2020年初頭から世界中で流行した新型コロナウイルス感染症は、日本にも甚大な影響を及ぼしています。特に、飲食業や小売業、観光業など「人の移動を伴う」ことが前提の業界は、最大手クラスの会社であっても人員削減や給料・賞与のカットなどの対応に追われているのが実情でしょう。
当然、望まない形で仕事を失ってしまい、翌月以降住民税が払えるのか不安に思う人もいるはずです。今回は「もしかしたら、住民税払えないかも?」と不安で仕方がない人のために、正しい対処法を教えます。
目次
住民税を払わないと何が起こるのか
最終的には差押えが行われる
そもそも、住民税を払わなかったら、何が起こるのかを最初に解説しましょう。細かい部分は各自治体によって違いはありますが、一般的には次の流れで物事が進んでいきます。
- 滞納をしていると、1カ月ほどで督促通知書が送付されてくる。
- 督促通知書が送付されても納付をしないと、電話や自宅訪問の督促に加え、再度書類が送付されてくる。これは納付されるまで繰り返される。
- 本来の納付期限から3~5カ月ほど計画すると、催告状が送付されてくる。
- 催告状が送付されてきてから1カ月ほど滞納を続けると、差押予告書が送付されてくる。
- それでも滞納すると、財産がある銀行などに差押通知書が届き、差押えが実行される。
ここまでの流れをまとめると「滞納を続けると、最短で4カ月ほどで差押えが実行される」ということです。
また、差押えにあたっては、勤務先の会社、口座のある金融機関などに調査票が送付されることがあります。
自己破産しても免除はされないので注意
クレジットカードでのキャッシングやカードローンを使いすぎたりして多重債務に陥った結果、自己破産などの債務整理を選択することもあり得るでしょう。確かに、債務整理をすれば、負債の一部または全部の支払が免除されます。
しかし、住民税の支払は免除されないので気を付けてください。住民税は非免責債権といって、債務整理をしたとしても支払い義務が免除されない債務の1つに分類されるためです。
住民税が払えない場合の正しい対処法
ルールは市区町村によって異なる
住民税は、国税(国に納める税金。法人税や消費税、所得税など)とは違い、細かい扱いについては市区町村ごとに異なります。
これから紹介する猶予制度、減免についても、市区町村ごとで条件に細かい違いがあるケースもあるので、自分が住んでいる(住民票がある)自治体の規定を確認するようにしてください。
本記事では、埼玉県さいたま市と埼玉県朝霞市のケースを用いて解説します。
猶予制度を利用しよう
住民税を支払うことができない場合は、支払うのを延期してもらう(徴収猶予)か、差押えた財産を売り払うのを延期してもらう(換価の猶予)ことができます。それぞれについて詳しく解説しましょう。
徴収猶予
一定の条件に当てはまる場合に、所定の手続きを行うことで、1年以内であれば住民税の支払いを延期してもらうことができます。
埼玉県さいたま市の場合は、以下の条件に当てはまれば申請をすることが可能です。
- 財産について災害を受け、又は盗難にあったこと
- 納税者等又はその生計を一にする親族などが病気にかかり又は負傷したこと
- 事業を廃止し、又は休止したこと
- 事業について著しい損失を受けたこと※「著しい損失を受けた」とは、申請前の 1 年間において、その前年の利益の額の2分の1を超える損失(赤字)が生じた場合のこと
- 本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと
出典:さいたま市/市税等を一時に納付できない方のために~市税等の猶予制度について~
換価の猶予
住民税を払わずそのままにしていると、最終的には差押えが行われます。そして、市区町村は差押えた財産を売却して支払いが済んでいない住民税の支払に充てる仕組みです。しかし、換価の猶予の手続きを行うことで
- 既に差押えを受けた財産の換価(売却)が猶予される
- 差押えにより事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがある財産については、差押えが猶予・解除される
- 換価の猶予が認められた期間中の延滞金の一部が免除される
などの対応が受けられます。
など、一定の要件に該当する場合、利用可能な制度です。
徴収猶予、換価の猶予を受けるには?
まず、徴収猶予や換価の猶予を受けるにあたって必要になる書類は以下の通りです。
- 「換価の猶予申請書」又は「徴収猶予申請書」
- 「財産収支状況書」※資産、負債、収支の状況などを記載する
- 担保の提供に関する書類
- 災害などの事実を証する書類(徴収猶予の場合)※り災証明書、医療費の領収書、廃業届、決算書など
これ以外にも、住民税が払えなくなってしまった経緯について質問されるので、説明できるようメモを作って持っていくといいでしょう。
なお、さいたま市の場合、換価の猶予を申請する場合は「猶予を受けようとする市税等の納期限から6カ月以内」という期限が設けられています。
また、徴収猶予には基本的に期限は設けられてはいませんが「本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと」を理由に申請する場合は、その納付すべき税額が確定した市税等の納期限までに手続きを済まさないといけません。
新型コロナウイルスが原因でも猶予制度は利用可能
徴収猶予や換価の猶予自体は以前からある制度ですが、2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が流行したことに伴い、以下のケースでも徴収猶予が受けられる可能性があります。
- 災害により財産に相当な損失が生じた
- 本人または家族が病気にかかった
- 事業を廃止・休止した
- 事業に著しい損失を受けた
また、換価の猶予についても、新型コロナウイルス感染症の影響を理由として申請を行うことが可能です。
減免が受けられる自治体もある
一定の条件に該当した場合、住民税の減免(ゼロにしてもらう、もしくは支払額を減らしてもらう)を受けることができる自治体もあります。
例えば、埼玉県朝霞市の場合、以下の条件に当てはまれば、住民税の減免を申請することが可能です。
- 生活保護法の規定による保護を受けている人
- その年の所得が皆無となったため生活が著しく困難になったまたはこれに準ずる人
- 学生及び生徒
まずは市区町村役場に相談しよう
住民税が支払えないからといって、そのままにしておいても何もいいことはありません。まずは家族に相談し「一時的に立て替えて支払うから、働き始めたら分割で返してほしい」という申出があったら、ありがたくお願いしてもいいでしょう。ただし、親切を無駄にしないためにも、借用書を書き、決めた期限通りにお金を返すようにしてください。
問題になるのは、そのような親切な人が周囲にいなかったケースです。この場合、最初にやるべきことは市区町村役場に相談しに行くことでしょう。「失業して住民税が払えないので、相談に来ました」といえば、現状をヒアリングした上で、適切な対応を提案してくれるはずです。
ほとんどの職員は、住民税を払おうとしている人に対してぞんざいな態度はとらないので、安心して相談に行ってください。
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