専業主婦と兼業主婦のメリット・デメリットを徹底比較。結局、お得なのはどっち?

一昔前だと「夫は外で働き、妻は家を守る」というように、妻が専業主婦である家庭のほうがどちらかといえば「多数派」でした。しかし、今は逆に、妻も正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト、フリーランスなど、形はどうであれ働いている夫婦のほうが多くなっているようです。

もちろん、どちらを選んだとしても、それぞれにメリット・デメリットがあります。そこで今回の記事では、専業主婦と兼業主婦のメリット・デメリットを徹底比較してみましょう。

専業主婦のメリット・デメリット

最初に、専業主婦のメリット・デメリットを比較してみましょう。

メリット

メリットとして挙げられるのは

  • ゆったりとした生活を送れる
  • 子どもの成長を見守れる
  • 配偶者の転勤にもついていきやすい

の3点です。

ゆったりとした生活を送れる

専業主婦の場合、定時に出社するために通勤電車に乗ったり、車を運転したりということはまずありません。

家事はこなさなくてはいけませんが、自分のペースや体調に合わせて動けばよいので、比較的ゆったりとした生活を送れるでしょう。

ただし、子育てで忙しい時期はそれどころではなくなるので、周囲の理解や協力が必要です。

子どもの成長を見守れる

結婚、出産を機に専業主婦になる人は一定数います。その理由の1つが「子どもの成長を見守りたいから」かもしれません。たしかに、専業主婦であれば、子どもと一緒にいられる時間は、兼業主婦に比べるとかなり多くとれるでしょう。一緒に遊んだり、絵本を読んだり、子どものうちでないとできないことを体験できるのは、お金には代えがたい経験であるはずです。

配偶者の転勤にもついていきやすい

配偶者が国家公務員や大企業の社員であるなど、転勤が多い場合は、専業主婦のほうが動きは取りやすいはずです。

中には、海外赴任を命じられるケースもあります。そのようなケースであっても、専業主婦であれば、出国前の準備から現地での生活体制の整備まで、配偶者に代わって準備を進めやすいはずです。

デメリット

一方、デメリットとしては

  • 経済的に余裕がないと厳しい
  • 社会とのつながりが絶たれる
  • 手に職がないと再就職は厳しい
  • 配偶者の死亡、離婚で生活が破綻する恐れがある

が挙げられます。

経済的に余裕がないと厳しい

専業主婦の場合、配偶者の給料だけで生活していかなくてはいけません。

そのため、専業主婦でありつつも、ある程度金銭的に余裕のある生活を送るためには、配偶者に十分な収入があることが前提になります。

もちろん、配偶者に十分な収入がなかったとしても、専業主婦を選択すること自体はできますが、日々節約するなど、かなり工夫して生活することが求められるので、万人におすすめできる方法ではありません。

社会とのつながりが絶たれる

専業主婦になると、自分から動かない限りは、家族以外の人と話さない日が続くことも十分にあり得ます。もともと、人と話さなくても平気という人であれば、あまりデメリットには思わないかもしれません。

しかし、人と関わるのが好きという人の場合、家族以外の人と話さない日々が続くと、かなりのストレスになってしまうでしょう。人によっては「自分はもう独りぼっち?」と思い詰めるくらい、社会とのつながりが絶たれてしまう恐れもあることに、注意が必要です。

手に職がないと再就職は厳しい

今、専業主婦の人の中には「子どもが小学生になったらパートやアルバイトになるだろうけど、再就職しよう」と思っている人もいるかもしれません。

それ自体はごく当たり前に行われていることですが、手に職がない場合、再就職が厳しくなる可能性もあることは、頭にとどめておきましょう。

実際に再就職できるかどうかは、その人のこれまでの経験や持っている資格、その時の求人状況や応募職種、果てはご縁やタイミングといったものに至るまで、様々な要素に左右されます。いずれにしても、1つでも不利な要素はないに越したことがないでしょう。

配偶者の死亡、夫婦間トラブルで生活が破綻する恐れがある

専業主婦の場合、配偶者の給料のみで生活することになるため、配偶者が亡くなったり、高度障害状態に陥ったりした場合、生活が立ち行かなくなる恐れがあります。もちろん、首尾よく再就職できれば問題ないですが、なかなかそうもいかないことだってあるのです。

専業主婦として生活するつもりなら、配偶者と話し合い「万が一のことがあったらどうやって生活していくか」を考えておきましょう。貯金に加えて、生命保険などの商品で備えるのも手段の1つです。

また、結婚したものの、配偶者とうまくいかなくなり、離婚を考えた場合、お金を稼ぐ手段がないため、実際に離婚にまで踏み切れない可能性が高いのが、専業主婦の人です。

相手との関係が悪化しているにも関わらず「お金を稼げないから」という理由で離婚に踏み切れないのは、かなりのストレスになるでしょう。

もちろん、我慢を強いられていても、生活費を入れてくれるならまだましかもしれません。中には、生活費を入れず、結果として専業主婦である妻の貯金を切り崩させて生活させる夫もいます。ひどい仕打ちをされているにも関わらず「離婚をしてしまったら、生活していけないのでは」と思い、離婚に踏み切れない専業主婦だっているはずです。

兼業主婦のメリット・デメリット

一方、兼業主婦のメリット・デメリットは、ちょうど専業主婦と真逆と考えるとわかりやすいでしょう。

メリット

メリットとしては

  • 経済的な余裕はある
  • 社会とのつながりを保てる
  • 配偶者の死亡、夫婦間トラブルの場合も経済的なダメージは少ない
  • 出産、子育てでもらえるお金が多い

の4点が挙げられます。

経済的な余裕はある

やはり、一人で働いて生活を支えるよりも、二人で働いて生活を支えあっていくほうが、経済的な余裕が生まれやすいのも事実です。総務省が毎年行っている「家計調査」によれば、2人以上の世帯の1ヶ月の平均生活費は293,379円でした。

出典:統計局ホームページ/家計調査報告 ―月・四半期・年―

計算しやすくするために、仮に1ヶ月の生活費が30万円として、最低限必要な年収を計算してみましょう。額面の8割が手取りになるとしたら

30万円 × 12カ月 ÷ 0.8 = 450万円

が額面ベースの年収で最低でも必要になる計算です。

実際はここからさらに貯金や生活予備費をキープしておきたいところなので、ある程度お金の心配がない、余裕のある生活をしようとしたら、額面年収600万円はあったほうがいいでしょう。

しかし、実際に額面年収600万円を実現できている人は、男性でもごくわずかです。

年収 全体に占めるパーセンテージ
100万円以下 3.3%
200万円以下 6.6%
300万円以下 11.0%
400万円以下 17.3%
500万円以下 17.8%
600万円以下 13.5%
700万円以下 9.2%
900万円以下 4.4%
1,000万円以下 2.8%
1,500万円以下 5.6%
2,000万円以下 1.2%
2,500万円以下 0.4%
2,500万円超 0.5%

出典:標本調査結果|国税庁

こちらは、国税庁がまとめている「平成30年度 民間給与実態調査」による、男性の平均年収の分布を表にしたものです。年収が600万円以下の層を合計すると、全体の69.5%にもなります。

つまり、約7割の男性が年収600万円以下である以上、夫の働きだけで余裕がある生活を送るのは厳しいかもしれません。パートやアルバイトでもいいので、共働きをしていたほうが、経済的にはやはり余裕が出てくるはずです。

社会とのつながりを保てる

仕事をしていれば、たとえそれが家の中で完結する在宅ワークであったとしても、人とのかかわりはゼロにはなりません。社会との接点を保ち続けることができるので、良い気分転嫁になる上に「人の役に立っている」という満足感も得られるでしょう。

配偶者の死亡、夫婦間トラブルの場合も経済的なダメージは少ない

兼業主婦であれば、自分も働いている以上、配偶者に万が一のことがあったり、障害が遺って働けなくなったりした場合でも、全く生活費が入ってこなくなることは(仕事を続けている限りは)あり得ません。

また、配偶者との関係が修復不可能なレベルにまで悪化したとしても、自身が働いてお金を稼ぐことができている以上、経済的なことがネックになって離婚を踏みとどまる可能性も低いでしょう。

このように、家族にトラブルがあったとしても、経済的なダメージは少なくできるのは、兼業主婦ならではの強みです。

出産、子育てでお金がもらえるお金が多い

兼業主婦の妻が正社員だった場合、出産や子育てでもらえるお金が増えます。国が出産や子育てをする女性に対して支給することを決めているお金のうち、有名なものを挙げてみました。

出産一時金 妊娠4カ月(85日)以上で出産(早産・死産・流産等)した場合、生まれてくる子一人あたり通常42万円支給。
出産手当金 妊娠・出産理由の休業期間、産前42日・産後56日の最大98日間、標準報酬日額の3分の2を支給。
育児休業給付金 産休や育休取得者で子が1歳(最長では1歳6カ月)になるまで収入の一部を支給

このうち、出産一時金は専業主婦、兼業主婦ともに受け取れますが、出産手当金・育児休業給付金は、会社員や公務員として働いている兼業主婦でないともらえません。

デメリット

一方、兼業主婦のデメリットは

  • 生活がせわしなくなる
  • 子どもと一緒に過ごす時間はやはり減る
  • 配偶者の転勤によりキャリアが中断する恐れがある

の3つです。

生活がせわしなくなる

仕事をしている以上、決まった時間に出社したり、契約で定められた納期までに仕上げたりしなくてはいけない以上、常に時間に追われて生活する羽目になるのは否めません。兼業主婦の場合、それと並行して家事や子育てをしなくてはいけないので、さらにタイトなスケジュールで動かないといけないでしょう。

日々の生活もせわしなくなるので「のんびり過ごしたい」という人には、兼業主婦として生活するのは大変かもしれません。

子どもと一緒に過ごす時間はやはり減る

近年は、時短勤務や子どもの看護休暇が取り入れられるなど、子育てをしながら働けるよう、法律や制度が整いつつあります。しかし、それでも兼業主婦は、専業主婦に比べるとずっと子どもと一緒に過ごせる時間は少ないのが実情です。

配偶者の転勤によりキャリアが中断する恐れがある

例え、生活がせわしなくなったり、子どもと一緒に過ごす時間が減ったりしても、周囲の理解と協力があるなら、なんとか乗り切れるかもしれません。

しかし、配偶者が転勤することになった場合「自分が仕事を辞めてついていく」のか「配偶者に単身赴任してもらい、自分を含めた家族が定期的に訪問するのか」の選択を迫られることになります。後者の選択をすれば、自分は仕事を辞めなくても済みますが、配偶者を含めた他の家族の理解が得られるとは限りません。

また、家族内では納得したとしても、社内の規定で「転勤先、赴任先には家族も同行すること」と決まっていた場合は、やはり自分が仕事を辞めてついていかざるを得なくなるパターンが多いでしょう。

このように、配偶者の転勤によって、キャリアが中断してしまうリスクがあることも、兼業主婦ならではの悩みの1つです。

結局、お得なのはどっち?

ここまでの内容を踏まえて、結局、専業主婦と兼業主婦のどっちのほうがお得なのかを考えてみましょう。

お金の面では兼業主婦が圧倒的にお得

まず、お金の面だけに限って言えば、兼業主婦のほうが圧倒的にお得です。それを裏付ける調査結果をご紹介します。

兼業主婦と専業主婦の生涯収入を比べてみた

次の2つのパターンの人がいたと考えましょう。

A(定年まで兼業主婦) 大学を卒業後、同じ会社でフルタイムの正社員として働き続け、60歳で退職した。なお、子どもは2人(31歳、34歳の時に出産)で、それぞれ育児休暇を1年取得したが、その後はフルタイムで復帰している。
B(結婚を機に専業主婦) 大学を卒業後、フルタイムの正社員としてある会社に就職したが、子どもができたことを機に退職した。退職後はずっと専業主婦だった。なお、子どもは2人(31歳、34歳の時に出産)なのは、Aのケースと同じである。

このような2つのパターンを想定した場合、それぞれの生涯所得はAが2億3,008万円、Bが3,795万円でした。

出典:久我尚子「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計-標準労働者は育休・時短でも2億円超、出産退職は△2億円。働き続けられる環境整備を。」

単純計算で2億円近く違うということです。

自分や家族が人生に何を求めるかで答えは変わる

お金の面だけで見れば、兼業主婦のほうが、専業主婦よりも圧倒的に得をしています。しかし、人にはそれぞれ事情があるはずです。例えば、専業主婦になるか兼業主婦になるかについては

  • 自分や配偶者の価値観
  • 子育てのスタンス
  • 配偶者の仕事の状況
  • 自分や配偶者の健康状況

によっても、最適な答えは分かれるのです。

結局のところは、自分や配偶者が、人生に対して何を望むかで、どっちがいいのかが決まります。お互いに話し合いをし「自分や家族が幸せに暮らすにはどうすればいいか」を踏まえ、決めるようにしてください。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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