筆者は先日、中学・高校時代の友人とSNSでやり取りしていたのですが、ふとこんなことを思い出しました。「あれ、中学高校の時ってどんな勉強をしたっけ…?」英語に力を入れている学校だったので、週に10時間くらい英語の授業を受けていたのは覚えているのですが、その他の記憶はあいまいです。
ただ、今、私が仕事で扱っているような「お金の勉強」はほとんど触れなかったのではないかと思います。どうも、これは私だけではなく、日本の教育現場における課題の1つとなっているようです。何はともあれ、お金の勉強が日本人には足りないのは確かなので、今回はその現状に触れつつ、解決策の1つとして「家族みんなでゲームで学ぶ」ことを提案します。
目次
日本人にお金の勉強が足りないってホント?
日本は世界の中でも、学力の高い国の1つです。OECD(経済協力開発機構)が行っている生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)においては、全参加国(79カ国・地域)中
- 読解力:15位
- 数学的リテラシー:6位
- 科学的リテラシー:5位
と、やや読解力に弱さはあるものの、能力的に見劣りがするとは決して思えない順位でした。
出典:OECD生徒の学習到達度調査(PISA):国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research
しかし、今の日本が、諸外国と比べてかなり遅れを取っている分野が1つあります。それが「金融経済教育」です。「学校の授業でお金のことをほとんど取り上げていない」と言った方がわかりやすいでしょう。
中学校1年生では0時間、高校3年生でも5時間以下
平成26(2014)年4月に金融経済教育を推進する研究会により発表された「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」によれば
現在、金融経済教育を行っている年間の時間数はどの程度か、学年ごとにご回答ください。
という質問に対し、最も回答が多かった時間数を学年ごとにまとめました。
学年 | 最も回答が多かった時間数(全体に対するパーセンテージ) |
---|---|
中学校1年生 | 0時間(74.2%) |
中学校2年生 | 0時間(58.2%) |
中学校3年生 | 1~5時間程度(44.6%) |
高校1年生 | 1~5時間程度(60.9%) |
高校2年生 | 1~5時間程度(49.3%) |
高校3年生 | 1~5時間程度(47.7%) |
出典:金融経済教育を推進する研究会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」
簡単に結果をまとめると「ほとんど金融経済教育に関連した授業は行っていない」のが実情かもしれません。
「必要」と思うけど「受けたことがない」のが実情
もちろん、金融経済教育が必要だと思う人はたくさんいます。金融広報中央委員会が行った「金融リテラシー調査(2019年)」によれば、調査に参加した人のうち、67.2%(16,792人)が「行うべき」と回答していました。しかし「行うべき」と回答した人のうち、実際に自分自身が金融経済教育を受けたことがあると回答したのは、その中の8.5%(1,422人)に過ぎなかったのです。
出典:金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2019年)」
つまり
ということが、このデータからもわかるでしょう。
まずは自分でできることから
もちろん、金融庁・消費者庁・文部科学省などの中央官庁や、金融広報中央委員会・日本FP協会・全国銀行協会などの関連団体も、この状況を看過しているわけではありません。専門家を派遣したり、啓発のためのリーフレットを作成したりなど、教育現場と連携し、金融経済教育を浸透させるための取り組みは行っています。
しかし、これらの取り組みが実を結ぶまでは、まだまだ時間がかかるのが実情でしょう。
これなら楽しく勉強できる!ボードゲーム「キャッシュフロー」って?
もちろん、お金の勉強をするといっても
- いきなり難しそうな本を読む
- 専門的なセミナーに足を運び、講師の話を聞く
のはおすすめできません。ある程度の素養が身についていないと理解できないことも多いためです。
大人であれば、それでもまだ我慢できるかもしれませんが、子どもに教えようとする場合にこれらの方法を用いたのでは「つまらないから嫌だ」と言われて終わるでしょう。だからこそ「楽しく、一緒に学べる方法」を使うべきです。
その方法の1つとして、今回はボードゲーム「キャッシュフロー」をご紹介します。
ボードゲーム「キャッシュフロー」の公式Webページはこちらから
ボードゲーム「キャッシュフロー」とは
出典:キャッシュフロー 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
ボードゲーム「キャッシュフロー」とは、簡単にまとめると
です。世界的なベストセラーとなった「金持ち父さん 貧乏父さん」の作者であるロバート・キヨサキ氏が考案しました。
ラットレースからファーストトラックへ
詳しくは後述しますが、このゲームの最大の目的は
- ラットレース(労働の対価として収入を得ている人)からファーストトラック(不労所得で収入を得ている人)に成長することを目指す
- ファーストトラックに成長したら、ビジネスに投資し不労所得を5万ドル増やす(いわゆる「あがり」)
の2つです。2)を最初に達成した人が、ゲームにおける勝者となります。
出典:キャッシュフロー 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
基本的な遊び方
次に、ゲームの基本的な遊び方を説明しましょう。なお、この流れは大人向けの商品である「キャッシュフロー」を想定しています。
なお、後述しますが、子ども向けのゲームとして販売されている「キャッシュフロー・フォー・キッズ」は多少流れが異なるので、その点はあらかじめご了承ください。
1.プレー時間を決める
最初に、どのくらいの時間でゲームを終らせるかを決めます。公式ホームぺージでは、標準的なプレー時間を「60分~180分」と定めていますが、その範囲内で参加しているメンバーの顔触れや都合に合わせて柔軟に決めましょう。
2.自分の職業を決める
ボードゲーム「キャッシュフロー」には、12種類の職業カードがセットされています。1人1枚ずつ引いて、ゲーム内での自分の職業を決めましょう。
出典:キャッシュフロー 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
また、職業カードには収入・支出・資産・負債など様々な数値が書かれています。その数値を、ゲームにセットされている財務諸表に書き写しましょう。
同時に金銭出納帳が配られます。これは、ゲーム中に出たり入ったりする現金を逐一記録していくためのものですが、お金を受け取ったら足していく(逆に、支払ったら引いていく)だけでいいので簡単です。
なお、財務諸表や金銭出納帳は、参加する人数分をコピーして使うといいでしょう。
3.現金とコマを受け取る
準備ができたら、初期資金となる現金とコマを受け取ります。なお、初期資金となる現金は「毎月のキャッシュフロー(1カ月分)と貯蓄の合計額」です。例えば、航空機パイロットの場合は
- 毎月のキャッシュフロー:3,500ドル
- 貯蓄:2,500ドル
なので、合計した6,000ドルを受け取ってスタートします。
4.サイコロを振ってマスを進める
あとは、通常のすごろくと同じように、サイコロを振ってマスを進め、止まったマスの指示に従います。ラットレースの段階では、次のマスに止まった場合、カードを引いてその指示に従うので、あらかじめ意味を理解しておくといいでしょう。
種類 | 意味 |
---|---|
MARKET(マーケット) | 投資物件の情報が出てくる。その投資情報に当てはまるプレイヤーは、自分の資産を書かれた価格で売ることが可能。 |
DEAL(ディール) | 投資をするための株式、不動産、ビジネスなどの情報が出てくる。手持ち資金が少ない場合は「SMALL DEAL(スモールディール)」で少額の投資、余裕がある場合は「BIG DEAL(ビッグディール)」で大口の投資をして、不労所得の獲得を目指す。 |
DOODAD(ドゥーダッド) | いわゆる無駄遣い。ここに止まった場合、引いたカードに書かれた金額は、たとえ銀行から借り入れる羽目になっても強制的に支払うことになる。 |
これを繰り返し
状態になれば、ラットレースから脱出できます。ゲーム盤の外周にあたるファーストトラックに移動し、コマを進めていきましょう。
ファーストトラック上では、止まったマス上に書かれたイベントに従い、現金の受取・支払いが生じます。ビジネスの成功などポジティブなものもあれば、税務調査・離婚・訴訟など、ネガティブなものもあるので、注意しながら進めましょう。
これらを繰り返し、最初に不労所得を5万ドル増やせた人が一等賞、ということになります。
大人だけで楽しむなら「キャッシュフロー」を
出典:キャッシュフロー 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
なお、2021年4月現在、日本では2種類のボードゲーム「キャッシュフロー」が販売されています。まず、大人だけで楽しむなら「キャッシュフロー」がおすすめです。
家族みんなで楽しむなら「キャッシュフロー・フォー・キッズ」を
出典:キャッシュフロー・フォー・キッズ 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
一方、小学生のお子さんも交えて楽しむなら、より低年齢層向けにわかりやすく改良した「キャッシュフロー・フォー・キッズ」をおすすめします。基本的な考え方は同じですが
- 財務諸表が簡単なものになっている
- 現金(紙幣)を扱うマネー・バンカーや緑・赤のトークン(不労所得・支出を表すコイン)を扱うトークン・バンカーを1人ずつ選び、ゲームを進行しやすくする
などの工夫がなされています。
出典:キャッシュフロー・フォー・キッズ 日本語版|キャッシュフロー 日本語版 公式サイト
手を動かして、考えるのは最高の学びになる
筆者も子ども時代や大学・大学院生時代を経て、社会人になった今でも(足りないながらに)勉強していますが、その中で分かったことがあります。
その場では「ああ、そういうことね…」と思えたとしても、その後の実生活や仕事で知識が活かせなかったことなんて、いくらでもあります。そもそも、話を聞いたこと自体忘れている場合も多いです。
しかし、自分で考え、行動しながら身につけた知識はあまり忘れていないし、その後の実生活や仕事に役立っている気もするのです。今回紹介したボードゲーム「キャッシュフロー」も「自分で考え、行動しながら知識が身につく」という点で、大きな可能性を感じました。
まだまだ「おうち時間」を過ごさないといけない日が続く可能性は高い今だからこそ、家族でお金の勉強をしてみませんか?詳しい案内の確認や購入は、すべて公式サイト経由でできるので、一度試してみてくださいね!
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