借金が原因で罪に問われる3つのケースとは?

人や銀行・消費者金融などの金融機関からお金を借りて、仮に返済できなかったとしても、それだけで罪に問われることは基本的にありません。しかし、例外として罪に問われる(逮捕されて、前科持ちになる)ことはあります。

今回は、このように「借金が原因で罪に問われるケース」について考えてみましょう。

借金が返済できないだけでは罪に問われない

大前提として「借金が返済できないだけでは罪に問われない」ことを抑えておきましょう。

どうしても返済できないときは債務整理もできる

特に、銀行・金融機関からお金を借りて、延滞・滞納を繰り返し、最終的には返済できなくなった場合、債務整理をすることで、返済額を減らしたり、ゼロにしたりすることができます。

自家用車や持ち家を処分しないといけなかったり、クレジットカードは一定期間持てなくなったりなど、生活に一定の制限は加わるものの、刑事罰に問われることは(基本的には)ありません。

なお、債務整理の種類には任意整理・自己破産・個人再生があります。手続き、できること・できないことの面から比較表を作成しました。

項目 任意整理 自己破産 個人再生
裁判所の手続き 不要 必要 必要
債権者の同意 必要 不要 状況次第
就ける職業の制限 なし あり なし
財産を手放す必要 なし あり あり
会社に秘密にできるか できる できる できる
借金の減額効果 一部減額できる 全額免除される 減額できない(返済計画の変更)
破産者名簿に載る 載らない 載る 載らない
官報に名前が載る 載らない 載る 載る
ブラックリストに載る 載る 載る 載る
海外旅行ができる できる 状況次第 できる

民事裁判に発展することはある

また、家族・友人・知人からお金を借りて踏み倒していた場合、相手から訴えられ、裁判に発展することがあります。しかし、これはあくまで個人間のもめ事を解決するための裁判(民事裁判)にすぎません。

仮に裁判で負けた場合、相手に借りたお金を返さないといけませんが、それだけで逮捕されることは基本的にはあり得ないのです。

経緯次第では詐欺罪に問われることも

大前提として、借金をしたから、返せなかったからといって、それだけで罪に問われることは基本的にありません。しかし「人をだましてお金を借りた」ことが立証されれれば、罪に問われることもあるのです。

詐欺罪が成立するための条件は?

詐欺罪は、次の4つの条件を満たすことで成立します。普段使わない専門用語が多いので、わかりやすく説明しましょう。

欺罔(ぎもう) 嘘をついて人をだますこと。例えば、本当は踏み倒す気なのに「必ず返すから」などと言ってお金を借りた場合があてはまる。
錯誤 相手が嘘をついているのに、本当だと信じ込んでしまうこと。仮に、相手が嘘をついているとわかっているのに、お金を貸してしまった場合は、錯誤に陥っているとは言えない。
交付行為 お金などの財産を自ら相手に差し出すこと。仮に「必ず返すからお金を貸して」と言われても、実際に相手にお金を渡さなければ、詐欺罪は成立しない。
財物移転 相手から差し出されたお金などの財産が、加害者や第三者の手に渡ること。実際に相手からお金を受け取ったり、銀行口座に振り込まれたりした場合なども移転したことになる。

詐欺罪に問われた場合は刑事裁判が行われる

お金を借りた相手 = 被害者が詐欺罪を疑った場合、まずは警察に相談し、被害届を提出します。しかし、証拠に乏しい場合は受理してくれないこともあるので、注意が必要です。

仮に、被害届が受理されなかった場合は、弁護士に依頼して告訴状を提出し、刑事告訴に踏み切ることになります。

つまり、加害者が逮捕され、刑事裁判が始まるのですが、有罪が確定すると、10年以下の懲役に処せられます。

もちろん、被害者と加害者の間で示談が成立した場合はこの限りではありません。

ケース1.身分を偽って借りていた

先述した4つの条件が当てはまる場合、借金が原因で詐欺罪に問われる可能性が出てきます。具体例の1つとして「身分を偽って借りていた」が挙げられます。

有印私文書偽造にあたる

銀行・消費者金融などの金融機関からお金を借りる場合、審査に通るために

  • 本当は無職であるにも関わらず、申込書の職業欄に会社員と書く
  • 年収額を実際よりも数十万円多めに申告する

など、明らかに実態と異なることを書いた場合は注意が必要です。

審査に通れば融資が実行されますが、なんらかのきっかけで嘘を書いていたことが発覚した場合、相手側の会社が調査に乗り出すはずです。証拠を固めた時点で被害届の提出や、刑事告訴に踏み切るでしょう。

実際は審査落ちの可能性が高い

実際のところ、銀行・消費者金融などの金融機関は、カードローンやキャッシング、住宅ローンなどの融資を行う商品を提供するにあたっては、綿密に審査を行います。仮に、提出された書類に嘘の記載があったとしても、審査の段階で調査を行い、矛盾があれば審査に通さないのが基本的な対応です。

そのため、刑事告訴にまで発展するケースは少ないはずですが「こういうこともある」と頭にとどめておきましょう。

ケース2.目的を偽って借りていた

お金を借りる際は、自分の身分や年収、職業だけではなく「何にお金を使うのか」も偽ってはいけません。

仮に、友人・知人から「自分の事業を拡大されるために使いたい」と言ってお金を借りたとしても、実際はギャンブルにつぎ込んでいたのが発覚すれば、刑事告訴に踏み切られることも覚悟したほうがいいでしょう。

ローンの目的外使用にも注意

同様の理由で気を付けてほしいのが、ローンの目的外使用です。本来、ローンは「契約で定められた目的のために使うこと」を前提にして契約を結び、融資を実行します。そのため、たとえ少しでもその目的から外れてしまっては、契約違反であるとして、詐欺罪が成立しうるのです。

わかりやすい例としては、住宅ローンを使って不動産投資用の物件を買うことでしょう。本来、住宅ローンは生活をしていくための家を買うためのもの、ということで金利が低く抑えられています。

しかし、不動産投資のための物件を買うのに使われたのでは、この趣旨から明らかに外れるのです。

重大な契約違反であるとして、住宅ローンの債権者である金融機関から刑事告訴されても仕方ありません。

ケース3.債務整理直前に借入をした

銀行・消費者金融などの金融機関から借金をした場合、どうしても返済できそうにない場合は、債務整理を行い、返済額を減らしたり、全額を免除してもらったりできます。

しかし、そこに目を付けて「どうせすぐ債務整理してしまうんだから、最後にまとめて借りてみようか」と、債務整理直前に借入をするのは、詐欺罪に問われる可能性があるとみなされるので、絶対にやめましょう。

返済の意思がないとみなされる

債務整理は「返済が難しいため、返済条件の変更や返済額の減額・免除をしてもらう」ことです。つまり、これまで返済しようと努力してきたものの、結果として返済が難しくなった場合の救済措置としての性質も有しています。そのため、債務整理をしたからといって、それだけでは罪に問われません。

しかし、最初から「すぐに債務整理すれば、返さなくていい」という軽い気持ちで借りて、直後に債務整理の手続きに着手した場合は、相手から「最初から返済する気がなかったのでは?」と思われても仕方ありません。

「期日が来たら返済する」という前提に基づいて契約したとしても、実際は返済する気がなかったというのは、明らかに詐欺罪として立件される余地を残しています。

実際は審査落ちの可能性が高い

実際のところ、債務整理を考えるほどであれば、決して財政状態が良くないことのほうが多いはずです。そんな状態で新たな借入をするべく審査を受けたとしても、審査に通る確率は低いでしょう。

つまり「借りたらすぐに債務整理をしてしまおう」と思うくらいなら、審査に通る確率も低いですが、運よく借りられたとしても、後でとんでもない落とし穴が待っています。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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