大切なペットが亡くなったら落ち着いて対応を。あらかじめ葬儀・火葬の流れや霊園の選び方を押さえておこう

筆者は人生において、ペットを飼おうと思ったことは一度もありません。もともとアレルギー体質な上に、(時節柄厳しいですが)本来は「お出かけ」が大好きなので、ライフスタイル自体が「ペットを飼うこと」にそぐわない気がします。

しかし、実際のところは「ペットが亡くなったら、その事実を受け止められるかわからない」という心情的な理由が最も大きいです。

そのため、ペットを飼っている人やこれから飼おうとしている人を見ると「自分には到底できないことをしていて、すごい」と思ってしまいます。

しかし、いつかはお別れしなくてはいけない時がやってくることには変わりません。そこで今回は、大切なペットが亡くなった時に落ち着いて対応ができるよう、葬儀・火葬の流れや霊園の選び方について解説しましょう。

ペットの葬儀・火葬の流れ

【パターン1】公営斎場で火葬し、納骨する

犬、猫などのペットが亡くなった場合は、人間と同じように「葬儀(に相当するセレモニー)を行った後に火葬し、霊園に納骨する」のが一般的な対応です。ここで問題になるのが「どこで火葬するか」ということでしょう。

  • 費用を抑えたい
  • すぐには納骨せず、しばらく手元に置いておきたい
  • 大がかりなセレモニーを行うことは考えていない(必要ない)

という意向が強い場合は、市区町村やその関連団体が運営する公営斎場で火葬するのが1つの選択肢となります。また、詳しくは後述しますが、信仰している宗教の関係で、一般的なペット用の民間斎場・霊園を使いたくない場合も、公営斎場を使う方が現状に即しているでしょう。

ただし、この方法を使う場合には

  • その市区町村に住んでいない人でも使えるのか
  • その市区町村に住んでいる人といない人とで料金に差があるか
  • 1日の予約枠に上限があるか

などをあらかじめ確認しておきましょう。例えば、筆者が住んでいる埼玉県さいたま市の場合は

  • 利用できるのはさいたま市に住んでいる(住民票がある)人のみ
  • 1日4回、1体ずつの個別火葬のみ

という条件が設けられていました。

参照:さいたま市/大宮聖苑小動物火葬のご案内

一方、埼玉県の上尾市にある公営斎場「上尾伊奈斎場つつじ苑」の場合は

  • 上尾市・伊奈町に住んでいる人以外でも利用できるが、料金が3倍になる
  • 料金は火葬する動物の体重、単独火葬か合同火葬かで異なる

という扱いになっています。

参照:料金案内 | (公益財団法人)上尾市地域振興公社

具体的な取り扱いは、住んでいる市区町村によってかなり異なるので、事前に確認するようにしてください。

【パターン2】民間斎場で火葬し、納骨する

ペットの葬儀を扱う民間斎場が、小型の火葬炉を併設し、葬儀から火葬までを一貫して行っているのは決して珍しくありません。

また、訪問火葬車といって、車内に火葬炉を設置した専用車で担当者が自宅まで出向き、ペットの火葬を行った後に返骨を行うというプランを設けているケースもあるので

  • 小さい子どもや介護の必要な家族がいて出かけにくい
  • 新型コロナウイルス感染症の関係で外出を控えたい

という場合は、利用を検討しましょう。なお「民間斎場で火葬し、納骨する」場合「何をどこまでやってもらうか」によってかかる費用が全く異なります。

一例として、大手ペット葬祭会社・ジャパンペットセレモニーのプラン・料金を紹介しましょう。

出典:プラン・火葬料金 | ペット火葬・ペット葬儀【ジャパンペットセレモニー】

実際のところ

  • どんなペット葬祭業者が運営する斎場を使うか
  • 火葬だけでなく、セレモニーや納骨までお任せするのか
  • 亡くなったペットの種類・体重はどのくらいだったか

によっても費用は全く異なるので、事前に確認するようにしてください。

【パターン3】ペット霊園で火葬・納骨を行う

ペット霊園の中にも、専用の斎場や火葬炉を併設し、葬儀から納骨までを一貫して請け負ってくれるところがあります。もし、すでに万が一のことが起きた場合に対応してもらう予定のペット霊園の候補があるなら、火葬も行ってくれるのかどうか、確認してみると良いでしょう。

また、先ほど触れたペットの葬儀を扱う民間斎場の場合と同様

  • どんなペット葬祭業者が運営する斎場を使うか
  • 火葬だけでなく、セレモニーや納骨までお任せするのか
  • 亡くなったペットの種類・体重はどのくらいだったか
  • どんな形態で納骨をしてもらうか

によっても、最終的な費用は異なります。

契約する前に見積もりを取ってもらい、納得した上で進めるようにしましょう。

民間斎場、ペット霊園は仏式葬が前提となっていることが多い

なお、ペットの葬儀・火葬・納骨などの一連の儀式は、日本で一般的な仏式葬の形式に則って行われることがほとんどです。そのため、クリスチャン(キリスト教徒)の場合は

  • 公営斎場で火葬し、遺骨は自宅に安置する
  • キリスト教形式で葬儀・火葬を執り行うことができる民間斎場・サービス運営会社に依頼する

のが現実的な選択肢になります。

最近は「ペットの場合は、ペット自身に信仰があるわけではないので、基本的には無宗派・無宗教である」との考え方に基づき、比較的柔軟に対応してくれる民間斎場・サービス運営会社も増えてきているので、一度相談してみましょう。

土葬は基本的におすすめしない

ここまでは「ペットが亡くなったら火葬をする」ことを前提に話を進めてきましたが、中には

  • 長年暮らしてきた家の周囲に埋めてあげたい
  • 自然に還してあげたい

という理由で土葬を希望する人もいるでしょう。

しかし、筆者の意見としては、土葬は基本的におすすめしません。

理由として

  • 法律違反になるリスクがある
  • ご近所トラブルの引き金になる
  • 掘り出し、持ち出しが面倒

の3点を解説しましょう。

法律違反になるリスクがある

ペットを飼う人にとっては、大切なペットの亡骸は「かけがえのないもの」です。しかし、法律上は(言い方が適当ではありませんが)一般廃棄物として扱われます。

参照:廃棄物の処理及び清掃に関する法律

そのため、ペットの亡骸を埋めるということは、場所次第では不法投棄として、刑事罰を受ける可能性もあるので注意してください。簡単に言うと「逮捕されて、罰金刑や懲役刑に処される」ということです。

肝心の場所ですが、私有地(自宅の庭など)であれば、法律上は問題ありません。しかし

  • 公園
  • 河川のまわり
  • 賃貸住宅の庭
  • 森林や山のふもと
  • 他人の敷地

は罪に問われる可能性が極めて高いので、絶対にやめましょう。

ご近所トラブルの引き金になる

ペットといえども大切な家族である以上、本来は飼い主の意向が最優先されるべきです。しかし、ペットを土葬することが、いわゆる「ご近所トラブル」の引き金にもなるので注意してください。

既に触れた通り、私有地にペットを土葬すること自体は違法ではありません。ただし

  • 土葬したあと、腐敗臭がもれてくる
  • 腐敗臭につられてカラス・野良猫・虫が集まってくる

など、衛生上のトラブルが起こりやすいのも事実です。

「住宅街の一角にある持ち家に住んでいる」など、隣近所に影響が及ぶ可能性が高いなら、やめておいた方が無難でしょう。

掘り出し、持ち出しが面倒

仮に、ペットの亡骸を土葬したとしても、完全に骨になり、土に還るまでには相当な時間がかかります。具体的な期間はペットの大きさや土壌の性質にもよるので一概には言えませんが、数十年単位の時間が必要です。

そして、土に還るまでの間に

  • 災害が起きた、家族に不幸があったなどの理由でその家を手放すことになった
  • 自分や家族の意向が変わり、ペット霊園に入れたいと思うようになった

場合、結局は亡骸を掘り出し、持ち出すための準備をすることになります。不可能とまでは言い難いですが、決して気分が良いものではありません。

そして、「うちは先祖代々この土地に住んできて、これからも住み続けるつもり」と考えていても、何が起きるかわからないという点にも気を配るべきでしょう。

東日本大震災・福島第一原子力発電所事故のように「元の家があった場所に戻ることが事実上不可能になる」レベルの災害も日本では起きています。

そのような背景も考えると、やはりペットが天寿を全うしたら、火葬し、遺骨は霊園に預けるか、自宅に安置する前提で動いた方が現実的かもしれません。

ペットが犬だった場合は市区町村に届出を

なお、飼っていたペットが犬だった場合、亡くなった後に住んでいる(住民票のある)市区町村へ届け出をしなくてはいけません。これは、狂犬病予防法の規定により義務付けられています。

所定の用紙は、市区町村役場のWebページからダウンロードしたり、窓口に出向いたりすれば入手できるので、必要事項を記入して提出してください。

出典:犬の死亡届 – さいたま市

ペットのための霊園の選び方

宗教・宗派を確認する

ペットの遺骨をどうするかは、飼い主自身と家族の意向にもよって異なります。

  • ずっと自宅に置いておく
  • 人間でいう「四十九日」「一周忌」が過ぎたら霊園に納骨する
  • 火葬が終わり次第、すぐに霊園に納骨する

などが考えられますが、ここでは「霊園に納骨する」場合を前提に話を進めましょう。

まず、霊園を選ぶ際は、その霊園が「宗教・宗派に関する制限を設けているか」を確認するようにしてください。一般的に、日本で運営されているペット霊園は、お寺(仏教寺院)の中に設けられていることが多いです。

また、運営スタンスも

  • 完全に宗教を不問としている(キリスト教徒など、仏教徒以外でも利用可能)
  • 宗派は違っても良いが、仏教徒であることを条件としている
  • 宗派が異なる場合は受け入れない(いわゆる「檀家」になったり、年回法要や寄付を行うことを前提としている)

など、ペット霊園が設けられている寺院によって異なるので確認しましょう。

納骨の方法を確認する

ペット霊園に納骨する場合、納骨の方法も選ばなくてはいけません。一般的な方法は次の3つです。

個別に墓を建てる 人間同様、個別の墓を建ててそこに納骨する。お墓の大きさ、ペット霊園のロケーションにもよるが大体数万円~数十万円の費用が掛かる。
合祀する 「永代供養塔」など、ペット霊園内の特定の場所を指定した上で、骨壺から遺骨を取り出し、他のペットの遺骨と一緒に納骨する。費用は数千円~数万円程度。
納骨堂に骨壺を安置する 骨壺のまま、ペット霊園やペット火葬場併設の納骨堂に骨壺を安置する。初期費用として数万円を支払い、後は年間1万円程度の管理料を払うというスタイルが一般的。

また、近年は「ペットと人間が一緒のお墓に入れる」ことをうたうペット霊園(厳密には、ペットの遺骨の受け入れも行っている寺院)も増えてきました。その場合でも

  • 一般的なお墓に一緒に納骨される
  • 樹木葬を選んだ場合のみ一緒に納骨される

など、ペット霊園によって扱いに差があるので、自分たちが望む方法がどこまで実現できるかを前提に、確認しましょう。

自宅からのアクセスを確認する

人間のお墓参りと一緒で、できる限り自宅から近い方が、こまめに墓参りができるのは確かです。「あの子は寂しがり屋だったから、こまめに足を運んであげたい」と思うなら、自宅からのアクセスも踏まえた上で、候補を絞り込みましょう。

逆に「お盆やお彼岸など、人間のスケジュールに合わせて行けば良い」と思っているなら、そこまでこだわる必要はないかもしれません。ただし、最寄り駅から近い方が移動は楽なのは確かなので、選ぶ際の基準の1つにしてください。

開園時間を確認する

寺院内に設置されているペット霊園の場合、開園時間はその寺院の開門時間に準ずることがほとんどです。自分や家族のライフスタイルに合わせて、無理なくお参りができそうな時間であるかを調べましょう。

なお、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、国・地方自治体から早い時間の帰宅を前提にする要請が出されている場合は、臨時で開門・開場時間が変更になるケースも多々あります。

実際に足を運ぶ際は、事前に連絡をし「その時点での状況」を調べるようにしましょう。

園内の手入れ状況、雰囲気を確認する

人間のお墓を選ぶ時にも言えることですが、ペット霊園についても、園内の手入れが行き届いていなかったり、何となく鬱屈とした雰囲気があったりするところは選ばない方が良いでしょう。

時期によっては難しいこともあるかもしれませんが、可能な限りは一度実際に足を運んだり、ペット霊園の担当者に話を聞いたりして「ここにうちの子を預けても大丈夫か」を考えてから決めたほう無難です。

その他の注意点

民間斎場、ペット霊園の契約でのチェックポイント

そろそろまとめに入ります。そもそも、火葬を含めたペットの葬儀は、人間の葬儀と比べると非常に歴史が浅く、一般的ではありません。そのため、出回っている情報も少なく、しっかり吟味しないと「こんなはずじゃなかった」と落胆しかねないので注意しましょう。

契約する際は

  • 葬儀業者の住所や連絡先
  • 火葬に立ち会うことができるか
  • 火葬は個別か、それとも合同か
  • 火葬する場所はどこか
  • 遺骨は返還してもらえるか
  • 葬儀にかかる費用はいくらか(追加費用はあるか、料金表はあるか)

など、細かい部分をしっかり確認するのをおすすめします。

宗教によっても見解は分かれる

まだまだペットの葬儀が一般的ではない理由の1つに、「宗教によって見解が分かれていること」が挙げられるでしょう。

比較的ペット霊園を設けているお寺(仏教寺院)は多いですが、仏教の中でも宗派によって「ペットの葬儀を行う必要があるのか」については意見が分かれます。

大分すると

  • 動物でいる限り、言葉がわからないため、念仏が唱えられず極楽住生できない(ので葬儀・埋葬は引き受けない)
  • きちんと回向すれば動物もあの世で人間に生まれ変わり、自分で念仏して成仏できる(ので葬儀・埋葬を引き受ける)

と言ったところです。

また、キリスト教に関しても「人間には死後、永遠の御国が用意されているのに対して、動物はこの地上で死に滅びゆく運命にある」という考え方が存在します。

そのため、たとえ信徒が飼っていたペットが亡くなった場合でも、一切宗教儀式を執り行うことはしない、という立場をとる教会(神父・牧師)も少なくありません。

最近は引き受ける教会も増えてきましたが、どちらかと言えば「信徒のペットロスに対する心理的なケア」という意味合いで執り行われることが多いようです。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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