海外赴任中でも日本の生命保険は利用可能。渡航前の準備と現地からの請求手続きを解説

筆者の周囲には、海外赴任のある会社に勤務している人が、少ないながらいます。世界のどこにいても、体に気を付けて安全に過ごしてほしいと願うばかりですが、万が一のことが起きてしまう可能性はゼロではありません。仮に、海外赴任中に万が一のことが起きてしまった、つまり、死亡した場合、日本で加入した生命保険による保障は受けられるのか調べてみました。

海外赴任中でも日本の生命保険で保障は受けられる

万が一のことがあった場合は保険金・給付金が受けられる

結論から言うと

例え海外赴任中だったとしても、万が一のことが起きた場合は、日本で加入した生命保険による保障は受けられる

が答えです。

もちろん、保険金・給付金が受け取れるならそれでいいという話では決してないですが、「海外赴任中だったから」ということが、保険金・給付金を支払ってもらえない理由にはならないので、安心しましょう。

契約が失効した場合復活できないので注意

ただし、海外赴任をする予定がある場合は、日本で加入していた生命保険について、注意しなくてはいけないことが1つあります。それは「海外にいるときに契約が失効しないようにすること」です。

生命保険における失効と復活

生命保険を含めた保険は、決められた期日までに所定の保険料を支払わないといけません。払込猶予期間が経過してしまうと

  • 自動振替貸付制度が適用される
  • 保険が失効する

のいずれかの措置が取られる仕組みです。

なお、自動振替貸付制度とは

解約払戻金のある保険を契約している人が、払込猶予期間を過ぎても保険料を支払わなかった場合に、保険会社が自動的に保険料を立て替えて保険契約を継続させる制度

のことです。つまり、掛け捨て型の生命保険を契約していた場合、自動振替貸付制度を使う余地がないため、保険を失効させるしかなくなります。

簡単に言うと

万が一のことがあったとしても、そもそも契約が切れている扱いになるので、何も保障が受けられなくなる

ということです。

なお、払込猶予期間は、保険料を払うタイミングによって以下のように異なります。「自分の場合は、いつまでに払い込めば大丈夫か」は、事前に確認しておきましょう。

種類払込期月(保険料を払いこむべき月)払込猶予期間
月払月ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで払込期月の翌月の1日から末日まで
半年払半年ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで払込期月の翌月の1日から翌々月の月単位の契約応当日まで(月単位の応当日がない場合は翌々月の末日まで。ただし、契約応当日が2月、6月、11月の各末日の場合には、それぞれ、4月、8月、1月の各末日まで)
年払年ごとの契約応当日の属する月の1日から末日まで同上

出典:保険料の払込猶予期間と失効|公益財団法人 生命保険文化センター

なお、仮に生命保険が失効したとしても、一定の期間内(目安は3年程度)失効していた間の保険料を払いこむことで、契約を復活させることができます。ただし、これはあくまで「契約者が日本に住んでいる場合のみ」です。

海外赴任などの理由で、外国に住んでいる人に関しては「生命保険などの保険が失効した場合、復活はできない」という規約を設けている保険会社がほとんどなので、気を付けてください。

出典:海外へ渡航されるときのお手続き|ご契約者さま|住友生命保険

延長保険・払済保険にするのも1つの選択肢

何らかの事情で、海外赴任後に保険料を払い続けるのが難しくなりそうな場合は、日本を出国する前に、これまで加入してきた生命保険を延長保険・払済保険に変更し、保障を受け続けられるようにするのも1つの選択肢です。

延長保険現在契約している生命保険にかかる解約返戻金を一時払保険料に充当した上で、定期保険に切り替える形で変更する
払済保険保障期間は従来のままで、保険金額を減額する形で変更する

このあたりについては、保険会社の担当者やコールセンターに連絡し、どのような方法がとれるのかを相談しましょう。

海外赴任中に新規加入はできないので注意

なお、海外赴任中は、たとえ将来的に帰任する予定があったとしても、日本の保険会社が扱う生命保険への新規での加入はできません。マネーロンダリング(反社会勢力による資金洗浄)に悪用されることを防ぐために、海外居住者が、保険を含めた日本国内の金融サービスを利用することは、法律(犯罪収益移転防止法)で厳しく制限されているためです。

参照:犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など|JAFIC 警察庁

渡航前か一時帰国中に済ませよう

そのため「海外だと何が起こるかわからないから、生命保険に入っておこう」と思う人は、渡航前か一時帰国中に手続きを済ませる必要があります。何かと忙しいかもしれませんが、段取りを考えて進めましょう。

渡航前に行う手続きは?

基本的な手順

次に、日本の保険会社が扱う生命保険に加入している人が、渡航前に行うべき手続きについて解説しましょう。基本的な手順は以下の通りです。

  1. 保険会社の契約者ページを利用できるか確認する
  2. 国内の連絡先を引き受けてくれる人を探す
  3. 海外渡航中の保険料の払込方法を決める
  4. 渡航先に持っていくものを確認する

なお、今回は住友生命保険相互会社における海外渡航前の手続きを参考にしています。

参照:海外へ渡航されるときのお手続き|ご契約者さま|住友生命保険

細かい部分については、加入している生命保険の販売会社によって扱いが異なるので、あくまで大まかな流れをとらえるためのものとして考えてください。

保険会社の契約者ページを利用できるか確認する

現在では、ほとんどの保険会社が契約者ページといって契約内容の確認、入出金取引、各種手続きができる専用のWebページを開設しています。

海外赴任中においても問題なく使えるよう、最低限以下のことは確認しておきましょう。
  • 自分が持っていく予定のパソコン・スマホが、保険会社が求める推奨環境を満たしているか
  • 利用登録はどのように行えば良いか
  • 海外でも利用できる日本国内の銀行口座が、出金手続きの送金先口座に設定されているか

ネット銀行はほぼNGなので注意

なお、1年以上にわたる海外赴任の予定がある場合は、日本国内の銀行口座にも注意する必要があります。インターネット専業銀行(いわゆる「ネット銀行」のこと)や地方銀行は、非居住者による口座の利用を認めていないことがほとんどであるためです。

つまり、1年以上海外に住むつもりなら、口座を解約しなくてはいけません。

もし、ネット銀行をメインバンクにしていた場合は、解約した上で、非居住者による口座の利用を認めている銀行(三井住友銀行、三菱UFJ銀行)に残高を移し替えておくと良いでしょう。

国内の連絡先を引き受けてくれる人を探す

海外赴任などで日本にいない間は、あらかじめ国内の連絡先を引き受けてくれる人(代理人)を探さないといけません。保険会社はその人に郵便物を送る仕組みになっていることがほとんどだからです。保険会社が海外への郵便物の発送に対応してくれることは、ほぼないと考えたほうが良いでしょう。理由としては

  • 紛失・盗難のリスクがあまりに高い
  • 海外への郵送になる以上、経費がかかる

ためです。なお、国内の連絡先を引き受けてくれる人(代理人)は、日本に住み続けている家族ということで、親・兄弟姉妹・親戚を指定しておけば良いでしょう。もし、引き受けてくれる人に心当たりがない場合は、保険会社の担当者に相談してください。

海外渡航中の保険料の払込方法を決める

既に触れた通り、海外赴任中に保険料を延滞してしまうと、保険が失効してしまう可能性があります。万が一のことがあったとしても、何も保障が受けられないので、慎重に動きたいところです。

海外渡航中の保険料の払込方法としては

  • 団体扱の契約とし、海外赴任後も勤務先から支給される給料からの天引きする
  • 日本国内の銀行・ゆうちょ銀行口座から自動振替する
  • 満期(保険料払込満了)まで、または渡航予定期間中の保険料をまとめて支払う
  • 日本国内のコンビニなどから振込用紙を使って支払う

などが考えられます。仮に、勤務先の会社から「こういう方法で払うように」という指示があった場合は、それに従いましょう。

2-4.渡航先に持っていくものを確認する

生命保険を含め、何らかの保険に入っている場合は、渡航先に以下のものを持っていきましょう。

  • 保険証券(コピーでも可)
  • 契約のしおり(約款)
  • 保険会社からの通知物

渡航後に万が一のことがあった場合の請求手続きは?

遺族が日本国内で手続きを行うのが基本

本来、あってはならないことですが、海外赴任先の国で人生の終わりを迎えてしまう可能性はゼロではありません。仮に、渡航後に万が一のことがあった場合、死亡保険金の請求は、遺族(保険金受取人が基本)が日本に帰国して行うことになります。

用意する書類の一例

次の書類が必要になるので、準備しましょう。

  • 保険会社所定の請求書
  • 保険金受取人の本人確認書類(免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
  • 死亡証明書(診断書)
  • 不慮の事故であることを証明する書類(災害死亡保障特約が付帯している場合)

なお、死亡証明書(診断書)は現地の医療機関で発行されたものに加え、それを和訳したものも併せて用意しなくてはいけません。検索エンジンを使い、「死亡診断書 和訳してほしい」などで検索すると、対応している翻訳会社の情報が表示されるので依頼しましょう。

また、亡くなった原因が現地での交通事故など「不慮の事故」に当てはまる場合は、現地警察などの公的機関発行の事故証明書も必要になります。ただし、取り寄せるのが困難な場合は、新聞記事もしくは勤務先など第三者による証明で代用できる場合もあるので、保険会社に相談しましょう。

FP 荒井 美亜FP 荒井 美亜

大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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