日本では少子高齢化が進んでいると言われていますが、まだまだ「結婚したら子どもが欲しい」と思っている人は多くいるはずです。しかし、子育てにはそれなりにお金がかかります。何となく「学校に行き始めたならともかく、小さいうちはそれほどでもないでしょ?」と思うかもしれませんが、案外かかるので注意が必要です。
もちろん
- 出産育児一時金・出産手当金など、出産については補助が出る
- 中学校卒業時までの子どもについては、医療費の自己負担分が無料になる自治体がほとんどである
- 自治体が発行するクーポン、パスポートを提示すると、提携店でサービス・割引が受けられる
など、子育て世帯に対する支援は行われているので、フルに活用すればかなり経済的な負担は抑えられます。
そこで今回は
- 出産・子育て費用はいくらかかるのか
- カップルの働き方別・出産までに貯めるべき金額の目安
の2つについて、解説しましょう。
目次
出産・子育て費用はいくらかかる?
正常分娩の場合は50万円はみておいた方が良い
そもそも、出産する際にはいくらかかるのかについて、相場をまずは知っておきましょう。
都会になるほどやっぱり高い
公益社団法人国民健康保険中央会が行った出産費用に関する統計によれば、平成28(2014)年における出産費用(正常分娩の場合)の平均は505,759円でした。
出典:公益社団法人国民健康保険中央会「出産費用の都道府県別平均値、中央値(様式5)」
都道府県ごとに詳しく見ていくと、最も高かったのは東京都の621,814円、逆に最も安かったのは鳥取県の396,331円です。
里帰り出産も要検討
やはり、住宅の家賃・売価や物価と同じで、出産費用に関しても「都会に行けばいくほど高くなる」という傾向が指摘できます。出産費用の面だけで言えば、実家が地方にある人なら、里帰り出産を選択するのも、節約という点で有効でしょう。実家の家族が産後のフォローをしてくれるなら、なおのことありがたいはずです。ただし
- 高齢である(35歳以上)、持病がある、多胎児(双子、三つ子)など、いわゆる「ハイリスク群」に分類される妊婦である
- 実家近辺での受け入れ先が見つからない
- 新型コロナウイルス感染症やその他の理由で遠距離移動自体を控えたい
- そもそも実家との関係があまり良くなく、里帰り出産をすることでかえってストレスがたまりそう
など、里帰り出産を選択しない方が良いケースもあります。
なお、日本に住んでいる(住民票がある)人なら、出産育児一時金(42万円)が支給されます。そのため、出産に関する費用は、実際は全額自己負担になるわけではありません。
また、出産するまで会社で正社員・契約社員・派遣社員として働いていた人で、一定の条件に当てはまる人であれば、出産手当金を受け取ることも可能です。これらの公的な費用は、忘れずに申請するようにしましょう。
0歳時点の育児費用は年間100万円はかかるかも
子どもが生まれると、ベビーカー・ベビー服・おむつなどの生活用品を揃えたり、体調を崩したら病院に連れて行ったりと、こまごまとしたお金がかかります。
少々古いデータですが、平成22(2010)年3月に内閣府政策統括官(共生社会政策担当)が発表した「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」を用いて、子どもが0歳児の時点でかかる1年間の子育て費用の総額について、大まかな数字を出してみましょう。
出典: 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」
大まかに言ってしまうと、100万円近いお金が出ていくということです。もちろん、実際は
- 実家の家族が援助してくれる
- 友人・知人から出産祝いとして金品を受け取る
- 親族・友人がいわゆる「おさがり」をくれる
- フリマアプリ、オンラインオークションなどで中古品を買う
- 一時的にしか使わないものはレンタルする
など、子育てにかかる費用を節約できる手段はたくさんあるので、必ずこの金額がかかるという意味ではありません。
出産までに貯めるべき金額の目安は?
2人とも会社員(正社員)・公務員の場合
ここまでの内容を踏まえて、カップルが出産までに貯めておくべき金額の目安について考えてみましょう。
まず、2人も会社員(正社員)・公務員の場合は、出産育児一時金が受け取れるのに加え、条件を満たせば、出産手当金や育児休業給付金も受け取れます。このことを考えると、最低ラインとして
を考えておきましょう。なお、2人分の6カ月の生活費については、普段、どんな生活をしているのかによっても異なるので、ここでは平均的な値を示します。
総務省統計局の「家計調査報告」によれば、2020年における2人以上の世帯における消費支出の平均は1世帯あたり277,926円とのことでした。つまり、大体28万円くらいであるため、余裕を見て1カ月分の生活費を30万円と考えて計算しましょう。結果は
となります。
夫が会社員(正社員)・公務員の場合
次に、夫が会社員(正社員)・公務員で、妻がそれ以外(派遣社員・契約社員、パート・アルバイト、専業主婦、自営業など)というケースを想定しましょう。この場合、出産育児一時金は受け取れますが、出産手当金は受け取れません。
ただし、男性が育児休業を取得する場合、所定の手続きを行えば育児休業給付金を受け取ることができます。そのことを考えると、2人とも会社員(正社員)・公務員のケースより少し多めに見積もっておけば十分です。ここでは
と考えましょう。平均的な生活を、ということであれば340万円( = 30万円 × 8カ月 + 100万円 )が最低ラインになります。
妻が会社員(正社員)・公務員の場合
逆に、妻が会社員(正社員)・公務員で、夫がそれ以外(派遣社員・契約社員、パート・アルバイト、専業主夫、自営業など)というケースもあり得ます。
この場合、妻は出産育児一時金が受け取れるのに加え、条件を満たせば、出産手当金や育児休業給付金も受け取れます。しかし、夫の仕事の状況によっては収入が不安定になりがちなので、少し多めに見積もった方がよさそうです。
目安として
を考えておきましょう。平均的な生活を、ということであれば400万円( = 30万円 × 10カ月 + 100万円)が目安になります。
2人とも自営業、非正規雇用(契約社員、派遣社員等)の場合
ある意味、最も計算がしにくいのがこのパターンです。2人とも自営業で、それなりに事業が軌道に乗っている場合は、お金の心配をしすぎなくても良いでしょう。ただし「産後、妻の回復が思わしくない」など、どちらか一方(もしくは両方)が子どもが生まれる前と同じペースで働けなくなった場合を想定し、ある程度の蓄えはしておいてください。
目安として
を考えておきましょう。平均的な生活を、ということであれば460万円( = 30万円 × 12カ月 + 100万円)程度となります。
そして、2人とも非正規雇用(契約社員、派遣社員等)の場合は、どちらかと言えば「貯金をすること」よりも「正社員を目指すこと」をまずは優先的に考えてください。
なお、派遣社員や契約社員として働いている女性に対し、会社が妊娠・出産を理由に契約更新を断ること自体は違法です。そして、条件を満たせば出産手当金、育児休業給付金も受け取れる上に、育児休業も取得できます。
男女雇用機会均等法
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
ただし、会社の総務担当者がこのあたりの扱いに精通しているとは限りません。
また、今回の新型コロナウイルス感染症のように、大規模な災害や急激な経済状況の悪化が起きた場合、コストカットの一環として派遣切りや一方的な契約終了の通告が行われがちなのも実情です。
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