夫の起業で妻の嫁ブロックが発動する3つの理由と対処法

「嫁ブロック」という言葉があります。夫が転職や独立起業を考えた場合に、妻の強硬な反対に遭うことを指す俗語(スラング)です。

本気で独立起業をしようと思うなら、まずは最も身近かつ大切な人である妻を説得できなくてはどうしようもありません。しかし、嫁ブロックが原因で独立起業を断念したり、残念ながら離婚したりすることがあるのも事実です。

そこで今回の記事では「なぜ、夫が起業すると言い出すと、妻は嫁ブロックを発動するのか」というテーマについて、理由と対処法を考えてみましょう。

経済的な安定を捨てたくない

今の勤務先が大手企業であればなおさら

大きな理由の1つとして考えられるのは「経済的な安定を捨てたくない」です。より砕けた言い方をするなら「貧乏になるのが怖い」「今の生活レベルを落としたくない」といったところでしょう。

どんなに優秀な人であったとしても、独立起業してすぐのうちはなかなか顧客が付かないことも多く、しばらくは貯金を取り崩して生活する羽目になるのが基本です。特に、これまで夫が給料もそれなりに高く、福利厚生も充実している大手企業に勤務していた場合は、独立起業することで、生活レベルを大幅に落とさなくてはいけない可能性が一気に高まります。

人生において大切なのは、お金だけではありません。しかし「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉にもあるように、お金がないと精神的な余裕もなくなるため、夫婦間のいざこざも起きやすくなるのです。

【対処法1】生活費の1年分は貯めておく

この問題の対処法としては、独立起業する前に、生活防衛費として、会社員時代の手取り収入の1年分は最低でも貯金しておくことが挙げられます。つまり「1年間、収入がゼロ円になったとしても、生活ができるだけの蓄えをしておく」ということです。

本来、生活防衛費は手取り収入の半年分を貯めておくのが相場といわれています。しかし、これはあくまで会社員を前提とした数字です。

独立起業した場合、会社員の時のように、毎月決まった給料が振り込まれるわけではありません。また、病気やケガで働けなくなった場合も、会社員の時のように労災保険給付や傷病手当金が受け取れるわけではないので、保障を手厚くするという意味でも、かなり多めに見積もっておく必要があります。

【対処法2】まずは副業として実績を出す

また、いくら有名な企業に勤めていたとしても、合格率の低い資格試験に合格していたとしても、独立起業して大事になるのは「その人が売り上げを立てられるかどうか」の一点のみです。もし、本気で家族を説得したいと思うなら、会社に在籍しているときから、独立起業を見据えて副業をし、ある程度の結果を出せるか試したほうがいいでしょう。

副業として行って結果が出せなければ、本業として取り組んでも結果が出せる可能性は極めて低いので、一度考え直したほうが身のためです。

夫だけが自由にふるまうのが妬ましい

結婚生活に対する不満が一気に噴出する可能性もある

経済的な問題以外にも、嫁ブロックが発動する原因はあります。特に、子育て中かつ共働きの家庭において、夫が独立起業の話をしたときに「なんであなただけ自分の好き勝手にやろうとするの!?」と、妻が不満を爆発させるのは珍しくありません。

独立起業に反対、という話だけではなく、これまでの結婚生活に関する愚痴のオンパレードになるのも、十分に考えられるでしょう。その原因の1つに「多くの家庭で、妻に家事の負担が集中し、行動に制約が生じている」という事実が挙げられます。

夫婦間での家事の分担が叫ばれてはいるものの、お互いの不満がない状態で分担できている夫婦はまだまだ少数派です。大手ハウスメーカー・大和ハウス工業が行った「共働き夫婦の「家事」に関する意識調査」によれば、家事の全体量を10割とした場合、妻がその7割以上を担っていると回答した割合は、80.9%にも上りました。

出典:共働き夫婦の「家事」に関する意識調査 第1回 家事への意識の違い編|家づくりを知る|TRY家guide(トライエガイド)|ダイワハウス

つまり、妻が「自分は家事も仕事も子育ても頑張っている。それなのに、夫はあまり手伝ってくれないばかりか、自分のやりたい仕事をしたいから独立起業を考えているというのは許しがたい」と思ったとしても、何ら不思議ではありません。

【対処法】家事の手伝い、効率化には協力する

仮に、夫が独立起業を考えた場合、妻がどれだけ友好的に話を聞いてくれるかは、普段の生活態度によるところも大きいです。家事についても、妻ばかりに負担がかかっているようでは、妻が心のどこかで「この人は何一つ手伝ってくれない、自分のことばかり」といつのまにか不満を貯めこんでいるかもしれません。

夫婦共働きであっても、専業主婦であっても、家事についても「協力できることはやる」というスタンスでいましょう。

家事に協力できる時間があるなら、自分ができることを申し出て手を動かすのが大事です。

また、毎日仕事が忙しく、協力できる余力がないなら

  • 食器洗浄機やロボット掃除機など、妻の家事の負担を減らせる家電製品の購入を検討する
  • 家事代行サービスやクリーニング店の利用など、家事の負担を減らせるサービスを使う

など「負担を減らすためにできること」を提案してみてください。

ある程度、妻が「自分ばかりに負担がかかっている」という不満を解消できているなら、独立起業の話にも耳を傾けてくれるようになるはずです。

夫の決意があいまいで信用できない

普段からコミュニケーションの少ない夫婦は要注意

逆に、お互い仕事が忙しく、普段からコミュニケーションをあまりとれていない夫婦の間で、嫁ブロックの原因になるのが「夫の決意があいまいで信用できない」です。より砕けた言い方をするなら「夫が何を考えているのかわからない」というところでしょう。

特に、これまで夫が特に何の問題もなく会社勤めをこなしてきたにも関わらず、いきなり独立起業の話を持ち掛けてきたら、ほとんどの妻が驚き、戸惑うはずです。しかも、はっきりとした理由も伝えられず「俺、会社辞めて起業しようと思うんだけど」と言われて、Yesと言える妻はまずいないと考えましょう。

【対処法】なぜ起業したいのか、背景を含めて丁寧に話す

普段からコミュニケーションが取れている夫婦なら、実際に独立起業を決意するに至るまで、お互いが何を考えているのか、何に悩んでいるのかわかるはずなので、独立起業の話が出たとしても、感情的になって話し合いにならない、ということは考えにくいでしょう。

しかし、普段からのコミュニケーションが希薄だった場合は、まず夫が取り組むべきなのは「なぜ起業したいのか、背景を含めて丁寧に話す」ことです。独立起業を考えた理由についても

  • 会社で与えられた仕事をこなすだけではなく、自発的に取り組める環境で働きたい
  • 仕事自体は好きで、一生続けたいが、会社の人間関係の悪さに辟易している

など、自分なりに筋の通った理由を伝えましょう。伝えたからといって、手放しで賛成してもらえるとは限りませんが、感情的になって話し合いにならないケースも減らせるでしょう。

そして、何よりも大切なのは「自分が独立起業したとしても、家族を路頭に迷わせたりはしない。だから、安心してついてきてほしい」と、一点の迷いもなく伝えることです。これができないようなら、独立起業は考え直したほうがいいでしょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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