転職したいのに会社の引き止めがしつこい!状況別・強行突破で退社する方法

  • 人手が足りないから、という理由で自分に回される仕事が多く、毎日帰宅時間が遅い
  • 人間関係になじめず、毎日会社に行くのが辛い

など、様々な理由で今在籍している会社を辞めることを考えている人は一定数いるでしょう。それ自体は何ら不思議ではないし、体や心を壊してまでし続けなくてはいけない仕事なんでこの世にはありません。

何をどう頑張っても改善しないなら、会社を辞めて転職活動をするか、体調が戻るまでしばらく休むかを考えるのも1つの手段です。

しかし、会社の中には退職を申し出た社員に対し、しつこく引き止めを行ってくるところも存在します。引き止められた結果、どう動くかはその人次第ですが、強行突破をした方が良い場合だってありうるのです。

そこで今回は、会社を辞めて転職したいのに、しつこく引き止めにあった場合に、強行突破で退社する方法について解説しましょう。

そもそも会社の引き止めは違法なの?

正当な理由があれば違法とは限らない

本題に入る前に、そもそも会社が退職の意向を示した社員に対し、引き止めを行うことが違法なのかどうかについて触れておきましょう。例えば

  • 従業員が待遇への不満を理由に退職の意向を示した場合に「待遇の改善を行うので、考え直してほしい」と伝える
  • 「今は繁忙期なので、繁忙期が終わる〇月まで待ってほしい」と退職にあたっての条件を示す

という形での引き止めは、直ちに違法とは言えません。これらはあくまで「譲歩を伴うお願い」に過ぎず、最終的にどうするかは社員の意思に任されるためです。

「在職強要」に当たるなら違法

一方、社員の意思を全く無視して、力づくで在職を強要する行為は違法に当たります。例えば

  • 退職の意向を伝えても無視され、大量の仕事を振られる
  • 退職届を受理してもらえない、隠される
  • 「辞めたらお前はこの業界でやって行けなくなるからな」などと脅迫される
  • 「退職によって会社に損害が発生するので損害賠償請求をする」と脅迫される
  • 「後任が見つかるまで待って欲しい」と期限が曖昧な条件で強引に引き止められる

などは、違法となる可能性が極めて高いです。

なお、実際の判断は労働基準法第5条における「強制労働の禁止」に抵触するかどうかを照らし合わせて行うことになります。

労働基準法 第5条

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

もし、被告である会社側が行ってきた「退職の意向を示した社員への引き止め」が強制労働にあたると判断された場合は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」が課されます。

最終的な判断は、裁判を経て行うことになりますが、会社にとって極めて重いペナルティであることには変わりありません。

もし、今、会社からのしつこい引き止めにあっている人は「こんなことを続けていたら、不利になるのは会社なんだから」と強い気持ちを持ち、冷静に対応しましょう。

状況別・引き止めがしつこい会社を強行突破で退社する方法

【前提】労働者の退職は原則自由

本来、会社を辞めること = 労働者が退職することは自由です。雇用期間の定めがある場合(パート・アルバイト、契約社員・派遣社員など)とない場合(正社員)とに分けて、さらに詳しく説明しましょう。

雇用期間の定めがある場合

雇用期間の定めがある(例:3カ月、半年、1年ごとに契約更新など)場合は、本来は契約期間が終了するまでは退職できません。

しかし、実際はやむを得ない理由(本人や家族が病気・ケガをした、配偶者の転勤についていくことになったなど)があれば、退職が認められる場合も多いです。

加えて、労働基準法第137条では「最初の契約から1年以上経過しているなら、いつでも退職できる」と明記されています。

労働基準法 第137条

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

結局のところ「仕事を続けられない事情ができたなら、退職を申し出てもさほど問題はない」といった扱いがなされていることがほとんどでしょう。

雇用期間の定めがない場合

一方、雇用期間の定めがない場合は、原則として2週間前に退職の意思を告げればいつでも退職できます。

ただし、実際は後任者への引継ぎの手間などを考えて、就業規則で「退職を申し出る際は、1カ月前までに申し出ること」などの定めがなされているケースが多いです。

もちろん、自分が辞めた後に自分がやっていた仕事を引き継いでくれる人の都合を考えれば、確かに引き継ぎ期間があったのが良いのは確かですが、原則としては法律の方が優先されることも覚えておきましょう。

民法 第627条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

【ケース1】退職届を受け取ってもらえない

ここから先は、具体的なケースを挙げて「退職して転職したいのに引き止められている」場合の対処法をお伝えしましょう。まず、退職届を受け取ってもらえない場合の対処法です。この場合

内容証明郵便で退職届けを会社に送る

ことが解決策になります。

本来、会社を退職するには「退職の意思を伝えた後2週間経過していること」が必要ですが、この「意思を伝える」こと自体は、口頭でも構いません。

つまり言いさえすれば良いことになりますが、実際は「言った言わない」でもめるのでおすすめできません。そ

こで、内容証明郵便で退職届を出し、提出した証拠を残しておくようにしましょう。なお、退職届に記載する退職日は、退職届が会社に到着すると思われる日から2週間後にしておくと、最短で認められます。

参照:内容証明 | 日本郵便株式会社

【ケース2】「辞めるなら懲戒解雇扱いにする」と言われた

懲戒解雇とは、社員(従業員)が重大な問題を起こした場合に、ペナルティの一環として会社が社員との雇用契約を解消することです。簡単に言うと「トラブルを起こしたので会社をクビにする」ということですが、従業員の権利を奪う重大な行為でもあるため、懲戒解雇にできるケースは極めて限定されています。

  • 業務上の地位を利用した犯罪行為をした
  • 会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為を働いた
  • 経歴の重大な詐称をしていた
  • 長期間の無断欠勤をしていた
  • 重大なセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントをしていた
  • 懲戒処分を受けても同様の行為を繰り返した

のいずれかに当てはまらないと、会社が懲戒解雇を行うことはできません。

つまり

  • インサイダー取引に手を染めていた
  • 本当は高卒なのに、大学院卒と言っていた
  • 部下にセクハラやパワハラをした結果、その部下が自ら命を絶ってしまった
  • 人事担当であったのを良いことに、面接に来た求職者に執拗にデートを迫り、トラブルになった

など、かなり悪質なことをした事実がないと、懲戒解雇にはならないと考えましょう。

もし、そのような事実がないのに、会社から一方的に懲戒解雇の話をされた場合は、事実をまとめて労働基準監督署や弁護士に相談するのをおすすめします。

【ケース3】「損害賠償請求をする」と言われた

引き止めの手段の1つとして、会社側の担当者が「損害賠償請求をする」と言い出すケースもあります。

これも「実際に会社を退職する前に、顧客名簿を持ち出し、ライバル企業に売却していた」など、会社に明らかな損害を与える事実がない限りは、損害賠償が実際に認められることはありません。

研修費用や学費は要確認

また、会社によっては

  • 自分の希望でセミナーや研修を受け、費用を会社に負担してもらった
  • 国内外の大学・大学院に進学する際、費用の全部または一部を負担してもらい、一定期間勤続すればその費用が免除される扱いをしている

ことがあります。

自分がこのような制度を使った場合は、会社を退職する際に支払いを求められることがあるので、注意してください。

まずは「どんな理由でいくらの支払いを求められているのか」を明らかにしてもらい、弁護士に相談しましょう。

一人で悩まず労働基準監督署や弁護士に相談しよう

いずれにしても、退職の引き止めを理由にしたトラブルが生じた場合は、労働基準監督署や弁護士に相談するのが重要です。ただし、労働基準監督署の仕事はあくまで「勧告」です。

つまり、法律に則った運営をするよう、会社に指示することができるに過ぎないので、会社との具体的な交渉が必要な場合は、弁護士に依頼することになります。

緊急性が高い場合は退職代行サービスを使うのも1つの手段

精神的に参ってしまっていて「もう今すぐ会社辞めたい」と思う場合は、退職代行サービスを使うのも1つの手段です。2~3万円程度の手数料で、会社への退職の申し入れや貸与品の返還などを請け負ってくれます。

また、未払い残業代の請求などを行いたい場合は、提携している弁護士を紹介してくれるので、「どうしてもこれ以上は自分で対応できない」という場合の非常手段として考えておくと良いでしょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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