うだけで、年金をもらう頃には破綻している」と思っている人もいるようですが、年金は国が社会制度として運営管理しているので、日本がなくならない限り、年金制度も破綻することはありません。
また、少子高齢化に伴い、1人の高齢者を支える現役世代の人数が減り、その負担も増えていますが、年金額の抑制(マクロ経済スライド)や、受給開始年齢の引き上げ、消費増税分の投入など、いろいろな方法で年金制度が破綻しないよう制度改正が行われています。
もちろん破綻しなければいいというものではなく、受給額が実質的に減少する覚悟は必要です。「年金版人間ドック」によりますと、「所得代替率(年金の受給開始の額が、現役時代の手取りの何%にあたるか示す率)」は、経済再生ケースで、現在の6割強から将来は50%程度に、約2割低下するといわれていますが、あくまで推測値となっています。
また、「払った保険料ほど年金はもらえない」というイメージは多く広がっていますが、厚生労働省のデータによりますと、厚生年金でみて、現在の50歳では払った保険料の2.8倍(国民年金のみでは1.8倍)の金額がもらえます。なぜならば、国民年金の半分は税金でまかなわれていますし、厚生年金保険料の半分は事業主負担だからです。低金利時代の現在では、「公的年金は有利な投資」といえるでしょう。
ちなみに、現在、高齢夫婦無職世帯の公的年金受給額平均は月約20万円です。しかも終身でもらえます。
次に、老後資金について考えてみましょう。
夫婦2人の老後に必要な資金は、生命保険文化センター調査によりますと、最低必要生活費で月22万円、ゆとりある生活をしたければ月36万円と言われています。
〇最低必要生活費で暮らす場合
20万円/月(公的年金受給額平均)-22万円/月(最低必要生活費)×25年(65~88歳)=約550万円必要
〇ゆとりある老後の場合
20万円/月(公的年金受給額平均)-36万円/月(50代の生活レベル)×25年(65~88歳)=約4400万円必要
年金受給額はあくまで平均ですので、自身の年金受給額によっても老後必要資金は変わってきます。また、平均寿命(男性82歳、女性88歳)ですが、夫婦とも88歳まで生きると想定しています。
なお、老後は悠々自適、海外旅行に行ったり、車を買い替えたり、家のリフォーム代、介護費用も準備したい・・・そんなゆとりを持ちたければ、さらに準備すべき老後資金は増えるでしょう。最後に、老後資金の本質は、実はお金ではありません。なぜならば生活レベルによって老後5000万円必要な人も、1億円必要な人もいるからです。今後の介護費用によっても変わってきますし、リスクはまちまちです。つまり、どんな老後を過ごしたいのか、そのためにどのくらいの資金が必要なのか、どんな計画で実現していくのか。夫婦でじっくり考えて、何よりも自分らしい生き方を見つけていくことが、必要だと思われます。
なお、生活費のほかに、介護費用(1人あたり500万円、夫婦2人で1000万円)は準備しておいた方が良いでしょう。
1 名の専門家が回答しています
関連する質問
老後には実際どれくらいお金がいるのか?
個人的に気になるのは、老後にはどれくらいのお金が必要でどれくらい貯金をすれば老後に何不自由なく生活できるのか気になります。どれくらい貯金をすれば良いのかイメージがわかればそれに向けてどれくらい毎月貯金をすれば良いのかわかるので助かります。また、目標金額まで貯金をするためにどうすればいいのかアドバイスが欲しいです。また、老後のために入っておいた方が良い保険や親の老後のために入っておいた方が良い保険、親のためにどのような準備をしていたら良いのかもいまいちわからないのでその点も教えて欲しいです。また、老後の基本的な自分の準備も分かっていないのでどう準備して、どんなものが必要なのか具体的に教えて欲しいです。


老後資金について年金額や貯蓄しておくべき額を知りたい
老後の資金について、年金等の補償金が国からいくらもらえて、自身の貯蓄からはいくらまかなわないといけないのか知りたい。


離婚した場合の老後のお金について
第二の人生を有意義に過ごすため、離婚を考えています。ただ、離婚した場合、お金についてどのような分担になるのか気になっています。例えば、退職する前に離婚が成立した場合、退職金の一部を相手に払わなければならないのかとか、年金の取り分などです。退職する前に別れた方がいいのか、はたまた退職後に別れた方がいいのか、年金受給前に別れた方がいいのか、どの時期に別れた方がよいのかなやみます。正直、家事も大してやっていない現状があり、1円のお金も渡したくないとあいうのが考えにあります。ただ、痛みを伴わない離婚はないと考えますので、少しでも軽症で済めばと思います。また、これとは別に老後におけるお金の使い方についても学んでおく必要があると考えます。ただでさえ年金が減るのに、うまくやりくりするすべを知りたいなと思っております。


資産運用のデメリット、特に最悪の事態を知りたい
主人が病気で働けなくなり、ここ数年主人の年金と私のパート収入で生計を立てていますが、コロナでパート収入も減り、年齢的に新しい仕事も見つかる気がしません。そもそも年をとれば今までのように働けなくなる可能性もあります。実際、首や背中が痛く、ぎっくり腰にでもなったらどうにもならない、と不安でしかたありません。さいわい親から相続した家はローンはないのですが、木造で、建て替えることができないタイプらしいので、強風や地震のたびに揺れて、倒れるのではないかと不安です。今はまだ貯金もあるのですが、収入が止まったらあっという間になくなる程度の貯金です。一定の収入がまだあるうちに、この貯金額を安全に増やせないものか、資産運用とよく聞きますが、それぞれの商品の違いがよくわからず、やる勇気がもてません。私は何かを決めるときに、メリットの比較よりも、デメリットで比較して決めるので、それぞれの資産運用のデメリット、特に最悪の事態を知りたいと思うのですが、なかなかそういう情報は見つかりませんでした。FPさんから見て、私の老後への不安は一般的なものなのでしょうか。もし、このままではまずいのなら、何をするべきなのでしょうか。


豊かな老後のためにお金をしっかり貯める方法
現在50歳になったばかりの夫婦です。私は専業主婦です。基本的には夫の稼ぎだけが収入源となっています。定年まであと10年になりましたが、お金がなかなか貯まりません。子供がまだ大学生なので学費を捻出しなければならず、貯蓄までまわらないのです。定年までたったの10年しかないのに、きちんとした貯蓄ができていないことが不安でなりません。これからの定年までの残り少ない年月をどのようにして貯蓄を増やすができるか教えていただきたいです。現在は、株を少しと投資信託を少しだけやっていますが、これらもどちらかというと損をしている状態です。私がパートなどで働ければ良いのですが近くに実家があり、高齢の両親の介護もしなければならず身動きが取れません。とにかく気持ちばかり焦ってしまって、空回り状態なので、プロのかたからの適切なアドバイスが必要です。

