生命保険の保険金(死亡保険金)は「万が一のことがあった場合、家族が受け取ること」を想定しているものです。しかし、世の中には
- 一人っ子である上に、両親が早く亡くなってしまった
- 結婚もしていないし、子どももいない
- 事実婚カップルや同性カップルであるため、現行の日本の法律では「法律上の夫婦」とはならない
人もいます。要するに、常に死亡保険金を家族が受け取れるとは限らないのです。そこで、今回は「死亡保険金を受け取れる家族がいない場合、誰が代わりに死亡保険金を受け取ることになるのか」について考えてみましょう。
目次
生命保険の保険金を受け取れる家族の範囲は?
基本的には法律上の配偶者または2親等以内の血縁者
ほとんどの保険会社が、死亡保険金の受取人として「法律上の配偶者」もしくは「2親等以内の血縁者」を指定しています。つまり
- 夫・妻
- 子ども
- 孫
- 父親・母親
- 祖父・祖母
- 兄弟・姉妹
がこれに該当します。
家族以外が受取人になれる3つのパターン
2親等以内の血族以外の親族
しかし、実際のところ
- 一人っ子である上に、両親や祖父母が亡くなってしまっている
- 結婚もしていないし、子どももいない
- 事実婚カップルや同性カップルであるため、現行の日本の法律では「法律上の夫婦」とはならない
人はたくさんいます。
このような場合、生命保険の死亡保険金の受取人は「2親等以内の親族または配偶者」以外の人を指名しなくてはいけません。現実的な選択肢として考えられるのは「2親等以内の血族以外の親族」です。
具体的には
- 伯父(叔父)・伯母(叔母)
- 甥・姪
- 従兄弟・従姉妹
が当てはまります。
細かい条件が設けられているので確認を
ただし「2親等以内の親族または配偶者」以外の人を生命保険の死亡保険金の受取人にする場合、保険会社によって細かい条件が設けられているので、確認するようにしてください。
例えば、三井住友海上あいおい生命の場合は
- 被保険者に戸籍上の配偶者または2親等内の血族に該当する者がいないこと
- 保険者と生活的・経済的に結びつきがあること
の2つが条件として定められています。
参照:独身で身内がいません / 二親等以内の親族がいません。誰を死亡保険金受取人にできますか? | よくあるご質問 | 三井住友海上あいおい生命保険
事実婚パートナー・同性パートナー
事実婚パートナーの場合は住民票を同一にしておくこと
- お互いが結婚前の苗字を使いたい
- 経済的な事情等により婚姻届を出すことが難しい
- 法律婚に魅力を感じない
- 残念ながら別れることになった時にもめたくない
などの理由で、事実婚を選択する人も一定数います。
昨今では、このような事情に鑑み「事実婚パートナーも、生命保険の死亡保険金受取人として指名できる」という扱いをする保険会社も増えてきました。
ただし、あくまでも現状ではイレギュラーなケースであるため、保険会社によって
- 「事実婚パートナーを、生命保険の死亡保険受取人として指名する」こと自体を認めない
- 「事実婚パートナーを、生命保険の死亡保険受取人として指名する」こと自体は認めるが、一定の条件が設けられている
など、扱いはバラバラなのも事実です。
例えば、三井住友海上あいおい生命の場合は
- 3年以上同居している事実上の夫婦
- 被保険者・死亡保険金受取人の双方に戸籍上の配偶者がいない
ことが条件となっています。
また、保険会社との話し合いを進めやすくするためには、住民票に「妻(未届)」と記載してもらった方が良いでしょう。
- 自分とパートナーが戸籍上では誰とも婚姻状態にない
- お互いがが婚姻年齢に達している
- 女性側が再婚禁止期間(女性が前婚の解消又は取り消しの日から起算して100日以内)に差し掛かっていない
という条件を満たせば、手続きができます。この手続きを行うことで、対外的に事実婚をしていることの証明として使えるためです。
同性パートナーの場合はパートナーシップ宣誓をしておくとベター
このあたりも、それぞれの保険会社によって扱いが異なるので一概には言えません。まずは、自分の加入している保険会社が
- 同性パートナーが生命保険の死亡保険金を受け取ること自体を認めていない
- 一定の条件を満たしていれば認める
のどちらの扱いに当てはまるのか、確認しましょう。保険会社のWebページに書いていない場合は、営業担当者やコールセンターに確認すれば教えてもらえます。
なお「一定の条件を満たしていれば認める」という扱いをする場合「実質的な夫婦と同等であること」が1つの判断基準になることが多いようです。
証明する手段の1つとして、可能であれば自治体から交付される「パートナーシップ宣誓書」を入手するのも1つの選択肢です。2021年9月時点で導入済み、導入予定の自治体をまとめました。
導入済み | 東京都渋谷区(2015年11月5日) 東京都世田谷区(2015年11月5日) 三重県伊賀市(2016年4月1日) 兵庫県宝塚市(2016年6月1日) 沖縄県那覇市(2016年7月8日) 北海道札幌市(2017年6月1日) 福岡県福岡市(2018年4月2日) 大阪府大阪市(2018年7月9日) 東京都中野区(2018年9月6日) 群馬県大泉町(2019年1月1日) 千葉県千葉市(2019年1月29日) 熊本県熊本市(2019年4月1日) 東京都府中市(2019年4月1日) 大阪府堺市(2019年4月1日) 神奈川県横須賀市(2019年4月1日) 岡山県総社市(2019年4月1日) 神奈川県小田原市(2019年4月1日) 大阪府枚方市(2019年4月1日) 東京都江戸川区(2019年4月1日) 東京都豊島区(2019年4月1日) 栃木県鹿沼市(2019年6月1日) 宮崎県宮崎市(2019年6月10日) 茨城県(2019年7月1日) 福岡県北九州市(2019年7月1日) 愛知県西尾市(2019年9月1日) 長崎県長崎市(2019年9月2日) 兵庫県三田市(2019年10月11日) 大阪府交野市(2019年11月22日) 神奈川県横浜市(2019年12月2日)( 大阪府大東市(2019年12月4日)( 神奈川県鎌倉市(2019年12月4日) 香川県三豊市(2020年1月1日) 兵庫県尼崎市(2020年1月6日) 大阪府(2020年1月22日) 埼玉県さいたま市(2020年4月1日) 東京都港区(2020年4月1日) 東京都文京区(2020年4月1日) 神奈川県相模原市(2020年4月1日) 神奈川県逗子市(2020年4月1日) 新潟県新潟市(2020年4月1日) 静岡県浜松市(2020年4月1日) 奈良県大和郡山市(2020年4月1日) 奈良県奈良市(2020年4月1日) 香川県高松市(2020年4月1日) 徳島県徳島市(2020年4月1日) 福岡県古賀市(2020年4月1日) 宮崎県木城町(2020年4月1日) 愛知県豊明市(2020年5月1日) 埼玉県川越市(2020年5月1日) 兵庫県伊丹市(2020年5月15日) 兵庫県芦屋市(2020年5月17日) 岡山県岡山市(2020年7月1日) 神奈川県川崎市(2020年7月1日) 神奈川県葉山町(2020年7月1日) 三重県いなべ市(2020年7月1日) 大阪府富田林市(2020年7月1日) 兵庫県川西市(2020年8月1日) 京都府京都市(2020年9月1日) 大阪府貝塚市(2020年9月1日) 埼玉県坂戸市(2020年10月1日) 東京都小金井市(2020年10月20日) 埼玉県北本市(2020年11月1日) 栃木県栃木市(2020年11月1日) 千葉県松戸市(2020年11月1日) 東京都国分寺市(2020年11月15日) 埼玉県鴻巣市(2020年12月1日) 青森県弘前市(2020年12月10日) 群馬県(2020年12月21日) 群馬県渋川市(2020年12月21日) 神奈川県三浦市(2021年1月1日) 香川県東かがわ市(2021年1月1日) 徳島県吉野川市(2021年1月1日) 広島県広島市(2021年1月4日) 兵庫県明石市(2021年1月8日) 高知県高知市(2021年2月1日) 埼玉県桶川市(2021年2月1日) 埼玉県伊奈町(2021年3月1日) 京都府亀岡市(2021年3月1日) 埼玉県上尾市(2021年3月16日) 群馬県安中市(2021年4月1日) 埼玉県越谷市(2021年4月1日) 埼玉県本庄市(2021年4月1日) 埼玉県行田市(2021年4月1日) 埼玉県三芳町(2021年4月1日) 東京都国立市(2021年4月1日) 東京都足立区(2021年4月1日) 神奈川県大和市(2021年4月1日) 神奈川県藤沢市(2021年4月1日) 神奈川県茅ケ崎市(2021年4月1日) 長野県松本市(2021年4月1日) 静岡県富士市(2021年4月1日) 兵庫県西宮市(2021年4月1日) 兵庫県猪名川町(2021年4月1日) 奈良県生駒市(2021年4月1日) 香川県小豆島町(2021年4月1日) 香川県土庄町(2021年4月1日) 香川県多度津町(2021年4月1日) 大分県臼杵市(2021年4月1日) 宮崎県日南市(2021年4月1日) 鹿児島県指宿市(2021年4月1日) 徳島県北島町(2021年4月1日) 愛知県豊橋市(2021年4月1日) 奈良県天理市(2021年4月1日) 京都府長岡京市(2021年6月1日) 石川県金沢市(2021年7月1日) 埼玉県東松山市(2021年7月1日) 神奈川県南足柄市(2021年7月1日) 神奈川県大井町(2021年7月1日) 愛知県豊田市(2021年7月16日) 佐賀県(2021年8月27日) 三重県(2021年9月1日) 埼玉県入間市(2021年9月1日) 山口県宇部市(2021年9月1日) 栃木県日光市(2021年9月1日) 宮崎県新富町(2021年9月1日) |
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導入予定あり | 千葉県習志野市(2020年度をめどに) 愛知県名古屋市(2021年度中に) 石川県白山市(2021年12月に) 静岡県湖西市(2023年4月から) 鹿児島県鹿児島市(2021年度中に) 岡山県倉敷市(2021年のうちに) 和歌山県橋本市(2025年度までに) 滋賀県彦根市(2021年10月に) 東京都北区(2023年4月から) 大分県豊後大野市(2023年4月から) 山梨県甲州市(2021年内に) 佐賀県唐津市(2021年10月から) |
出典:リスト:同性パートナーシップ証明制度を導入している/導入予定の自治体
婚約者
現状、法的には結婚していない状態であっても、結婚する予定のパートナーがいるなら、その人を死亡保険金の受取人に指名するのも手段の1つです。
保険会社ごとに条件が異なるので要確認
ただし、何をもって「結婚する予定のパートナー = 婚約者」と判定するのかは、保険会社によって見解が異なります。例えば、三井住友海上あいおい生命の場合は
- 6か月以内に入籍予定であること
- 披露宴等の招待状(写)、式場の予約表(写)など、挙式の予定を示す書類を提出すること
の2つの条件を満たさなくてはいけません。
参照:独身で身内がいません / 二親等以内の親族がいません。誰を死亡保険金受取人にできますか? | よくあるご質問 | 三井住友海上あいおい生命保険
しかし、昨今では結婚式に対する意識が変化していることや、新型コロナウイルス感染症の影響で大規模な会食の自粛が求められていることから
- 結婚式自体を挙げない
- 写真撮影と会食のみで済ます(いわゆるフォトウェディング)
など、儀式を簡略化する人もいます。
このような場合は
- 実際に入籍するまで手続きを待つ
- フォトウェディングの見積書等で代用できないか保険会社に確認し、コーディネーターに書類を手配してもらう
などが現実的な対応になるでしょう。
【注意】友人は基本的にNG
- 事実婚をする予定のパートナーも、同性パートナーもいない
- 「2親等以内の親族または配偶者」以外の人と交流はあるが、正直死亡保険金は受け取ってほしくない
- 何か困ったときにはいつも友人に助けてもらっている
という場合には、死亡保険金の受取人を友人にしたいと思う人もいるかもしれません。
「お礼」を渡したいなら遺贈が現実的
もし、普段から
- 病気になった時に看病をしてもらっていた
- 仕送りをしてくれていた
- 「あなたに何かあったら、私が喪主を務めるから」など、生前から何かと世話をしてくれていた
友人がいるのであれば、遺言書による遺贈を検討しましょう。事前に「保険会社から支給される死亡保険金のうち3,000万円を〇〇〇〇(友人の名前)に遺贈する」という内容の遺言書を作成しておくのをおすすめします。
いずれにしても、本来であれば死亡保険金の受取人になれる人がいない状態の場合「自分に万が一のことがあった場合、死亡保険金はどうするか」を本気で考えなくてはいけません。
「解約返礼率が100%を超えるタイミングで解約し、貯蓄に回す」など、全く別の方法も視野に入れて対応を考えましょう。
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