確定申告の期限に間に合わなかった場合のペナルティ。例外的に期限が延長できるケースも解説

税金は、定められた期限までに申告書を提出し、納めるべき金額を支払うのが基本です。そのため、期限に間に合わなかったり、本来提出すべき申告書を出し忘れたりした場合は、かなり厳しいペナルティは課せられます。

しかし、実際はその原因が東日本大震災クラスの災害が起きたことによるものだったり、はたまた、新型コロナウイルス感染症のような外出すら難しくなるほどの感染症の流行だったりすることもあるはずです。

もちろん、そのような場合は本人に何ら非はないので、救済措置が設けられます。詳しく解説しましょう。

確定申告の期限に間に合わなかった場合のペナルティ

延滞税

所得税の場合、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日(当日が土日祝祭日の場合は、週明けの平日まで)までに確定申告を行い、実際に税金を納めなくてはいけません。

この期限に間に合わなかった場合、本来払うべき税金に加えて、利息として延滞税がかかります。

令和3(2021)年1月1日以降の利率は、以下の通りです。

納期限の翌日から2月を経過する日まで 原則として年7.3%。ただし、令和3年1月1日以後の期間は、年7.3%と「延滞税特例基準割合 + 1%」のいずれか低い割合。なお、延滞税特例基準割合は令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間は、年2.5%と定められている。
納期限の翌日から2月を経過した日以後 原則として年14.6%。ただし、令和3年1月1日以後の期間は、年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合。なお、延滞税特例基準割合の具体的な割合は令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間は、年8.8%と定められている。

出典:No.9205 延滞税について|国税庁

ちなみに、延滞税特例基準割合とは

各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸付約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合

をいいます。

具体的な計算例

わかりやすくするために、具体的な数字例を用いて計算してみましょう。以下の条件を仮定します。なお、計算しやすくするため、特例措置などは考慮しません。

  • 2020年度の申告所得税額は292,000円だった
  • 本来は2021年3月15日までに納付しないといけないが、1カ月遅れて4月14日に納付した

この場合、延滞税は

292,000円 × 3.5% × 30日 ÷ 365日 = 840円

となります。

無申告加算税

たとえ理由が何であれ、本来であれば、期限通りに申告書を提出しないということは「申告をしていない」とみなされても仕方ありません。

このため、申告書を期限通りに提出せず、納税もしなかった場合は「申告をしなかった」ことへのペナルティとして、無申告加算税が課されます。

金額の計算方法ですが、本来納付すべき税額を基準にして

  • 50万円までの部分については15%
  • 50万円を超える部分については20%

を乗じて求められる金額が、無申告加算税として上乗せされる形です。

具体的な計算例

例えば、本来納付すべき金額が80万円だった場合は

50万円 × 15% + (80万円 ― 50万円) × 20% = 135,000円

が無申告加算税となります。

無申告加算税が課されないケースとは

無申告加算税は、本来は意図的に申告をしない人を取り締まるための規定です。そのため「本当は支払う意思はあったものの、なんらかのアクシデントで期限に間に合わず、遅れて申告書を出し、納税する羽目になった」人に対しては、救済措置が設けられています。

つまり、以下の条件をすべて満たす場合は、無申告加算税は課されません。

1 その期限後申告が、法定申告期限から1月以内に自主的に行われていること。
2 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。
なお、一定の場合とは、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1) その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。
(2) その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。

出典:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

重加算税

確定申告をせず、納税もしなかったのが「期限に間に合わなかった」など、単なるミスが原因だった場合と、「実は脱税していた」「二重帳簿を作っていた」など、明らかに犯罪に近い工作をしていた場合とは、まったく事情が異なります。

仮に、明らかに犯罪に近い工作をしていた、つまり「隠ぺいまたは仮装」をしていた場合は、ペナルティとして重加算税が課されるので注意しましょう。なお、税率ですが期限内に申告していた場合は35%、申告すらしていなかった場合は40%にも達します。

なお「隠ぺいまたは仮装」というとわかりにくいかもしれません。過去の判例において、裁判所はどのように定義したかを紹介しましょう。

「「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲すること」
(和歌山地裁昭 52・6.23 判決)

出典:落合秀行「無申告事案における重加算税の賦課要件」

具体例をいくつかまとめました。

隠ぺい 二重帳簿の作成 税務署や税理士に見せる帳簿と、本当の帳簿を分けて作っていた
売上除外 本来の売上より、帳簿上の売上をわざと少なくしていた
架空仕入れ 実際にはやってもいない仕入を帳簿上あったようにしていた
架空経費 実際には存在しない経費を帳簿上あったようにしていた
棚卸資産の除外 在庫がある会社で、決算時の棚卸を実際により少なくしていた
雑収入の除外 会社が得る副収入をわざと申告しなかった
仮装 取引上の架空名義の使用 存在しない取引先名を使っていた
通謀虚偽表示 取引先と共謀して、実際には存在しない取引をあるようにみせかけたり、取引金額を変えたりしていた
虚偽答弁 調査官の質問に対して嘘の回答をした

還付の場合は比較的期限がゆるやか

一方、サラリーマンが医療費控除の手続きをするなど、払いすぎた税金を還付してもらう手続きの場合は、期限は比較的緩やかです。例えば、医療費控除については、医療費の支払があった翌年の1月1日から5年間であれば、いつ手続きをしてもいい決まりになっています。

そうは言っても、手続きをしないままだと、いつの間にか期限が終わっていたということは考えられるので、できる限り早めに手を付けた方がいいでしょう。

例外的に期限が延長できるケース

大災害が起きた

確定申告をしなかった場合、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が課されるのは「本来、期限通りに手続きを済ませること」が前提になっているためです。

しかし、現実にはその人に落ち度は全くないのに、期限通りに手続きを済ませられなくなることだってあります。最もわかりやすい例が「災害で被災し、確定申告どころじゃなかった」ということでしょう。

特に、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、岩手・宮城・福島の3県を中心に、甚大な被害が発生しました。そのため、確定申告期限の延長などを含め、様々な特例措置が設けられています。

参照:No.8001 災害等による期限の延長|国税庁

参照:東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて|国税庁

自分や家族、顧問税理士が新型コロナウイルスに感染した

2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が日本を含む世界中で流行したことにより「新型コロナウイルスに感染したら、入院・宿泊施設での療養や、自宅待機を余儀なくされる」という状況が現実に起きています。税理士に確定申告の手続きを頼んでいたとしても、その税理士が感染してしまう可能性だってゼロではありません。

また、東京都や大阪府など比較的人口の多い都市部では、緊急事態宣言が発令されることにより、不要不急の外出を自粛する要請がなされているのも事実です。

このように「本当は税務署に行きたくても、自由に出歩けない」という状況の場合にまで、期限通りに申告書を出さなかったことによるペナルティを科すのは酷でしょう。

このような事情を鑑み、国税庁は「期限の個別延長が認められるやむを得ない事由」として、以下の理由を例示しています。

  • 顧問税理士が新型コロナウイルスに感染した
  • 本人や会社の役員、経理責任者が外国に滞在しているため、事実上日本に戻れない
  • 経理担当者が新型コロナウイルスに感染してしばらく出社できない
  • 外出自粛要請が出たものの、会社のテレワーク対応が行き届いてないため、仕事が進まない
  • 税金を払う本人やその家族が新型コロナウイルス感染症にかかった、もしくは濃厚接触者になった
  • 税金を払う本人やその家族に基礎疾患があり、新型コロナウイルス感染症にかかると重症化しやすい

出典:申告・納付等の期限の個別延長関係

この他にも、個別の事情により申告期限等の延長などの救済措置が取られることがあります。まずは、管轄の税務署に相談してみましょう。

FP 荒井 美亜

FP 荒井 美亜あらい みあ

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大学院まで行って公認会計士を目指していたものの、紆余曲折を経て今は「日本一、お金のことを楽しくわかりやすく説明できるライター兼ファイナンシャルプランナー」目指して活動中です。日本FP協会のイベントのお手伝いもしています。保有資格)日本FP協会認定AFP、FP技能検定2級、税理士会計科目合格、日商簿記検定1級、全経簿記能力検定上級、貸金業務取扱主任者試験合格

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