株式を公開している会社(もしくはそれに準ずる規模の会社)だと考えにくいですが、ベンチャー企業では「社員が転職を希望している友人・知人を推薦し、選考を経て採用する」という形での採用活動が比較的多く行われています。
いわば「友達経由の転職」ですが、この方法にも長所と短所があるのも事実です。筆者が過去に働いたことがある職場でも行われていましたが、正直なところ「人によって向き・不向きがはっきりしている」と思いました。そこで今回は「友達経由での転職はアリ?ナシ?」というテーマで、この件について考えてみたいと思います。
目次
友達経由での転職は珍しくない
リファラル採用とは
冒頭で触れた「社員が転職を希望している友人・知人に声をかけた上で、希望があれば選考を経て採用する」という採用方法を指す言葉としてリファラル採用があります。アメリカなどの欧米では広く用いられている採用方法です。日本ではまだなじみが薄い方法ではあるものの、ベンチャー企業を中心に徐々に用いられてきています。
なお、リファラル採用の「リファラル(referral)」とは、本来は「紹介」を意味する言葉です。日本ではかつて「縁故入社(コネ入社)」といって、社員・OB・取引先の家族・親族に対し、選考を経ないで入社させる採用方法を用いていた会社も存在しました。
会社がリファラル採用を使う理由
そもそも、なぜ会社がリファラル採用を使うのかについて考えてみましょう。大きな理由は以下の2つです。
低コストで人材を確保できる
一般的に、会社が社員の募集を行う際は
- 有料・無料の転職サイトに求人広告を掲載する
- ハローワーク(公共職業安定所)を通じて求人を掲載する
- 会社のWebページ上で募集広告を掲載する
- 会社のSNSアカウント(Twitter、Instagram、Facebookなど)で募集広告を掲載する
などの方法を取ります。これらの方法に共通しているのは
ことでしょう。
また、有料の媒体を使う場合は、掲載期間やオプションの選択に応じて相応の出費も覚悟しなくてはいけません。はっきり言うと「時間も費用も掛かるので(状況次第では)コストパフォーマンスが非常に悪い」です。
一方、リファラル採用であれば、社員に「誰かうちで働きたいって人いたら紹介して」と声をかけておけば良いので、何か特別な手続きをする必要もありません。
タイミング次第では、社員から「友達が前の会社を辞めて転職活動中だから、話を聞きたいみたいなんですが」など、具体的な話がすぐに上がってくることもありうるでしょう。
自社の社風にマッチした人材を採用しやすい
また、実際に働いている社員から紹介を受ける人が面接にくる以上、その人が自社の社風にマッチしている確率も高くなります。長く友達付き合いをしていくためには、ある程度価値観の似た部分がないと続かないのも事実だからです。
実際のところは、面接で話を聞いてみないとわからない部分ですが、事前にある程度「うちの会社の雰囲気に合いそうな人か」の検討がつけられるのは大きなアドバンテージでしょう。
友達経由での転職の長所
友達から会社の様子を詳しく聞ける
一方、求職者 = 転職活動中の人から見た友達経由での転職の長所についても考えてみましょう。やはり、最大の長所は「友達から会社の様子が詳しく聞ける」ことです。
あくまで守秘義務に触れない範囲ではあるものの
- ワークライフバランスはどうなっているのか
- 社内の雰囲気は実際どうなのか
- 仕事の進め方は自由なのか、ルーティンワークが多いのか
など、自分が気になっていることをフランクに聞いた上で、実際に選考に進むかどうか判断できます。もちろん、話を聞いてみて「やっぱりちょっと」と思うなら、その旨を伝えれば良いだけです。
通常の採用試験よりはハードルが低い
また、一般論として、リファラル採用で内定を獲得できる確率は、通常の採用試験を経る場合よりも高いと言われています。
やはり、現在進行形で働いている社員からの紹介である以上、ある程度は身元の知れた人物であるという前提で選考が進むためです。いわば「どこの馬の骨だかわからない人」ではない、と考えるとわかりやすいでしょう。
うまくいけば友達と自分にお小遣いが入ることも
この辺りは会社によっても異なるのですが、リファラル採用で内定を出した人が実際に入社した場合、紹介者となった社員や内定者に報奨金が出ることもあります。金額も1万円程度から数十万円までとさまざまです。
仮に、自分がリファラル採用の一環として友人・知人に選考を受けるよう薦める際は、報奨金があるのかどうかも一応確認しておいたほうが良いでしょう。
紹介者となった社員にのみ報奨金を出す、というパターンもあるので、その場合はちょっとしたお礼をするなど心遣いは忘れないようにしてくださ。
友達経由での転職の短所
落ちた場合友達との関係が微妙になる
一方、友達経由での転職の短所についても考えてみましょう。すでに触れた通り、リファラル採用はあくまで「紹介まではするものの、選考試験は受ける」のが前提の採用方法です。筆記試験や面接の結果が芳しくなかった場合は、不採用となってしまうことも十分に考えられます。
もちろん、会社の最終的な人事権は代表者(社長)にあるため、社員の個人的な事情で結果が変わるものでもありません。
仕事とプライベートの境目がつかなくなる
これは会社の規模にもよりますが、いわゆるスタートアップ企業(社員が数名で、設立間もないベンチャー企業)だと、自分(紹介者となった社員)と友達(内定者)が同じオフィスで同じ仕事をすることになります。
状況次第では、自分が先輩社員として友達に仕事を教える羽目になるかもしれません。こうなると、仕事とプライベートの境目がつかなくなるので注意が必要です。
もちろん、ほとんどの人は「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と自覚をもって取り組んでいることでしょう。
自分に合わないと思っても会社を辞めづらくなる
ある意味、友達経由の転職で最も注意が必要なのが「自分に合わないと思っても会社を辞めづらくなる」ことです。十人十色という言葉があるように、人にはそれぞれ個性があります。
たとえどんなに仲の良い友達であっても、向いている会社・仕事までが一致するとは限りません。働いていくうちに「やっぱり自分には合わないかも」と違和感を覚え、最終的には転職を考えることだってありうるはずです。
もちろん、友達に「やっぱり私無理かも、ごめんね」と伝えて納得してもらえるなら問題はありません。しかし、友達が「紹介した側」としての責任がある以上「考え直してもらえないか」など、譲歩を求めてくることだって考えられます。
結局、友達経由での転職はアリ?ナシ?
仕事とプライベートをはっきり分けたい人にはナシ
そろそろまとめに入りましょう。結局のところ、友達経由での転職が良いのか悪いのかは
- 紹介する側の友達との関係性
- 入社する会社の雰囲気
- 入社した後の仕事や人間関係
- 自分自身の努力
に左右されるところがあるので、どちらとも言えません。
友達同士でのプライベートの付き合いでは、ある程度の大らかさがあった方が、お互いリラックスして過ごせます。しかし、仕事においては大らかさが仇になる場面の方が圧倒的に多いので、たとえ友達であっても一緒に働く以上は緊張感をもって接しなくてはいけません。
世の中にはそのあたりの切り替えが上手な人も多いのかもしれませんが、筆者も含めて切り替えが下手だという人は、「仕事とプライベートははっきり分ける」のを心がけるべきです。リファラル採用を持ちかける側になることも、リファラル採用で選考試験を受ける側になることも、ひとまずは考えない方が良いでしょう。
まずは話を聞いて判断することを忘れずに
友達経由の転職であっても、自分にとって良い転職になるかどうかは
- 紹介する側の友達との関係性
- 入社する会社の雰囲気
- 入社した後の仕事や人間関係
- 自分自身の努力
など様々な要素に左右されます。働く以上、仕事が生活の一部になるため「それが本当に自分にとって良い選択なのか」は慎重に判断したいところです。
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