仕事に関連する噂で、比較的広まっているものの1つが「事務職は楽」というものです。確かに「外回りは基本的にない」「1日中座っていられる」「定時帰り、土日休みが基本」というイメージがあるので、楽そうに思えるのでしょう。また、このようなイメージがあることから、特に女性に人気があるのも実情です。
しかし、実際はそこまで楽でもありません。しかも、希望する人が多い割に求人が少ないことから、本気で事務職を目指すなら、心してかかりましょう。
目次
なぜ「事務職は楽」といわれるのか
営業のように外回りはない
そもそも「事務職は楽」と言われる理由の1つに、営業職のように、社外に出て取引先を訪問・開拓するというプロセスが、事務職にはまずないことが挙げられます。官公庁、市区町村役場などに書類を取りに行くなどの理由での外出はあり得ますが、本格的な外回りをする必要はありません。
【実態】外回りは無いが接する人の数は多い
しかし、外回りをする必要こそないものの、接しなくてはいけない人の数はかなり多いです。
- 社内の別部署の担当者
- 自社の取引先
- 税理士、公認会計士、弁護士、社会保険労務士などの外部専門家
- 銀行、信用金庫などの金融機関の担当者
- 自社の顧客、株主
など、日々様々な人と接し、相手の要望に沿った対応を行わなくてはいけません。
座っていられるから楽
営業のように、外回りが多い仕事だと「一日中歩きっぱなし、靴は数カ月で履きつぶす」「むくみがひどいのでマッサージやセルフケアが欠かせない」というのも珍しくありません。それに比べると、事務職はデスクワークが基本なので、1日中座っていられます。
【実態】肩こり、腰痛は職業病
1日中座っていられる、と書くと楽そうに思われるかもしれませんが、実際はそうでもありません。パソコンにデータ入力をしたり、手書きの書類を間違いのないように書いたり、郵便物の手配をしたりと、座ったままで神経を行き届かせなければいけない作業が、事務職に就いている限りは多数発生します。当然、肩こりや腰痛にも悩まされがちです。
言われたことさえやればいい
営業職や企画職の場合、自分から提案を行い、顧客を納得させることが求められます。しかし、事務職の場合は相手から言われたことをやってさえいればいい、と誤解されがちです。
【実態】先回りして用意する配慮が求められる
もちろん、入社したばかりのころは、先輩社員にOJTという形でついてもらい、まずは言われたことを着実にこなしていけるのを目指すでしょう。しかし、経験を積んできたら周囲のニーズを先読みして、必要なものを用意する配慮も求められるようになります。
定時帰り、土日休みが基本
営業職や企画職など、会社外部の取引先と仕事をすることが多い立場にいる場合、ある程度は先方の都合に合わせる必要があります。当然、定時を過ぎても対応しなくてはいけなかったり、状況次第では土日出勤もやむを得なかったり、ということもありうるでしょう。
しかし、事務職は基本的に会社の公休日(土日祝日、創立記念日など)は稼働しないことがほとんどである上に、やることさえ終わっていればきっちり定時で帰れることも多いです。
【実態】繁忙期、イレギュラー発生時はその限りでない
そうはいっても、月初月末の繁忙期は、必要な書類の手配や手続きが完了するまでは帰れなかったりするのは、事務職でも変わりません。
また、大規模なシステム障害や、税務調査対応などのイレギュラーが発生した場合は、事務職であっても事態が収拾するまで対応を手伝わなくてはいけないため、常に「土日休み、定時帰り」が実現できるかは疑問です。
どこの会社でも募集している
一昔前であれば、事務職が受けもつ仕事は、社内で専任の社員が対応するのが一般的でした。どの会社であっても必要な仕事であることから、募集もコンスタントにあったのです。
【実態】派遣会社、AIの普及で求人は減りつつある
しかし、近年ではその常識が崩壊しつつあります。事務職が多く働いているのは、経理や総務、人事といったバックオフィス業務を担当する部門です。
これらの部門は「コストセンター」と呼ばれ、業務にかけたコストだけが集計されて収益は集計されない部門として扱われます。簡単にいうと「費用ばかりかかって利益を生まない部門」ということです。
このような背景があるため、バックオフィス業務を担当する部門にかかる費用を削減しようとする動きを見せる企業も少なくありません。具体例としては
- 正社員ではなく、契約社員や派遣社員を使って業務を進める
- 単純なデータ入力、分析はAIに行わせる
などが考えられます。その結果、正社員はもちろん、パート・アルバイトであっても、事務職の求人は減りつつあるのが実情です。
本気で事務職を目指す人の心得5選
面接対策に力を入れる
ここまでの話をまとめると「事務職は楽、は大嘘」ということですが、それでも事務職を目指すなら、覚悟を決める必要があります。大事な心得を5つ紹介しましょう。
まず「面接対策に力を入れる」ことです。先ほども触れたように、事務職は人気が高い割には、求人が非常に少ないです。東京都の場合、2021年1月における一般事務員の有効求人倍率は0.27倍でした。
出典:【東京】職種別有効求人・求職状況(平成29年度) | 東京ハローワーク
簡単にいうと「4人応募してきたら、採用されるのは1人だけ」ということです。この数字は、求人として公表されている数(有効求人数)を、仕事を探している人の数(有効求職者数)で割っただけなので、条件の良い求人であれば、さらに高い競争率になるでしょう。
そのような中で採用してもらうには、面接対策をしっかりと行うことが不可欠です。
どんな些細な仕事でも丁寧にこなす
事務職の仕事は、パソコンにデータを打ち込んだり、書類に必要事項を書き込んだりと、一見するとかなり些細で地味です。しかし、会社の仕事に関する大事なデータや手続きにかかわるものである以上、ミスは許されません。
周囲の人に丁寧に接する
事務職の仕事は、社内外の様々な人とのやり取りが大半を占める仕事でもあります。そのため、相手に嫌われるような態度で接した場合、仕事がスムーズに運ばなくなることも十分に考えられるのです。
どうすれば工数、時間を削減できるか考える
事務職が主に働くバックオフィス部門は、利益を生まないとされています。しかし、会社内で起こっている状況を幅広く把握できるポジションだからこそ、できることもあるはずです。
その1つが「どうすれば工数、時間を削減できるか」を考えることでしょう。自分が手掛けている仕事はもちろん、他部門の仕事に関しても、工数・時間を削減できるアイデアがあれば、積極的に発信してみましょう。
自分の専門分野を確立する
事務の仕事は、派遣社員やアウトソーシング、果てはAIでもできる仕事と言われているため、正社員としての雇用は今後どんどん減っていく分野の1つです。
- 簿記、税理士の資格を取得して経理のスペシャリストになる
- 社会保険労務士の資格を取得して人事・労務のスペシャリストになる
- ファイナンシャルプランナーの資格を取得して、不動産会社や証券会社の営業事務として働く
など、一般事務だけではない何かを目指し、実現に動くことが、事務として働き続けるために重要になるはずです。
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