2020年に入り、新型コロナウイルス感染症が流行したことに伴い、感染症リスクを避ける観点から、キャッシュレスでの支払いが推奨されるようになりました。しかし、クレジットカードに代表されるキャッシュレスでの支払いは、一定期間の利用額を後で請求する「後払い」であることが多いため、「いくらお金を使ったかわからない」という理由で抵抗を覚える人もいたはずです。
筆者はそういう人にこそ、デビットカードを試してほしいと思っています。今回は、デビットカードのメリットとデメリットについて解説しましょう。
デビットカードとは
デビットカードとは、決済用のカードの1つです。現在は「国際ブランドデビット」といって、クレジットカードの加盟店(利用できるお店)で、クレジットカードと同様に利用できるものが主流になっています。
最大の特徴は「その場で引落が完了する」こと
デビットカードの最大の特徴は「決済した瞬間、支払元として指定した銀行口座から利用額が引き落とされること」でしょう。このため、支払元となっている銀行口座の残高が不足していた場合は、エラーになるため決済ができません。
一方、クレジットカードの場合は「一定期間の利用額を集計し、あとで請求を行う」という流れになっています。このため、仮に支払元となっている銀行口座の残高が不足していたとしても、あらかじめ定められた利用限度額を超えていない限りは、支払いを行うことができるのです。
デビットカードのメリット
デビットカードのメリットとして
- 後払いでないため浪費が防げる
- 15歳以上であれば誰でも作れる
- クレジットカードが使える店ならほとんど使える
- 海外のお店でも使える
が挙げられます。
後払いでないため浪費が防げる
クレジットカードの場合「会員の一定期間の利用額をもとに請求額を確定させ、後日銀行口座から引き落とす」仕組みであるため、実際に手元にお金がなくても支払いができてしまいます。そのため、節度を持って使わないと浪費をしてしまいがちです。
しかし、デビットカードの場合は、決済をした瞬間に支払い元として指定されている銀行口座から引き落としが行われます。
仮に、買い物をする際にデビットカードを利用した場合に、銀行口座の残高が利用額を下回っていた場合は、エラーが出てしまい、決済が完了しません。
15歳以上であれば誰でも作れる
一般的に、クレジットカードが申し込めるのは18歳以上からです。単身で海外の高校に行くなど、相応の事情がある場合は、家族カードの追加発行という形で15歳から持てるケースもありますが、数としては極めて少ないでしょう。
クレジットカードのように「一度、クレジットカード会社がお金を立て替え、後で返済する」という仕組みでない以上、持てる年齢を引き下げてもリスクは少ないと考えられるためです。
クレジットカードが使える店ならほとんど使える
デビットカードは、クレジットカードの国際ブランド(決済システムを提供する会社)の決済システムを利用して決済を行います。そのため、一部の例外を除いて、クレジットカードが使えるお店ならほとんど利用できると考えましょう。なお、2020年12月現在、日本の銀行ではVisa、JCB、Mastercardが付帯したデビットカードを扱っています。
国際ブランド | 取扱銀行名 |
---|---|
Visa | 北國銀行、GMOあおぞらネット銀行、広島銀行、ソニー銀行、山梨中央銀行、SMBC信託銀行、あおぞら銀行、西日本シティ銀行、北海道銀行、愛知銀行、大光銀行、住信SBIネット銀行、スルガ銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行、北陸銀行、常陽銀行、イオン銀行、三井住友銀行、福井銀行、楽天銀行、PayPay銀行、琉球銀行、滋賀銀行、三菱UFJ銀行、千葉銀行、池田泉州銀行、埼玉りそな銀行、岩手銀行、関西みらい銀行、中京銀行 |
JCB | 西日本シティ銀行、みずほ銀行、熊本銀行、鹿児島銀行、十六銀行、三菱UFJ銀行、名古屋銀行、広島銀行、中国銀行、千葉銀行、もみじ銀行、阿波銀行、北九州銀行、山口銀行、栃木銀行、肥後銀行、イオン銀行、十八親和銀行、紀陽銀行、池田泉州銀行、北洋銀行、福岡銀行、楽天銀行、セブン銀行、愛媛銀行、七十七銀行、沖縄銀行、八十二銀行、大垣共立銀行、auじぶん銀行、北陸銀行、秋田銀行、京都銀行、東邦銀行 |
Mastercard | 楽天銀行、住信SBIネット銀行、トマト銀行 |
海外のお店でも使える
クレジットカードが使えるお店であれば、国内の店舗はもちろん、海外の店舗であっても利用可能です。この場合、外貨での利用額を銀行で定めたレートに基づき換算した金額が、銀行口座から引き落とされます。
レートの定め方については、デビットカードの利用規約や、銀行のWebページに記載があるはずなので、一度確認してみましょう。
海外でのVisaデビットご利用代金(海外ショッピング、海外提携ATMでの現地通貨お引出し)は、外貨額をVisaの指定するレートに当行の海外取扱事務手数料2.62%(税込)を加えて円貨に換算します。なお、Visaの指定するレートについては当行ではお答えできません。
出典:Visaデビットを海外で利用した際の換算レートを教えてください。 | あおぞら銀行
「海外で買い物をしたいけど、クレジットカードの請求額が怖い」という人であっても、デビットカードであれば安心して買い物ができるでしょう。
クレジットカードのようにポイント・キャッシュバックがある
デビットカードの種類にもよりますが、クレジットカードのように利用額に応じたポイントの付与があったり、キャッシュバックが受けられたりすることもあります。
実質的に即時現金払いをしているのに、ポイントやキャッシュバックを受けられるのは非常に便利です。
支払いの管理がしやすい
デビットカードを加盟店で利用すると、その場で利用額が支払元として指定された銀行口座から引き落とされます。
デビットカードのデメリット
一方、デビットカードのデメリットとして
- その日のうちに手に入れるのはかなり難しい
- 銀行口座に残高がないと使えない
- ガソリンスタンドなど一部使えない店舗もある
- 店員の対応が不慣れでトラブルになるケースもある
の4点が挙げられます。
その日のうちに手に入れるのはかなり難しい
デビットカードは、銀行によって
- キャッシュカードと一体になっているもの
- キャッシュカードとは別に発行されるもの
の2種類があります。しかし、ほとんどの銀行が、発行までに数日~数週間を要する状態であるため「申し込んだその日に持って帰る」というわけにはいかないのが現実です。
なお、りそな銀行(同グループの埼玉りそな銀行、関西みらい銀行も含む)では、同行の口座を店頭で新規発行してもらう場合は、その日のうちにキャッシュカードと一体になっているデビットカードを持って帰れる可能性があります。
出典:りそなデビットカード(Visaデビット) | りそなグループ
ただし、すでにりそな銀行(埼玉りそな銀行、関西みらい銀行)に口座があり、キャッシュカードを持っている人の場合は、切り替えになるため、即日発行というわけにはいかないのも事実です。
銀行口座に残高がないと使えない
クレジットカードの場合、あらかじめ定められた利用限度額の範囲内であれば、たとえ支払い元である銀行口座の残高が不足していても、支払いに使うことはできます。しかし、デビットカードの場合は「決済が完了すると同時に、支払元として設定した銀行から引き落としが行われる」仕組みであるため、支払額を上回る金額が、銀行口座の残高として存在していないといけません。
浪費が防げるという意味では非常に優れた仕組みですが、「銀行口座の残高が怪しいけど、今支払いをしておかないといけない」という場合は、このことがネックになりうるでしょう。
ガソリンスタンドなど一部使えない店舗もある
デビットカードは「決済が完了すると同時に、支払元として設定した銀行から引き落としが行われる」仕組みです。そのため「決済は完了したものの、最終的な金額が後になって確定する」取引の場合、デビットカードでの決済ができない決まりになっているケースもあります。仮に過不足額が生じていた場合、後日の調整が難しくなるためです。
具体例としては
- ガソリンスタンド
- 飛行機の機内販売
- ホテルやレンタカーのデポジット(保証金)
などが考えられます。ただし、細かい取り扱いは、デビットカードを発行している金融機関や店舗によっても異なるので、その都度確認しましょう。
店員の対応が不慣れでトラブルになるケースもある
目立ったデメリットとは言えませんが、デビットカードの存在自体を知らない人がいるのも事実です。仮に、買い物をした店の店員がそのような人だった場合「デビットカードで」と伝えると、どうやって応対すればいいのか困らせてしまうかもしれません。
中には「デビットカードは使えません」と言ってくる人もいるでしょう。実は、日本にはJデビットといって、都市銀行や地方銀行などのキャッシュカードを使って決済ができるようにするというシステムもありました。システムの仕様などの都合でほとんど普及しなかったのですが、名前だけは知られているため、店員の年齢によっては「デビットカードでの支払い=Jデビットでの支払い」と思われてしまうかもしれません。
やり取りがちぐはぐにならないようにするには、あえて「クレジット一括で」と伝えておいたほうがいいでしょう。
クレジットカードと比較するとポイント・キャッシュバックが手薄
デビットカード自体にポイント・キャッシュバックのシステムが導入されているかは、発行している銀行によってかなり扱いに差があります。また、クレジットカードと比べるとポイント・キャッシュバックはやはり手薄です。
例えば、ポイント還元率についてみてみると、クレジットカードの場合は0.5%から1.0%が一般的なのに対し、デビットカードは0.2%から0.5%が一般的です。もちろん、一部例外もありますが、ポイントやキャッシュバック狙いなら、クレジットカードを使った方が得かもしれません。
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