近年話題になっているふるさと納税。名前は知っていて、興味があっても、実際にやったことがある人となると、まだまだ少ないかもしれません。そこで今回の記事では
- ふるさと納税とは何か
- ふるさと納税のメリット・デメリット
を中心に解説しましょう。
目次
ふるさと納税とは
好きな自治体に「寄附」ができる制度
私たちは会社から給料をもらったり、事業を営んで収益が上がったりすると、その一部を国や自分が住んでいる地方自治体(都道府県、市区町村)に対して税金を納めます。しかし、生まれてから亡くなるまで、全く同じ場所に住み続ける人は近年ではだんだんと減っているのも事実です。特に、大都市から離れた地方に住んでいる人は、大学進学や就職を機に、その土地を離れるのも珍しくありません。
こうなると、人が集まる大都市の税収はうなぎのぼりになるものの、そうでない地域の税収は減る一方という問題が発生します。そこで、このような問題を解決するための手段として、数多くの議論や検討を経て、
2007年5月に「ふるさと納税」を制度として創設することが決定しました。翌年の2008年から制度が開始しましたが、制度の認知度が増すにつれ、利用する自治体も、受入額もどんどん増えていきました。受入件数および受入額は以下の通りです。
年度 | 受入額(千円) | 受入件数(件数) |
---|---|---|
2008 | 8,139,573 | 53,671 |
2009 | 7,697,723 | 56,332 |
2010 | 10,217,708 | 79,926 |
2011 | 12,162,570 | 100,861 |
2012 | 10,410,020 | 122,347 |
2013 | 14,563,583 | 427,069 |
2014 | 38,852,167 | 1,912,922 |
2015 | 165,291,021 | 7,260,093 |
2016 | 284,408,875 | 12,710,780 |
2017 | 365,316,666 | 17,301,584 |
2018 | 512,706,339 | 23,223,826 |
出典:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和元年度実施)」
「寄附」したお金の一部を税金から差し引ける
ふるさと納税について誤解されがちなこととして「実態は、納税というよりは寄附に近い」ということが挙げられます。つまり、自分が選んだ任意の自治体に寄附を行うと、寄付をした金額のうち、2,000円を超える金額については、所得税及び住民税から原則として全額が控除される=差し引かれる制度を指しています。
ふるさと納税のメリットとは
次に、ふるさと納税のメリットについて考えてみましょう。
- 返礼品がもらえる
- ポイントがもらえる
- 自分が好きな自治体に寄付できる
- 寄付金の使い道を指定できる
- 地方創生の支援ができる
の5つについて解説します。
1.返礼品がもらえる
ふるさと納税に興味を持つきっかけが「返礼品が欲しいから」ということだった人もいるはずです。ふるさと納税を行う自治体は、納税をしてくれた人に対して返礼品を贈呈していますが
- その市区町村もしくは同都道府県の名産品
- 寄附金の金額の30%程度の価値のもの
という条件を満たすことが必要であるため、結果として「その土地の特産品」が採用されることが多くなっています。農業や漁業が盛んな地域であれば、肉・魚・野菜・米などが返礼品として設けられているため「食費の節約をしたい」という理由でふるさと納税を活用する人もいるのです。
また、近年では「お墓参り代行サービス」「空き家管理サービス」など、具体的な商品ではない返礼品も出てきています。「返礼品としてどんなものが設定されているのか」を見ているだけでも楽しめるので、興味がある方はぜひ試してみてください。
2.ポイントがもらえる
ふるさと納税をする場合は、オンライン上の専門サービスを利用し、ネットショッピング形式で寄附したい自治体を選んで手続きを進めていく方法が主流です。その際、支払いにクレジットカードを使うと、クレジットカード決済によるポイントが貯まります。
また、クレジットカード会社によっては、ポイントサイトといって、そのサイトを経由して外部のオンラインショッピングを利用すると、経由したことによるポイントの上乗せが受けられるサイトを運営していることもあります。ふるさと納税サービスに対応しているポイントサイトを使えれば、さらにポイントが貯まるので「どうせなら、ポイントが貯められるとうれしい」という人は、ぜひトライしてみてください。
3.自分が好きな自治体に寄附できる
ふるさと納税の特徴として、自分が好きな自治体に寄附を行うことができることが挙げられます。例えば、埼玉県さいたま市に住んでいる人が、大阪府大阪市に寄附をしても構わないわけです。
- 自分や家族の出身地である
- お世話になった人が住んでいる
- 災害や事故で大変な状態になったことに心を痛めた
など、自分なりの理由で寄附すべき自治体を選んで構いません。ただし、返礼品の贈呈が受けられるのは「その市区町村に住んでいない人」という条件が設けられていることに注意してください。
4.寄附金の使い道を指定できる
ふるさと納税を通じて寄附を行う際、相手先となる自治体に対し、寄附金の使い道を指定できます。例えば、2011年3月に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市の場合、ふるさと納税を通じて集まった寄附金の使い道については、以下のように細分化しています。
- 子ども支援のための事業
- 高齢者、障がい者支援のための事業
- 農林水産省、商工業等の振興のための事業
- 移住・定住促進のための事業
- 環境美化のための事業
- コミュニティ活動、NPO団体等の支援のための次号
- 岩手県指定文化財吉田家住宅復元事業
- 陸前高田思民(かかわりを持ち続けてくれる人の愛称)のための事業
5.地方創生の支援ができる
都心に住んでいるとわかりにくいかもしれませんが、深刻な過疎化とそれに伴う税収の減少を課題としている地方自治体は多く存在します。移住、定住を促進させるために子育てや高齢者、障がい者支援などの施策を検討したとしても、財源がなければどうしようもありません。
大企業の本社が多く、富裕層も多く住んでいる大都市であれば、ある程度安定して税収が見込めるでしょう。しかし、そうでない地方にとっては、税収不足は解決すべき問題として立ちはだかっています。平成22年=2010年の統計では、東京都の人口1人当たりの税収額は、沖縄県の人口1人当たりの税収額と比較すると、2.6倍にも上っていました。
つまり、税収の少ない地方にとっては、たとえ優れた政策を立案できたとしても、実行できるだけの予算がないことが、重大な問題として立ちふさがるのです。ふるさと納税が、この状況を打開する切り札になるかもしれません。
ふるさと納税のデメリットとは
一方、ふるさと納税のデメリットとして
- 税金が減るわけではない
- 税金控除のための申請が面倒
- 所得に応じて控除限度額が決められている
- 自分が住んでいる自治体の財政が悪化する可能性もある
- 制度が使えない自治体もある
が挙げられます。
1.支払う税金が減るわけではない
ふるさと納税を行う際は、一度自分で寄附金を支払わなくてはいけません。支払った寄附金のうち、2,000円を差し引いた金額が所得税・住民税から控除=差し引かれますが、出て行ったお金が戻ってくるわけではないのです。いわば「本来納付すべき税金を好きな自治体に前払いする」制度であるため、節税=支払う税金を少なくする、という意味にはなりません。
2.税金控除のための申請が面倒
ふるさと納税を行った場合、税額控除を受けるためには、確定申告を行わないといけません。ただし、会社勤めをして給料をもらっている人=給与所得者の場合は「ワンストップ特例」を使うことで、確定申告をしないで済むケースもあります。
ワンストップ特例とは、主に給与所得者(会社勤めをして給料をもらっている人)など、本来は確定申告をする必要がない人向けの特例措置です。つまり
- もともと確定申告をする必要がない(会社員などの給与所得者である)
- 1年間の寄付先が5自治体以内である
の2つの条件を満たす場合は、寄附を行う都度、寄附を行った自治体に申請書を送ることで、確定申告による控除手続きを免除されます。
所得税の還付は受けられませんが、確定申告を行った場合に還付を受けられた所得税の税額分が加算された状態で、住民税の減額が行われます。
なお、寄附をした年の翌年1月10日までに、寄附を行った自治体に申請書が届いていないと、確定申告を行わなくてはいけないので、スケジュールにも注意が必要です。
3.所得に応じて控除限度額が決められている
ふるさと納税を行ったとしても、所得税と住民税の全額が控除されるとは限りません。これは、控除の対象となるふるさと納税額は
- 所得税の場合:総所得金額等の40%が上限
- 住民税からの控除(基本額)の場合:総所得金額等の30%が上限
と決められているためです。この条件を上回ってふるさと納税をしたとしても、超えた部分については、全額控除の対象とならないことに注意が必要です。
控除限度額は、ふるさと納税サービスのWebサイトに設置されているシミュレーターで簡単に計算できます。年収を入力するだけでもおおよその目安はつかめるので、試してみましょう。
出典:ふるさと納税サイト ふるなび「ふるさと納税 控除シミュレーションと計算方法(限度額の目安)」
また、余力があるようであれば
- 扶養家族の人数
- 障がい者の人数
- 社会保険料等の金額
- 地震保険料の控除額
- 医療費控除の金額
など、詳細な情報を入力したほうがより正確な数字がわかります。
出典:ふるさと納税サイト ふるなび「ふるさと納税 控除シミュレーションと計算方法(限度額の目安)」
4.自分が住んでいる自治体の財政が悪化する可能性もある
ふるさと納税を行うと、税収が増える地域がある反面、税収が減る地域もあるのが事実です。本来、住民税は「自分が住んでいる地方自治体」に納めるのが基本であるものの、その原則から外れる形で寄附を行うから、と考えましょう。この傾向が続いていくと、自分が住んでいる地域の財政が一気に悪化する可能性もゼロではありません。
ふるさと納税の手続きの概要
- ふるさと納税の手続きについて、簡単に手順を説明しましょう。
- 寄附したい自治体を決める
- 寄附したい自治体がふるさと納税サービスサイトで募集を行っているか探す
- 寄附金の額と返礼品、寄附金の利用用途を決め、寄附を行う
- 返礼品が届いたのを確認する
- ワンストップ特例を利用する場合は、返礼品が届き次第、申請書を送る(翌年の1月10日必着)
- 確定申告を行う場合は、翌年の2月16日から3月15日までに手続きを済ませる
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