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高齢出産の夫婦が直面するお金の悩みとは
高齢出産の夫婦が直面するお金の悩みを一言でまとめると「教育費と老後資金を同時に貯めなければいけない」に尽きます。
教育費と老後資金を同時に貯めなければいけない
20代~30代前半で子どもを授かったのであれば、子どもが成人してもお互い40代~50代前半であるため、定年まで数年の猶予は残されているでしょう。しかし、30代後半以降であれば、子どもが成人した時点で定年間近であるか、すでに定年を過ぎていることは十分に考えられます。そこで「何年でいくら貯めなくてはいけないか」をシミュレーションしてみましょう。
次のような夫婦を想定します。
- 夫:41歳、会社員(正社員)
- 妻:39歳、会社員(正社員)
- 妻は出産後、1年半育児休暇を取得し、その後同じ勤務先に復帰予定
- 夫は41歳、妻は39歳の時点で出産
教育費の目標金額
最も一般的な「高校までは公立、大学のみ私立(文系学部)」というパターンを想定し、大学卒業までの費用を算定してみましょう。
文部科学省が発表した「平成30年度子供の学習費調査」によれば、公立幼稚園・公立小学校・公立中学校・公立高校で1年間にかかる費用の平均値は以下の通りでした。
- 公立幼稚園:22万3,647円
- 公立小学校:32万1,281円
- 公立中学校:48万8,397円
- 公立高校:45万7,380円
一方、同じく文部科学省の「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」によれば、平成30年度私立大学文系学部の学費(授業料、入学料、施設設備費)の平均は以下の通りです。
- 授業料:785,581円
- 入学料:229,997円
- 施設設備費:151,344円
- 合計:1,166,922円
出典:私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について:文部科学省
ここから「小学校~高校まで公立で、大学だけ私立(文系学部)」というパターンで進学した場合、必要経費の総額はいくらになるか、計算してみました。
学校 | 1年間の学費(円) | 年数(年) | 合計(円) |
---|---|---|---|
公立小学校 | 321,281 | 6 | 1,927,686 |
公立中学校 | 488397 | 3 | 1,465,191 |
公立高校 | 457380 | 3 | 1,372,140 |
私立大学(文系学部) | 785581 | 4 | 3,142,324 |
また、大学の場合、入学料と施設設備費として
がかかります。これらを合計すると、8,288,682円 = 約830万円かかる計算です。
仮に、約830万円を子どもが17歳になるまでに貯めるには
を毎年コンスタントに貯めなくてはいけない計算になります。
老後資金の目標金額
22歳で子どもが大学を卒業すると考えた場合、夫は63歳、妻は61歳になっています。仮に、85歳までの夫婦2人の生活費を老後資金として想定した場合、22年間でいくら必要になるのか考えてみましょう。
公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によれば
- 夫婦2人で老後生活するための最低限の費用:平均221,000円
- 老後にゆとりのある生活を送るための1カ月の費用:平均361,000円
とのことでした。
出典:老後の生活費はいくらくらい必要と考える?|公益財団法人 生命保険文化センター
また、総務省の家計調査報告(2018年)によれば、2人以上の世帯のうち、高齢無職世帯の実収入は222,335円でした。
計算しやすくするために
- 1カ月の収入:約22万円
- ゆとりある生活を送るための1カ月の費用:約36万円
- 65歳から85歳までの20年間を老後とする
という前提で考えた場合、必要な費用は
となります。仮にこれを夫が41歳から65歳になるまでの24年間で確保しようとすると、 1年間で貯めなくてはいけない金額は
となります。独身時代からの貯金や退職金が見込めるなら、実際に貯める必要がある金額は多少は下がるはずですが、見込めないならかなり大変かもしれません。
実際、どれだけの資金が必要になるかは、老後にどんな生活を送るのか、どこで暮らすかによっても異なります。いずれにしても、ある程度はまとまったお金がないと厳しいのは事実です。
だからこそ、まとまった金額を確保する方法として
- 節税ができる資産形成方法を使う
- 家計における支出の無駄を省く
- できるだけ長く働く
の3点は意識してください。
ポイント1.節税ができる資産形成方法を使う
節税ができる方法で資産運用をするのも、教育費と老後資金を貯める上で有効です。代表的な方法として
・NISA、つみたてNISA
・iDeCo
の3つについて説明しましょう。
NISA、つみたてNISAのメリット・デメリット
NISAとは、専用の口座を用いて取引を行うと、株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度のことです。日本語では、少額投資非課税制度といいます。
また、つみたてNISAとは、少額からの長期積立分散投資を支援するための非課税制度です。
両者の違いを表にまとめました。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
対象者 | 日本に住む20歳以上 | |
投資方法 | スポット購入・積立方式 | 積立方式 |
年間投資上限額 | 120万円 | 40万円 |
非課税となる期間 | 最長5年 | 最長20年 |
対象商品 | 国内株式・外国株式・投資信託 | 国が定めた基準を満たした投資信託 |
非課税対象 | 対象商品にかかる配当金・分配金、売却益 | |
口座開設期間 | 2023年開始分まで | 2042年開始分まで |
金融機関変更 | 各年ごとに変更可能 |
メリット
本来、上場株式や株式投資信託などの金融商品に対する利益・配当金・分配金には所得税(20.315%)がかかります。しかし、NISA口座の非課税枠内(年間120万円まで)で取引を行う分には、税金がかかりません。
デメリット
一般的な証券口座(特定口座、一般口座)を通じての取引を並行して行っている場合、NISA口座で発生した利益・損益と、一般的な証券口座で発生した利益・損益を損益通算することはできません。
加えて、一般的な証券口座を通じた取引で認められている、譲渡損失の繰越控除もできません。
また、つみたてNISAの場合は国が定めた投資信託・ETF(上場投資信託:金融商品取引所で取引される投資信託)のみにしか投資ができません。上場会社株式など、幅広い範囲から商品を選びたい場合は、NISAを選びましょう。
iDeCoのメリット・デメリット
iDeCoとは、個人型確定拠出年金の愛称です。簡単にいうと、毎月掛け金を積み立てて金融商品(定期預金・保険・投資信託など)を運用し、老後に必要な資金を積み立てていくと考えましょう。
メリット
メリットを一言でまとめると「税制上のメリットが大きい」ことが挙げられます。
まず、iDeCoで毎月掛金を支払うと、その掛金は全額所得から控除できます。つまり、所得税や住民税を計算する際に差し引くことができるので、結果として税金が安くなるのです。
また、iDeCoを通じて投資信託を売買して利益が出たり、定期預金の利息を受けとったりした場合であっても、税金はかかりません。
さらに、iDeCoで積み立てたお金を受取る場合
- 一度にまとめて受け取る場合:退職所得控除
- 年金として分割で受け取る場合:公的年金等控除
が使えます。
デメリット
一方、デメリットとしては
- 60歳まで途中解約ができない
- 金融商品を運用する以上、損をする可能性はある
- 加入時、運用時に金融機関所定の手数料がかかる
が挙げられます。
以上の3つを比較してみましょう。
種類 | つみたてNISA | NISA | iDeCo |
---|---|---|---|
最大期間 | 20年 | 5年 | 60歳まで(運用はさらに10年の延長が可能) |
ロールオーバー | 不可 | 可能 | (設定なし) |
非課税枠(年間) | 40万円 | 120万円 | 加入する人の職種などによって異なる |
非課税枠(総額) | 800万円 | 600万円 | 加入する人の職種などによって異なる |
節税メリット | 運用による利益は非課税 | 運用による利益は非課税 | 運用による利益は非課税。掛金分は全額が所得控除可能。受け取り時にも控除が受けられる |
投資対象 | 一定の条件に合った株式投資信託、ETF | 国内・国外の上場株式、株式投資信託 | 株式・債権、リート、金などに投資する投資信託、定期預金など |
ポイント2.家計における支出の無駄を省く
普段の生活を見直すことも、コンスタントに貯めていくためには必要です。ポイントとして
- 節約したいなら固定費から見直す
- 習い事、塾通いは本人の意思を重視する
の2つについて解説しましょう。
節約したいなら固定費から見直す
節約効果の高さを求めるなら「固定費をできるだけ削る」のが最も効果的です。例えば
- 携帯電話を格安スマホにする
- 住宅ローンの借り換えをする
- 使っていない月額サービスは解約する
- 保険の見直しをする
などがあげられます。
習い事、塾通いは本人の意思を重視する
子どもに習い事をさせること自体は悪くありません。また、年齢が上がれば、受験対策の一環として塾通いも視野にいれないといけないでしょう。
しかし、親がやらせたいからという理由で、子どもの気が進まない習い事をさせないようにしましょう。無駄な出費になる上に、子どものやる気をそいでしまいかねません。
ポイント3.できるだけ長く働く
ある意味、最も重視すべきポイントは「できるだけ長く働く」です。
定年後も働くのは基本
仮に、夫が41歳、妻が39歳の時点で子どもを授かった場合、子どもが大学に入学するタイミングで夫が定年を迎えることになります。教育費に関しては1つの区切りがつくので、そこからの生活費をどうやって賄うかが問題になるでしょう。
十分な蓄えができたなら、その限りではありませんが、現実的にはなかなか厳しいはずです。いざというときに慌てないためにも、定年後も働くことを基本にして、ライフプランを立てましょう。
定年後の働き方として一般的なのは、嘱託・契約社員としてこれまでの勤務先の会社に再雇用してもらうことです。一見、これまでと何ら変わりないように思えますが、定年前(正社員であると想定)と比べると、勤務形態や収入の面で大きな差があるのに注意しましょう。
働き方 | 正社員 | 嘱託・契約社員 |
---|---|---|
雇用形態 | 無期雇用 | 有期雇用 |
雇用主 | 就業先 | 就業先 |
契約期間 | 無期(定年あり) | 有期(1年更新、65歳までのことが多い) |
労働時間 | フルタイム | フルタイム、短時間 |
報酬 | 月給、年俸 | 月給 |
ボーナス | ある場合が多い | ない場合が多い |
部署の移動 | ある場合が多い | ない場合が多い |
退職金 | ある場合が多い | ない場合が多い |
資格を取って独立起業も視野に
一言でまとめると、定年後も嘱託・契約社員として同じ会社に勤め続ける場合、収入が一気に減ってしまうことは十分に考えられます。既に子どもが独立していて、夫婦2人でやっていく前提ならあまり問題はありません。しかし、定年を迎えた時点で子どもがまだ学生である可能性が高いなら、収入の低さがネックになるでしょう。
嘱託・契約社員として働くのではなく、資格を取得して独立起業するなど、収入を増やす方法を考えましょう。
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