債務整理のメリット・デメリットを徹底解説

いつ、何がきっかけでまとまったお金が必要になるかわからない以上、借金をすること自体が悪いとはいいきれません。しかし、途中で返済できなくなった場合、その後、どう対応していくかが非常に問題になります。

自力で完済するのが理想ではあるものの、どうしても難しい場合は、債務整理を検討しましょう。

債務整理とは

合法的な借金問題の救済制度

債務整理とは、借金の減額・免除を行うための一定の法的手続きのことです。銀行、消費者金融、信販会社などからお金を借りたものの

  • 借入総額が年収の3分の1近い
  • 借金を返済するために別のところから借りている
  • 3カ月以上延滞している
  • 毎月期限通りに返済できない

等の問題を抱えている場合、債務整理を行うことで、負担を大幅に軽減できます。

債務整理の種類

一口に債務整理と言っても、手続きの流れや借金の減額の効果によってさらに細かく分類できます。代表的な方法として、任意整理・自己破産・個人再生の3つを押さえておきましょう。

個人再生 裁判所に申し立てをして、原則として負債の20%の金額(約100万円~300万円)を3年間~5年間で支払う再生計画案を立てて認可決定を受けることにより、残りの債務を免除してもらう
任意整理 弁護士・司法書士が依頼者の代理人となって和解交渉を行い、成立した和解の内容に従い、支払いをしていく。
自己破産 裁判所に申し立てをして、最終的に借金の全額を免除してもらう。

これだけではわかりにくいので「何が起きるのか」という観点で表にまとめてみました。

項目 個人再生 任意整理 自己破産
借金の減額 できる 交渉次第 できる
利息の支払い 免除される 免除される 免除される
裁判所での手続き 必須 不要 必須
家族に秘密にできるか 状況次第 できる 状況次第
会社に秘密にできるか 原則できる 原則できる 原則できる
一定期間就けない仕事があるか ない ない ある
自宅を残せるか 残せる 残せる 残せない
保証人に影響があるか ない ある ない
家族に影響があるか ない ない ない
ブラックリストに載るか 載る 載る 載る
車を残せるか 条件次第(ローンがゼロならOK) 残せる 条件次第(20万円以下ならOK)
官報への掲載 掲載される 掲載されない 掲載される

債務整理のメリット

借金の返済額が減らせる、ゼロになる

債務整理の最大のメリットともいえるのが、借金の返済額を少なくできる、もしくはゼロにできることでしょう。

実際にどの程度減額できるのかは、どの種類の債務整理を選択したかによって異なりますが、経済的な負担が軽減されることで、かなり気が楽になるはずです。

督促・取り立てがなくなる

種類を問わず、債務整理を行う場合、依頼を受けた弁護士・司法書士は最初に受任通知(債務整理開始通知)を債権者(銀行、信販会社、消費者金融など)に対し送付します。

法律(貸金業法)においては、受任通知が債権者に到達した場合、それ以降の取り立てを行ってはいけない旨が定められているため、督促・取り立てもストップするのです。

債権者側である会社の担当者からの電話、訪問への対応で神経をすり減らす必要がなくなるのは、大きなメリットです。

学校、勤務先に知られる可能性は低い

債務整理のうち、裁判所を経由して行う手続きが必須の個人再生・自己破産を行った場合は、官報に決定が掲載されます。

つまり「誰が個人再生・自己破産をしたのか」がわかるため、官報を見ている人がいた場合は、知られてしまう可能性もあるでしょう。しかし、そのような人はごく少数である以上、そこまで心配する必要もありません。

退学、解雇は不当な扱いか?

個人再生・自己破産をしたという理由だけで、学校から退学を迫られたり、会社を解雇されたりすることも考えられます。果たしてこれは不当ではないのか、考えてみましょう。

ほとんどの場合で解雇は不当

労働契約法には

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

という条文が存在します。

仮に、就業規則に「自己破産をした場合は解雇する」という一文が盛り込まれていたとしても、ほとんどの場合は無効であると判断されるでしょう。

ただし、後述する一定の職業についていた場合や、現金を直接扱う経理担当者だったりしたなど、信用性が特に重視される職業・職務にあった場合は、解雇が相当と判断されることもあるので、注意が必要です。

退学で問題になるのは「お金が払えないこと」

学校に通っていた場合、学校に個人再生・自己破産をした事実が発覚するのは、奨学金を借りていたなど一定の例外を除けばきわめてまれです。しかし、個人再生・自己破産を選択しなくてはいけないほどの状況であるなら、学費の滞納もすでに発生している可能性が高いでしょう。

むしろ、個人再生・自己破産をしたことよりも、学費を払えないことにより退学になるのを心配したほうがよさそうです。学費が払えないことを学校の担当者に伝え、対応を協議しましょう。

債務整理のデメリット

一定の職業に就けない

任意整理・個人再生の方法で債務整理を行った場合は、職業に関する制限はありません。

しかし、自己破産の方法を選択した場合は、免責決定を受けるまでの間、一時的にではあるものの、資格・職種の制限を受けます。つまり、それらの資格があったり、職種についていたりすることが前提の仕事はできません。ただし、免責決定が受けられれば、このような制限はなくなります。

制限を受ける資格・職種の具体例は以下の通りです。

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引主任者
  • 警備員
  • 生命保険の外交員

クレジットカード、カードローン、キャッシングが使えない

個人信用情報に異動の登録がある間は、クレジットカード、カードローン、キャッシングも使えません。

スーパーホワイトとは

もちろん、一定期間(最長で10年)が経過したあとであれば、個人信用情報の異動の登録もなくなるため、新規の申し込み自体はできます。

しかし、個人信用情報に何も記載されていない状態(スーパーホワイト)で審査に臨むことになるため、審査に通りにくいのも事実です。

審査難易度が低いクレジットカードを申し込み、地道に利用実績を積み上げていくしかないでしょう。

住宅ローン、自動車ローンが組めない

個人信用情報に異動の登録があるということは、その人の支払能力に重大な疑念が生じているという意味です。

これまでに触れたクレジットカード、カードローン、キャッシングと同様、住宅ローンや自動車ローンの新規契約はできません。

なお、債務整理をした時点で、住宅ローン、自動車ローンが残っていた場合、これらも免責の対象となります。

スマートフォンを分割購入できない

最近は、スマートフォンの本体価格が高価であるため、一括払いをするのではなく、分割購入として毎月少額ずつ支払っていく形で契約する人も増えています。ただしこれは「携帯電話会社が一度、スマートフォンの本体価格の全額を立て替え、後に契約者に分割購入代金を請求していく」という契約です。

金銭の貸し借りが介在する取引(信用取引)にあたるため、利用にあたっては支払能力に関する審査が行われます。その際、個人信用情報の記載もチェックされますが、債務整理をしてから一定期間内は、異動が登録されている状態です。このため、審査には通らない以上、分割購入もできないのです。

賃貸マンション、アパートを借りられない

マンション、アパート、一戸建ての形態を問わず、家を借りる際は

  • 連帯保証人を立てる
  • 保証会社を利用する

のいずれかが求められます。家族・親族、知人・友人など身近な人が連帯保証人を引き受けてくれるならかまいませんが、頼れない場合は保証会社を使わざるを得ません。

また、大家の意向で、最初から連帯保証人を立てるのではなく、保証会社を利用するよう求められるケースも考えられます。

債務整理の手続きをしてから一定期間(最長10年)が経過しないうちに保証会社を利用しようとしても、審査に通りません。審査に通らない以上、その物件は借りられないことに注意が必要です。

持ち家を手放さないといけないこともある

債務整理の方法として、自己破産を選択した場合、一定の条件に当てはまる財産以外はすべて手放さないといけません。より具体的に言うと

  • 自己破産の手続きが始まってから入手した財産
  • 生活必需品(衣類、寝具、家具、台所用具、食料、燃料など)
  • 勤務先から受け取れる給料の4分の3
  • 99万円以下の現金
  • 裁判所が「生活に必要」として認めた一定の財産

以外は手放す必要がでてきます。当然、持ち家も手放さなくてはいけません。

債務整理をしても免除されない支払いもある

債務整理をしたといって、すべての支払いが免除されるとは限りません。

非免責債権とは

法律(破産法第253条第1項)においては、たとえ債務整理をし、免責許可の決定が下されたとしても、支払いの義務を免除されない債権(非免責債権)について定めがあります。

項目をわかりやすくまとめました。

  • 税金・国民健康保険料の滞納分
  • DV、喧嘩、交通事故の被害者に対する損害賠償金
  • 家族への生活費
  • 夫婦間の婚姻費用
  • 子どもへの養育費
  • 個人事業主として従業員を雇っている場合の給料
  • 駐車違反などの罰金

免責不許可事由とは

また、債務整理により本来は免責されるはずの債務であったしても、発生した原因に問題がある場合は、免責されない(免責不許可)こともあります。当然、この場合は債務を返済していかなくてはいけません。

免責不許可になる理由 = 免責不許可事由の一例をまとめました(破産法第252条第1項各号)。

  • 買い物や旅行での浪費が原因の借金
  • パチンコ・パチスロ・競馬・競艇・競輪などのギャンブルで負った借金
  • 株・FX・先物取引・仮想通貨取引などの投資での失敗が原因の借金

ただし、実際は裁判官の裁量で、免責不許可事由があったとしても、免責が認められることはあります(破産法第252条第2項)。司法書士、弁護士などの専門家に相談し、対応を協議しましょう。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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