エステの解約にはクーリング・オフが便利。手続きと注意点を解説

外見上の悩みの解消やダイエットのためにエステティックサロン(エステ)に通うのは今では一般的に行われていることです。しかし、エステは長期間の施術を前提にしたプログラムを組むことが多く、一括で施術料を支払うと数十万円単位の出費になります。

本来であれば軽々しく契約はできない金額ですが、面談を担当した従業員の勢いに押され、その場を取り繕うために契約せざるを得ないトラブルに見舞われる人が多いのも事実です。このような場合、解約するためにはクーリング・オフの手続きをしましょう。

クーリング・オフとは

一定の条件下で契約を解約できる制度

クーリング・オフとは、一度契約の申込・締結をした場合であっても、契約を再考できるように、一定の期間内であれば無条件で契約の申込を撤回・解除をできる制度のことを指します。

クーリング・オフの対象となる取引

クーリング・オフは、消費者の保護を目的とした制度です。そのため、消費者にとって冷静に考えられない状況で行われることが考えられる取引が対象となります。具体例を表にまとめました。

契約の種類 具体例 クーリング・オフできる期間
訪問販売 自宅などにセールスマンが来て契約した 8日
電話勧誘販売 電話でセールスを受けた 8日
連鎖販売取引 他の人が売上をあげると自分にも売上が入る、という勧誘を受け、商品を買わされた(ネットワークビジネス、マルチ商法) 20日
業務提供誘引販売取引 仕事を紹介するのと引き換えに「この道具がないと仕事ができない」と商品を購入させられた(内職商法) 20日
特定継続的役務提供 エステ、英会話教室、家庭教師、学習塾、結婚相手照会サービスなど、長期間・高額な契約を結ぶもの 8日
訪問購入 事業者が消費者の自宅などを訪れ、消費者から物品を買い取る 8日
保険契約 保険会社の外で行われることが必要 8日

クーリング・オフの対象とならない取引

一方、たとえ高額であったとしても、自分の意思で行動することが前提となっている場合は、クーリング・オフの対象となりません。

そのため

  • インターネットの通信販売を利用した
  • 自分から店舗に出向いて購入・契約をした
  • 自分から事業者に対して話を持ち掛けた

場合は、クーリング・オフにより解約することもできません。また、期間内に書面で申し出なかった場合も、クーリング・オフにより解約することができないので、注意しましょう。

クーリング・オフの手続き

1.必要書類を用意する

クーリング・オフの手続きの流れを簡単にまとめると

  1. 必要書類を用意する
  2. 書面を作成する
  3. 内容証明郵便で発送する
  4. クレジットカード会社に連絡する

となります。

最初に書類を用意しなくてはいけませんが、一般的には次のものが必要です。

  • 契約書
  • クレジットカード決済の場合、利用明細やレシート
  • 印鑑
  • 残金を振り込む銀行口座の情報

なお、近年はクレジットカードの利用明細のペーパーレス化が進んでいます。Webで閲覧するタイプの明細(いわゆる「Web明細」)の場合は、該当箇所をプリントアウトしておくといいでしょう。

2.書面を作成する

クーリング・オフの手続き自体は、期間内であれば店舗や電話で行うことも可能です。ただし、仕事や家事で忙しい場合は時間がとれなかったり、対応した店員から引き留められたりする可能性もあり、思ったようにいかない可能性が出てくるでしょう。

時間もかからず、確実に相手に解約の意図を伝えるという意味では、書面でやり取りをするのが最も効果的です。

なお、クーリング・オフの書面には、法律で定められた様式はありません。しかし、以下の内容を記載する必要があるので、後述した内容証明郵便の様式との兼ね合いも考え、漏れなく記載しましょう。
  • タイトル「クーリング・オフ通知書」
  • 契約を解除する旨
  • 契約年月日
  • 契約プラン名
  • 契約金額
  • 販売会社の情報(会社名、営業所名、担当者名)
  • 返金を求める旨
  • 返金用の振込口座情報
  • 文書を出した日付
  • 自分の氏名、住所
  • クレジットカード払いの場合はクレジットカード会社名

イメージとしては、このようなものを作成すればいいでしょう。

契約解除通知書

住所○〇〇○〇〇○〇〇
〇〇〇〇〇〇〇会社
代表者〇〇〇〇〇殿

〇年〇月〇日、貴社〇〇店との間で締結したエステティックサービス契約について、特定商取引に関する法律第48条に基づき契約を解除します。
つきましては、支払い済みの〇〇〇円を下記銀行口座に振り込んでください。また私が受け取った商品をお引き取りください。

銀行口座:〇〇銀行〇〇支店
普通預金口座〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
名義人〇〇〇〇
〇年〇月〇日
住所〇〇〇〇〇〇〇〇〇  氏名〇〇〇〇〇

3.内容証明郵便で発送する

クーリング・オフの書面を相手方に発送するときに、普通郵便を使うのは避けましょう。

相手から「届いていない」「内容に不備がある」などのクレームをつけられる余地があるため、トラブルの火種になります。

少なくとも

  • 書留や特定記録郵便など、履歴が残る方法で送る
  • 書面を送る前にコピーして手元に控えておく

の2点はかならず実行しましょう。

よりトラブルが起きる可能性を減らしたいなら、内容証明郵便を使うのも1つの手段です。

これは、日本郵便が「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の」郵便を送ったのかを証明してくれる方法を指しています。

法的効力はないものの、第三者による証明が得られるため、契約のトラブルが発生した際の交渉においてよく使われる方法の1つです。

なお、内容証明郵便は、取扱いがある郵便局に出向き、窓口に以下のものを提出すれば発送できます。

  • 内容文書(受取人へ送付するもの)
  • 内容文書のコピー2通(差出人と郵便局が各1通ずつ保存するため)
  • 差出人と受取人の住所と氏名を記載した封筒
  • 内容証明の加算料金を含む郵便料金

ただし、文書を内容証明郵便で送りたい場合、字数・行数について制限があるので、注意してください。

縦書きの場合 1行:20字以内
1枚:26行以内
横書きの場合 次のいずれかを満たすこと
・1行20字以内、1枚26行以内
・1字13字以内、1枚40行以内
・1行26字以内、1枚20行以内

4.クレジットカード会社に連絡する

クーリング・オフにより契約を解約した場合は、念のために契約を結んだ際に使ったクレジットカードを発行しているクレジットカード会社に連絡しておきましょう。相手方の業者がクレジットカード会社とのローン契約を解除していないことも考えられるためです。

なお、相手方の業者がクーリング・オフを拒否した場合は、支払停止の抗弁といって、代金の支払いを停止させてもらう手続きができます。

以下の条件を満たしていれば、手続きを利用することが可能です。

  • 支払機関:2カ月以上
  • 分割回数:3回以上
  • 金額:4万円以上

参照:支払停止等の抗弁に関する手続きについて(ご案内)

クーリング・オフの注意点

契約金額、契約期間、手続日の条件がある

たとえ、担当者とのやり取りに圧倒されてエステを契約してしまったとしても、クーリング・オフにより解約する余地はあります。しかし、どんな契約であっても解約できるわけではありません。

エステの場合、次の2点を満たすことが必要になります。

  • 契約金額:5万円超
  • 契約期間:1カ月超
また、法律(特定商取引法)の規定に基づき、クーリング・オフができる期間についても取引ごとに規定が設けられています。

エステの場合、契約をした日を含めて8日間です。例えば、2021年3月1日に契約した場合は、2021年3月8日までに手続きをしなくてはいけません。

なお、郵送で書類を送る場合は消印を基準に期間が決定されます。そのため、2021年3月8日の消印が押されていれば、実際に相手方に届いたのが2021年3月9日以降であったとしても、有効です。

クーリング・オフをしても返品できないものもある

エステの場合、化粧品やサプリメント、下着や美顔器などを同時に購入することが求められるケースも少なくありません。このうち、施術を受けるために必ず購入しなくてはいけないもの(関連商品)は返品できます。一方、購入しなくても施術は受けられるもの(推奨商品)は返品の対象になりません。

また、関連商品であっても、化粧品やサプリメントなどの消耗品で、消費者が自らの意思で使ったものについては、返品できません。

ただし、担当者が「中身をチェックします」などといって、勝手に開封していた場合は、返品できます。このようなことをされた場合は、一切使わずに返品してしまいましょう。

クーリング・オフができない場合の対応

中途解約をする

仮に、クーリング・オフができなかったとしても、解約をする方法はまだあります。

既に施術を受けている場合は、中途解約を使いましょう。簡単にいうと、違約金を支払って契約を解除することです。
  • 契約金額:5万円超
  • 契約期間:1カ月超

の2つの条件を満たす契約について、エステの契約期間内であれば、中途解約をすることが可能です。なお、違約金の扱いについては、エステサロンの運営会社の約款に従います。

消費者契約法による取り消しを行う

エステサロンの多くは、年間・月間の売上目標が設定されているため、担当者が強引に成約させようとするのは珍しくありません。帰りたい旨を担当者に伝えても引き留められたため、本当は嫌だったものの契約してしまった場合は、消費者契約法による契約取り消しも検討してみましょう。

消費者契約法では、業者側に違法行為があった場合、消費者が一方的に取消権を行使して契約を解除できると定められています。

参照:知っていますか?消費者契約法―民法・商法の特例となる規定について―

例えば、先ほどの「帰りたい旨を担当者に伝えても引き留められたため、本当は嫌だったものの契約してしまった」は、退去妨害に当たるため、一方的に契約を取り消すことが可能です。

民事訴訟を起こす

クーリング・オフや中途解約、消費者契約法に基づく取消権を利用しても、悪質な業者が相手だった場合は、返金に応じてもらえないことは十分に考えられます。ここまできたら、自力でどうにかするのはほぼ不可能です。

消費者トラブルに強い弁護士に依頼し、まずは相手方と交渉してもらいましょう。

これだけでもスムーズに返金に応じてくれる可能性は高まります。

それでも返金に応じないなら、民事訴訟を起こし、返金請求を行うことになるでしょう。ただし、この場合は弁護士費用がかかるので、被害額を加味した上で、訴訟を起こすかどうかを決めなくてはいけません。

わからない場合は相談を

仮に、今回紹介したエステを巡るトラブルのように、消費生活に関するトラブルが生じた場合は、まずは消費者ホットライン(188)に連絡しましょう。

これは、消費生活センターや国民生活センターが運営しているもので、専門の相談員によるアドバイスが受けられます。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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