送り付け商法と思われる荷物は即ゴミ箱へ。万が一のことが起きた場合の正しい対応も解説

自分が通販サイトで買い物をしたわけでも、家族・親戚・友だちが何か贈り物をしてくれたわけでもないのに、いきなり自宅に荷物が届くというのは、ほとんどの人にとって「やだなにそれこわい」としか言いようのないシチュエーションです。

そういう荷物はさっさと捨ててしまいたいと思うのが当然でしょう。実はこれは「送り付け商法」と言って、詐欺の一種である可能性が高い、れっきとした犯罪行為です。

それにも関わらず、これまでの法律では「手元に届いてから14日間はそのままにしておくこと」という決まりがありました。送り付けられた側からすれば「何で2週間もワケわからないものを取っておかないといけないの!」とげんなりしたかもしれません。

しかし、詳しくは後述しますが、この「2週間ルール」が令和3(2021)年7月に撤廃されました。つまり「ワケのわからない荷物は即ゴミ箱」という扱いをして良くなっています。

そこで今回は

  • 即ゴミ箱に捨てて良くなった経緯
  • 万が一のことが起きた場合の正しい対応

の2点について解説しましょう。

送り付け商法と思われる荷物は即ゴミ箱へ、で良い理由

送り付け商法とは

送り付け商法とは

注文していない商品を、勝手に送り付け、その人が断らなければ買ったものとみなして、代金を一方的に請求する商法

のことです。なお、英語では「ネガティブ・オプション(Negative Option)」と言います。

具体的な例としては

  • 自宅にいきなりサプリメントなどの健康食品が送られてくる
  • 業者からいきなり「この前注文した商品を今日送る」などのメールや電話、SNSのメッセージがあったため、断ったら「キャンセルはできない。代引きで送るから受取拒否をするな」と伝えられる
  • 大手通販サイトから注文した覚えのない荷物が送られてきて、代引きでの支払を求められる

などが考えられます。

主な目的は詐欺や個人情報の抜き取り

そもそも、なぜこのような送り付け商法が行われているのか考えてみましょう。理由を一言でまとめると「お金や個人情報をだまし取るため」です。

例えば、身に覚えのない商品が送られてきたら「覚えていないけど、もしかしたら注文してしまったのかしら」と払う人がいても珍しくありません。また、慌てて相手に連絡してしまったら、メールアドレスや電話番号が筒抜けになります。

実は、送り付け商法を仕掛ける側は「冷静な判断ができず、お金を支払ってしまう人や、個人情報を漏らしてしまう人がいる」のを見越して、このような犯罪を働いているのです。

かつては「14日間ルール」が存在

卑劣としか言いようがない上に、送ったのが誰だかわからない荷物があること自体、小心者の筆者には耐えられません。しかし、これまでは、たとえ送り付け商法の一環として送られてきた荷物であったとしても「即ゴミ箱」ができない決まりになっていました。

特定商取引法には、以下のような決まりが設けられていたためです。

特定商取引法
(旧)第59条

販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合において、その商品の送付があつた日から起算して 14 日を経過する日(その日が、その商品の送付を受けた者が販売業者に対してその商品の引取りの請求をした場合におけるその請求の日から起算して7日を経過する日後であるときは、その7日を経過する日)までに、その商品の送付を受けた者がその申込みにつき承諾をせず、かつ、販売業者がその商品の引取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができない。

2.前項の規定は、その商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申込みに
ついては、適用しない。

簡単にまとめると

自分が買った、支払いをした覚えがない商品が手元に届いた場合であっても、送られてきた日を含めて14日経過するまでは、送って来た側に商品の返送を要求する権利がある。だから、送られてきた側も、送られてきた日を含めて14日経つまでは手元に保管しておかなくてはいけない

ということです。

2021年7月6日から「14日間ルールが撤廃」

法律上、仕方のないこととは言え「どこの誰が送って来たかわからない不気味な荷物」があるのは、正直気分が良いものでありません。

しかし、特定商取引法が改正されたことで、令和3(2021)年7月6日以降に、送り付け商法と思われる荷物が届いた場合は、すぐに処分して良いことになりました。

出典:消費者庁「特定商取引法の通達改正・一方的に送り付けられた商品に関するチラシ等の公表について

下手に送り返すと相手に個人情報を知られてしまうのでNG

このように法律が変わったにも関わらず、礼儀正しい人であれば「それでも、送り返さないと」と思っていろいろと手配してしまうかもしれません。メールで連絡が届いた場合も、返事を書いてしまったりするでしょう。

律儀なのは素晴らしいですが、これは個人情報を抜き取られるリスクが極めて高い行動なので、絶対に避けてください。

住所やメールアドレスを特定されたら、芋づる式にクレジットカードの情報を抜き取るなどのさらに深刻な事態に発展しかねません。

「怪しい荷物は即ゴミ箱」と覚えておき、実践すればとりあえずそこで問題は終わるはずです。

もし、高齢の家族が離れた場所で一人暮らしをしていた場合は

  • 身に覚えがない荷物が届いたらすぐに捨てるように言う
  • 念のため、自分や他の家族・親戚が宅急便を送るときは一言伝えておく

などの自衛策を講じましょう。

万が一のことが起きた場合の正しい対応

業者から電話がかかってきたら?

そして、あまり考えたくないことではありますが、送り付け商法では、商品を送って来た後も、業者から電話やメール、SNSのメッセージで執拗に連絡が来ることがあります。

連絡が相次いでいると委縮してしまうかもしれませんが、その必要はありません。

基本無視でOK

そもそも、業者が連絡をしてくるのは「お金を払ってほしい(厳密には、だまし取りたい)」からです。しかし、何を言われても

  • 電話なら落ち着いて対応して切り、その番号を着信拒否する
  • メールなら、アドレスを指定して自動的に迷惑メールに振り分けられるようにする
  • SNSならアカウントをブロックする

などして、一切応じないようにしましょう。

そもそも、自分が申し込みをしたわけではない以上、法的な支払い義務も生じていないので、堂々としていればかまいません。

うっかり支払っても取り返せる

それでも、相手が威圧的な態度を取ってきたなどの理由で、根負けして支払ってしまう人もいるかもしれません。

消費者ホットラインに電話しよう

うっかり支払ってしまった場合は、まずは消費者ホットライン(188)に電話し、事情を話しましょう。

事業者に対して誤って支払った金銭の返還の請求をするための手続きについてアドバイスをしてくれます。なお、これは送り付け商法により届いた商品の発送元が海外の業者だった場合でも何ら変わりません。

ただし、注意したいことが1点あります。「身に覚えがない荷物が届いた」と言っても、実は送り付け商法ではなく「ただ単に事務手続き上のミスがあったり、配達員が届け先を間違えたりした」だけということも十分に考えられます。いずれにしても、対応に困った場合は「消費者ホットライン(188)」に連絡してください。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

記事一覧

大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 不動産投資にはリスクがある。頼りになる客観的なプロの意見が欲しいなら「セカオピ」で入手!

  2. おうち時間の過ごし方は読書!という人に使ってもらいたい。本の買取・購入がオトクになる「ブックチケット」って?

  3. フリーランスの最大の悩みは「相談相手がいない」こと。「.ippo(ドットいっぽ)」で相談相手を見つけて快適に仕事しよう