1980年代のバブル期においては、車を持つこと自体が1つのステータスとなっていました。しかし、2020年代の現在は「若者の車離れ」という言葉に代表されるように、その前提は崩れています。
このような背景がある以上、マイカーを持つかどうかは、メリット・デメリットを比較した上で、本人が判断すべきことになりつつあるでしょう。今回は、マイカーのメリット・デメリットから「本当にマイカーを買うべき人の特徴」について考えてみましょう。
マイカーのメリット
行動範囲が広がる
マイカーを持つことのメリットには様々なものがありますが、多くの人が思い浮かべるのが「行動範囲が広がる」ことでしょう。
都市部では電車、バス、タクシーなどの公共交通機関が発展していますが、それでも車があったほうが移動しやすいのは確かです。直線距離がそれほど離れていないため車で移動すると近くても、路線の関係で、電車やバスで移動した場合に時間がやたらとかかることも考えられます。
公共交通機関が整っていない場所では、さらに車の需要は高まります。電車やバスが走っていたとしても「1時間に1本」「1日に数本」というのも珍しくありません。このような中で通勤・通学、買い物などを済ますには、やはりマイカーがないと厳しいでしょう。
多少天候が悪くても快適に移動できる
電車の駅や停留所の目の前に住んでいるなどの特殊なケースを除き、公共交通機関を利用するためには、自宅から駅や停留所に向かわないといけません。
また、目的地の最寄りの駅についたとしても、そこから本当の目的地に行くには、また歩いていかないといけません。仮に、雨が降っていたり、風が吹いていたりした場合は、濡れたりするなど、不快な思いをするでしょう。
緊急時の輸送手段として使える
家族や近所の人が体調を崩し、救急車を呼ぶほどではないけど自力で病院に向かわせることが難しくなるケースが考えられます。
マイカーがなくてもタクシーを呼べば移動は可能ですが、タクシーの空き状況によっては、それがかなわないこともあり得ます。
荷物が多くなっても移動しやすい
大型スーパーで1週間分の食材を買い置きする、という人は決して珍しくありません。しかし、徒歩や自転車では、一度に運べる量に限りがあります。
子ども、ペットと一緒に出掛けやすい
子どもが小さいうちは、ある程度騒いだりしてしまうのは仕方がありません。もちろん、親である大人が上手にフォローできれば問題ありませんが、状況次第では周囲の客とのトラブルに発展することもあり得ます。運が悪いと傷害事件や殺人事件など、家族の生活が崩壊してしまうほどの事態に巻き込まれる可能性がある、という点には注意しましょう。
また、ペットを飼っている家であれば、ペットと出かけたいと思うこともあるかもしれません。電車などの交通機関でも、手回り品としての扱いであればペットを同伴させることは可能ですが
- 所定の規格を満たすケージ、キャリーケースに入れないといけない
- 重量制限がある
など、細かい条件が設けられています。
加えて、周囲に乗客がいる以上「動物が苦手な人もいるかもしれない」という意識を持ち、気遣うことは欠かせません。そもそも、ペット自体の性格が神経質で、知らない人がたくさんいる状況を乗り切れそうにない場合は、公共交通機関での移動自体をやめたほうがいいでしょう。
マイカーのデメリット
維持費がかかる
一方、マイカーのデメリットについても考えてみましょう。マイカーを所有していると、維持費がかかるのは事実です。あくまで一例ですが、以下の条件に基づき、年間維持費を計算してみました。なお、車検有効期限は2年とします。
- 駐車場代:毎月12,000円
- ガソリン単価:140円/リットル
- 一般道の走行距離:年8,000キロメートル(燃費:10キロメートル/リットル)
- 高速道の走行距離:年2,000キロメートル(燃費:16キロメートル/リットル)
- 任意・車両保険:年60,000円
- 自動車税:年39,500円
- 検査料・手数料:50,000円/回
- 重量税:20.000円/回
- 自賠責保険:25,830円/回
- 印紙代:1.100円
これらの情報をもとに、年間の維持費用を計算してみました。
項目 | 年間の維持費用 |
駐車場 | 144,000円 |
ガソリン(一般道) | 112,000円 |
ガソリン(高速) | 17,500円 |
任意・車両保険 | 60,000円 |
自動車税 | 39,500円 |
車検時の検査料・手数料 | 25,000円 |
重量税 | 10,000円 |
自賠責保険 | 12,915円 |
印紙代 | 550円 |
合計 | 421,465円 |
かなりまとまった金額が出ていってしまうのがわかるはずです。
メンテナンスをこまめにしないといけない
案外見過ごしてしまいがちなことですが、車にもメンテナンスが必要です。例えば
- 洗車
- タイヤの空気チェック
- ウィンドウォッシャー液の補充
- ワイパーゴムの交換
- エアコンフィルターの交換
- 冷却水の交換
- ヘッドライトの交換
- エンジンオイルの交換
- オイルフィルターの交換
- タイヤのローテーションと交換
- バッテリー交換
- エアクリーナーの交換
- ブレーキオイルの交換
などは、一般的に自動車のメンテナンスとして最低限行わないといけません。もちろん、自分でできるものもありますが、カー用品店やディーラーに持っていって対応してもらわないといけないものもあります。
事故を起こす可能性はゼロにできない
車を運転する上で気を付けなくてはいけないのは「誰でも、事故の加害者になり得る」ということです。実際のところ、交通事故を起こす確率はどのくらいなのかを計算してみましょう。
2020年に日本国内で発生した交通事故の件数は30万9,000件 でした。
一方、2019年末時点での運転免許保有者数は8,215万8,248枚です。
この2つのデータから「運転免許を保有している人のうち、事故を起こす人の割合はどのくらいか」を計算してみましょう。
つまり、1,000人のうち事故を起こすのは3 ~ 4人の計算になります。
確率としてはかなり低いですが、それが「自分は絶対に事故を起こさない」という意味にはなりません。車を運転する以上は「事故は起こりうるもの」という自覚を持ち、安全運転に努めましょう。
健康状態、年齢によっては手放さないといけない
車の運転は、一定レベル以上の注意力や判断力が必要な作業です。そのため、注意力や判断力に影響を及ぼす病気になった場合、運転免許の拒否または保留を受けることがあります。つまり、運転ができなくなるということです。
例えば、以下の病気などの場合が該当します。
- 認知症
- アルコール、薬物中毒
- 統合失調症
- てんかん
- 再発性の失神
- 無自覚性の低血糖症
- 躁うつ病
- 睡眠障害
ただし、統合失調症やてんかん、躁うつ病などは投薬治療などで症状のコントロールができていれば、医師の診断により運転することは可能です。いずれにしても「健康状態や年齢次第では、車の運転をあきらめなくてはいけないこともある」という点は覚えておきましょう。
マイカーを買うべき人の特徴
公共交通機関が乏しい地域に住んでいる
ここまでの内容を踏まえて、マイカーを買うべき人の特徴について考えてみましょう。第一にあげられるのは「公共交通機関が乏しい地域に住んでいる人」です。
小さい子ども、ペットがいる
子どもが声を上げていたり、ペットが吠えたりしても、周囲に気を使いすぎなくて済むのは大きなメリットです。ただし、子どもを乗せる場合は、その車にあったベビーシートやチャイルドシートを必ず用意しましょう。
定期的に通院が必要な家族がいる
健康な人なら、公共交通機関を使って外出するのは難なくできるはずです。しかし、定期的な通院が必要になるほど体調がすぐれない人にとっては、公共交通機関を使っての外出がとても難しいことも考えられます。
毎月一定額の維持費を出せるだけの経済力がある
具体的な金額は1人1人異なりますが、マイカーを持つと、それなりに維持費がかかります。維持費を払えないようであれば、最終的には車を手放すしかありません。裏を返せば、相応の維持費を払えるようなら、マイカーを持つことを検討してもいいでしょう。
平日も車に乗る可能性が高い
たとえ維持費を払えるだけの経済力があったとしても、平日の通勤は電車やバスなどの公共交通機関を使っていて、車は休日しか乗らないという人であれば、マイカーは必須ではありません。費用が掛かることが気になるなら、カーシェアやレンタカーを検討してもいいでしょう。
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