住宅ローンの返済は年収の何%まで?無理のない額を知ろう

ずっと欲しかったマイホームを手に入れたとしても、返済に追われてその後の生活に四苦八苦するのは本末転倒です。できることなら、無理のない返済額で、自分たちが望む家を手に入れられるに越したことはないでしょう。そこで、今回は「住宅ローンの返済は、年収の何パーセントまでにすべきか」というテーマについて、考えてみましょう。

住宅ローンの返済負担率とは

話を進める上で、まずは「返済負担率」について理解しましょう。

年収に対する返済額の割合

住宅ローンの審査項目の1つに、返済負担率があります。これは簡単にいうと「年収に対する返済額の割合」のことです。詳しくは後述しますが、これがあまりに高いと、毎月使えるお金から返済分を支払ったら、残りの生活費が少なくなってしまい、生活に困窮する可能性が高まります。

返済負担率があまりに高い状態で、住宅ローンを組むのは危険でしかない、ということをまずは覚えておきましょう。

フラット35の場合は30%もしくは35%が上限

実際のところ、金融機関や各種公的機関は、返済負担率についてどう考えているのかも探ってみましょう。住宅金融支援機構は、民間の金融機関と提携し、固定金利型の住宅ローン・フラット35を提供しています。

フラット35には様々な利用条件が設けられていますが、返済負担率もその1つに含まれているのです。2021年2月現在は、以下のように設定されています。

  • 年収が400万円未満 :30%
  • 年収が400万円以上 :35%

出典:10月よりフラット35のご利用条件を簡素化します(【フラット35】(保証型)も同様に簡素化します):長期固定金利住宅ローン 【フラット35】

つまり、年収が350万円の人なら毎年の返済額が105万円まで、年収が500万円の人なら、毎年の返済額が175万円までに抑えられることが、フラット35を利用する上での条件の1つになるのです。

金融機関によっても認識は様々

一方、都市銀行、地方銀行などの金融機関が独自に提供する住宅ローンの場合、返済負担率の上限をどのように考えているのかは、まちまちです。

国土交通省がまとめた「民間住宅ローンの実態に関する調査」の結果から、確かめてみましょう。

返済負担率の上限 回答数(件)
50%以内 5
45%以内 37
40%以内 39
35%以内 30
30%以内 12
20%以内 4
の他  113 

出典:国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」

回答にばらつきはありますが、35% ~ 45%以内と設定している金融機関が多そうな印象を受けます。

現実的には25%程度が理想

もちろん、35% ~ 45%以内というのは、あくまで「審査に通過する可能性がある上限額の目安」です。つまり、年収が400万円の人なら、毎年140万円から180万円を住宅ローンの返済に回すことになります。

年収400万円といっても、税金や社会保険料を差し引くと、実際に使える金額(手取り収入)はその8割程度になるはずです。仮に毎年自由に使えるお金が320万円とした場合、実質的には手取り収入の半分近い金額を住宅ローンの返済に回さないといけません。

このような事情を考えると、現実的には年収の25%程度を住宅ローンの返済に回す前提で、借入可能額を見積もったほうがいいでしょう。

返済負担率が高いと審査落ちの可能性も

もちろん、住宅ローンの審査の成否は返済負担率だけで決まるわけではありません。そのほかにも

  • 現時点での年齢
  • 完済時の年齢
  • 年収
  • 雇用形態
  • 勤続年数
  • 融資希望額
  • 健康状態

などが審査においては重視されます。

仮に、返済負担率が多少高かったとしても、その他の項目の評価が良ければ、審査に通ることは十分にあり得ます。しかし、審査に通る確率を高めるためには、1つ1つの項目の評価が良いことに越したことはありません。

返済負担率も、可能な限りは低く抑えましょう。

生活防衛費は常にプールしておくこと

また、返済負担率とは直接の関係はありませんが、住宅ローンを組む際は、生活防衛費としてある程度まとまった金額を手元に置いておくようにしましょう。

生活防衛費とは文字通り「生活を守るためのお金」です。つまり、病気やケガをしたり、会社の業績が急激に悪化したりした場合、当面の生活費として使える貯蓄を指します。

生活防衛費の目安ですが、会社員など組織に雇用されて給料をもらっている人なら半年分の手取り収入、フリーランスや自営業の人なら1年分の手取り収入を用意しましょう。

会社員など組織に雇用されて給料をもらっている人の場合、傷病手当金があるため、病気やケガで仕事ができなくなったとしても、最大1年6カ月までは、給料(厳密には標準報酬月額)の3分の2が支給されます。

しかし、自営業やフリーランスにはそのような制度はないため、少し多めに見積もる必要があるのです。

年収と返済負担率から借入可能額を計算してみよう

家を購入する場合、まずは予算を立てる必要があります。

その時に考えたいのが「自分の年収なら、いくらまでの借り入れなら、無理なく返済できそうか」という目安です。

そこで今回は、以下の条件を設定し、年収400万円 ~ 800万円の場合の5パターンに分けて、概算の借入可能額を計算してみました。

  • 融資金利:1.320%
  • 返済期間:35年
  • 返済方法:元利均等返済

なお、計算にあたっては、住宅金融機構「フラット35」の公式ホームページで公開されているシミュレーターを用いています。

参照:毎月の返済額から借入可能金額を計算:【フラット35】

年収400万円の場合

年収400万円の場合、返済負担率を25%とすると、毎年の返済額はおよそ100万円になります。毎月85,000円返済すると考えた場合、概算での借入可能額は2,857万円になります。

年収500万円の場合

年収500万円の場合、返済負担率を25%とすると、毎年の返済額はおよそ125万円になります。毎月105,000円返済すると考えた場合、概算での借入可能額は3,530万円になります。

年収600万円の場合

年収600万円の場合、返済負担率を25%とすると、毎年の返済額はおよそ150万円になります。毎月125,000円返済すると考えた場合、概算での借入可能額は4,202万円になります。

年収700万円の場合

年収700万円の場合、返済負担率を25%とすると、毎年の返済額はおよそ175万円になります。毎月150,000円返済すると考えた場合、概算での借入可能額は5,042万円になります。

年収800万円の場合

年収800万円の場合、返済負担率を25%とすると、毎年の返済額はおよそ200万円になります。毎月170,000円返済すると考えた場合、概算での借入可能額は5,715万円になります。

返済負担率が高くなりそうな場合は?

自分の希望に沿ったマイホームを取得する場合の予算を考えたときに、返済負担率があまりに高くなるようであれば、計画自体を見直したほうがいいのは事実です。例えば

  • 新築にこだわらず、中古の物件も当たってみる
  • 各駅停車のみ停まる駅の周辺の物件を探してみる

など、工夫次第で予算を下げられることは十分にあり得ます。

家はほとんどの人にとって、一生で一番高い買い物になる以上、途中で不本意に手放すのはできれば避けたいはずです。自分にとって何が大事で、何なら妥協できるかを考え、悔いのないプランを考えましょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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