現在、日本では結婚したカップルの3組に1組は離婚すると言われています。恋人として付き合っているときは何でもなかった相手の欠点が許せなくなったり、どちらか一方の仕事がとにかく忙しく、相手をしてもらえない側が浮気に走ったりなど、理由は様々です。
そして「もう無理、この人とはやっていけない」となった場合は、やはり離婚を考えることになるのでしょう。もちろん、どちらから離婚を切り出すのかは、人それぞれです。そこで今回はあえて「夫から離婚を切り出すケース」に照準を当てて、注意点を解説しましょう。
目次
夫から離婚を切り出す理由は?
妻が浮気していた、は決定打になり得る
結局のところ、何が原因で離婚に至るのかは、人それぞれです。しかし、決定打になり得る出来事の1つが「妻が浮気していた」です。これは、民法にも以下のように定めがあります。
民法770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき
なお「不貞な行為」とは、簡単に言うと「不倫・浮気」のことです。
同性との浮気は「婚姻を継続しがたい事由」となるケースも
また、実は妻がレズビアンで、女性と関係を結んでいたというケースも考えられます。法的に、これは「不貞な行為」にはあたりません。しかし、夫である男性の考え方次第では「婚姻を継続しがたい重大事由」に当たるとして、裁判で離婚が認められる可能性が出てきます。
「何となく価値観が合わない」でも離婚はできるけど…
もちろん、決定打になる出来事がなかったとしても「恋人として付き合っていた時はすごく優しかったのに、どうして結婚したらこんなに冷たいの!?」など、結婚前には感じなかった価値観の相違に気づくことだってあるはずです。
価値観の相違を原因として離婚する場合の話については、以下の記事で詳しく書いているので、参考にしてください。
夫から離婚を切り出す場合の注意点
離婚を考えた時点で共有財産を調べる
具体的に、夫から離婚を切り出す場合の注意点について解説しましょう。まず、離婚を考え始めたらやることは、お互いの共有財産を調べ上げておくことです。原則として、結婚してから築き上げた財産は共有財産として扱われます。
仮に、妻が結婚・出産を機に専業主婦になったとしても、この扱いは変わりません。
できることなら、具体的な離婚の話し合い(離婚協議)が始まる前に、これは済ませておきましょう。実際に話し合いが始まると、お互いが感情的になり、まともな話ができなくなる可能性も高いためです。
今の家に住み続けるか、売却するかを決める
今住んでいる家が賃貸なら、不動産会社に退去する旨を伝えれば、さほど問題なく引っ越すことができるでしょう。問題になるのは、マイホームを購入していたケースです。考えられるケースごとに、しかるべき扱いは変わってきますので解説します。
夫が住宅ローンの契約者で、夫が住み続ける場合
この場合は、あまり問題になりません。夫が住み続けるのであれば、それまでと同じように住宅ローンを払い続けていけば良いだけの話だからです。
また「1人で住むにはかなり広いから、売って引っ越そう」と思った場合でも、ある程度まとまったお金を用意した上で、その家を売却し、住宅ローンの残債をゼロにすれば手放す(厳密には抵当権抹消登記がなされる)ことができます。
夫が住宅ローンの契約者で、妻(と子ども)が住み続ける場合
この場合は、後述する公正証書に「住宅ローンの返済は夫が行うが、妻は家賃として夫の口座に毎月一定額を振り込む」など、具体的な対応を盛り込む必要があります。また、夫が
- 病気やケガで長期間働けなくなった
- 勤務先の業績が急激に悪化し、給料が激減した
など、なんらかの事情で住宅ローンの返済が滞りそうな場合は、早急に金融機関の担当者に相談しましょう。
いわゆる「ペアローン」を組んでいた場合
ある意味、最も厄介なのがこのパターンです。ペアローンとは1つの物件に対して収入のある夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となり、2つの住宅ローンを利用する借入方法で、お互いに相手の住宅ローンの連帯保証人にもなります。
つまり「2人分の収入を当てにして住宅ローンを組むこと」でもあるため、離婚してしまった場合はその前提が崩れてしまいます。
やはり、早急に金融機関の担当者に相談し、対応を仰ぐ必要があるでしょう。
妻に対して慰謝料の請求を行うかを検討する
夫婦のうち、法律上認められる離婚理由(法的離婚事由)を作った側のことを有責配偶者と言います。例えば「妻が浮気していた」場合、不貞行為を働いたという意味で、妻が有責配偶者となるのです。この場合、妻に慰謝料を請求することが可能となります。
ただし
- 有責配偶者と認められる証拠が必要
- 時候が存在する
の2点に注意してください。
まず、前者の「有責配偶者と認められる証拠が必要」についてですが、妻が「実は私、浮気していました」などと不貞行為の事実を認めていた場合は、その発言自体が証拠になります。ボイスレコーダーで録音したり、念書を書かせたりしましょう。
一方、妻が「何を根拠にしてそんなこと言うの?知らないんだけど」と浮気した事実を認めないことだって考えられます。この場合、証拠(写真、録音、動画、診断書、メールなど)を突き付けるしかありません。
また、離婚にあたって有責配偶者に慰謝料を請求できるのは、離婚成立後3年までです。それ以降は消滅時効にかかるため、請求ができません。
離婚をするにあたっての条件を決める
実際に離婚をすることになった場合、夫婦の間で離婚に関する条件を取り決める必要があります。具体的に何を定めるかは、双方の話し合いによりますが、一般的には次の点について話し合うことが多いです。
- 親権者(看護者)の指定
- 養育費の金額、支払い方法
- 面会交流の条件
- 財産分与の条件
- 年金分割の条件
- 慰謝料の有無と金額
- 婚姻費用、借金の清算
- 住宅の使用契約
離婚をするにあたっての条件を公正証書に残す
離婚をするにあたっての条件がまとまったら、2人(状況次第では弁護士が同行することもある)で公証役場に向かい、公正証書を作成しましょう。
なお、公正証書には法律的に無効となる内容を盛り込むことはできません。そのため、公正証書に盛り込まれた条件は、法的にも有効であるため、相手方が約束を守らない(不履行)場合は強制執行の対象となります。
つまり、仮に相手が慰謝料を払わなかった場合は、強制執行を行うことで振り込んでもらえる流れになる一方、自分が養育費を支払わなかった場合も、給料の差し押さえが行われる可能性もあるので、公正証書に盛り込まれた内容は守りましょう。
子どもに丁寧に状況を説明する
ある意味、最も大切なのが「子どもとの向き合い方」です。「パパとママは別々に暮らすことになったから、どっちについていく?」など、単に別居する事実のみを伝え、子どもに判断を丸投げするのはやめましょう。さすがに「ママが他の男の人と会っていたんだ」など、不倫をしていた事実をそのまま伝えるのは考え物ですが、子どもが不安を口にしたら真摯に向き合うべきです。
また「実は妻が、夫が不在のときに子どもを虐待していた」「浮気の結果、子どもがほったらかしにされていた」など、ごく一部の例外を除けば、夫婦が離婚する際は妻が親権(養育権・監護権)を取得することがほとんどです。その場合であっても「ちゃんとパパは会いにくるからね」など、定期的に面会交流の機会を持つことを伝えるべきです。子どもが「会いたくない」と思っていたのではない限りは、その事実は子どもの励みになるでしょう。
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