寿退社はリスク大!止めたほうがいい5つの理由

筆者が子どものころは、結婚しても働き続けている女性のほうが少数派でした。いわば寿退社が当たり前だったということです。

しかし、今は共働き世帯のほうが多くなっていることからもわかるように、どちらかといえば寿退社のほうが、少数派になりつつあるようです。もちろん、最終的にどちらを選ぶかは、その人自身や家族の価値観、置かれた状況にもよるので、一概にどちらがいいとは言えません。

ただし、寿退社を望むなら、寿退社をすることにより起こりうるリスクについても知っておきましょう。

理由1.再就職が難しくなるから

再就職できても年収、条件が下がるケースがほとんど

寿退社を止めたほうがいい理由の1つに、再就職が難しくなる可能性が高いことが挙げられます。

一般論として、転職は若ければ若いほど、幅広い求人から自分の希望に合ったものを選びやすい傾向にあります。そのため「一度寿退社し、子育てが落ち着いたころ正社員を目指して再就職する」というプランを望んでも、確実に年齢を重ねている以上、自分の希望にあった求人を選べない可能性は高まるのです。

よほどこれまでの経歴、取得資格が人より抜きんでていたとしても、完全に自分の希望に沿った形で再就職できる人はかなりまれでしょう。多くの人が、当初の希望より年収・条件を大幅に下げた形で手を打つ羽目になるはずです。

専門資格を持っていても気は抜けない

税理士・会計士・行政書士などの難関国家資格や、看護師・薬剤師・歯科衛生士などの医療系資格を持っている人は、一度仕事を離れたとしても、再就職しやすいのは確かです。

しかし、専門分野であればあるほど、法律・制度の改正や新しい治療法の知識のアップデートを頻繁に行わなくてはいけません。一度現場を離れた後再就職しても、離れる前のやり方では全く通用しないことも十分に考えられます。

資格を持っていることはアドバンテージになりえますが、だからといって「いつでも再就職して、前みたいに働ける」というわけでもないことを、頭に留めておきましょう。

理由2.保育園、学童保育に入りにくくなるからH2見出しa

仕事をしている人はやっぱり有利

「結婚して子供が生まれて、保育園や学童保育に預けられる年になったらまた働こう」と思っているなら、注意してほしいことがあります。それは「保育園や学童保育に預けるなら、今、仕事がある状態のほうが有利」ということです。

保育の必要性とは

認可保育園に子どもを預けたい場合、地方自治体による保育の必要性の認定を受ける必要があります。保育の必要性の認定が受けられる事由と期間についてまとめました。

認定事由 詳細 認定期間
就労 月12日以上、かつ、1日4時間以上の就労が常態である場合 就労している期間
妊娠・出産 出産のため保育が困難である場合 出産する(予定)日の2か月前の月の初日から、出産日から起算して8週間を経過する日の翌日が属する月の末日まで
保護者の疾病・負傷・障害 入院、精神性または感染性の疾病、その他の通院や自宅安静が必要で保育が困難である場合、障害者手帳等(身体1~4級、愛の手帳1~4度、精神1~3級)の交付を受けている場合 それぞれの事由による保育を必要とする期間
同居親族等の介護・看護 月48時間以上の介護・看護が常態である場合 それぞれの事由による保育を必要とする期間
災害復旧 災害(火災・風災等)の復旧にあたっている場合 それぞれの事由による保育を必要とする期間
求職活動 月12日以上、かつ、1日4時間以上の求職活動である場合 3か月
就学 月12日以上、かつ、1日4時間以上の就学である場合※対象となるのは、学校教育法に定める学校、職業訓練学校等に通っている場合です。 卒業または修了予定日が属する月の末日まで
その他区長が必要と認める事由 上記の他、保育が必要であると認められる場合 保育を必要とする期間

出典:保育の必要性の認定について:練馬区公式ホームページ

つまり、上の表で挙げた事由のどれかに当てはまらないと、認可保育園に入るのはほぼ不可能に近いです。

もちろん、求職活動も事由の1つになっている以上「寿退社、出産、子育てからの再就職活動」という場合でも、保育の必要性の認定を受ける余地はありますが、認定が受けられる期間が3カ月とかなり短いです。

しかし、寿退社をせず、子育てと両立する前提で短時間勤務をしていたなら、働いている期間中は保育の必要性の認定が受けられます。

やはり、認定保育園に子どもを預けて働きたいと思うなら、寿退社をしないで、セーブする形でもいいので働き続けたほうが、選考においては有利でしょう。
育休・産休を取っていた場合は?

寿退社をせず、会社に籍を残したまま産休・育休を取っていた場合は、会社が発行した就労証明書を提出した上で、育休取得前と同じ勤務で復職するという条件で、認定保育園の入園選考が受けられます。

参照:育児休業中・育児短時間勤務等取得中(予定)の方へ | 世田谷区ホームページ

理由3.出産手当金がもらえなくなるから

出産育児一時金と出産手当金の違い

日本においては、妊娠・出産は病気ではないという考え方をとっているため、検診・分娩の費用も原則として公的医療保険の対象外です。その代わり、出産育児一時金として本人が加入している健康保険組合もしくは国民健康保険から、42万円の給付が受けられます。

加えて、どこかに勤めていて、健康保険組合、共済組合に加入している人の場合、出産手当金として給料の3分の2を一定期間受け取ることができます。しかし、これは本人が被保険者であることが条件です。

仮に、寿退社をして、配偶者の勤務先の健康保険組合、共済組合に入ることになった場合は、被保険者ではなくなるため、出産手当金は受け取れません。受け取れるお金、という面では、やはり働き続けたほうが有利でしょう。

なお、出産育児一時金と出産手当金については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

出産育児一時金と出産手当金の違い。給付金額と申請方法を徹底解説

理由4.配偶者の万が一に備えにくくなるから

金銭的、精神的なセーフティネットになる

結婚したからには、お互いが年を取るまで添い遂げられるのがやはり理想です。しかし、現実はそうもいかない場合が多々あります。どんなに若かったとしても、自動車事故に遭ったり、災害に巻き込まれたり、がんなどの重い病気で帰らぬ人になってしまうことは、十分に考えられるのです。

仮に、寿退社をして専業主婦になった状態で、配偶者に万が一のことが起こった場合、金銭的には苦しくなることがほとんどでしょう。生前に死亡保険を契約したり、貯蓄に励んだりすることで、ある程度はリスクを軽減できますが、それでも、本人が生きて働き続けているのにはかなわないはずです。

また、金銭面と同じくらい、精神面への影響も心配されます。仮に、仕事をしていたなら、ある程度身辺が落ち着いた段階で出勤し、仕事をしたり、人と話したりことで気がまぎれる部分もあるでしょう。

しかし、専業主婦だった場合、自分から積極的に外に出ない限りは、社会とのつながりが希薄になってしまいがちであるのも事実であるため、一人で抱え込んでしまうのも珍しくありません。

金銭的、精神的なセーフティネットを確保するという意味でも、女性が結婚・出産・子育てを経ても外にでて働き続けることに意味はあるでしょう。

リストラの可能性も考えるべき

配偶者の万が一ではないものの、専業主婦であることがリスクになりうる状況は他にも考えられます。わかりやすいのが、配偶者の勤務先でリストラが行われ、大幅な給料カットや人員削減にあったケースです。

兼業主婦だった場合、妻の収入があることから、1円も入ってこないことは考えにくいですが、専業主婦だった場合は、数か月間は収入が1円もない状態で過ごさざるを得えません。

理由5.金銭的な自由がなくなるから

配偶者の考えによってはトラブルの火種にも

これは、配偶者や本人の考え方にもよりますが、専業主婦になると金銭的な自由はなくなります。いわば、配偶者が稼いできたお金を使わせてもらう立場になるためです。もちろん、配偶者の収入に余裕があり、自分以外の誰かが使うことに寛大であるなら、そこまで気にしなくてもいいでしょう。

しかし、配偶者が「外で働いてもいないくせに、自分が稼いだお金を使うことが気にくわない」と思ってしまったら要注意です。

生活に本当に必要なものを買わせてくれなくなったり、生活費を家に入れなくなったりなどの「経済DV」が起きてしまうことだってあり得ます。

程度にもよりますが、あまりに行き過ぎている場合は、十分に離婚の理由になりうるトラブルです。

離婚はお互いの同意が前提。それでも一方的に離婚できる5つのケース

離婚に踏み切れないことも

また、配偶者との折り合いがあまりに悪かったり、配偶者が不倫したりしたなど、離婚が相当であるほどのトラブルが起きた場合、専業主婦であることは不利に働きます。離婚した後の働き口が見つからず、生活に困窮する恐れがあるためです。実際に、このことが原因で、離婚をしたいと思っていたとしても、今一歩踏み出せない人はいるでしょう。

結婚する段階で離婚のことまでを考えるのも悲しい気がしますが、寿退社を選んでしまうと、離婚するときにも苦労する可能性がある、というのも事実です。

どっちを選ぶべきかは、自分と配偶者の気持ちや状況によって異なりますが、寿退社にはこのようなマイナスの側面もあると覚えておきましょう。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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