筆者の場合、大学時代はとにかく大学院に内部進学をすることだけを考えていました。就職はおろか、起業なんて1%も考えていない選択肢だったのです。
一方、最近は大学在学中に起業する人がちらほら出てきているように思います。会社のWebページに掲載されている代表者のプロフィールに、「〇〇大学在学中に起業し~」という記述があっても、さほど驚かなくなってきました。
このように、昔に比べると「起業家になること」が将来の選択肢の1つとして一般的になっているように思えますが、大事なのは「起業家になること」ではなく「起業家になって何かをすること」です。このあたりについて、もう少し深く考えてみましょう。
目次
起業家になること自体は簡単
開業届を出せばゼロ円でもできる
そもそも「起業家になること」自体は簡単にできます。個人事業主として開業するのであれば、必要な書類を税務署や都道府県税事務所に出せば良いからです。一般的に、以下の書類が必要になります。
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
- 都道府県税事務所へ提出する開業に関する書類
- 青色申告承認申請書
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
株式会社を設立するなら30万円程度
また、株式会社を設立するなら、多く見積もっても30万円程度あれば問題ありません。費用の内訳は以下の通りです。
実費(法定費用) | ・定款の認証手数料:50,000円 ・定款の謄本手数料:2,000円 ・設立にかかる登録免許税:150,000円 ・収入印紙代:40,000円(電子定款を選択した場合は不要) |
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資本金 | 1円以上であれば可 |
その他の費用 | ・新しく設立する会社の実印作成代:約5,000円程度 ・設立時に必要な個人の印鑑証明取得所:約300円×必要枚数 ・新しい会社の登記簿謄本の発行所:約500円×必要枚数 |
司法書士などの専門家に頼む場合は、もう少し多めにかかります。
起業家になる前に済ませておくべき5つのタスク
起業家の収入の実態について知っておく
結局のところ、起業家になること自体は簡単です。しかし、問題になるのは「起業をした後、自分自身が食べていけるか」でしょう。
何をもって「自分自身が食べていけるか」を考えるのは難しいですが、1つの基準として「起業家の個人収入が、日本の平均年収に達しているかどうか」を設定しましょう。
日本の平均年収は、国税庁がまとめた「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると
- 男性:540万円
- 女性:296万円
となっています。
一方、起業家の個人収入によっては「どのような形で起業しているのか」によってもかなりの差はありますが、1つだけ言えることは「1,000万円以上に達している人はごくわずか」ということです。
女性に至っては、1,000万円以上の年収がある起業家は2%にも満たない状態です。
結局のところ、起業家になって年収がどれだけ上がるかは、その人の努力次第のは言うまでもありません。しかし「努力をしたとしても、サラリーマン時代をしのぐ高年収になるとは限らない」点にも注意しましょう。
「オーナー社長で年収1億円」という人はたまにいますが、そういう人は
- 仕事とプライベートの境目が全くない状態で働いている
- 人には真似できないような卓越したスキル、経験を有している
など「高年収を得るのが当然の理由」があると考えておいたほうがよさそうです。
自分が「何をどうしたいから」起業するのかを考える
起業することには、一定のリスクは伴います。既に触れた年収の話も含め、何かと安定しないのは起業する上で覚悟しなくてはいけません。
しかし、起業家になりたいと思う人は、本当は
- 自分や家族が不便だと思ったことを解消したい
- 世の中で困っている人の役に立ちたい
- 家族がお金で困っているのを見ていたので経済的に不自由はさせたくない
- 仕事自体はし続けたいが、人間関係で疲れてしまうので「会社に属さない」働き方がしたい
など「起業家になって解決したいこと」が心のどこかにあるから起業するはずです。
まずは、自分自身のこれまでを振り返って「自分は、なぜ起業したいと思うのか」を考えてみましょう。このあたりをしっかり認識しておかないと、起業家になってもうまくいきません。
目的を達成するためにやるべきことを整理する
「自分は、なぜ起業したいと思うのか」がわかったら、目的を達成するためにやるべきことを整理しましょう。例えば、Webマーケティングで起業をしたいと考えた場合
- (学生であれば)Web関係の会社にインターンとして応募する
- 関連する書籍を読んでみる
- 実際に自分でWebサイトを作ったり、YouTubeに動画を投稿してみる
- 必要な技術や関連する分野の技術を身につける(ワードプレス、Googleアナリティクス、Ruby・Pythonなどのプログラミング言語など)
- 実際にその分野で働いている人の話を聞いてみる
など、やれることはたくさんあるはずです。
また、個人事業主として届出を出すならゼロ円でできるように「起業家になること」自体にお金はかかりませんが、実際に仕事を動かしていくとなるととにかく経費が掛かります。
コツコツ貯金に励み、ある程度のまとまったお金は確保しておきましょう。
数年でも良いので会社勤めをしてみる
これは特に学生のうちに起業しようとする人に起こりがちなことですが、人生経験が少なく、会社で働いたことがない(あってもアルバイト程度)ため
- 基本的なビジネスマナー
- 周囲の人とうまくやっていく能力
- 社会人はどんなものなのか、という理解
が乏しい状態で起業してしまうことは、その後の人生にとってプラスとは言えません。
学生のうちに起業しようとし、形にできるということは、相当な能力がないとできないのは確かです。それ自体は評価すべきことですが
- 「起業家=偉い」「会社員=会社に従うだけ」という間違った価値観を身につけ、周囲とトラブルを起こす
- 将来、スタッフを雇った際に接し方を間違え早期離職されてしまう
などの事態に陥ることは珍しくありません。これを避けるためには
- 常日頃から会社勤めをしている先輩の話にも耳を傾ける
- 状況次第では数年でも良いので会社勤めをしてみる
など「井の中の蛙大海を知らず」という状態に陥らないよう、自分を律することが一番の近道でしょう。
「これだけは誰にも負けない」というスキルを身につける
「芸は身を助ける」と言う言葉があります。つまり「人より秀でたものが1つでもあれば、窮地に陥ったとしても、それを突破口にしてピンチを脱することができる」ということです。
起業家を目指す上でも、これは十分に意識すべきことでしょう。起業家を目指し始めるときから「これだけは誰にも負けない」というスキルや分野を持っておくのをおすすめします。
この辺りは会社の規模や文化にもよるのですが、日本の企業ではまだまだ「何でもそこそこできる人(ジェネラリスト)」を重用するところが多いです。
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