生命保険、医療保険、火災保険などの保険への新規加入や他の商品への変更を検討している際、保険会社の営業担当に相談するのは決して珍しいことではありません。相談した結果、新規加入や変更自体を見送ったり、他の保険会社の商品を契約することになったりすることだって、往々にしてあるはずです。
そうなると、対応してくれた営業担当には断りの連絡を入れることになりますが、断り方があいまいだと、その後も勧誘の連絡が定期的に入るのは十分に考えられます。人によっては「もう何度連絡してきても一緒なんだから、いい加減にしてほしい」と不満をため込んでいるでしょう。
そこで今回の記事では
- 保険の勧誘がしつこくなる理由
- しつこい保険の勧誘の上手な断り方
- 何度断っても連絡が来る場合の対処法
について解説しましょう。
目次
保険の勧誘がしつこくなる唯一の理由
給料が成果給だから
最初に、なぜ保険の勧誘がしつこくなるのか、理由を考えてみましょう。
保険会社や保険代理店によって、営業担当者に採用している給与モデルは異なりますが、成果給の仕組みを用いている会社はやはり多くなっています。
- 固定給として一定額を支給し、残りは売上に応じて積み上げる
- 固定給が存在せず、売上に基づいて給料が決定される
など、運用の仕方は様々ですが、いずれにしても「契約が取れないと、給料がもらえない」ことには変わりありません。自分や家族の生活がかかっているため、なりふり構っていられないのが現実でしょう。
営業担当者によっても、それぞれ営業スタイルがあるので、全員が全員「しつこくて困る」というクレームをつけられるとは限りません。
苦情が入らない保険会社はない
保険会社の給与モデルが程度の差こそあれ、成果報酬型を採用していることを考えると、ある程度の精力的な勧誘はやむを得ません。しかし、度を過ぎてはやはり相手からのクレームにつながるでしょう。
なお、生命保険協会や損害保険協会では、顧客からの苦情とそれを受けた取り組みについて公開しています。
参照:生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について | 会員会社の情報 | 生命保険協会
個々の保険会社に対する苦情の状況については、ここでは割愛しますが、確実にいえるのは「苦情の入らない保険会社はない」ということです。裏を返せば、思うところがあれば苦情を入れるのはしかるべき対応でしょう。
しつこい保険の勧誘の上手な断り方3選
断るときの基本的な考え方
保険会社という組織に属し、売上を上げる使命を背負っている以上、勧誘をするのも仕事の1つであり、本来は責められるべきものではないでしょう。また、営業担当者だって人間である以上、しつこく問い詰められたり、罵倒されたりしてはたまりません。
ここから先は、営業担当者の属性によって、適切な断り方を考えてみましょう。
友人、知人が勧誘してきたケース
学生時代の同級生など、友人・知人が保険会社に営業担当者として勤務していて、勧誘を受けた場合を考えてみましょう。一番いいのは、最初の段階で「既に保険に入っているから、もう大丈夫」など、勧誘は不要である旨をきっぱり伝えてしまうことです。
それでも食い下がってくるようであれば「昔から●●生命の人で、任せている人がいるから」など、既に綿密に相談をしている人がいることを匂わせてみるといいでしょう。多くの場合、ここまで言えば引き下がりますが、中には「それでもいいから一度話を聞いてほしい」と引き下がってくる強者もいるので、注意が必要です。
親戚が勧誘してきたケース
案外厄介なのがこのパターンです。その後の関係がどうなってもいい相手なら、多少乱暴な断り方もできるかもしれませんが、親戚の場合は断り方次第で深刻なトラブルに発展してしまいます。そこで「保険の見直しや新規加入をすると、損をしてしまう」「経済的に保険に入るのが難しい」ことを伝えるといいでしょう。
例えば、次のような言い訳を使ってみましょう。
- 今入っている貯蓄型の保険を解約すると、解約返戻率が低すぎて大損してしまう
- 会社の業績があまり芳しくないので、保険料まで払う余裕がない
などが考えられます。相手だって、親戚に大損をさせたり、生活費に不自由している状態なのに保険を契約させたりすることは本望ではないはずです。
会社に訪問してきた営業担当に勧誘されたケース
会社によっては、保険会社の営業担当が定期的に出入りしているケースがあります。定期的に出入りしている以上、あまりに乱暴な対応をしてしまっては、会社の信用を落としてしまう可能性もあるので注意が必要です。やはり、相手を傷つけず、しかも保険には入らなくて済む言い訳を考える必要があるでしょう。
例えば、生命保険や医療保険の場合は「この前健康診断受けたら再検査になってしまって」など、健康状態になんらかの問題があることを伝えれば、相手が引き下がる可能性は高いです。
何度断っても連絡が来る場合はどうするべき?
保険会社の本部に苦情を入れる
パターンごとに、考えられる断り方を紹介しましたが、強者の営業担当者であれば、どのような状況になっても食い下がってくることは十分に考えられます。もし、そうなった場合はその営業担当者が所属している保険会社や保険代理店の本部に苦情を入れるといいでしょう。
担当のコールセンターがあるはずなので、電話をかけて「勧誘がしつこくて困っています」と伝えれば大丈夫です。できれば、電話をかける前に勧誘の経過をメモにまとめ、質問に答えられるようにしておくといいでしょう。苦情を申し立てると保険会社や保険代理店が調査に乗り出します。
「名義貸し」は厳禁
営業担当者によっては「ノルマが達成できないから、助けてください」という申し入れをしてくることもあるかもしれません。そこで名義貸しの提案をされる可能性がありますが、情けにほだされて手を貸すのは絶対にやめましょう。
つまり、自分の名前で生命保険の契約をするものの、保険料を実際に支払うのは営業担当です。毎月の保険料に相当する額が、定期的に営業担当者から振り込まれて、その後保険会社により引き落とされると考えましょう。
名義貸しは、保険業法に違反する行為であり、保険会社内においても重大なコンプライアンス違反として位置づけられています。
保険業法
第300条(保険契約の締結等に関する禁止行為)保険会社、保険会社の役員(生命保険募集人及び損害保険募集人である者を除く。)、生命保険募集人、損害保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関して、次に掲げる行為(自らが締結した又は保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関しては第1号に掲げる行為(被保険者に対するものに限る。)に限り、次条に規定する特定保険契約の締結又はその代理若しくは媒介に関しては同号に規定する保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為及び第9号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。ただし、第294条第1項ただし書に規定する保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合における第1号に規定する保険契約の契約条項のうち保険契約者又は被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を告げない行為については、この限りでない。
(中略)
五
保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為
仮に、なんらかの理由で名義貸しをしていた事実が保険会社内で発覚した場合、営業担当者には重い処分が下されます。
もちろん、名義貸しに加担したからといって、契約した側には罪はありません。しかし、名義貸しは重大なコンプライアンス違反である以上、名義貸しを前提とした契約についても無効になります。仮に、保険会社に名義貸しを持ちかけられていた旨を伝えたとしても、それまでに支払った保険料を返金してもらえる可能性は極めて薄いです。
また、その後正規のルートで保険を契約しようとしても、審査の段階ではねられる可能性が高いでしょう。
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