どんなに注意深い人であっても、日常生活において「他人にケガをさせてしまう」「他人の物を壊してしまう」確率をゼロにすることはできません。気を付けるに越したことはありませんが、体調が優れなかったり、ちょっと油断したりしたすきにうっかりと、というのは割と「ありがち」な話でしょう。
もちろん、人に迷惑をかけた場合は、まずは真摯に謝るのが重要ですが、それと同じくらい「修理や治療にかかったお金は払うこと」も大事です。そして、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしてしまった場合でも、状況次第では保険が使え、自分の持ち出しはゼロ(もしくは数千円程度)になることは十分にあり得ます。
その理由と、実際に使える事例をいくつかご紹介しましょう。
目次
弁償する修理代も保険金が下りる理由
そもそも、なぜ他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしてしまった場合でも、状況次第では保険が使えるのでしょうか?そのカギは「個人賠償責任特約」や「個人賠償責任保険」にありました。
個人賠償責任特約や個人賠償責任保険があるから
個人賠償責任保険とは、一言でまとめると
のことです。なお、火災保険など、他の保険商品にオプションとしてついている場合は「個人賠償責任特約」という名前になります。
火災保険に付帯しているのが一般的
アパートやマンションなどの賃貸住宅に入居したり、新しく持ち家を購入したりした場合、管理会社や不動産会社から火災保険に加入するよう求められるのがほとんどです。そして、ほとんどの火災保険には、特約として個人賠償責任特約を付帯することができます。
自動車保険や自転車保険でもOK
最近では、火災保険だけでなく、自動車保険にも個人賠償責任特約を付帯できることが多いです。また、一部の自治体では、自転車事故の多発および賠償額の高騰を受けて、自転車保険への加入の義務化に踏み切っています。
そして、自転車保険には、自転車に乗っていた時のトラブルだけでなく、日常生活におけるトラブルについても保障してくれる、いわば「個人賠償責任保険に近いタイプのもの」も非常に多いのが実情です。
クレジットカードのトッピング保険として用意されていることも
なお、クレジットカード会社によっては「トッピング保険」といって、会員向けに比較的廉価で個人賠償責任保険を販売しているケースもあります。
参照:JCBトッピング保険|クレジットカードなら、JCBカード
単体で入っても月数百円程度
既に触れた通り
- 持ち家に住んでいる、家を借りている
- 自動車や自転車に乗っている
人であれば、火災保険や自動車保険・自転車保険に個人賠償責任特約が付帯していることがほとんどです。自分や家族が他人の物を壊したり、ケガをさせたりしてしまったに備え
- 個人賠償責任特約が付帯しているかどうか
- 付帯している場合、賠償額の上限はいくらまでか
を確認しましょう。仮に
- 付帯していなかった
- 付帯していたが、賠償額の上限が思っていたより少なかった
場合は、単体で個人賠償責任保険に入るのをおすすめします。筆者は、自宅の火災保険に付帯している個人賠償責任特約による賠償額の上限が3,000万円だったため、積み増しをするために別途LINEほけんの「かぞく全員安心保険」に加入しています。毎月140円の保険料で
- 入院保険金日額:500円
- 個人賠償責任:1億円(上限)
の補償が受けられるので安いものです。
いつでも、簡単に、100円から入れる保険|LINEほけん公式サイト
保険会社、先方との基本的なやり取りの流れ
ここで、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりしてしまった場合に、保険会社や先方とどのようにやり取りを進めるのか、基本的な流れを解説しましょう。
先方には保険を使って修理代・治療費を出すことを伝える
最初に行うべきことは、真摯に謝ることはもちろん、保険を使って修理代・治療費を出す旨をはっきり伝えることです。相手によっては「保険会社なんて通さなくていいからさっさと払ってほしい」と難色を示すかもしれませんが、保険会社を通すことで「必要な金額はすべて払う準備をしている」という意思表示にもなるので、めげずに伝えましょう。
保険会社に連絡をする
次に、個人賠償責任特約が付帯している保険や個人賠償責任保険を契約している保険会社のコールセンター(営業担当者が付いている場合は営業担当者でも可)に連絡します。
必要な書類を用意する
実際に手続を行う際には、保険会社が定める書類などを提出しなくてはいけません。細かい部分は、保険会社によって違いがありますが一般的には以下のものを用意することになります。
- 保険金請求書
- 示談書
- 他人の物を壊した場合はその写真
- 損害品明細書
- 修理見積書
- 領収書または銀行振込票
- 他人をケガさせた場合は診断書・治療費の領収書
保険金の支払い方法について回答を待つ
また、個人賠償責任保険・特約を利用して、他人のケガの治療費や、他人の物を壊した際の修理代・購入代を払う場合は
- 一度自分で立て替えて相手に払い、後から同額を自分の銀行口座に振り込んでもらう
- 修理見積書や請求書を保険会社宛てに送り、保険会社に支払いを代行してもらう
など、状況によって対応が異なります。
- 自分たちの場合はどうなるのか
- 振込先の銀行口座など、どんな情報を提供すれば良いか
については、必ず確認しておきましょう。
火災保険の個人賠償責任特約が使える事例
商業施設のガラス製ドアを割ってしまった
火災保険などの各種保険に付帯している個人賠償責任特約や、個人賠償責任保険は、比較的様々な日常生活上のトラブルに対応できることが分かったはずです。ここからは、具体的な事例をいくつか紹介していきましょう。
最近では、見た目も良いことからガラス製ドアを使っている商業施設は珍しくありません。比較的丈夫なガラスが用いられていますが、人がぶつかったら壊れてしまうことだってもちろんあるでしょう。このようなケースでも、故意に(わざと)ぶつかったり、重過失があった(例:泥酔していた状態でぶつかった、路上でケンカして壊した)場合でない限りは、個人賠償責任保険・特約により修理代を払う(厳密に言うと、修理代相当分が補償される)ことができるのです。
子どもが友だちのメガネを壊してしまった
また、子どもが同士で遊んでいる場合も、悪意の有無を問わず、無茶な遊び方をしたせいで友だちのメガネを壊してしまうことはあるはずです。こういうときも「子どものしたことだから」とごまかさず、真摯に謝った上で、保険会社を通じて修理代や治療費を出すよう申し出をしましょう。
自転車で人とぶつかりケガをさせてしまった
既に紹介した「商業施設のガラス製ドア」「友だちのメガネ」よりも、賠償額が大きくなる可能性が高いのがこのケースです。自転車で人とぶつかった場合、スピードが出ていたときは相手が大ケガをしたり、万が一のことが起きてしまったりする可能性も出てきます。
このような大事故が起きた場合、裁判で損害賠償額を決めるのが一般的な流れですが、中には1億円近い金額が言い渡される場合もあるので、注意しましょう。
東京地裁 平成 20 年6月 判決
自転車運転中の男子高校生が車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた 24 歳会社員男性と衝突し、会社員は言語機能の喪失等重大な障害が残った。損害賠償額は9,266 万円。
自分の家族に、普段から自転車に乗る人が1人でもいる場合は、事故を起こした場合に備え、個人賠償責任保険・特約による補償額の上限が1億円以上であることを確認しておきましょう。
マンションのお風呂を溢れさせ階下まで浸水させてしまった
マンション、アパートなどの集合住宅の2階以上に住んでいる場合に気を付けてほしいのが「うっかりしていてお風呂を溢れさせて、下の部屋を水浸しにしてしまう」トラブルです。この場合、管理会社が修理を行うことになりますが、状況次第では数百万円の修理代がかかります。個人で払うには結構厳しい金額であるのも確かなので、個人賠償責任保険・特約を使って対応しましょう。
飼い犬が人や他の犬にかみつきケガをさせた
犬と暮らしている人ならわかる悩みですが、他の人や犬にかみついてしまい、ケガをさせてしまうことも十分に考えられます。犬は、予定外の接触があった場合、それを外敵からの攻撃とみなす性質があるので、たとえしつけが行き届いていたとしても、かみついてしまう可能性をゼロにすることはできません。なお、自分が飼っている犬が他の人の飼い犬にケガをさせた場合、飼い主が法的責任を負います。
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