携帯電話は、「自分の名前で契約したものを、自分が使う」のが基本でしょう。法人契約であれば、会社が契約して実際に使うのは従業員ということはありえますが、個人レベルでは「他人の名前で契約したものを、自分が使う」ことは基本的にあり得ないのです。
あり得ない理由と、金銭面およびそれ以外の面のダメージについて解説しましょう。
目次
携帯電話の名義貸しとは
冒頭で触れた行為は「携帯電話の名義貸し」と呼ばれています。
自分の名義で携帯電話を契約して第三者に譲渡すること
携帯電話の名義貸しとは
です。これは携帯電話不正利用防止法で禁止されています。
なお、以下の行為も携帯電話の名義貸しと同様、禁止されているので、注意しましょう。
- 携帯電話等の契約時(レンタルの場合も含む)に、虚偽の氏名、住居又は生年月日を申告すること
- 自己名義の携帯電話等(SIMカードも含む)を携帯電話事業者に無断で譲渡すること
- 他人名義の携帯電話等(SIMカードも含む)を譲渡する又は譲り受けること
違法なアルバイトの1つとしても横行している
そもそも、なぜ携帯電話の名義貸しが禁止されているのかについて、考えてみましょう。簡単に言うと「犯罪に悪用されるのを防ぐため」です。
携帯電話を悪用した犯罪の1つに、振り込め詐欺が挙げられます。仮に他人名義で契約した携帯電話を使って振り込め詐欺の電話をかけていた場合、携帯電話の契約者の名義と、犯罪者の名前は違っているはずです。
そのため、振り込め詐欺など、犯罪を目的にしている集団(暴力団などの反社会組織)は、自分たちとは全く関係のない人の名義で携帯電話を契約させ、それを買い取り、犯罪に悪用しようとしています。SNSなどで「楽に儲かるアルバイト」「いいアルバイト」などの名目で募集をかけ
- 携帯電話の名義1つにつき数千円 ~ 1万円ほどで買い取る
- 携帯電話の通話料は買い取った側で払うので、負担は生じない
などの有利に思える条件を持ちかけてくるのです。
携帯電話の名義貸しをすることによるダメージ
携帯電話の名義貸しをすると起こるダメージとして
- 同一名義の回線すべてが利用停止になる
- 料金滞納が発生したら名義人が支払い義務を負う
- 強制解約された場合は今後携帯電話が持てない
- 逮捕される恐れがある
が考えられます。
同一名義の回線すべてが利用停止になる
携帯電話会社も、携帯電話の名義貸しが行われないよう、常に監視を行っています。仮に、名義貸しを疑われる事実を察知した場合は、調査に乗り出し、確証を得た時点で、同一名義の回線すべてを利用停止にするはずです。
料金滞納が発生したら名義人が支払い義務を負う
名義貸しを持ちかけられる際には、相手方から「携帯電話の月額使用料は、ちゃんと払うから」と言われるはずです。約束通りに支払うならまだしも、途中で延滞・滞納を繰り返すことだってあり得るでしょう。
強制解約された場合は今後携帯電話が持てない
月額利用料の延滞・滞納を繰り返していたり、携帯電話会社側が名義貸しの事実を察知したりした場合は、強制解約という極めて重い処分が下されるでしょう。このような場合、残債(支払いが残っている部分)については一括して返済しないといけません。
金銭的なダメージもさることながら、それ以上に大きいのが「今後携帯電話が持てない」ということです。
携帯電話事業者は、一般社団法人電気通信事業者協会を通じて不払者情報の交換をしています。
出典:不払者情報の交換 |一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)
つまり、Aという携帯電話会社を料金の不払いを理由として強制解約になった場合、その情報は共有されています。そこからB、Cなど他の携帯電話会社に新規申込をしようとしても、一定期間(契約解除後5年以内)は受け付けてすらもらえないことに注意しましょう。
クレジットカードやキャッシング、ローンにも影響するので注意を
また、名義貸しをした際に、携帯電話端末を分割で購入していた場合、長期間(目安は61日以上)の延滞・滞納が続くと、割賦販売代金の不払いとして、個人信用情報に異動の登録がなされます。
いわゆる「ブラックリストに載る」状態になるため
- それまでに利用してきたクレジットカード、キャッシング、ローンが強制解約になり、残債の一括返済を求められる
- 新規でクレジットカード、キャッシング、ローンの利用ができない
ことにも注意しましょう。加えて、クレジットカードを使って公共料金や税金を支払っていた場合は、強制解約されることで影響が及ぶので、別の支払い手段をすぐに設定しなくてはいけません。
逮捕される恐れがある
簡単なアルバイト感覚とは言え、携帯電話の名義貸しをすることで、逮捕されるおそれもあるので注意しましょう。
携帯電話不正利用防止法第20条
第二十条 第七条第一項の規定に違反して、業として有償で通話可能端末設備等を譲渡した者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 相手方が第七条第一項の規定に違反していることの情を知って、業として有償で当該違反に係る通話可能端末設備等を譲り受けた者も、前項と同様とする。
つまり、逮捕された場合
- 2年以下の懲役
- 300万円以下の罰金
- もしくはその両方
が課されます。
携帯電話の名義貸しを頼まれたら?
携帯電話の名義貸しは絶対にしてはいけません。仮に頼まれた場合の正しい対応を知っておきましょう。
毅然と断る
最も大事なのは「毅然と断る」ことです。SNSでの「楽なアルバイト」の投稿は無視するのはもちろん、身近な友人・知人から名義貸しを頼まれたとしても、応じてはいけません。
消費生活センターに相談する
仮に、自分や身近な人が、既に携帯電話の名義貸しをしていた場合は、それまでの経緯をまとめて、消費生活センターに相談しましょう。どのように携帯電話会社や警察への申し出をすればいいかについて、アドバイスをくれるはずです。
自分や家族だけでは対応が難しい場合は、消費者トラブルに詳しい弁護士を紹介してもらい、対応について協議するのをおすすめします。
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