近年では、誰もが知っているような大手企業であっても、従業員の副業を公式に解禁するようになってきました。「会社員をやりつつ、週末はカフェの店員をしている」「会社勤めがメインではあるものの、自分のホームページを作ってアフィリエイトで稼いでいる」というのは全く珍しくありません。
しかし、副業での収入が一定額以上になれば、所得税の確定申告をしなくてはいけません。また、所得税の確定申告は不要であっても、住民税の申告納税をしないといけないケースも存在します。
そこで今回は、副業をしている会社員が確定申告をする際の注意点について解説しましょう。
目次
副業の収入がいくら以上になれば確定申告が必要?
所得が20万円以上であれば必須
副業をして収入を得ている場合、1年間の所得が20万円以上になれば、確定申告が必須になります。
副業の種類ごとの所得の計算方法
ここで注意してほしいのは、所得と収入は必ず一致するとは限らない、ということです。副業としてどんな仕事をしているかによっても、扱いが全く違うので注意しましょう。
アルバイト・パートとして働いている場合
まず「週末だけカフェでスタッフをしている」など、アルバイト・パートとして働いている場合は、その収入は給与所得として扱われます。会社員としての給料と税法上の扱いは一緒で、経費を差し引くことはできません。
アフィリエイトやクラウドソーシングをしている場合
一方
- メルカリ、ヤフオクなどで不用品を売っている
- 個人間カーシェアをしている
- クラウドソーシングでWebライターをしている
- 週末だけ家事代行の案件を引き受けている
- 仮想通貨投資をしている
- 競馬や競輪で実はかなり勝っている
など、アルバイト・パート以外の形態で副業をしている場合、これらは雑所得として扱われます。
そのため「収入 - 経費」が所得として扱われるのです。つまり、1年間で20万円以上収入があったとしても、経費を差し引いたら20万円未満になる場合は、確定申告は必須ではありません。
なお、経費として認められる支出は、どんな副業をしているのかによっても細かい違いはあります。しかし、以下のものは、経費として認められることが多いです。
科目 | 経費 |
---|---|
仕入 | ・商品の購入費用(副業で物販を行う場合など) |
租税公課 | ・個人事業税(年間所得が290万円超の場合課税される) |
荷造運賃 | ・物販などを行う場合の送料 ・梱包に使う消耗品 |
水道光熱費 | ・オフィスを借りている場合の水道代や電気代 |
旅費交通費 | ・副業で使用した公共交通機関の料金、タクシー代 ・出張が必要な場合の宿泊費 |
通信費 | ・オフィスを借りている場合のインターネット利用料、プロバイダー料金 |
広告宣伝費 | ・副業で使用する名刺の作成料 ・オンライン広告費用、チラシ広告費用など |
消耗品費 | ・パソコンやカメラ、プリンターの購入費用(副業専用として使用する場合、10万円未満) ・文具代など |
地代家賃 | ・オフィスを借りる場合の家賃 |
住民税についてはルールが異なるので注意
なお、住民税については所得税とはまったく違ったルールが存在するので、注意が必要です。
所得が20万円未満でも申告が必要
簡単にいうと「副業で収入が1円でもあった場合」は申告をしなくてはいけません。ただし、所得が20万円未満であったとしても、医療費控除や住宅ローン控除を受けたいという理由で確定申告書を提出していた場合は、別途住民税の申告をする必要はありません。
なお、住民税の申告をする際は、以下のものを持っていきましょう。
- 市民税・県民税申告書
- 印鑑
- マイナンバー(個人番号)が確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード等)
- 身元確認ができる書類(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証等)
- 前年の1月1日から12月31日までの収入(所得)の内容がわかるもの(コピー可)
- 各種控除に関する領収書、証明書など(コピー可)
- 配偶者控除、配偶者特別控除または扶養控除の適用を受けたい場合で、配偶者、扶養親族等に収入があった場合は、その人の源泉徴収票などの収入がわかるもの(コピー可)
副業をしている会社員が確定申告をする際の注意点
期限は厳守する
初めて所得税の確定申告をする場合、注意しなくてはいけないのは「期限に遅れないようにすること」です。本来、所得税の確定申告は「翌年の2月16日から3月15日(当日が土日祝日ならその直後の平日)まで」に行わなくてはいけません。この期限に遅れてしまうと、無申告加算税、延滞税などのペナルティが課せられてしまうので、注意してください。
ただし、2021年においては、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、期限内に確定申告書の提出が難しい相応の理由がある場合は、申告期限の延長などの救済措置が取られることがあります。事前に、管轄の税務署に相談してみるといいでしょう。
なお、確定申告の手続き自体は、税務署に出向かなくても、自宅からパソコン、スマートフォンなどで済ませることも可能です。期限が近くなって慌てないよう、早めにとりかかりましょう。
住民税は普通徴収にしてもらう
既に触れた通り、副業で1円でも所得があったなら、住民税を支払わなくてはいけません。しかし、会社員の人が副業をしている場合、住民税の扱いを間違ってしまうことで、いわゆる「会社バレ」してしまうことがあるので、注意が必要です。
普通徴収と特別徴収
住民税の徴収方法(支払い方)には、普通徴収と特別徴収があります。
- 普通徴収:給料から天引きせず、届いた住民税納付書を使って、自分で支払いをする。
- 特別徴収:給料から天引きして支払う。
特別徴収を選択した場合、勤務先には住民税決定通知書といって「その人が1年で支払わなくてはいけない住民税額」を記載した書類が届きます。
当然、会社から支払っている給料に見合う額より、住民税決定通知書に記載されていた住民税額が大きかった場合は、経理・給与計算担当者に気づかれるでしょう。そこから副業をしていることが発覚する恐れもあるので、注意が必要です。
普通徴収にしてもらうには?
そうなると、副業の収入により生じた住民税は、普通徴収にしてもらうのが無難でしょう。
医療費控除、住宅ローン控除を受けるなら一緒に済ませる
会社員が確定申告をする必要が出てくるのは、何も副業で収入があるときだけではありません。
例えば、本人や家族が1年間に支払った医療費の金額が10万円以上である場合は、医療費控除が受けられます。ただし、医療費控除を受けるには、会社員であっても確定申告は必須です。
また、マイホームを住宅ローンを組んで購入した場合、一定の条件に当てはまれば住宅ローン控除を受けられます。入居した年の翌年1月1日以降に確定申告をすることで受けられる控除であるため、やはり手続きをしなくてはいけません。
このように、何らかの理由で確定申告が必要になる場合は、副業の収入による確定申告と一緒に行うといいでしょう。
間違いに気づいたらなるべく早く対応する
実務上は、後から提出したものが正しい申告書として扱われます。
一方、本来の確定申告期限が過ぎてしまっていた場合は、税額を実際より少なく申告していたのか、多く申告していたのかで扱いが異なります。
この場合、本来の税額より少なく申告したことによるペナルティとして過少申告加算税がかかることがあります。
一方、実際より多く申告していた場合は、更正の請求を行います。所定の書類(更正の請求書)に必要事項を記入して所轄の税務署に提出しましょう。
ただし、この手続きは本来の申告期限から5年間しかできないので、注意してください。
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