学生のアルバイト・パートの収入と税金。いくら稼いだら、いくら税金がかかるのか?

大学生の特権として「高校生の時よりは比較的自由に行動できるようになる」ことが挙げられます。その1つとして、アルバイト・パートにチャレンジしようとする人も多いかもしれません。しかし、学生であっても、アルバイト・パートでそれなりに稼ぎがあるなら税金はかかってしまう上に、家族の税金まで増えてしまうという事態も起こりえます。

本来、アルバイト・パートでお小遣いだけでもまかなうのはいいことですが、税金の知識がないと家族間のトラブルに発展しかねません。せめて「いくら稼いだら、いくら税金がかかるのか」くらい把握しておきましょう。

学生のアルバイト・パートの収入と所得税の関係

年収103万円以上で自分で税金を払うことになる

学生であったとしても、アルバイト・パートでの年収が103万円以上になったら、自分で税金を払うことになります。この数字を理解するためには、所得税の基本的な考え方を理解しましょう。

所得税を計算する場合、以下の式を用います。

所得税額 = 課税所得金額 × 所得税率 ― 控除額

しかし、これだけ見せられても、何が何だかわからないはずなので、1つずつ計算していきましょう。

課税所得金額

所得とは「1年間の利益」と考えるとわかりやすいです。本来は「所得金額 = 総収入金額 ― 必要経費」として計算します。しかし、アルバイト・パートの場合は自分でビジネスにかかる経費を出しているわけではありません。そのため「給与所得金額 = 源泉徴収される前の収入金額 ― 給与所得控除額」として計算します。

なお、収入金額とは勤務先から支給される給料のことで、基本給に加え、残業代なども含まれています。ただし、交通費は含まれません。

また、給与所得控除額は収入金額に応じて以下のように決められています。

収入金額(給与、給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額の計算式
~ 162万5,000円 55万円
162万5,001円 ~ 180万円 収入金額 × 40% - 10万円
180万0,001円 ~ 360万円 収入金額 × 30% + 8万円
360万0,001円 ~ 660万円 収入金額 × 20% + 44万円
660万0,001円 ~ 850万円 収入金額 × 10% + 110万円
850万0,001円 ~ 195万円(上限)

出典:No.1410 給与所得控除|所得税|国税庁

次に、課税所得金額を計算します。課税所得金額とは、給与所得金額から各種所得控除額を引いたものです。なお、各種所得控除額とは「税金の計算にあたって、あらかじめ所得から差し引けるもの」を指します。具体例をいくつかまとめました。

基礎控除 誰でも所得額に応じて差し引ける金額
社会保険料控除 社会保険料を支払っている人が差し引ける金額
配偶者控除 配偶者(法律上の妻・夫)がいる人が差し引ける金額
医療費控除 1年に一定額以上医療費を払った人が差し引ける金額

なお、基礎控除はその人の合計所得金額によって金額が以下のように決まっています。

合計所得金額 基礎控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円 ~ 2,450万円 32万円
2,450万円 ~ 2,500万円以下 16万円
2,500万円 ~ なし

出典:No.1199 基礎控除|所得税|国税庁

所得税率と控除額

所得税率と控除額は、課税所得金額に応じて以下のように決まっています。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

出典:No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

実際に計算してみよう

ここで「1.年収が103万円だった場合」、「2.年収が140万円だった場合」の2パターンを想定し、いくら所得税がかかるのかを計算してみましょう。なお、計算の便宜上、年収=給与所得とし、給与所得控除および基礎控除以外の控除額はないものとします。

1.年収が103万円だった場合

まず、給与所得金額を求めましょう。

103万円 ― 55万円 = 48万円

となります。次に、課税所得金額を求めましょう。

48万円 ― 48万円 = 0円

となります。課税所得金額がない以上、税金はかかりません。よく「年収が103万円までなら、税金はかからない」といわれていますが、このことを指しているのです。

2.年収が140万円だった場合

まず、給与所得金額を求めましょう。

140万円 ― 55万円 = 85万円

となります。次に、課税所得金額を求めましょう。

85万円 ― 48万円 = 37万円

となります。最後に、ここから所得税を求めましょう。

37万円 × 5% = 18,500円

が支払うべき税金額です。

年収103万円以上で親が支払う税金が増える

子育てをしていたり、年老いた家族の面倒を見ていたりすると、何かとお金がかかります。このような実情を反映し、納税者(税金を払う人)に一定の条件に当てはまる家族がいる人については、その家族を控除対象扶養親族とし、一定の金額の所得控除を受けられるようになっています。

この制度を扶養控除といいます。なお、扶養家族に該当するのは、以下の4つの条件をすべて満たす人です。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人である
  • 納税者と生計を一にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)である(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない又は白色申告者の事業専従者でない

そして、扶養親族に該当する家族がいる場合は、その家族の年齢、関係によって以下のように控除が受けられます。

区分 説明 控除額
一般の控除対象扶養親族 扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人 38万円
特定扶養親族 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人 63万円
老人扶養親族(同居老親等以外の者) 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人で、普段から納税者やその配偶者と同居していない人 48万円
老人扶養親族(同居老親等) 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人で、普段から納税者やその配偶者と同居している人 58万円

本来、実家暮らしをしている大学生(19歳~23歳)であれば、特定扶養親族に当たるため、扶養控除として63万円を所得税の計算にあたって差し引けるはずです。しかし、アルバイト・パートで年収が103万円以上になってしまうと、扶養親族には当てはまらなくなるため、結果として扶養控除が受けられなくなります。「自分は学生のうちは父親の扶養に入るつもり」という人は要注意です。

勤労学生控除を使うのも1つの手段

それでも、家族の考え方によっては「扶養控除が受けられなくなってもいいから、社会経験と思ってアルバイトを頑張りなさい」といってくれることもあるでしょう。その場合、自分が払う所得税を少しでも安くするには、勤労学生控除を使うのも1つの手段です。

勤労学生控除とは、以下の条件をすべて満たせば、基礎控除、給与所得控除に加えて一定の金額の所得控除を受けられる制度をいいます。

  • 給与所得などの勤労による所得がある
  • 合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、しかも1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下である
  • 特定の学校の学生、生徒である

出典:No.1175 勤労学生控除|所得税|国税庁

より具体的に言うと、大学生であって、アルバイト・パートでの年収が130万円までであれば、勤労学生控除を受けることで所得税額はゼロ円になります。

学生のアルバイト・パートの収入と住民税の関係

年収93万円~100万円以上で住民税がかかる

住民税は、所得税とは違い、自分が住んでいる(住民票がある)市区町村に納めるものです。所得に応じて支払う「所得割」と、一定の条件に当てはまれば全員支払うことになる「均等割」の合計額で算定しますが、市区町村によって計算の仕方も金額も異なります。一般的に、課税される最低ラインとして定められているのは、年収が93万円~100万円以上のケースが多いです。

また、市区町村によっては未成年者の場合、住民税が課される金額がさらに高くなっているケースがあるので、事前に確認しましょう。

神奈川県藤沢市の場合

藤沢市の場合、アルバイト・パートをしている学生の市民税・県民税については以下のように決められています。

  • 1年間の収入が100万円を超えると課税されることがある
  • 未成年の場合、給与所得135万円(給与収入約204万円)以下の場合は課税されない

出典:アルバイトをしている学生も市民税・県民税は課税されるの?|藤沢市

学生のアルバイト・パートの収入と社会保険料の関係

年収130万円が1つの壁

学生の人の場合、ほとんどが家族が所属している健康保険組合、共済組合に頼んで保険証(カード型が基本)を発行してもらい、病気やケガをしたらそれを持って医療機関に行っているでしょう。これは、健康保険法上の被扶養者として扱われているためです。

しかし、学生であっても、アルバイト・パートでの年収が130万円以上なら、健康保険法上の被扶養者からは外れてしまいます。

出典:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

こうなると、国民健康保険に加入し、自分で健康保険料を払わなくてはいけません。「夜間、通信、定時制の学校に通っている」「従業員が500人以上の会社で働いている」など、一定の条件に当てはまる場合は、会社の健康保険に入ることもあります。

参照:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

また、本来、学生であれば手続きをすることで、国民年金保険料を卒業まで支払わないこともできます。しかし、年収130万円を超えた場合は、国民年金保険料を払うか、勤務先の構成年金に加入し、保険料を納めなくてはいけません。

いずれにしても、どういう扱いになるのかは、アルバイト・パート先に聞き、適切な手続きを行いましょう。

税金、社会保険料のことで親と揉めないためには?

基本は多くても月75,000円程度にとどめる

言うまでもなく学生の本分は勉強です。経済的な問題がないなら、毎月のアルバイト代は所得税も住民税もかからず、しかも家族の扶養から外れないラインで押さえておくといいでしょう。

年収90万円程度が想定されます。1カ月の収入に直すと75,000円程度です。

負担が増えてもいいなら年収130万円以上を目指すのもアリ

学生時代にどうしてもやりたいことがあったり、家庭の事情であまり仕送りが期待できなかったりする場合は、税金や社会保険料の負担を考えても一生懸命働いた方がかえっていい場合もあります。

そうなった場合は、年収130万円以上を目指すのも1つの選択肢です。
FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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