中古車販売店の中には自社ローンを導入しているところがあります。詳しくは後述しますが、その中古車販売店が独自に運営する、中古車購入代金の分割払いのシステムのことです。
信販会社や消費者金融、銀行などの金融機関との提携に基づかないため「自社」という言葉が使われています。便利な仕組みではあるものの、注意すべき点もいくつかあるので、利用する前に理解しておきましょう。
目次
中古車販売店の自社ローンとは
基本的な仕組み
最初に、中古車販売店の自社ローンの基本的な仕組みを理解しておきましょう。
銀行や信販会社、消費者金融などの金融機関が提供する自動車ローンを利用する場合、金融機関による審査を受けて、合格すれば融資が実行され車が買える仕組みです。
そのため
- 一度金融機関を通すので時間がかかる
- 個人信用情報に異動が登録されている場合、審査に通らない
などの問題点が考えられます。
一方、自社ローンの場合、中古車販売店が独自に審査を行い、直接ローン契約を行います。申し込んだ人は、毎月中古車販売店に対し、支払いを行っていく仕組みです。
利用の流れ
個々の中古車販売店によって細かい部分は異なりますが、一般的な利用の流れについても理解しておきましょう。
↓
自社ローンを使いたい旨を伝え、審査を受ける
↓
審査に通れば融資が実行される
なお、審査を受ける際には以下のものを用意しましょう。
- 運転免許証
- 収入を証明できるもの(源泉徴収票)
- 印鑑
他にも提出を求められたものがあれば、適宜用意してください。
中古車販売店の自社ローンを利用するメリット
手続きの窓口を一本化できる
中古車販売店の自社ローンを利用するメリットについて考えてみましょう。メリットの1つとして挙げられるのは「手続きの窓口を一本化できる」ことです。
金融機関が提供する自動車ローンの場合、仮審査まではWebで対応できても、本審査の際は店舗に足を運ばないといけないことも少なくありません。
しかし、中古車販売店の自社ローンを利用するのであれば、すべての手続きを中古車販売店の中で完結させられるので、二度手間になることはありません。
審査に通りやすい
中古車販売店の自社ローンと金融機関が提供する自動車ローンの決定的な違いの1つに、審査基準が挙げられます。
金融機関が提供する自動車ローンの場合、申込者本人の属性や個人信用情報に基づいた厳密な審査が行われるため
- 勤続年数が短い
- 起業して間もない状態である
- パート、アルバイトとして働いている
- 派遣社員・契約社員である
- 転職して1年以内である
- 新社会人である
- 自己破産、任意整理などの理由で個人信用情報に異動が登録されている
など、支払能力に少しでも疑念が生じる状態では、審査に通ること自体が難しいです。
しかし、中古車販売店の自社ローンの場合は、その店舗独自の基準により審査を行うので、上記の理由により、通常の自動車ローンの利用が難しい場合でも、審査に通るチャンスは十分にあります。
中古車販売店の自社ローンを利用するデメリット
通常の自動車ローンを組んだほうが安上がりなことも
一方、デメリットもあります。中古車販売店の自社ローンの中には「金利はゼロ円」とうたっているものも少なくありません。一見すると、安上がりになると安心してしまうでしょう。
しかし、同じ車種・年式、同じくらいの走行距離の車であっても
- 自社ローンを導入している店舗で自社ローンを利用して購入する
- 自社ローンを導入していない店舗で自動車ローンを利用して購入する
場合とでは、後者の方が安上がりになることは十分に考えられます。
もちろん、個人信用情報に異動が登録されている場合は、自動車ローンを一定期間(最大で10年)使えないので、自社ローンを使わざるを得ません。
しかし、自動車ローンの審査基準も、金融機関によってばらつきがあるのが事実です。
両者を比較して、どちらの方法を使うと、より総支払額を安くできるのかは、一度確認しておくといいでしょう。
導入している中古車販売店がそう多くない
実際のところ、自社ローンを導入している中古車販売店はそう多くありません。理由を考えてみましょう。
そもそも、金融機関が提供する自動車ローンの審査が厳しいのは、一言でまとめると「何としても貸し倒れないようにしないため」です。つまり、延滞・滞納による損害を被ることがないよう、申込者の支払能力を厳密に審査した上で、利用の可否を判断しています。
仮に、審査に通ったとしても、延滞・滞納が頻繁にあった場合は、強制解約をした上で、残債の一括返済を求められる可能性はゼロではありません。
一方、自社ローンの場合、支払能力に問題があるケースであっても、審査に通ることは珍しくありません。当然、審査に通した人の中から、延滞・滞納を繰り返す人は出てくるでしょう。
このような実情を考えると、ある程度資金に余裕がある中古車販売店でないと、自社ローンを導入することはできません。
保証人は必須
もちろん、中古車販売店も、自社ローンを導入することによるリスクは認識し、対策を講じています。その1つが保証人です。
金融機関によっても多少扱いに差はありますが、一般的な自動車ローンの場合、保証人や担保は不要である場合が多いです。
参照:自動車ローン・マイカーローン|カードローン・各種ローン|イオン銀行
一方、中古車販売店の自社ローンの場合、保証人が必須である場合がほとんどです。
そして、保証人を誰かに頼む場合、重要になるのは「その人の支払能力」です。ただ身近な人であるだけでなく、定職についていて、一定の収入が継続的に入ることが条件になります。
中古車販売店が倒産した場合車を失うことも
自動車を自動車ローンを組んで購入した場合、完済するまで、その車の所有権は金融機関にあります。これは、中古車販売店の自社ローンでも変わりません。
つまり、自社ローンを完済するまでは「中古車販売店が所有する車を、自分が運転させてもらっている」という状態にある、と考えましょう。
問題なのはここからです。仮に、中古車販売店の経営が思わしくなく、倒産してしまった場合、債権者への返済に充てるため、所有する財産を売却することになります。
財産の中には当然「中古車販売店が所有する車」も含まれるのです。このような場合でも「実際に運転しているのは誰か」というのは勘案されません。つまり、自分が運転している車も差押えられてしまう可能性があるのです。
なお、大手シンクタンクの帝国データバンクによれば、2018年の中古車販売業の倒産件数は、全国で98件とのことでした。
出典:帝国データバンク「自動車小売業の倒産動向調査(2018年)」
自分が利用していた中古車販売店が倒産する、ということもあり得ない話ではありません。
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