「体調を崩して長期間仕事を休むことになった」「新型コロナウイルス感染症で会社の業績が大幅に下落した」など、想定外の出来事に巻き込まれるのは、誰にだってあることです。
人生、お金がすべてとまでは言いませんが、このような有事の際に余裕を持てるかどうかは「手元にそれなりに自由に使えるお金があるか」が左右するといっても過言ではありません。
やはり、一定額の生活防衛費は常に手元に置いたほうがよさそうです。そこで今回は、夫婦の生活スタイル別に、必要額の目安と注意点をお伝えします。
目次
生活防衛費とは
想定外のトラブルに対応するためのお金
生活防衛費とは
- 体調を崩して長期間仕事を休むことになった
- 会社の業績が急激に悪化し、給料・ボーナスのカットが行われた
- 自分や家族が入院したため、多額の医療費が必要になった
- 大地震・台風などの自然災害に巻き込まれ、避難を余儀なくされた
- 家族の介護が必要になり、介護施設への入所費用や自宅のリフォーム費用が必要となった
など「想定外のトラブルが起きた」場合に対応するためのお金です。
大金を使った後は必ず貯めること
具体的にいくら貯めれば良いのかは、個々の家庭の状況によっても異なるので、詳しくは後述します。
ただし、1つの注意点として「大金を使った後は、必ず生活防衛費を貯める習慣を身につけること」を心がけてください。例えば
- 結婚式を挙げた
- 新婚旅行に行った
- 家を買い、住宅ローンの返済が始まった
- 子どもが高校・大学に進学するのでまとまった学費を出した
など、まとまった出費があった場合は、一時的に手元のお金が少なくなってしまうのも事実です。
夫婦の生活スタイル別・貯めるべき金額の目安
共働きで共に会社員・公務員の場合
実際のところ「生活防衛費としていくら貯めれば良いのか」という目安は、夫婦の生活スタイルによって異なります。そこで今回は
- 共働きか一馬力(夫・妻のみが働いている)か
- 職業は会社員・公務員、自営業のどちらに当たるか
という観点からパターンを分類して解説しましょう。
まず1つ目のパターンは「共働きで共に会社員・公務員の場合」です。このパターンでは「毎月の平均生活費の6ヶ月分」が生活防衛費の目安になるでしょう。
会社員・公務員など「どこかに雇われて給料をもらっている人」であれば
- 仕事中にケガ・病気をした場合は労災保険による補償が受けられる
- 仕事とは関係のないケガ・病気をした場合でも、傷病手当金が受け取れる
- 妻が出産する際は、出産育児一時金に加えて出産手当金が受けとれる
- 勤務先によっては、勤務先独自の補償が受けられることもある
など、想定外のトラブルや子どもができたことで仕事を長期間休まなくてはいけない場合にも、手厚い補償が受けられるためです。
また、会社員の場合、リストラの一環で退職することになった場合、会社都合退職として扱われます。その場合は、自己都合退職の場合とは違い、申請から1週間経てば失業手当がもらえるようになるため「すぐに無収入になる」ということは、基本的にありません。
共働きで片方が自営業
2つ目のパターンは「共働きで片方が自営業」の場合です。このパターンでは「毎月の平均生活費の6~9ヶ月分」が生活防衛費の目安になります。
あえて幅を持たせたのは、一口に自営業といっても
- まだ始めたばかりで、毎月の収入が不安定である
- ある程度は軌道に乗っていて、生活に困らない程度の収入はコンスタントに得られている
など「毎月得られる収入の状況」は千差万別だからです。
仮に、自営業をしている側の収入がまだ不安定であるなら「毎月の平均生活費の9ヶ月分」を生活防衛費の目安として考えるとよいでしょう。一方、既に軌道に乗っているなら、生活防衛費として用意する金額をもう少し減らしても良いかもしれません。
共働きで共に自営業
3つ目のパターンは「共働きで共に自営業」です。この場合、生活防衛費として「毎月の平均生活費の12ヶ月分」を生活防衛費の目安として考えてください。
どちらか一方もしくは両方が会社員・公務員というパターンに比べると
- 仕事中・仕事以外にかかわらず、ケガ・病気をしても労災保険による補償や傷病手当金は受け取れない
- 妻が出産する際は、出産育児一時金しか受け取れない
など、公的な保障という意味においてはかなり不利だからです。
一馬力で会社員・公務員
4つ目のパターンは「一馬力で会社員・公務員」です。つまり「夫(妻)が外で働いて、妻(夫)は専業主婦(主夫)である」ということですが、この場合、働き手が1人しかいないことを考えると、生活防衛費は「毎月の平均生活費の12ヶ月分」を目安にしておいた方が良いでしょう。
また、万が一、働いている側の家族が病気・ケガで働けなくなった場合、どの段階でもう一方が働き始めるのかなど「不測の事態が生じた場合の対応」についても、事前に意見をすり合わせるようにしてください。
一馬力で自営業
ある意味最も注意が必要なのが「一馬力で自営業」というパターンです。このパターンの場合、ある程度事業が軌道に乗っていて、コンスタントに収入が得られているなら何ら問題はありません。
しかし
- 新型コロナウイルス感染症や東日本大震災クラスの地震など、不測の事態が起こり、事業再編・撤退を余儀なくされた
- 自営業を営んでいる側が病気・ケガで働けなくなった
など、何らかの問題が生じた場合、一気に収入がダウンする可能性があります。
引継ぎマニュアルを共有しておこう
また、生活防衛費とは関係ありませんが「一馬力で自営業」の場合、注意してほしいことがあります。
あまり考えたくない話ではありますが、自営業を営んでいる側の家族が、急に万が一のことになってしまう可能性もゼロではありません。
そのような場合、遺された側が「パートナーがどんな仕事をしていたのか全く知らないし、誰に連絡を取れば良いのかも分からない」状態では
- 顧問税理士・弁護士に連絡も取れない
- 法人の預金口座の情報もわからない
- 従業員とのやり取りもできない
など、トラブルが続発します。
生活防衛費を貯めるまでに何年もかかりそうな場合は?
リスクヘッジの一環として所得補償保険に入るのもアリ
ここまで説明してきた通り、貯めておくべき生活防衛費は、夫婦の生活スタイルによってかなり差があります。しかし、いずれにしても「ある程度まとまった金額を貯めておかないといけない」のが実情です。
所得補償保険とは病気やケガなどが原因で働けなくなり、収入が減ってしまったときに不足分をカバーする保険です。実際の収入以上の金額を保険金額として設定することはできませんが、働けない間の生活費の足しにできるという意味で有効でしょう。
一方もしくは両方が自営業なら医療保険も検討しておこう
日本は
- 国民皆保険といって、基本的に全員が公的医療保険に入ることになっている
- 高額療養費制度と言って、1カ月の医療費が高額になった場合、収入に応じた上限額を超えた分は支払わなくて良い
など、医療費に関する公的な保障制度が充実しているため、民間の保険会社が販売する医療保険は必要ない、という人もいます。
確かに、生活防衛費をはじめとした貯金が潤沢にある人ならその通りかもしれません。がんなどの重い病気で公的医療保険が適用されない治療を行うのでもない限りは、医療費が払えなくて治療が続行できない、ということは考えにくいでしょう。
また、会社員・公務員であれば、ケガや病気をして働けなくなった場合でも、労災保険による補償や傷病手当金の支給が受けられるので「病気・ケガをした = 即無一文」という状況は考えにくいです。
しかし、一方もしくは両方が自営業で、生活防衛費も十分に貯められていない状況で、病気・ケガをして働けなくなったとしましょう。自営業の場合、病気・ケガをして働けない間は、無収入になってしまいます。
その間の医療費や生活費、雑費の足しにするという意味で、生活防衛費を貯められるまでは、掛け捨て型の医療保険に入ることも検討しましょう。
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