債務整理を考えるべきタイミングと方法を選ぶ上でのポイント

お金を借りたらすべて返済するのが基本ですが、銀行・消費者金融・信販会社から借りて返済が困難になった場合は、債務整理を行って解決させるのも1つの手段です。

しかし、一口に債務整理と言っても、借金減額の効果や、手続きの流れなど、1つ1つ違う点があるため「自分の今の状況にあった方法を選ぶ」ことがとても大事になります。

債務整理を考えるべきタイミングと方法を選ぶ上で検討すべきポイントをまとめました。

債務整理を考えるべきタイミングは?

大幅に収入がダウンした

借りたお金が返せなくなる原因の1つに「当初の収入では無理のない返済計画だったものの、大幅に収入がダウンして、計画が狂った」ことが挙げられます。
そのため

  • 災害などの予期しない原因により、給料が大幅に切り下げられたり、希望退職の募集があったりした
  • 長期にわたり療養が必要な病気・ケガが原因で働けない

など、大幅に収入がダウンしたり、ゼロになったりしてしまう出来事があった場合、債務整理を検討しましょう。

クレジットカードの利用限度額が常に上限に達している

クレジットカードの利用限度額は、その人の年齢・年収、クレジットカードの種類によりさまざまです。

しかし「複数枚のクレジットカードを所有していて、残債(支払いが終わっていない部分)が利用限度額の合計に近い」状態では、毎月の返済額も相当なものになってしまい、いわゆる「自転車操業」の状態に陥っていることは十分に考えられます。

その状態を続けていると、いずれは支払いがとん挫してしまうため、債務整理で解決するしかなくなるでしょう。

浪費癖があり毎月赤字

買い物やギャンブルが好き、という人もいるはずです。毎月の収入の範囲で、生活に影響を及ぼさない程度に楽しんでいるなら、別に無理に止める必要はありません。しかし、毎月の収入を上回る金額を使ってしまい、慢性的に赤字に陥っているのであれば、明らかにやりすぎです。

借金をして買い物やギャンブルをし、その借金を別のところから借りて返す、という状態に陥っているなら、最終的には債務整理をするしかなくなる可能性も出てきます。

ただし、浪費が原因で借金をした場合、自己破産や個人再生など、裁判所を通す債務手続きでは借金を減額できないこともあるので、注意しましょう。

債務整理も方法ごとに特徴がある

結局のところ、債務整理を行うべきタイミングは「近いうちに支払いができなくなる、もしくはすでに支払いができなくなっている」時です。

そうなった場合は、弁護士や司法書士など、しかるべき専門家に相談し、債務整理の手続きを進めていきましょう。また、債務整理と言っても、方法によって特徴があるので「どんな人がどの方法を選ぶか」にもばらつきがあります。

任意整理を選ぶべきケースとは

任意整理とは

任意整理とは、弁護士・司法書士が依頼者の代理人となって債権者(銀行・消費者金融・信販会社など)と和解交渉を行い、成立した和解の内容に従い、支払いをしていく方法のことです。

後述する個人再生、自己破産とは違い、裁判所を介さないのが大きな特徴です。

任意整理を選ぶべきケース

任意整理を選ぶべきケースとして

  • ある程度の収入は得られる
  • 保証人付きの借金がある
  • 家・車のローンを払っている
  • 家族や職場にバレたくない

が考えられます。

ある程度の収入は得られる

任意整理において和解が成立すると、借金に対して発生した利息の支払いは免除してもらえます。しかし、交渉の経過にもよりますが、元本の支払いは免除されないことがほとんどです。つまり、利息を支払わなくてもよくなっただけで、元本の支払いは続いていきます。

そのため、現在就いている仕事をこれからも続けていくつもりであるなど、安定継続した収入がないと、任意整理を使うのは難しいでしょう。

保証人付きの借金がある

お金を借りるにあたり、保証人を立てていた場合で、仮に債務者が返済不能の状態に陥ると、保証人が返済をする必要が出てきます。

しかし、任意整理の手続きを進めるにあたり、保証人が付いた債務を対象から外しておけば、保証人が返済をする必要はありません。ただし、この場合は、利息の返済も免除されないので、気を付けましょう。

家・車のローンを払っている

どんな債務を任意整理の対象にするかは、債務者自身が選ぶことができます。

仮に、家や車を手放したくない場合は、住宅ローンや車のローンを任意整理の対象から外してしまえばいいのです。住宅ローンや車のローンの支払い義務は当初のまま残りますが、家や車を手放す必要もなくなります。

家族や職場にバレたくない

任意整理は個人再生・自己破産のように、裁判所を通しての手続きは行いません。そのため、任意整理を行った事実が官報に掲載されることもないので、自分から言い出さない限りは、家族や職場に発覚する可能性も低いです。

「返済がきついけど、債務整理をしたら家族や職場に何を言われるかわからない」と不安な場合は、任意整理をまずは検討してみましょう。

任意整理を選ぶ際の注意点

任意整理を債務整理の方法として選ぶ場合の注意点として

  • 必ず有利な条件で和解できるわけではない
  • これまでの返済期間が短いと減額幅は小さい

の2点が挙げられます。

必ず有利な条件で和解できるわけではない

任意整理は、弁護士・司法書士などの専門家と債権者が直接交渉して和解する方法です。

そのため、交渉の経過によっては、当初の予想より不利な条件を突きつけられることもあります。

これまでの返済期間が短いと減額幅は小さい

また、1つの傾向として、任意整理を行うまでの返済期間が短かった場合は

  • 支払う意思がない
  • 支払能力に著しい問題がある

などとみなされて、任意整理を行うことによる利息の支払額の減額幅は小さくなりがちです。

個人再生を選ぶべきケースとは

個人再生とは

裁判所に申し立てをして、原則として負債の20%の金額(約100万円~300万円)を3年間~5年間で支払う再生計画案を立てて認可決定を受けることにより、残りの債務を免除してもらう方法のことです。

個人再生を選ぶべきケース

個人再生を選ぶべきケースとして

  • ある程度まとまったお金を用意できる
  • 家・車は残したい
  • 借金の原因が浪費である

の3つのケースが考えられます。

ある程度まとまったお金を用意できる

個人再生をする場合、債権者に対して最低限返済していかなければいけない金額についての定めがあります。おおよその目安は以下の通りです。

債務額 最低返済額の目安
100万円未満 総額全部
100万円以上500万円以下 100万円
500万円を超え1500万円以下 総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下 300万円
3000万円を超え5000万円以下 総額の10分の1

出典:個人再生手続利用にあたって | 裁判所

家・車は残したい

個人再生の場合も、家や車を手元に残すことができる可能性は十分にあります。

住宅ローンについての特則
家を残したい場合は、個人再生の手続きをするにあたって、住宅ローンについての特則を適用してもらうよう希望すれば、家を手放さなくて済みます。

ただし、他の借金とは違い、これまでと同様の条件で支払いを続けなくてはいけない点に注意が必要です。

車はローンの種類・状況によって異なる

また、車を手元に残せるかどうかは、ローンの種類・状況によって扱いが異なります。チェックすべきポイントは「ローンの契約に、所有権留保条項が付されているか」です。

所有権留保とは、ローンが完済するまでの間、そのローンの対象となっている財物の所有権が債権者に残されている状態になっていることです。

つまり、車のローンを完済するまでは、その車の正式な所有者は債権者である銀行・信販会社などになります。いわば「借りて乗らせてもらっている状態」に過ぎません。

そのため、自分の車が「ローンの残債があり、所有権留保条項が付されている」状態であれば、個人再生を行うと車は没収されてしまいます。

一方

  • 車のローンをすでに完済している
  • 車のローンは返済中ではあるが、所有権留保条項は付されていない

状態であれば、個人再生を行ったとしても、車は没収されません。

借金の原因が浪費である

詳しくは後述しますが、自己破産の場合、借金を作った原因が浪費だったときは、免責が認められない(借金をゼロにできない)ことが十分に考えられます。本来は返済すべき借金をゼロにする影響の大きい手続きである以上、相応の理由があると認められることが前提として必要だからです。

しかし、個人再生は、大幅に減額はするものの、一部の返済は続けることが前提になるので、裁判所の判断も自己破産に比べるとややゆるくなります。

このため、自己破産ではゼロにしにくい「浪費が原因でできた借金」であっても、個人再生であれば大幅な減額は期待できるのです。

個人再生を選ぶ際の注意点

個人再生を選ぶ際に気を付けて欲しいのは「保証人がある債務の扱い」です。仮に、このような債務について個人再生を行うと、手続きにより減額された部分の借金は、保証人が代わりに払わないといけません。

また、手続きを行ったからといって、借金をゼロにできるわけではない以上、ある程度まとまったお金と長期間の安定収入を確保する必要があります。

自己破産を選ぶべきケースとは

自己破産とは

自己破産とは、裁判所に申し立てをして、最終的に借金の全額を免除してもらう手続きのことです。

返済義務がすべて免除される以上、毎月の支払いの負担からは解放されますが、後述するように、影響も大きい点には注意しましょう。

自己破産を選ぶべきケース

自己破産を選ぶべきケースとして

  • 収入のめど、貯金のあてがない
  • 借金の原因が事業の失敗である
  • 家・車は手放してもいい

が挙げられます。

収入のめど、貯金のあてがない

これまで紹介してきた任意整理や個人再生の場合、借金の減額はできるものの、完全にゼロにすることはできません。返済義務は生じ続ける以上、収入のめどや貯金のあてがない場合は、取ることが難しい方法です。

一方、自己破産は完全に返済額をゼロにしてしまう方法であるため、たとえ収入のめどや貯金のあてがない状態であっても問題ありません。

借金の原因が事業の失敗である

自己破産は本来返済すべき借金をすべて帳消しにするほどの効果を持つ手続きである以上、それ相応の理由がないと免責は認められません。

借金をした原因が事業に失敗したことであるなど、自身で制御しようがない理由である場合は、自己破産を行うことで、借金をゼロにできるでしょう。

一方、裁判官の裁量によって異なる部分はありますが、借金をした原因が、買い物やギャンブルによる浪費だった場合は、自己破産による免責が認められない可能性も高いので気を付けましょう。

家・車は手放してもいい

自己破産をした場合

  • 自己破産の手続きが始まってから入手した財産
  • 生活必需品(衣類、寝具、家具、台所用具、食料、燃料など)
  • 勤務先から受け取れる給料の4分の3
  • 99万円以下の現金
  • 裁判所が「生活に必要」として認めた一定の財産

など、最低限必要と認められる財産以外は手放さないといけません。家や車を持っていた場合も、基本的には没収されてしまうと考えましょう。なお、車の時価が20万円以下であれば、そのまま持ち続けられます。

自己破産を選ぶ際の注意点

個人再生のときと同様、自己破産をした際も、債務者に代わり、保証人が全額返済する必要が生じます。

また、自己破産の手続きをすると、免責(借金をゼロにしてもらうこと)が認められるまでは、一定の職業には就けない決まりです。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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