住宅ローンの1つに「フラット35」があります。銀行や信用金庫など、民間の金融機関で申込ができますが、もともとの運営母体が住宅金融支援機構という公的団体であるため、金融機関が独自で扱う住宅ローンとは異なる位置づけのものとして扱われています。
独特な商品であるため、メリット・デメリットがはっきりしているのも大きな特徴です。そこで今回は、フラット35のメリット・デメリットについて説明した上で、向いている人の特徴についても考えてみましょう。
フラット35とは
半官半民の住宅ローン
フラット35とは
です。
難しいのでかみ砕くと「半官半民の住宅ローン」といったところでしょう。
申込窓口は民間の金融機関(銀行・信用金庫など)ですが、提携先は住宅金融支援機構という公的団体であるため、金融機関が独自で扱う住宅ローンとはまったく別のものとして扱われています。
フラット35の利用条件
フラット35の利用にあたっては、様々な条件が設けられています。主な項目のみですが、表にまとめました。
申込者 | ・申込時の年齢が70歳未満で80歳までに完済できる ・日本国籍、もしくは外国籍かつ永住許可を受けている人 |
---|---|
収入基準 | ・住宅ローンと他のローンの返済額の合計が負担率以内 |
新築の場合 | ・住宅の床面積が、1戸建ての場合70㎡以上、マンションの場合は30㎡以上 ・住宅金融支援機構の定める基準に適合している ・建設費又は購入価格が1億円以下 |
中古の場合 | 新築の条件にさらに以下の条件を加える ・借入申込日において築後年数が2年を超えている、もしくは既に人が住んだことがある ・建設確認日が1981年5月31日以前の場合、住宅金融支援機構の定める耐震評価基準などに適合している |
フラット35のメリット
固定金利であるため資金計画が立てやすい
フラット35の大きな特徴として
ことが挙げられます。こちらは、2021年7月現在のフラット35に関する金利情報です。
返済期間 | 15年~20年 | 21年~35年 |
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金利の範囲 | 年1.200%~年1.970% | 年1.320%~年2.100% |
最頻金利 | 年1.200% | 年1.330% |
出典:【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
なお、表内の「最頻金利」とは「この水準にしている金融機関が最も多い」という意味として考えましょう。
諸経費・保証人は不要
民間の金融機関が提供している住宅ローンの場合「事務手数料」などの名目で諸経費がかかることが往々にしてあります。また、これは金融機関や借入をしようとする人の状況によってまちまちですが、保証人を立てるよう求められるのも少なくありません。
一方、フラット35であれば、融資手数料・物件検査手数料を除く諸経費や保証人は必要ありません。
- できる限り経費を削りたい
- 保証人を頼めそうな人が周囲にいない
場合は、フラット35のこの特徴が大きなメリットになるでしょう。
自営業であっても審査に通りやすい
これも、金融機関ごとにとって審査基準や担当者のスタンスがまちまちなので一概には言えませんが「自営業・フリーランスの人は、ある程度開業してから年数が経過していないと、住宅ローンの審査に通りにくい」という傾向があります。
そのため、自営業やフリーランスの場合は、過去2~3年分の確定申告書や納税証明書など収入を証明するものに加え、追加での書類の提出やヒアリングが行われることもあります。
また、金融機関によっては、自営業・フリーランスに関しては「営業年数〇年以上」「過去3年間の年収が〇円以上」など、はっきりとした数字で基準が示されていることもあるので、開業から数年しか経っていないとさらにハードルが上がるのも実情です。
一方、フラット35の場合、年収によって合計返済額の基準が異なるものの、民間の金融機関が提供する住宅ローンに比べると、自営業・フリーランスであっても審査に通りやすいとは言われています。理由としては「借入を希望する人の背景」ではなく「所定の条件を満たす物件を取得することが目的であるか」を重視する審査であるためです。
団体信用生命保険に加入できなくても利用できる
多くの金融機関が独自に展開する住宅ローンでは、団体信用生命保険への加入を必須としています。
ただし、生命保険の一種であるため
- 治療中の持病がある
- 今は元気だが、子どもの時に大病をした
などの理由で、審査に落ちてしまうこともあります。
この場合、「新機構団信付きの【フラット35】の借入金利 - 0.2%」が金利として適用されます。
参照:【フラット35】の団体信用生命保険:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
フラット35のデメリット
市場金利が下がった場合は不利になる
フラット35は「借入期間中に適用される金利が一定」の住宅ローンです。つまり、何があっても毎月の返済額および総返済額は変わりません。仮に、市場金利が上昇局面にある場合でも、毎月の返済額が上がってしまうことはないという点では有利です。
しかし、市場金利が下降局面に入っている場合は、変動金利の住宅ローンを組んでいる場合に比べて毎月の返済額が高くつくこともあります。
所定の条件を満たした物件でないと使えない
フラット35を使ってマイホームを購入するためには、購入しようとしている物件が所定の条件を満たしていないかどうか確認しないといけません。
新築の場合 | ・住宅の床面積が、1戸建ての場合70㎡以上、マンションの場合は30㎡以上 ・住宅金融支援機構の定める基準に適合している ・建設費又は購入価格が1億円以下 |
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中古の場合 | 新築の条件にさらに以下の条件を加える ・借入申込日において築後年数が2年を超えている、もしくは既に人が住んだことがある ・建設確認日が1981年5月31日以前の場合、住宅金融支援機構の定める耐震評価基準などに適合している |
ある程度まとまった額でないと繰上げ返済できない
フラット35を含め、「ボーナスが入った」「コツコツ貯金をした」などの理由で、まとまったお金を使って繰上げ返済することができます。しかし、金融機関の窓口で手続きをする場合、繰上返済を受け付けてくれる額は100万円からになるので注意してください。
契約者専用サイトも上手に使おう
なお、フラット35契約者専用サイト「住・My Note」を通じて繰上返済をすることも可能です。10万円から受け付けてくれるので「臨時収入が入ったから少しでも返済額を減らしたい」という場合には、うまく活用しましょう。
融資手数料・物件検査手数料は必要
フラット35は、金融機関が独自に展開している住宅ローンで必要になる諸経費や保証人が不要ではあるものの、融資手数料・物件検査手数料は必要になるので注意してください。
審査に時間がかかる
金融機関が独自に展開している住宅ローンの場合、その金融機関の内部で審査が完結するため、比較的短時間で審査が終わります。
しかし、フラット35の場合、申込窓口となる金融機関における審査はもちろん、提携先である住宅金融支援機構の審査も受けなくてはいけません。つまり、審査が完了し、融資が実行されるまでにかかる時間が長いことに注意が必要です。
マイホームに入居したい時期がはっきりと決まっていないならまだしも、「子どもが小学校に入学するまでには引っ越しておきたい」など、具体的な時期が決まっているなら、一度金融機関・不動産会社の担当者と相談し、タイムスケジュールを詰めておきましょう。
フラット35が向いている人の特徴
自営業、フリーランスである
ここまでの内容を踏まえ「フラット35が向いている人の特徴」について考えてみました。やはり、強いアピールポイントになるのは「自営業・フリーランスでも申し込め、かつ、審査に通りやすいこと」でしょう。
毎月一定額を払う形が良いと思っている
住宅ローンを「金利が途中で変わるかどうか」で大まかに分類すると
- 変動金利型
- 固定金利型
- 固定期間選択型
の3つに分かれます。
フラット35はこのうち、固定金利型に当たりますが、借入期間中に適用される金利は一定になるため、毎月の返済額および総返済額は、融資が実行された時点で決まるのが大きな特徴です。
健康上の理由で団体信用生命保険に入りにくい
多くの住宅ローンでは、借入をする人(債務者)に万が一のことが起きたりした場合のために、金融機関が損失を被らないようにするため、団体信用生命保険への加入を義務付けています。しかし、生命保険の一種である以上、健康状態に不安があると加入を断られるのも実情です。
ただし、万が一のことが起こってしまった場合、遺された家族が返済するか、相続放棄をして家を手放してしまうかの2択になってしまうため、事前に
- 団体信用生命保険料を支払わない分、貯金しておく
- 引受基準緩和型生命保険に入り、万が一のことが起きてもまとまったお金を確保できるようにしておく
などの対策を講じておきましょう。
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